小児歯科学雑誌
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55 巻 , 1 号
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原著
  • 橋口 千種, 塩野 康裕, 森川 和政, 藤田 優子, 甲斐 仁美, 牧 憲司
    2017 年 55 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2017/02/25
    公開日: 2018/02/25
    ジャーナル フリー

    口腔周囲の力が,歯列の形成や咬合・嚥下等にどのような影響を及ぼすかを検討する目的で,口唇閉鎖力とその他の力の成長や関係性の検討を行った。正常咬合とされる8 歳から25 歳の,計45 名を対象とした。多方位口唇閉鎖測定装置を用いて口唇閉鎖力,簡易型舌圧測定装置を用いて舌圧・頬圧,スメドレー式握力計を用いて握力を測定した。8 歳前後の児童においては11 歳以上に比較して,8 つのチャンネルのうち下口唇の閉鎖力が相対的に有意に強い結果となった。また,口唇閉鎖力とその他の力の相関について,舌の口蓋への押し当てる力は,成人になるに従い正の相関が強くなった。頬の歯列方向への力や,握力との間には全年齢群において正の相関を認めた。口唇閉鎖機能は,低年齢児では下口唇の力が中心となって機能し,発達とともに口唇全体が協調した運動を行うようになるという見解が得られた。また,口唇閉鎖力と舌圧・頬圧には相関があり,それぞれが共同して口腔機能を形成することが示唆された。

  • 髙橋 摩理, 髙橋 真朗, 弘中 祥司, 内海 明美, 大岡 貴史
    2017 年 55 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2017/02/25
    公開日: 2018/02/25
    ジャーナル フリー

    幼児の食事の問題は自閉症スペクトラム障害(以下,ASD)児のみならず,定型発達している小児にとっても重大な関心ごとである。そこで,幼児の食事に関してASD と保育園児(以下,園児)を比較検討し,ASD の食事に関す問題を明らかにすることを目的に本研究を行った。 対象は食事相談を利用したASD 児61 名と園児55 名である。ASD 児の相談用紙,園児のアンケート用紙の内容について比較検討を行った。園児の74.5%が食事に関して気になる項目があると回答していた。 保護者の気になる項目は,ASD 児,園児とも「噛まない」,「詰め込む」など摂食機能の項目は少なく,「好き嫌い」,「時間がかかる」など食行動への不安が高い傾向がみられた。これらは空腹感,食への意欲との関連も考えられ,幼児期の食事に関する問題は,生活全般を考えて対応する必要があると思われた。園児においても食べ方で気になる項目があるケースは少なくなかったが,その内訳には差がみられ,ASD 児で深刻であると推察された。ASD では疾病特性が食べ方の問題に関わっていると推察され,具体的な対応の必要性が示唆された。

  • 田村 文誉, 木本 茂成, 山崎 要一
    2017 年 55 巻 1 号 p. 18-28
    発行日: 2017/02/25
    公開日: 2018/02/25
    ジャーナル フリー

    1 .目的 本調査の目的は,小児における食の問題を明らかにし,それに対して歯科医師がなすべき役割を模索することである。

    2 .方法 日本歯科医学会重点研究委員会推薦の幼稚園,保育園に通園している未就学児の保護者1,031 人を対象に,子どもの食の問題についてアンケート調査を行い,844 人からの回答を得た(回収率81.9%)。分析にはχ二乗検定およびロジスティック回帰分析を用いて,保護者の子どもに対する食事の心配事に関するリスク因子を評価した。

    3 .結果 「離乳期にトラブルがあった」(Odds ratio[OR]=3.18, P<0.001),「子どもの食事量が足りない」(OR= 8.48,P<0.001)および「大人と同じ食べ物を与えていない」(OR=2.46, p=0.03,)という項目で,保護者の子どもの食に対する心配事のリスクが上昇した。

    4 .考察 本研究結果より,保護者が感じている子どもの食の問題には背景因子があり,栄養に関わる食事量や,摂食嚥下機能の獲得に関わる摂取食事形態が関連していることがうかがわれた。歯科医師は,社会における育児支援の一環として食の問題に対応すべきであるが,そのためには育児,保育に関する知識や支援方法の習得が必要と考えられた。

  • 力武 美保子, 岡 暁子, 板家 智, 逢坂 洋輔, 加藤 真由美, 加藤 陽子, 石井 香, 馬場 篤子, 尾崎 正雄
    2017 年 55 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2017/02/25
    公開日: 2018/02/25
    ジャーナル フリー

    我々は,年齢や上顎中切歯形成量における上顎正中埋伏過剰歯の位置について歯科用コーンビームCT(CBCT)画像による計測を行い,レーダーチャートを用いた過剰歯の位置の評価を提案してきた。このレーダーチャートの有用性を検証することを目的として,本研究では新たな283 名を対象とし,CBCT 画像を用いて逆生過剰歯の埋伏位置を計測し検討した。 上顎骨表面および歯槽頂から過剰歯までの距離は(Deepness, Height),6 歳以降およびNolla の分類Class 6 以降に徐々に大きくなり,今回の新たな対象は,これまでの知見と同じ傾向を示すことが確認された。また,各計測値を旧レーダーチャートにプロットし評価を行ったところ,各年齢における過剰歯から中切歯歯根形成端までの距離(Apex)の値について再検討が必要であることが明らかとなった。そこで,新レーダーチャートを作成し各過剰歯のプロットを行い,チャートの値を再決定した。本研究にて作成された新レーダーチャートは,過剰歯の3 次元的位置の特性を簡便に知ることができ,摘出の際のリスクファクターを客観的に評価できる有用なツールとなり得ることが示唆された。

  • 丸谷 由里子, 及川 利佳子, 齊藤 桂子, 田中 光郎
    2017 年 55 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 2017/02/25
    公開日: 2018/02/25
    ジャーナル フリー

    少子化時代における大学病院小児歯科の果たすべき役割を考えるうえで,初診患者の動向は重要な示唆を与えるものと考えられる。そこで,2011 年度から2015 年度までの5 年間に本学小児歯科外来を受診した初診患者を対象に実態調査を行った。また,10 年前に当科で行った同様の調査と比較検討し,以下の結果を得た。

    1 .初診患者数は1,899 人で,前回調査と比較し,増加していた。特に1 歳児,2 歳児の患者数が著しく増加していた。

    2 .初診患者の居住地域は市内が多く,約半数を占めていた。

    3 .紹介患者の総数は912 人で,全初診患者の48.0%であり,前回調査よりも著しく増加していた。紹介元は開業医が半数で,その主訴は齲蝕治療が最も多かった。

    4 .主訴は齲蝕処置が31.7%と最多であり,次いで診査希望17.0%,外傷11.0%,歯列咬合10.0%だった。 前回調査と比較すると,診査希望,予防が増加していた。

    5 .初診患者の一人平均齲蝕歯数(乳歯)は3.25 で,平成23 年歯科疾患実態調査1.40 と比較し,高い値であり,特に,6 歳以下で大きく上回っていた。

    本学小児歯科が果たしていくべき役割は,医科との綿密な連携をとり様々な全身疾患を持つ小児に対応していくこと,高次医療機関として地域医療のニーズに応えること,小児歯科の専門性を地域に発信し,小児の口腔内の健全な発育に寄与していくことであると考えられた。

  • 酒井 暢世, 鈴木 冴沙, 鈴木 彩花, 藤原 恵, 高原 梢, 森本 直美, 菊池 元宏, 朝田 芳信
    2017 年 55 巻 1 号 p. 44-50
    発行日: 2017/02/25
    公開日: 2018/02/25
    ジャーナル フリー

    上唇小帯の形態やその推移を明らかにすることは,上唇小帯の形態および付着位置異常の発症を予測し,小帯異常が誘因となる口腔疾病の予防や治療への早期対応が可能となる点で臨床的な意義が大きい。そこで,本学歯学部附属病院小児歯科外来を受診した0 歳から6 歳の健常男女児174 名を対象とし,上唇小帯の形態と付着位置をもとにした野坂らの分類を行った。型別の出現数は男女ともに正常型の出現数が最も多く,正常型以外の出現数は男児はⅡ型が,女児はⅠ型とⅡ型が多かった。また,型別の出現率は男女ともに正常型が最も高かったものの,その割合に男女差は認めず,男女合算の型別出現率は正常型が69.5%,次いでⅡ型の10.9%であった。年齢別およびタイプ別出現数は3 歳児の正常型および1 歳児の異常型が有意に多く,3 歳児の異常型および1 歳児の正常型が有意に少なかった。 この1 歳から3 歳までの時期は顔面頭蓋の高さの発育の高い時期と一致していた。上顎歯槽骨の高さは骨の添加により増加するとされており,上唇小帯の付着部位が低位に移動したことが,今回の結果の理由であることが示唆された。また,1 歳児の正常型が有意に少なく,3 歳児の正常型が有意に多かった結果をふまえると,0~2 歳に上唇小帯付着位置や形態が異常と判定されても,哺乳や摂食などの健康にかかわる問題が生じない限り,経過観察が妥当であることが示唆された。

  • 蒔苗 剛, 下山 佑, 松本 弘紀, 木村 重信, 田中 光郎
    2017 年 55 巻 1 号 p. 51-60
    発行日: 2017/02/25
    公開日: 2018/02/25
    ジャーナル フリー

    ミュータンスレンサ球菌(MS)の小児プラークへの定着状況および定着量と齲蝕罹患状況との関連性を明らかにすることを目的に,菌種特異的PCR 法(c­PCR)および定量的PCR 法(q­PCR)を併用した解析を行った。さらに,口腔レンサ球菌特異的プライマーを開発し,プラーク細菌中の口腔レンサ球菌,S. mutans の存在比率についても検討した。その結果,c­PCR とq­PCR を併用することで98 名の被験者はS. mutanshigh­S. sobrinus群,S. mutanshigh­S. sobrinus群,S. mutanslow­S. sobrinus群,S. mutans­S. sobrinus群の 4 群に大別された。4 群中S. mutanshigh­S. sobrinus群でプラーク全細菌中の口腔レンサ球菌,S. mutans の構成比率が最も高く,平均df 歯率は他群と比較して有意に高かった。c­PCR でS. mutans のみ陽性の群は,S. mutanshigh­S. sobrinus群とS. mutanslow­S. sobrinus群に細分され,前者は後者と比較して有意に高いdf 歯率を示し,S. mutans 量とdf 歯率とは有意の正の相関を示した。一方,S. mutanslow­S. sobrinus群ではS. mutans­S. sobrinus群と比較してdf 歯率に有意差は認められなかった。以上の成績より,小児プラーク中へのMS,特にS. mutans の定着量の増加が小児齲蝕発症に繋がる重要な要因であることが強く示唆された。小児プラーク中のMS の定量解析は,小児齲蝕発症機序の詳細解明への手がかりを与えるとともに,小児齲蝕のリスク診断のための有効な手段となり得る可能性が示唆された。

臨床
  • 唐木 隆史, 太田 増美, 中村 由美子, 朝田 芳信
    2017 年 55 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 2017/02/25
    公開日: 2018/02/25
    ジャーナル フリー

    神経芽腫は腎臓の上にある副腎や頸から骨盤までの脊椎の両側にある交感神経節から発生し,白血病,脳腫瘍に次いで発症率が高い小児悪性腫瘍である。今回我々は,神経芽腫治療に伴い歯の形成障害を生じた11 歳11 か月の女児の1 例を経験したので報告する。患児は3 歳10 か月時に神経芽腫(stageⅣ)と診断され3 歳11 か月時から4 歳3 か月時に化学療法,手術療法,放射線療法(左側頸部照射10 Gy,全身照射10 Gy),造血幹細胞移植療法が施行され,6 歳2 か月時まで13­cis­レチノイン酸内服が行われた。 今回,口腔内所見より,上顎両側第一大臼歯,上顎両側第二乳臼歯,上顎両側第一小臼歯,下顎右側第二小臼歯の齲蝕,上顎両側中切歯の唇側傾斜,上下顎前歯部に叢生が認められた。エックス線所見より上下顎両側第二大臼歯,上顎左側第二小臼歯ならびに下顎両側第二小臼歯に矮小歯,全顎的な歯根の形成不全,上顎右側第二小臼歯の歯胚欠如,下顎左側第二大臼歯による下顎左側第一大臼歯遠心歯頸部吸収が認められた。これらの著しい歯の形成障害や顎骨の発育異常は,化学療法,放射線療法,造血幹細胞移植療法の併用により誘発された可能性が示唆された。

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