小児歯科学雑誌
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51 巻 , 3 号
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総説
  • 星野 倫範
    2013 年 51 巻 3 号 p. 317-325
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2015/03/21
    ジャーナル フリー
    Streptococcus mutans が産生する酵素グルコシルトランスフェラーゼ(Gtf)はスクロースを基質として歯面に定着するための粘着性グルカンを合成することから齲蝕の病原因子の一つとされ,その作用を阻害することはS. mutans の歯面への定着抑制に繋がることから本酵素を標的とした抗齲蝕ワクチンの研究が数多く行われてきた。しかし,抗齲蝕ワクチンとして実用化されたものはまだない。この抗齲蝕ワクチンの開発研究では,粘着性の不溶性グルカンを合成するGtfB がとくにその標的とされ,さらにその機能部位である触媒部位(CAT)とグルカンバインディング部位(GBD)が免疫時のコンポーネントとして利用されてきた。これに従い,まず組換えCAT, GBD を作成し,その免疫化学的反応性を検討した。しかし,これらの組換えタンパクによって誘導された抗体はS. mutans GtfB と反応したが,S. mutans から抽出した天然型Gtf により誘導された抗体と組換えCAT, GBD は反応しなかった。この結果からGtfB の抗原領域は再度検証される必要があると考えた。そこでGtfB について抗原性をParker 法によるin silico 解析を行ったところ,これらの機能領域よりも機能が特定されていないN 末端側の多様性領域(VR)の方に抗原性があることが示唆された。そこでアデノウイルスベクターを用いてVR 領域に対するDNA ワクチンを構築した。このDNA ワクチンが産生する組換えタンパクが抗天然型Gtf 抗体と反応することが確認されたのでマウスに免疫したところ,GtfB と特異的に反応し,そのグルカン合成活性を有意に抑制する抗血清が得られた。これらのことから,GtfB のVR 領域はグルカン合成活性を抑制するのに有効な抗体を誘導できる部位であることが明らかとなった。
  • 稲田 絵美
    2013 年 51 巻 3 号 p. 326-332
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2015/03/21
    ジャーナル フリー
    乳歯列から永久歯列へ変化する過程で,包括的かつ適切な口腔管理を行うことにより,骨格系,咬合系の不正を未然に防ぎ,良好な咬合を確立することが重要である。よって,顎顔面の成長発育に伴う正常な顎骨の成長と歯軸の傾斜の関係を理解することは,良好な咬合を確立する上で必要不可欠である。成長に伴う顎顔面領域の形態変化を客観的に評価する際には,頭部エックス線規格写真と歯列模型が用いられる。それぞれは単独で評価されているのが現状であるが,顎顔面部の成長発育および咬合の変化は,歯列と顎骨形態に密接な関係があり,その変化は3 次元的なものであるため,頭部エックス線規格写真と歯列模型を同じ座標系で分析することが望まれる。そこで,両者を同一座標系に統合するシステムを構築し,各歯のFH 平面に対する前後的傾斜角度を,乳歯とそれぞれの後継永久歯で比較した。その結果,矢状面において上顎歯の傾斜角度は乳歯と後継永久歯で有意差がある部位が多かったのに対し,下顎歯ではほとんど差が認められなかった。また,乳臼歯に比べ,大臼歯では上下の同側同名歯に平行性が認められた。本稿では,これらの知見に基づき,乳歯と永久歯の歯軸の類似と相違が生じる原因となる,顎顔面領域の形態および機能的要因について検討する。
  • 今村 由紀
    2013 年 51 巻 3 号 p. 333-339
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2015/03/21
    ジャーナル フリー
    第八リン酸カルシウムは生体アパタイトの前駆体であり,生体内で骨類似アパタイトに転化する。我々が開発した第八リン酸カルシウムセメントは,歯科材料として優れた機械的性質と二次象牙質形成能をもつことをこれまで報告してきた。乳歯用根管充填材料の所要条件には,生体親和性や封鎖性に加え,生理的歯根吸収に伴う材料の吸収性が必要となる。しかし現在の臨床現場では,生体内で硬化せず乳歯根より早く吸収してしまう材料や,逆に吸収速度が遅く,乳歯根吸収後も体内に残留してしまう可能性のある材料が用いられている。また,それらの多くは歯周組織や後継永久歯への刺激性も指摘されている。我々は良好な生体親和性をもち,乳歯根と同時に吸収がおこる根管充填材料の開発を目的として,本セメントの乳歯用根管充填材料としての応用を検討している。本研究では,第八リン酸カルシウムセメントを根管充填材料として用いた際の材料学的構造変化の追跡と根尖封鎖性の評価を行った。また,乳歯の生理的歯根吸収は破歯細胞によるものであるため,乳歯歯根と同様の構造を持つ本セメントを根管充填材料として用いることで,材料が乳歯根と同時に破歯細胞による吸収を起こす可能性があるとの仮定のもと,in vitro における本セメントの生体吸収性を評価し,乳歯根と同時に吸収がおこる根管充填材料としての応用の可能性を検討した。
  • 岩瀬 陽子
    2013 年 51 巻 3 号 p. 340-346
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2015/03/21
    ジャーナル フリー
    咬合接触は歯科臨床において非常に重要であると認識されており,多数の研究において様々な手法が用いられてきた。これらは臨床現場において使用されることが多く,比較的簡便に評価することができるという利点はあるが,いずれも静止状態にある咬頭嵌合位での評価法であり,咀嚼運動中の咬合接触を評価する方法ではなかった。一方,咀嚼終末位は咬頭嵌合位に一致することが望ましいと考えられてきたものの,従来のシステムでは運動中の任意の下顎位における咬合接触を記録することはできない。そこで我々は,顎運動計測により得られた「下顎運動データ」と精密模型を用いて三次元計測された「歯列形態データ」を組み合わせたシステムを用い,咀嚼終末位と咬頭嵌合位間の下顎位のずれ,および咬合接触に関して検討した。下顎切歯点における咀嚼終末位と咬頭嵌合位間の三次元的な直線距離から,小児の咀嚼終末位と咬頭嵌合位のずれは大きいことが示された。咬合接触に関しては,小児の咀嚼終末位における咬合接触面積は咬頭嵌合位の77%未満であり,咬合接触面積が最大となるタイミングは咀嚼終末位よりやや開口相にシフトしており,かつ小児では閉口相に比して開口相でより大きな接触が認められた。また小児の咬合接触率の変動値は,成人ほど咀嚼終末位において安定しておらず,小児における咀嚼終末位の位置や咬合接触の動態は明らかに成人とは異なっていることが示唆された。
  • 島津 貴咲
    2013 年 51 巻 3 号 p. 347-352
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2015/03/21
    ジャーナル フリー
    S-PRG(surface reaction-type pre-reacted glass-ionomer)フィラーは,フッ素のリリース能とリチャージ能を有する新しい材料として期待されている。また,フッ素の他にも,様々なイオンの徐放能を備えることが知られている。本研究では,S-PRG フィラー含有シーラントの齲蝕予防効果を検討した。その結果,S-PRG フィラー含有シーラントは,優れたフッ素リリース・リチャージ能を示し,フッ素以外にもストロンチウム,ホウ素などのイオンを徐放することが明らかとなった。また,本材料は表層下脱灰エナメル質に対しても非侵襲的に接着し,従来から用いられているレジン系シーラントと同等の接着力を示した。そのため,長期間の管理でシーラント直下や周辺歯質の脱灰を抑制し,再石灰化を促進する可能性が示唆された。
  • 根本 浩利
    2013 年 51 巻 3 号 p. 353-359
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2015/03/21
    ジャーナル フリー
    感染性心内膜炎は,心臓弁膜や心内膜に細菌や血小板等で構成される塊が形成されることで,多彩な臨床症状を呈する疾患である。一旦発症すると,心臓弁置換術が必要になる場合や死に至ることもあるとされている。そこで,発症リスクが高いとされる心疾患を有する対象者では,発症リスクが高いとされる抜歯等の観血的な歯科処置の術前に,抗菌薬を服用することが推奨されている。一般的には,アモキシシリンの経口投与が選択されることが多いが,抗菌薬の術前投与をしていたのにも関わらず,耐性菌によって心内膜炎を発症したという症例報告も存在する。しかし,口腔細菌におけるアモキシシリン感受性に関する検討は,これまでにあまり行われていない。そこで,本研究ではデンタルプラーク中におけるアモキシシリンに感受性の低い口腔レンサ球菌種の存在を,全身疾患を有していない小児・思春期および成人を対象に検討した。その結果,全身疾患の既往のない約5%の日本人のデンタルプラーク中に,アモキシシリンに対する感受性が極めて低いレンサ球菌株が存在していることが明らかになった。さらに,これらアモキシシリン耐性菌株は,別の複数の抗菌薬に対しても感受性が低いことも示された。今後は,心内膜炎発症高リスク者における耐性菌の分布に関する大規模な調査を行っていきたいと考えている。さらに,分離したアモキシシリン耐性菌株の分子生物学的性状を詳細に分析していくつもりである。
原著
  • 中村 侑子, 河上 智美, 苅部 洋行
    2013 年 51 巻 3 号 p. 360-371
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2015/03/21
    ジャーナル フリー
    小児がんの治療成績の進歩は顕著で,小児がん経験者の多くが成人期を迎えるようになっている。しかし,治療に多剤の抗腫瘍薬を用いた化学療法や放射線療法などが併用されることもあり,成長期の小児にとってそれらの影響は少なくない。近年の小児がん長期フォローアップの経過観察からは,口腔領域における様々な晩期合併症が認知されるようになってきた。本研究は,生後12 日目のマウスにシクロフォスファミドを投与し,生後14 日から27 日までの下顎第一臼歯における萌出・歯根形成過程をエックス線学的および病理組織学的に検討し,以下の結果を得た。1 .下顎第一臼歯遠心根の歯根長は,生後16 日では実験群と対照群で同程度であったが,生後27 日では実験群の歯根長が短く,対照群との間に有意差を認めた。2 .ヘルトヴィッヒ上皮鞘を構成する細胞は,薬剤投与後に萎縮・変形を示し,早期に消失した。3 .実験群では,セメント質の早期形成開始,歯槽骨量の減少,歯根膜腔の拡大および歯根膜線維の減少が観察され,歯の萌出遅延傾向を認めた。本研究の結果から,シクロホスファミド投与は,形成途中の歯根におけるヘルトヴィッヒ上皮鞘の形態変化と早期喪失を引き起し,また歯周組織の構築に影響を与え,歯の萌出遅延の誘因となることが示唆された。
  • 高木 伸子, 定岡 直, 牧 茂
    2013 年 51 巻 3 号 p. 372-379
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2015/03/21
    ジャーナル フリー
    乳児期の吸啜行動は,その後の咀嚼機能の発達に影響を及ぼし,咀嚼器官の発育に関与しているといわれている。哺乳運動を評価することは,母乳育児を成功させるための支援になり,ひいては新生児期・乳児期に限らず,その後の健やかな咀嚼機能発達および顎発育を促す援助につながる。臨床において非侵襲的で,かつ特別な装置を必要としない吸啜評価ができるようになることは,哺乳行動の診断や支援を行う上で有効な根拠になる。本研究で,ビデオ撮影を用いて直接授乳における吸啜パターンの経時的変化の特徴を明らかにした。被験者は,母乳で保育されている仮死や奇形のない健康な正期産児13 人である。それぞれの児において,生後1 週間以内,1 か月,3 か月,5 か月の計4 回,通常の母乳授乳時の吸啜運動を撮影し,その映像を,2 次元運動解析ソフトを用いて下顎運動の動的解析を行い,以下の結果を得た。1 .吸啜のリズムは,吸啜が持続している区間(burst)と吸啜が休止している区間(pause)の区分吸啜が,月齢が進むにつれて見られなくなる。2 .吸啜運動時の下顎の変位量は,月齢に伴って増加する。3 .吸啜運動時の開口・閉口速度は,閉口時は開口時より速度が速かった。また,月齢に伴い開口時,閉口時ともに速度が速くなった。4 .1 吸啜サイクル時間は,成長に伴う有意な変化は認められなかった。3 か月時が最も個人差がなく,安定した哺乳行動がみられた。5 .乳児の吸啜運動を非侵襲的に観察・評価する方法を確立するための基礎研究として,同じ乳児を追跡して撮影し,動作解析ソフトを用いて乳児の吸啜パターンの経時的変化を明らかにすることができた。
  • 丘 久恵, 古河 真理子, 島野 侑子, 藤岡 万里, 井上 美津子
    2013 年 51 巻 3 号 p. 380-389
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2015/03/21
    ジャーナル フリー
    本研究では,中期の妊婦を対象に妊婦調査を行った第1 報よりも時期を早めた前期マザークラス(妊娠初期から中期の妊婦を対象)を受講した妊婦129 名が,自分自身や生まれてくる子どもの口腔の健康に対してどのような意識を持っているかについてアンケートによる調査を行い,第1 報と比較・検討した。結果は,第1 報と比較して「現在の体調」や「現在の歯磨きの状態」において「つらい」と答えた者が第1 報よりも多く,「何かの時に相談できる歯科」が「あり」の者や,「齲蝕原性菌の母子伝播」について「知っている」と答えた者は第1 報と比較し少なかった。今回,対象妊婦の妊娠週数が平均16.5 週のため,第1 報の平均29.5 週の妊婦と比べて時期が早いことから,まだつわりによる体調不良や妊娠期特有の精神面の不安定が続き,これらの違いに影響していると示唆された。また妊娠初期から中期の時期では,歯周病,喫煙,飲酒と早産,低体重児出産との関係や齲蝕原性菌の母子伝播の認知度等の歯科が関与する知識を得る機会はまだ少なく,出産後に関与してくる情報などはまだ得ることが出来ていないと示唆された。そのためにも妊婦に対して妊娠初期から口腔健康を含めた内容の指導する機会を自治体,地域医療機関等でさらに積極的に行うことは,妊婦の口腔を含めた健康に対する意識の向上および生まれた子どもの健康にも繋がると考える。
  • 富家 麻美, 名和 弘幸, 森田 一三, 藤井 美樹, 加藤 孝明, 溝口 理知子, 図師 良枝, 髙橋 脩, 嶋﨑 義浩, 福田 理
    2013 年 51 巻 3 号 p. 390-395
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2015/03/21
    ジャーナル フリー
    齲蝕予防のためのフッ化物応用において洗口能力は重要であるが,就学前の自閉症児では洗口の習得に遅れが認められる。そこで,自閉症児の洗口の習得に対する準備状態を知ることを目的に,早期療育施設に通う3~6 歳の自閉症児58 名を「洗口可能群」と「洗口不可能群」に分類し,暦年齢および発達年齢との関連について調査した。さらに,洗口能力の有無を最も識別する発達年齢のカットオフ値を検討した。その結果,以下が明らかになった。1 .「洗口可能群」は43 名(74.1%)であった。2 .暦年齢は,「洗口可能群」と「洗口不可能群」の間で統計学的に有意差を認めなかった。3 .発達年齢は,「洗口可能群」が「洗口不可能群」に比べ全ての発達領域において統計学的に有意に高い年齢を示した。4 .洗口能力の有無を識別するのに有効な発達年齢のカットオフ値は,「手の運動」2 歳3 か月,「基本的習慣」2 歳4.5 か月,「発語」1 歳4 か月,「言語理解」1 歳5 か月,「全領域」2 歳0 か月であった。5 .洗口能力の有無の識別に最も有効な発達領域は「発語」で,的中率75.9%,オッズ比9.1 であった。本研究の結果から,就学前自閉症児における洗口について,一定程度の言語発達と個々の発達バランスを考慮すれば無理のない洗口指導が可能であることが示唆された。
臨床
  • 村松 健司, 楊 秀慶, 鈴木 淳子, 三井 園子, 内川 喜盛, 田村 文誉
    2013 年 51 巻 3 号 p. 396-401
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2015/03/21
    ジャーナル フリー
    Prader-Willi 症候群(PWS)は,病態が加齢とともに変化し,特に性格障害が問題となることが多い。また,PWS の患者は,一見協力的に見えるため,歯科治療に際し術者側も行動変容法での対応をしがちであるが,実際には説明に対し理解していないことも多く,治療困難となる場合がある。本症例では,歯科治療に対して,幼児期は協力的だった患児が,徐々に非協力となり,思春期ごろから治療困難になったため,全身麻酔下での治療を選択した。その結果,ストレスのかかる治療を全身麻酔下で行った後は,患者の情緒の安定も加わり,行動変容法での歯科治療が再度有効となった。
  • 大塚 章仁, 中野 崇, 高田 麻紀, 福田 理
    2013 年 51 巻 3 号 p. 402-411
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2015/03/21
    ジャーナル フリー
    本学歯学部附属病院小児歯科では,口腔機能の不調和を有する患児に対し,各患児個々に訓練方法を立案し,口腔筋機能療法(以下Oral Myofunctional Therapy ; MFT)を行っている。今回舌小帯形成術後,舌トレーニングの必要性を指摘された7 歳7 か月の男児に対してMFT を行い良好な結果を得たので報告する。患児は,7 歳7 か月の男児で,口腔筋機能所見として舌小帯形成術後,舌拳上ができず口唇閉鎖も不十分であった。また,安静時および咀嚼・嚥下時に舌前方突出がみられ,上顎前歯の舌側傾斜が認められた。そこで正常な口腔筋機能の習得を目的としてMFT を行った。術後早期にMFT を開始したところ,1 年6 か月後には,舌拳上および口唇閉鎖などの正常な口腔筋機能を習得でき,上顎前歯の傾斜の改善ができた。MFT を術後早期に開始したことで正常な口腔筋機能を習得できた。しかしながら,訓練期間が1 年6 か月と比較的長期にわたったことから,患児のモチベーションの持続方法や術後のみではなく,術前からの機能習得のためのMFT の必要性が示唆された。今後は,改善された口腔機能の維持および成長変化に伴う歯列・咬合の変化についての定期的な検診が必要と考えている。
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