小児歯科学雑誌
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54 巻 , 1 号
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総説
  • 岩崎 智憲
    2016 年 54 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2016/02/25
    公開日: 2017/03/16
    ジャーナル フリー

    小児期の呼吸が顎顔面形態におよぼす影響について数多くの研究が行われてきた。しかし,上気道通気状態の適切な評価が困難なためコンセンサスは得られていない。そこで我々はコーンビームエックス線CT データを用いて上気道3 次元モデルを構築し,空気の流れを機能的に評価する流体解析を用いた精度の高い上気道通気状態の解析方法を確立した。その結果,ClassⅢ小児の咽頭気道形態では咽頭部の長径,幅径が大きく,低位舌を認めることを示す一方,ClassⅡ小児では上気道通気障害が長顔傾向の原因になり得ること,また,上気道の中でも鼻腔,上咽頭,口腔咽頭,下咽頭など様々な部分がその原因部位になることを明らかにした。さらに上顎骨急速拡大により鼻腔通気状態が改善すること,咽頭気道の気道体積が増大すること,鼻腔通気状態の改善に伴い低位舌が改善することを明らかにし,上顎骨急速拡大が上気道通気障害の改善におよぼすメカニズムを明らかにした。 今後,有病率が2%と高頻度で,医科的対応法による治療成績が70%程度とされる小児閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対して,その有効性が指摘されている上顎骨急速拡大や下顎前方誘導などの歯科的対応法を応用した治療効果のエビデンスを発信し,小児歯科からの新たな社会貢献に努めたい。

原著
  • 木村 えり, 高野 博子, 井上 美津子, 菊池 元宏
    2016 年 54 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2016/02/25
    公開日: 2017/03/16
    ジャーナル フリー

    小児歯科専門医が常勤する一般歯科診療所を受診した0~1 歳の低年齢児464 名を対象とし,受診目的について実態を調査したところ,以下の結果を得た。

    1 .対象児の初診時月齢について,男児では「12~15 か月」が,女児では「16~19 か月」が最も多かった。

    2 .対象児の月齢による人数の増減について,男児では「4~7 か月」から「12~15 か月」で,女児では「8 ~11 か月」から「12~15 か月」で有意に患者数が増加した。

    3 .受診目的について,「齲蝕」が最も多く全体の約35%を,次いで「検診・予防」が約32%を,次いで「外傷」が約15%を占めた。

    4 .月齢別受診目的の割合について,「齲蝕」では「12~15 か月」の割合が,「検診・予防」では「16~19 か月」の割合が,「外傷」では「8~11 か月」の割合が有意に多かった。

    5 .兄弟の有無別受診目的の割合について,「齲蝕」では「兄弟無」の割合が,「検診・予防」では「兄弟有」の割合が有意に多かった。

    6 .兄弟の年齢差別受診目的の割合について,「齲蝕」では「3 歳差未満」の割合が,「外傷」では「1 歳差未満」および「2 歳差未満」の割合が有意に多かった。

    以上のように,0~1 歳児の受診目的は多岐にわたり,また,同じ年齢内であっても月齢によりその割合が異なる場合があることが明らかとなった。また,兄弟の有無や年齢差などの影響を受けることが明らかとなった。

  • 田中 光郎
    2016 年 54 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 2016/02/25
    公開日: 2017/03/16
    ジャーナル フリー

    歯科チェックアップは個々の小児の状況に応じた清掃指導,食事指導,専門的な機械的歯面清掃,フッ化物塗布などの予防的指導や処置,バイトウイングX 線検査による隣接面齲蝕の早期発見などを行うオーダーメードの歯科健康診査であり,大人数を対象として一律に行う「スクリーニング」に比較して,歯科疾患を「予防」する観点からは大変優れたシステムである。しかしながら,我が国では諸外国に比べてその価値が一般に認知されていない。本研究では,定期的歯科チェックアップについて海外の国々との比較において我が国の現状を把握し,考察することを目的として,アンケート調査を行った。 その結果,我が国におけるチェックアップ受診率は44%で他の国々の半数以下で突出して低い結果であり,不受診の主な理由は「齲蝕がない」「経済的負担が大きい」「時間的余裕がない」などであった。歯科のチェックアップのために学校を休ませた経験についての質問では我が国では98%が一度もないと回答しており,これも突出して多かった。我が国では欧米と比較して,定期的な歯科チェックアップの価値が評価されておらず,社会的,経済的な背景も相俟って実際の行動に結びついていないものと思われる。小児の口腔衛生状態の更なる改善は将来の成人の口腔衛生状態改善にも資するものであり,欧米並みに受診率を上げることは我が国の口腔保健向上の観点から今後取り組むべき課題である。

  • 宮原 那実, 岡 暁子, 阿部 亜美, 逢坂 洋輔, 立岡 迪子, 柏村 晴子, 馬場 篤子, 尾崎 正雄
    2016 年 54 巻 1 号 p. 22-30
    発行日: 2016/02/25
    公開日: 2017/03/16
    ジャーナル フリー

    近年,小児の齲蝕罹患率の低下と軽症化傾向が明らかとなってきている。歯科医院を受診する理由も齲蝕だけでなく予防,歯列不正や口腔外傷が増え,我々小児歯科医には多様なニーズへの対応が求められている。 今回,我々は2010~2013 年まで歯科大学総合病院小児歯科外来に来院した初診患者の実態調査を行い,更に以前行われた同調査と比較した。その結果,齲蝕・予防・歯列不正・外傷といった主訴の初診来院時年齢には,特徴があること,齲蝕を主訴で来院する場合は,地域診療所などからの紹介が多く,低年齢児・非協力児に対する処置依頼が殆どであることが明らかとなった。また,過去の調査との比較から,近年の初診来院時年齢には,低年齢時と就学時の2 つのピークがあること,齲蝕を主訴とする者は減少傾向にあること,歯列不正や外傷といった主訴は増加傾向にあることが分かった。 小児歯科を専門とする大学診療科における主訴の実態調査は,その時代の小児の口腔疾患を表す一方で,低年齢児・非協力児の齲蝕処置や外科的処置といった小児歯科専門医療機関に対する地域歯科診療所からのニーズも表すという2 つの側面があることが分かった。

  • 大塚 愛美, 篠原 左知緒, 栗山 千裕, 松山 真理子, 熊谷 大樹, 菊池 元宏, 朝田 芳信
    2016 年 54 巻 1 号 p. 31-39
    発行日: 2016/02/25
    公開日: 2017/03/16
    ジャーナル フリー

    著者らは小児歯科臨床における小児患者の行動評価を目的に,3 歳から6 歳の健常児224 名を対象に,主に年齢と黒須らによる外部行動表出の評価を多変量解析等を用いて比較検討した結果,以下の結論を得た。

    1 .年齢と黒須項目との重回帰分析について,有力な説明変数を求めた結果,【大声で泣く】,【足をばたつかせる】,【小声で泣く】,【手を動かす】,【体を左右に動かす】が抽出された。

    2 .主成分分析の結果について,3 歳児の第1 主成分は,全ての黒須項目の影響を反映した指標で,全体の約4 割を占めた。第2 主成分は,【目・顔】と【手】が相反する指標と考えられた。 4 歳児の第1 主成分は,全ての黒須項目の影響を反映した指標で,全体の約34%を占めた。第2 主成分は,【目・顔】と【手】が相反する指標と考えられた。第3 主成分は,【目・顔】と【体幹】が相反する指標と考えられた。 5 歳児の第1 主成分は,全ての黒須項目の影響を反映した指標で,全体の約5 割を占めた。第2 主成分は,【足】と【体幹】が同一グループと考えられ,【目・顔】と【足】および【体幹】グループが相反する指標と考えられた。 6 歳児の第1 主成分は,全ての黒須項目の影響を反映した指標で,全体の約4 割を占めた。第2 主成分は,【足】と【体幹】が相反する指標と考えられた。

    以上を考察した結果,外部行動表出は必ずしも加齢に伴い方向性をもって出現するのではない事が示唆された。また,同じ外部行動表出でも年齢によって意味が異なる可能性があることが示唆された。

臨床
  • 高橋 沙織, 小平 裕恵, 井出 正道, 朝田 芳信
    2016 年 54 巻 1 号 p. 40-49
    発行日: 2016/02/25
    公開日: 2017/03/16
    ジャーナル フリー

    小児歯科臨床の場で,真性乳歯過剰歯に遭遇することは稀であるが,今回2 歯の真性乳歯過剰歯を有し,真性乳歯過剰歯が存在した同部位の上顎左側側切歯部に側切歯と過剰歯の双生歯もみられ,さらに上顎右側中切歯の口蓋側に埋伏過剰歯が認められた症例を経験したのでその治療経過について報告する。 患児は初診時年齢1 歳10 か月の男児で,上顎乳前歯部歯列上に2 歯の過剰歯が存在していた。上顎乳前歯部の叢生と上顎乳切歯の早期接触がみられたため,2 歳6 か月時に過剰歯を抜去した。その後経過観察を続け,混合歯列期に上顎右側中切歯の口蓋側に埋伏過剰歯が発見されたため,7 歳8 か月時に摘出した。また,上顎左側側切歯と過剰歯の双生歯も認められた。上顎歯列に側方歯群のspace 不足がみられ,双生歯は形態修正を行い保存し,上顎両側第一小臼歯を便宜抜去して良好な永久歯列へと誘導することができた。

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