小児歯科学雑誌
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52 巻 , 3 号
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原著
  • 佐藤 公子
    2014 年 52 巻 3 号 p. 409-416
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2015/06/27
    ジャーナル フリー
    本研究では,A 市立小学校5 年生,中学校1−3 年生の児童,生徒136 名を対象に第1 回咀嚼指導後,3 週間の間隔をあけて第2 回咀嚼指導および質問紙調査を行い,咀嚼能力に影響を与える要因を検討した。咀嚼能力評価は2 分間咀嚼した色変わりガムを用い,色彩色差計でa*値を測定した。この結果,第2 回咀嚼能力a*値は第1 回a*値と比べて+2.286±6.454 増加し,咀嚼能力に有意差が認められた。階層的重回帰分析を用いて,第一因子得点,第二因子得点,第三因子得点,第四因子得点を投入し,a*値変化量に与える要因を検討した。この結果,咀嚼能力(a*値変化量)に関連していたのは「主体的な行動」と命名した第一因子,「活力」とした第三因子,DMF 歯率であることが示された。次に,単純主効果検定を行い,群間の交互作用を検討したが,第一因子得点高群はDMF 歯率が高くなると,第一因子得点が低いものよりa*値変化量が低下することが示唆された。このことより,歯の喪失の原因となる歯科疾患,未処置歯数,口腔衛生状態を総合的に表すDMF 歯率と,児童,生徒の「主体的な行動」が複合的に咀嚼能力に影響を与える要因であることが示唆された。
  • 佐藤 桃子, 石田 千晶, 岩佐 聡子, 武井 浩樹, 本田 雅規, 白川 哲夫
    2014 年 52 巻 3 号 p. 417-424
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2015/06/27
    ジャーナル フリー
    間葉系幹細胞(以下,MSCs)は自己複製能及び多分化能を有し,近年では臨床応用に向けた様々な研究が行われている。その細胞源として,高い増殖能及び多分化能を有し,比較的容易に入手できる歯髄幹細胞(以下,DPSCs)が期待されている。今回我々は抜去した乳歯及び永久歯から得られたDPSCs について,コロニー形成能,細胞増殖能,遺伝子発現及び表面抗原の発現について比較検討した。便宜抜去のために抜歯された乳歯及び永久歯から無菌的に歯髄組織を採取し,実験に用いた。乳歯歯髄組織由来間葉系幹細胞(以下,DDPSCs)及び永久歯歯髄組織由来間葉系幹細胞(以下,PDPSCs)の特性を比較したところ,コロニー形成能,細胞増殖能,遺伝子発現,細胞表面抗原の発現において両者は類似していた。一方,骨芽細胞への分化能に関してはDDPSCs の方が高い結果を示した。これらのことより,DDPSCs とPDPSCs は細胞増殖能,コロニー形成能,多分化能等多くの類似した特性を有し,いずれも再生医療の細胞源として有用であることが明らかになった。またDPPSCs は骨再生等の臨床応用により適していることが示唆された。
  • 佐々木 由希子, 倉重 圭史, 齊藤 正人, 安彦 善裕, 坂倉 康則
    2014 年 52 巻 3 号 p. 425-432
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2015/06/27
    ジャーナル フリー
    これまで,歯胚発生過程において,エピジェネティクス関連ヒストン脱アセチル化酵素(HDACs)がグルコース代謝関連分子の発現に関与しているという報告はない。本研究では,マウスの下顎第一臼歯歯胚の発育過程において,HDACs およびグルコーストランスポーター(GLUTs)の局在を免疫組織染色にて,グリコーゲンの蓄積をPAS 染色にて観察し,HDACs とグルコース代謝との関連を検証した。1 .帽状期において,HDAC3 およびGLUT1 は歯胚周囲間葉組織に部位特異的な陽性像を認めた。また,HDAC5, GLUT3 およびPAS 染色は,それぞれ歯堤および歯胚周囲間葉組織に陽性反応を認めた。2 .鐘状期初期において,HDAC3 およびGLUT1 は星状網および歯胚周囲間葉組織に部位特異的な陽性像を認めた。HDAC5, GLUT3 およびPAS 染色は,歯堤および歯胚周囲間葉組織に同様の陽性反応を認めた。3 .鐘状期後期において,HDAC3 およびGLUT1 は星状網歯堤側に部位特異的な陽性像を認めた。またGLUT3 およびPAS 染色は,星状網歯乳頭側に面する中間層細胞に陽性反応を示したが,HDAC5 は消失していた。以上より,歯胚発生過程において,グルコース代謝とエピジェネティクスが関連している可能性が示唆された。
  • 藤井 美樹, 名和 弘幸, 加藤 孝明, 富家 麻美, 堀部 森崇, 有川 智子, 福田 理
    2014 年 52 巻 3 号 p. 433-439
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2015/06/27
    ジャーナル フリー
    幼児期の齲蝕予防には家庭での保護者による仕上げみがき(介助みがき)は不可欠であるが,自閉症児は様々な理由により仕上げみがきが困難であるとされている。そこで本研究では,その実態を明らかにするため,保護者へのアンケートにより4~5 歳の就学前自閉症児40 名と定型発達児56 名の歯みがき習慣,仕上げみがき時の不協力行動の表出状態を調査し,両群間の相違について検討し,以下の結果を得た。1 .自閉症児の歯みがきでは,すべての自閉症児の保護者が仕上げみがきを行っていた。2 .保護者が仕上げみがきを「困難」と回答したものの割合は,自閉症児群45.0%,定型発達児群10.6%と仕上げみがきが困難なものは自閉症児に多く定型発達児と比較して有意に高い割合を示した(p <0.01)。3 .仕上げみがき時に表出される不協力行動があるものの割合は,自閉症児95.0%,定型発達児44.7%と自閉症児が有意に高い割合を示した(p<0.01)。4 .仕上げみがき時の不協力行動別の表出者率では「歯ブラシを噛んでしまう」「歯ブラシを入れさせてくれない」「泣いたり暴れたりして抵抗する」の項目で,自閉症児が定型発達児と比較して有意に高い割合を示した(p<0.01)。5 .自閉症児における仕上げみがきの困難群は,容易群に比べて「泣いたり暴れたりして抵抗する」ものの割合が有意に高かった(p<0.01)。
臨床
  • 増田 啓次, 中村 志保, 山口 登, 小笠原 貴子, 山座 治義, 西垣 奏一郎, 柳田 憲一, 廣藤 雄太, 野中 和明
    2014 年 52 巻 3 号 p. 440-447
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2015/06/27
    ジャーナル フリー
    Dandy-Walker variant はDandy-Walker malformation の軽症型で,小脳虫部の発生異常と第四脳室の嚢胞状拡張を主な特徴とする。我々はDandy-Walker variant の患児に歯の形成不全症の合併が疑われた1 例を経験した。患児は初診時年齢10 歳5 か月の男児で,歯の実質欠損を伴わない6の根尖性歯周炎およびこれと関連する右側下顎骨周囲膿瘍の精査加療を目的に当科を紹介受診した。Dandy-Walker variant に合併する重度の精神発達遅滞のため診療に協力が得られず,精査加療は全身麻酔下にて行った。デンタルエックス線検査により6を含めた永久歯多数に細い歯根,希薄な象牙質および歯髄腔の拡大を認めたため,歯質の脆弱化をきたす何らかの歯の形成不全症が強く疑われた。しかし歯の色調・外観の異常,破折,著明な咬耗・摩耗はいずれも認めず確定診断には至らなかった。6は脆弱な歯質に生じた微細な亀裂から徐々に歯髄感染を起こし,根尖性歯周炎から膿瘍形成に至ったものと推定された。治療として感染根管処置,既製冠による歯冠修復および根尖掻爬を行った。その後,6にも同様の症状が出現したため,全身麻酔下にて感染根管処置,既製冠による歯冠修復および根尖掻爬を行った。同時に症状のない66については予防的に既製冠装着による歯冠保護を行った。現在のところ,これらの処置歯の経過は良好である。しかし,歯質の脆弱化が疑われる他の永久歯にも同様の歯髄感染が生じる可能性がある。今後も定期的な口腔衛生指導を行いながら注意深く経過観察する方針である。
  • 長谷川 智一, 赤澤 友基, 永井 宏和, 北村 尚正, 石丸 直澄, 上田 公子, 中川 弘, 郡 由紀子, 山本 愛美, 岩本 勉
    2014 年 52 巻 3 号 p. 448-453
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2015/06/27
    ジャーナル フリー
    血管腫は血管の増殖を特徴とする良性腫瘍であり,小児の顎口腔領域における良性腫瘍のなかでは比較的多く,軟組織腫瘍の中で最も多い。顎口腔領域に発生する本腫瘍は舌,口唇,歯肉,頬粘膜に好発し,口蓋に発生することは稀である。今回,われわれは,2 歳10 か月男児の口蓋に発生した血管腫を経験したので,その概要を報告する。患児は初診の約4 か月前に下顎部を打撲したため近医歯科を受診した。その際,上顎両側乳中切歯口蓋側歯肉の腫瘤を指摘され,単純性歯肉炎の診断下にプラークコントロールを受けていたが改善しないため当科を紹介された。初診時,切歯乳頭から上顎両側乳中切歯口蓋側歯肉にかけて大きさ10×8×5mm類円形で境界明瞭,暗赤色,表面不整,弾性軟の腫瘤を認め,上顎腫瘍と診断した。局所麻酔下に腫瘍切除術を施行した。病理組織学的診断は毛細血管腫であった。今後,再発に注意しながら,少なくとも永久歯交換まで厳重な経過観察が必要と考えられた。
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