小児歯科学雑誌
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49 巻 , 3 号
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総説
  • 井上 美津子
    2011 年 49 巻 3 号 p. 203-207
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2015/03/14
    ジャーナル フリー
    小児歯科診療において,小児の協力性の向上を図るためには治療時の疼痛のコントロールを行うことが重要であり,無痛的に治療を行うためには局所麻酔剤の使用が不可欠である。しかし,小児では局所麻酔のための注射が恐怖の対象となりやすく,いかに痛みを少なく局所麻酔を行えるかが小児の診療を成功させる鍵ともなる。小児への効果的な局所麻酔法のポイントとしては,表面麻酔薬の活用,視覚的恐怖の軽減,刺入時の留意点,薬剤の注入法(GSL 法)や術後の麻痺感への対応があげられる。また,小児の局所麻酔に関しては,その安全性やアレルギーが問題とされることが多い。局所麻酔剤の安全性を明らかにするために行われた実態調査の結果からは,幅広い年齢の小児に局所麻酔を用いた治療が行われており,5 歳以下の小児が約3 割,局所麻酔が初めての小児も16.2%を占めていた。術中,術後の不快事項はそれぞれ2.6%みられたが,局所麻酔剤の副作用を疑わせるものは数例であり,いずれも重篤なものではなかった。局所麻酔剤のアレルギーに関しては,当科から小児科にアレルギー検査を依頼した小児の陽性率は比較的高く,事前の十分な医療面接と必要に応じたアレルギー検査が大切で,医科との連携が望ましいことが示唆された。
  • 齊藤 正人
    2011 年 49 巻 3 号 p. 208-214
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2015/03/14
    ジャーナル フリー
    Minimal Intervention の概念が提唱されて以来,乳歯および幼若永久歯においても,その概念に沿った齲蝕治療が求められている。単に齲蝕の切削を小さくするのではなく,口腔内細菌叢を変容し,患者の口腔清掃指導や食事指導に介入して,早期齲蝕を削ることなく再石灰化させていくことがMinimal Intervention の概念であり,小児歯科における齲蝕に対するアプローチと合致する。正確な診断を行い,やむを得ず切削治療を行う場合には可能な限り健全歯質を保存し,接着修復を行わなければならない。本稿ではMinimal Intervention の概念に基づく,乳歯・幼若永久歯における歯冠修復,とくにコンポジットレジン修復について概説した。
  • 嘉藤 幹夫
    2011 年 49 巻 3 号 p. 215-230
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2015/03/14
    ジャーナル フリー
    歯の外傷による破折や治療に関しては完全な意見の一致を望むべくもないが,一般の臨床医が外傷を受けた子どもたちに最善の努力を尽くす場合には何らかの形で術式の基準化を図ることが望まれる。また,歯科のいかなる分野においても症例の分類がなされないかぎり,その分野の急速な進歩は望めない。そのような観点から,現在,大阪歯科大学小児歯科診療科で外傷患者に対して使用している外傷の診査表と分類図を提示し,日本外傷歯学会の「外傷歯治療のガイドライン」に沿って各分類の定義とその症例よる処置法について報告した。その結果,外傷歯治療は,十分なエビデンスの基づいた医療を行え得るものであろうかという疑問が考えられる。外傷歯治療は,エビデンスが乏しい処置であるため,推奨としてコンセンサスを形成することで留め,外傷症例の写真や解説などを提示するという患者向けガイドラインとして構成する方法もあると考えられる。そして,小児歯科学会として外傷歯治療のガイドラインをなるべく早期に作成し,会員や小児歯科専門医に提示して頂くことを希望しております。
  • 荒井 清司
    2011 年 49 巻 3 号 p. 231-242
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2015/03/14
    ジャーナル フリー
    炭酸カルシウムは生体と近似したpH でカルシウムを安定的に放出し,硬組織誘導促進効果が期待できる。炭酸カルシウムの歯髄への効果を明らかにするためin vitro においてヒト歯髄培養細胞の硬組織形成能促進に与える影響ならびにin vivo においてラット臼歯への生活歯髄切断法に炭酸カルシウムを用い歯髄切断の変化を検討した。ヒト歯髄培養細胞に炭酸カルシウムを12 日間作用させた際の反応を検討した。なお作用させていない細胞をコントロールとした。炭酸カルシウムの細胞毒性は認められなかった。細胞増殖試験,ALP 染色およびALP 活性において10 mM 炭酸カルシウム群で高い細胞増殖とALP 濃染像と高いALP 活性が認められた。ラット臼歯歯髄に生活歯髄切断法を行い,術後1 日で炭酸カルシウム群は歯髄切断下に壊死層は認めず,水酸化カルシウム群は,歯髄切断下に壊死層が認められた。術後28 日で両群ともにマイクロCT およびH.E.重染色で象牙質様硬組織の形成が認められた。炭酸カルシウム群はnestin 陽性細胞が切断後に水酸化カルシウム群よりも早く出現し,歯髄が石灰化することが明らかとなった。DMP-1 免疫染色では両群とも術後28 日まで,DMP-1 免疫反応陽性マトリックスの量が増加していた。OPN 染色では両群とも術後28 日目においてOPN 免疫反応陽性細胞が認められた。炭酸カルシウムは,生体親和性に優れた性質を有し,歯髄切断直下に新生象牙質様硬組織を誘導することが示唆された。
原著
  • 楊 静, 李 憲起, 張 楠, 水谷 智宏, 中山 聡, 押領司 謙, 岩崎 浩, 宮沢 裕夫
    2011 年 49 巻 3 号 p. 243-250
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2015/03/14
    ジャーナル フリー
    齲蝕は多因子性の疾患であり,その中で生活環境の影響は大きな因子とされている。中国山西省は沿海部都市に比べ経済格差は大きく,小児の口腔内環境にも地域差があると推測される。今回,山西省小児の齲蝕予防対策および有効な口腔衛生指導の指標の確立を目的に齲蝕罹患状況について実態調査を行った。調査は中国山西省太原市および忻州市の3−5 歳の乳歯列幼稚園児890 名(男児513 名,女児377 名)を対象とした。口腔内診査はWHO の基準に従い,視診・触診による診査を行った齲蝕の判定は4 進行度分類を基準とし,厚生労働省歯科疾患実態調査に準じ,現在歯数,齲蝕歯数および処置歯数から,齲蝕罹患率,一人平均齲蝕歯数および処置歯率を集計し以下の結論を得た。1 .齲蝕罹患者率:3 歳児では69.5%,4 歳児では76.0%,5 歳児では81.0%と高い罹患率を示し,増齢的に増加の傾向が認められた。2 .一人平均齲蝕歯数:3 歳児では3.3, 4 歳児では3.8, 5 歳児では4.7 と増齢的に増加の傾向が認められた。3 .齲蝕未処置者率:3 歳児では66.9%,4 歳児では68.6%,5 歳児では71.1%といずれの年齢においても齲蝕は放置される傾向であった。中国山西省の乳歯齲蝕罹患状況は日本に比べ高い傾向が認められ,処置歯率は極めて低く,乳歯齲蝕は放置される傾向にあることが示唆された。
  • 大原 紫, 吉村 剛, 小西 俊成, 光畑 智恵子, 香西 克之
    2011 年 49 巻 3 号 p. 251-258
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2015/03/14
    ジャーナル フリー
    近年の健康に対する意識の向上に伴い,薬理作用のある天然素材を応用することに関心が高まっている。歯科領域でも,齲蝕抑制などの機能性を持つ素材について研究が行われ,特に齲蝕の主たる原因菌であるStreptococcus mutans については,菌に対する特異的な抑制法が注目されている。今回我々は,生理活性物質が多く含まれるブドウ,特にブドウ酒搾り粕(パミス)に着目し,パミスから生理活性物質を抽出した。そして,S. mutans に対するglucosyltransferase(GTase)阻害活性,増殖抑制活性の測定を行った。さらに,パミスに含まれる生理活性物質の組成および構造を明らかにし,パミスの齲蝕抑制物質の可能性を検討した。測定の結果,パミス抽出物はGTase 阻害活性およびS. mutans の増殖抑制効果を有していた。また成分解析によって,トリテルペンの一種であるオレアノール酸が精製前のパミスエタノール抽出画分では10%,強い活性が確認された精製画分では90%の比率で含まれていることが明らかになった。これらの結果から,パミス抽出物は含有するオレアノール酸の濃度によって非水溶性グルカン合成阻害やS.mutans の増殖抑制などの活性を発揮することが考えられた。そのため,パミス抽出物の齲蝕抑制物質としての可能性が示唆された。
臨床
  • 竹村 雅美, 中島 一郎, 吉田 祥子, 吉野 仁勝, 松野 俊夫, 白川 哲夫
    2011 年 49 巻 3 号 p. 259-264
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2015/03/14
    ジャーナル フリー
    うつ病(鬱病または欝病)は気分障害の一種であり,抑うつ気分や不安,焦燥,精神活動の低下,食欲低下,不眠症などを特徴とする精神疾患である。うつ病患者では通法での歯科治療に対しても強いストレスを感じ心身の症状が悪化する危険性がある。著者らは頻繁に胸痛を訴え歯科治療を拒否し,その後に「小児うつ病」と診断された男児(8 歳:初診時)の齲蝕治療を経験した。うつ病の治療経過と共に,患児の身体的心理的症状は改善したが,うつ病への影響を考慮して全身麻酔下での集中歯科治療を実施した。その結果,全身麻酔下での歯科治療後も患児の心身の健康状態に変化はみられなかった。このことから,小児に頻繁に身体愁訴が出現する場合,背景となる心身の病変を疑うこと,さらに小児精神疾患の専門家と連携した歯科的アプローチが肝要であると考えられた。
  • 菊地 恭子, 藤田 晴子, 山口 朗, 髙木 裕三
    2011 年 49 巻 3 号 p. 265-271
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2015/03/14
    ジャーナル フリー
    東京医科歯科大学歯学部附属病院小児歯科外来において,口蓋粘膜正中部にエプーリス様の腫瘤を認め,その病理組織診断では辺縁性歯牙腫であるとされた症例を報告する。患児は2 歳6 か月の男児で,既往歴および家族歴,全身所見に特記すべき事項はなかった。口蓋切歯乳頭部後縁に表面平滑な歯肉色の隆起性病変を認め,デンタルエックス線写真ではその基底部相当である上顎右側乳中切歯根尖部付近に半米粒大のエックス線不透過像を認めた。全身麻酔下にて腫瘤と硬組織を摘出した。硬組織は腫瘤内に,口蓋骨とは独立して存在していた。腫瘤の組織像は,内部にはエナメル芽細胞を思わせる円柱上皮,その周囲に間葉系細胞,それらを間葉系結合組織が覆い,最後に口腔粘膜上皮が取り囲むという4 重の構造を呈していた。腫瘤粘膜下には線維性結合組織の増生と歯原性上皮の小塊が存在したが,炎症性細胞は認められなかった。また,腫瘤内の硬組織は,エナメル質,象牙質,セメント質および歯髄組織の形成がみられる歯牙様硬組織であり,その周囲には歯原性上皮と歯牙腫に多くみられる石灰化球が認められたため,辺縁性歯牙腫と診断した。術後の経過は良好で,再発は認められない。
  • 有川 智子, 内藤 宗孝, 伊藤 正樹, 今村 綾, 岡本 卓真, 名和 弘幸, 福田 理
    2011 年 49 巻 3 号 p. 272-278
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2015/03/14
    ジャーナル フリー
    上顎右側中切歯および側切歯の萌出遅延を主訴に来院した7 歳4 か月の男児に,患部の診査を目的として歯科用コーンビームCT 撮影を行った。CT 画像は歯科インプラント埋入シミュレーションソフトウェアを用いて,横断画像における病変部の軸を垂直的に調整し,病変部を中心として30 度の角度間隔ごとに二次元画像の再構築を行った。得られた画像により,病変はエックス線透過帯を伴った歯牙様構造としてみられた。また,病変と隣接歯及び切歯管などの周囲の解剖学的構造との位置関係を明瞭に観察することができた。歯科インプラント埋入シミュレーションソフトウェアを用いて画像構築をすることにより,歯科インプラントの治療のみでなく,小児期の歯牙腫をはじめとした様々な歯科臨床における診断,治療に有用な情報を得られることが示唆された。
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