小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
51 巻 , 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 中原 弘美, 多賀谷 正俊, 西田 宜弘, 近藤 亜子, 松原 有為子, 田村 康夫
    2013 年 51 巻 4 号 p. 429-439
    発行日: 2013/11/25
    公開日: 2015/03/21
    ジャーナル フリー
    機能的矯正装置ムーシールドにて幼児期反対咬合の治療を行い,治療効果と,どこにどの様な形で治療の効果が現れているかについて検討したものである。被検児は反対咬合小児66 名(平均年齢5 歳1 か月)を対象として,機能的矯正装置ムーシールドにて治療を行い,治療の有効性と被蓋改善までの治療期間について検討を行った。次いで,66 名のうち16 名を対象として,治療前後における模型分析と側面セファロ分析を行い,また口蓋形態から口蓋縦断平面の変化について検討した。その結果,78.8%に被蓋の改善が認められ有効と判定された。治療期間は平均9.8 か月で,開始年齢や歯齢別で差は認められなかった。乳犬歯間距離は,上顎は有意に増大し下顎は小さくなっていた。一方,長径では上顎は乳中切歯と両側乳犬歯間が有意に増大し下顎は減少していた。セファロ分析では,ANB, FMA, Y-Axis で有意な増加が認められ,またAPDI で有意な減少が認められた結果,下顎の後退と時計方向の変化が認められた。歯槽性では,U1 to SN, U1 to FH の角度はそれぞれ有意に増加し,またL1 to MP の角度は有意に減少した。また口蓋の縦断面積において,治療後は有意な増加がみられた。以上から,機能的矯正装置ムーシールドは幼児期における反対咬合の治療に有効であり,歯や顎骨に対し直接的な矯正力を働かせなくても前歯の傾斜だけでなく上下顎骨の位置関係や口蓋の形態にまで変化をもたらしていることが明らかとなった。
  • 渡邉 公博, 古西 清司
    2013 年 51 巻 4 号 p. 440-446
    発行日: 2013/11/25
    公開日: 2015/03/21
    ジャーナル フリー
    歯周炎原因菌であるAggregatibacter actinomycetemcomitans の病原性の詳細な研究,治療薬や予防薬の開発には動物モデルが必須である。本実験では動物モデルとしてカイコが本菌に対する良い動物モデルになる可能性を示した。次に活性酸素種のスカベンジャーであるアスタキサンチンのカイコを使った本菌による感染実験を行い,以下の結果を得た。1 .A. actinomycetemcomitans は殺カイコ活性を有していることが明らかとなった。2 .本菌による殺カイコ活性は,リポソームに組み込んだアスタキサンチンによって抑制された。3 .アスタキサンチンは,A. actinomycetemcomitans の増殖に影響を与えなかった。4 .アスタキサンチンは,カイコの体内の細菌数の減少を促進した。これらの結果よりA. actinomycetemcomitans の殺カイコ活性をアスタキサンチンが抑制することが示された。
臨床
  • 稲田 絵美, 齊藤 一誠, 村上 大輔, 武元 嘉彦, 森園 健, 岩崎 智憲, 早崎 治明, 山﨑 要一
    2013 年 51 巻 4 号 p. 447-455
    発行日: 2013/11/25
    公開日: 2015/03/21
    ジャーナル フリー
    近年,小児の齲蝕は減少傾向にあるものの,一方で多数歯齲蝕により口腔崩壊している子どもが少なからず存在し,ほとんど齲蝕のない子どもとの二極化が問題となっている。その背景として,子どもを取り巻く環境が複雑化し,周囲の大人の「子どもの口の生活習慣にまで手が回らない生活状況」という,社会的決定要因が一因となっている。今回我々は,社会的決定要因の影響により,口腔衛生状態の不良や,その原因となる食習慣といった生物医学的要因が悪化し,小児期に多数歯重症齲蝕が発症した患児の長期口腔管理を行った。齲蝕治療の結果,窩洞に食渣やプラークが蓄積しやすいという状態は消失したものの,齲蝕リスクは非常に高い状態が続いていた。我々は,患児の生活習慣を考慮した口腔衛生管理と,可撤式保隙装置を用いて歯列の適切な空隙管理を行うことで,齲蝕治療後から永久歯列が完成するまでの齲蝕や歯列不正の問題を未然に防ぎ,健全な歯列咬合へと導くことができた。すなわち8 年にわたる小児期の包括的な長期管理が功を奏した症例であると言える。子どもの社会的決定要因と生物医学的要因を把握し,それぞれに対する健康な口腔の育成を,中・長期的な視野で考慮することが小児歯科医療において重要であると考えられた。
  • 高木 愼, 駒井 正昭, 樋口 満, 田村 博宣, 矢部 孝
    2013 年 51 巻 4 号 p. 456-460
    発行日: 2013/11/25
    公開日: 2015/03/21
    ジャーナル フリー
    平成18 年12 月28 日7 歳7 か月,女児が舌背の違和感を主訴に来院した。舌背正中後方部に直径17mm 大,扁平な隆起で,弾性軟,表面は正常粘膜色を呈し,無痛性の腫瘤を認めた。造影MRI は施行していないため,血行は不明だが,線維成分に富む良性疾患が考えられた。良性腫瘍の臨床診断にて,1 年7 か月経過観察した後,平成20 年8 月25 日(9 歳2 か月)全身麻酔下に腫瘍切除術を行った。腫瘍周囲に2mmの安全域をとり切開線を加え,深部は一層筋層を含め1 塊として切除した。切除組織の病理組織所見は,腫瘍表層は正常な扁平上皮組織で覆われ,上皮直下に膠原線維および平滑筋線維の造成を認めた。免疫組織学的所見では,病変の主体となる細胞がα-smooth muscle actin に陽性で,平滑筋細胞と考えられ,病理組織学的診断は平滑筋腫性過誤腫とした。約3 年後(12 歳2 か月)の経過観察でも異常は認めなかったが,今後とも長期に経過観察予定である。
  • 増田 啓次, 山座 治義, 西垣 奏一郎, 小笠原 貴子, 大隈 由紀子, 柳田 憲一, 野中 和明
    2013 年 51 巻 4 号 p. 461-466
    発行日: 2013/11/25
    公開日: 2015/03/21
    ジャーナル フリー
    Hallermann・Streiff 症候群は,骨格形成不全,特有の顔貌,貧毛,皮膚症状,眼症状,歯牙の異常を特徴とする先天性疾患である。我々は,本症候群に先天歯を合併した症例を経験した。先天歯は上顎前歯部に認められ,歯肉腫瘤を伴っていた。また出生直後から経口哺乳が困難で,口から経管栄養チューブが常時挿入されていた。これによる物理的刺激も加わり,先天歯は著しく動揺していた。デンタルエックス線所見では,歯根形成は認めなかった。患児は本症候群に特徴的な小口・小顎・胸郭低形成など,気道および呼吸器系の形態異常も合併していた。先天歯が口腔内に脱落した場合,迅速に発見し除去することは困難で,誤嚥・気道閉塞のリスクが極めて高いと考えられた。したがって局所麻酔下にて歯肉腫瘤と先天歯を一塊として切除した。患児は日齢195 日で当院NICU を退院した。しかし日齢204 日で,自宅にてミルクの誤嚥を契機とする呼吸不全から心肺停止に至り,蘇生処置に反応せず死亡した。本症例のように,顎顔面および気道の解剖学的形態異常を伴う場合には,偶発的な先天歯の脱落により,気道閉塞から呼吸不全・心肺停止に至るリスクが高くなる。この点を念頭に置いて先天歯に対処することが重要である。
  • 増田 啓次, 小笠原 貴子, 山座 治義, 大隈 由紀子, 西垣 奏一郎, 廣藤 雄太, 柳田 憲一, 野中 和明
    2013 年 51 巻 4 号 p. 467-472
    発行日: 2013/11/25
    公開日: 2015/03/21
    ジャーナル フリー
    Langer-Giedion 症候群は,毛髪鼻指節症候群Ⅱ型に分類される遺伝性疾患である。本疾患では8q23.3−8 q 24.11 領域が欠失し,同領域に含まれるTRPS1 およびEXT1 遺伝子の機能喪失が原因と考えられている。主な症状は,頭部顔面の異常・低身長・精神発達遅滞・多発性軟骨性外骨症である。しかし染色体欠失領域の長さには個体差があり,TRPS1 およびEXT1 以外にも影響を受ける遺伝子があると考えられ,表現型は多様である。我々はLanger-Giedion 症候群の11 歳6 か月の男児に埋伏過剰歯・永久歯萌出遅延・叢生を認めた1 例を経験したので報告する。埋伏過剰歯は43の歯胚間に1 歯認めた。EEおよびEDCCDEが残存し,64211236および621126が萌出していた。2は1の口蓋側に転位し,完全に重複して萌出していた。本症例では精神発達遅滞が軽度であったため,まず外来でのTSD 法を主とした行動変容法を併用し,齲蝕治療を行った。また初診から1 年後に外来局所麻酔下にて埋伏過剰歯を抜去した。術中,術後とも全身状態の悪化なく,創傷治癒は良好であった。今後も口腔衛生指導を継続しながら経過観察を行う方針である。
  • 増田 啓次, 大隈 由紀子, 小笠原 貴子, 山座 治義, 西垣 奏一郎, 柳田 憲一, 廣藤 雄太, 野中 和明
    2013 年 51 巻 4 号 p. 473-478
    発行日: 2013/11/25
    公開日: 2015/03/21
    ジャーナル フリー
    Lowe 症候群は腎病変として近位尿細管機能障害(Fanconi 症候群),また腎外病変として先天性白内障および精神運動発達遅滞を主症状とするX 染色体劣性遺伝疾患である。本症候群では,近位尿細管におけるリンの再吸収が障害されるため,くる病を続発する場合がある。歯科口腔領域の異常は主にこの腎性くる病の口腔症状として表れる。今回我々は,先天性白内障を契機に生後6 か月でLowe 症候群と診断され,生後10 か月でAAの動揺を主訴に当科を受診した1 例を経験した。当科初診時は身長,体重とも-2SDで明らかな低身長,低体重を示していた。しかし当院小児科にて内科的投薬治療が行われており,腎性くる病の発症は認めなかった。デンタルエックス線検査では,AAの根は未完成で,歯根膜腔の拡大を認めた。しかし明らかな歯槽骨梁の粗鬆化,歯槽硬線の不明瞭化は認めなかった。したがって,AAの動揺の程度が根未完成歯にみられる生理的範囲内のものであるか病的なものであるかについて,判別は困難であった。さらに注意深く観察する必要がある。今後,患児の腎機能障害が悪化し,くる病を発症するリスクは高い。続発しうる口腔内症状の予防・早期発見・早期治療を目的に,定期的な口腔衛生指導と齲蝕予防管理を行う方針である。
feedback
Top