日本体育学会大会予稿集
Online ISSN : 2424-1946
ISSN-L : 2424-1946
第67回(2016)
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シンポジウム
  • 鈴木 和弘
    p. 56_3-57
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     幼少年期に基本的生活習慣を身に付け、健康・体力の向上を図ることは極めて重要であるが、子どもの運動時間の格差拡大、就床時刻や食習慣の乱れ、不定愁訴等の問題が指摘されている。これらの諸課題を解決するためには、幼児期や児童期からの取り組みが何より重要であると言われている。また、現在日本の子どもの体力は回復傾向にあるものの、そのピークを示した昭和60年に比べ全体として低い水準に止まっている(文部科学省、2014)。2016年のスポーツ基本計画では、「今後10年以内に子どもの体力が昭和60年頃の水準を上回る」ことが政策目標として、また2017年の第2期教育振興基本計画では、「今後5年間で子どもの基本的生活習慣の習得や生活習慣づくりを推進すること」が閣議決定されている。

     子どもの生活は、おもに保幼園や学校を中心に展開されている(大澤、2004)。本シンポジウムでは、保幼園や学校で取り組む身体活動や運動を促進するための方法等を述べる。さらに、活動の実践事例を取り上げ、その成果の一端を紹介する。この事例を通して、保幼園、学校での継続的な取り組みの在り方を考えていきたい。

  • 岡田 真平
    p. 57
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     子どもの身体活動・運動量の減少と、その背景にある日常生活における利便性の向上、都市化・過疎化・少子化等に伴ういわゆる三間(時間、空間、仲間)不足等の課題が指摘されて久しい。近年、子どもの成育環境の改善に向けた提言(2008、2013)や子どもを元気にする運動・スポーツに関する提言(2008、2011)が日本学術会議から、子ども・子育てビジョン(2010)が内閣府から、幼児期運動指針(2012)が文部科学省からそれぞれ出され、国全体としては、子どもの身体活動・運動の促進に関わる大きな方向性が示されつつある。

     一方、地域(特に地方部)では、直面する子どもの減少問題に対して「この地で生まれた子どもを元気に育てる」ことが大きな課題であり、特有の実情をふまえ独自の資源を生かしつつ、母子保健、子育て支援、教育、地域振興等、関連する様々な分野が連携して、継ぎ目なく子どもの育ちを支える仕組みづくりが模索されている。

     本シンポジウムでは、地域(長野県東御市等)に関わる立場から、子どもの身体活動・運動の実態や取り巻く環境の現状、及び身体活動・運動を促進するための具体的な取り組みの内容や展望・課題等を紹介する。

専門領域企画(08) 測定評価
シンポジウム
  • 小林 秀紹
    p. 58_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     競技選手やチームのパフォーマンス向上において、データ活用の重要性はますます高まっている。試合中の即時的フィードバックによる戦略決定、映像の分析結果を選手・コーチ間で共有することによる課題や目標の明確化、データ分析によるパフォーマンスや成績の予測、個々人に特化したフィードバック等、いわゆる“使えるデータ分析結果”として活用されている。これらは先進的な取り組みがすでに実践されている一方、多くの指導現場に普及しているとは言い難い。撮影や測定によるデータ収集を行うコーチは少なくないが、フィードバックのための視点や工夫すべき点が見いだせていないことも多い。映像・データ分析の目的は意思決定のための重要な情報を得るためである。すなわち、何らかの機器やテスト等の手段による測定と、より重要なのはそのフォローアップとしての評価が一連のプログラムとして成立しなければツールとして機能しない。本シンポジウムでは、選手、チーム、ゲームの視座から、パフォーマンス向上のために行われている映像・データ分析等フィードバックに関する実践についてご紹介頂き、今後の競技スポーツに必要なフィードバックの視点を考えていきたい。

  • 小林 秀紹
    p. 58_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     IoTの波及のなかで、センシングやフィードバックの役割を有するデバイスの進化と、ニューラルネットワーク等の機械学習に代表されるデータ分析の実用的発展は、現在のスポーツ現場に様々な恩恵をもたらしている。これらのテクノロジーの発展とともに測定評価の分野は新しい時代を迎えている。競技選手やチームの指導者における重要な役割の一つに、フィードバック情報の提供がある。フィードバックには内的フィードバックと外的フィードバック、後者はさらに結果の知識(KR)とパフォーマンスの知識(KP)に分類される。いずれの分類においてもフィードバックは情報の系であるため、効果的なフィードバックとして選手やチームに活かされるかどうかはその情報の活かし方に依存する。テクノロジーの進歩はいかなるフィードバック情報を産み出すことができるのか。その一方で、テクノロジーに依存するだけでは効果的なフィードバックに繋がらない。トレーニングやゲームの戦略等それぞれの場面において有効なフィードバック情報の形とタイミングが存在する。フィードバックに有効な情報の形とタイミングを中心に、映像・データ分析において考慮すべき観点について確認したい。

  • 船渡 和男
    p. 58_3-59
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     競技パフォーマンス向上のためには、測定機器を用いて動きやフィットネスなどのデータを取得し、分析・評価して最終的には選手やコーチへフィードバック(FB)を行う。測定機器やデータの分析はウエアラブルデバイスや小型機器の開発や正確性が改善され、動きを拘束しないで各種データが精度よく取得できるようになった。一方取得されたデータをどのように評価してFBを行うかは競技力向上支援(サポート)にとって重要である。ここで不可欠になるのが、今後どのようなトレーニングを介入して何をどう改善すべきか、という示唆的な提言である。

     一般的にサポートは、基本的(CT)・専門的(CS)運動能力、競技の特異性を考慮した動き評価(TS)そして競技会での動きの評価(PS)から構成される。CT・CSは今後の基礎的部分な改善点を示唆する予測的な要素が多々含まれるのに対して、TSやPSでは即時的なデータが求められる。有効なFBでは新たなサポート課題が浮き彫りになったり、研究課題が生まれたりする。シンポジウムでは演者らが実施している体操競技やJISSや東京都での医・科学サポート事業を紹介して、有効なサポートについて考えてみたい。

  • 市村 志朗
    p. 59_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     映像・データ分析によるフィードバックサポート活動は、トレーニング期と大会期で2つに分類できます。トレーニング期には、主に、選手・チームのパフォーマンス向上を目的とし、事前にコーチと打ち合わせした内容を基に、収集映像の分類を行い、分類された映像と映像分類によって収集された数量データによって選手達のパフォーマンスや戦術理解度を評価し、次のトレーニング課題へと繋げます。大会期には、自チームのゲームパフォーマンス評価と対戦チームのスカウティングを行います。自チームのパフォーマンス評価では、トレーニング期と同様な手法で、次の課題を明らかにします。対戦チームのスカウティングでは、該当する数試合の試合映像をゲーム局面別に分類し、それぞれのゲーム局面映像とそれに対応した数量データを用いて、特徴的なプレーを抽出し、コーチの戦略決定のための資料を作成します。

     重要な事は、コーチおよび選手との十分なコミュニケーションであります。分析者は、コーチが何を知りたく、何を明らかにしたいのかを明確に理解し、選手がこれら分析結果をどのように理解しているかを知っていることが「活きるデータ」を創る基礎となります。

  • 河部 誠一
    p. 59_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     バレーボールのトップレベルでは、イタリア、データプロジェクト社が開発したバレーボールの情報収集・統計分析ソフト、「データバレー」が広く使われている。データバレーの特徴は、高い統計分析力に加え、最新バージョンでデータバレーに統合される予定の「データビデオ」というソフトのビデオ分析機能が、統計分析とリンクされている点にある。もともと試合に勝つための「戦術ツール」として開発され、対戦相手を分析する目的で使われ続けてきた。野球やアメリカンフットボールのようにゲームに中断が存在するバレーボールにおいても、データは勝利にそった適切な分析がなされ、それが選手の適切な判断支援につながれば、勝率を高める有力な手段となりうる。また、選手自身が能動的にデータやビデオを確認する意識の高さがチームの強さのバロメータの一つとなってきている。そのため、トップレベルのチームでは、自チームの練習や練習試合をデータバレーで分析し、選手やチームの課題抽出や強化計画へのフィードバックを目的とした「強化ツール」、さらには選手のゲームインテリジェンスと意識を高めるための「育成ツール」としての役割が注目されるようになってきている。

統計・測定評価セミナー
  • 佐藤 進
    p. 60
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     質問紙を用いたアンケート調査は、高価な器具や施設等を必要としないため、多くの研究者や様々な現場で実施されているが、質問紙により得た回答を解析可能な状態にするまでには幾つかの段階を踏む必要がある。すなわち、質問内容のコード化(回答を数値化する際の約束事の決定)、エクセルシートへのデータ入力(源データの作成)、解析用データの作成(解析に必要な変数への加工・変換・合成)などであり、いわば、アンケート調査データを処理する際の“下ごしらえ”と言える。これらの作業には決まった形式はなく、研究者に任されるが、この“下ごしらえ”の仕方が、その後の“調理”のしやすさや料理の出来栄えに影響することも少なくない。経験の不足から、得られた情報や扱うことができる解析手法が結果的に制限されてしまう例も散見される。今回の統計・測定評価セミナーでは、例を用いながら、これらの工程における具体的な方法について皆さんと情報交換しながら考えていきたい。

     

    ※今大会より統計・測定評価セミナーの後に同会場にて統計相談コーナーを開催します。本セミナーにおいての質問事項やそれ以外の統計・測定評価に関する相談も受け付けます。

専門領域企画(09) 体育方法
(日本体操学会共催企画)
キーノートレクチャー&ワークショップ
  • 「組(立)体操」問題の事例から見える未来
    長谷川 聖修, 三宅 良輔
    p. 61_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     「組(立)体操」の安全性が問われている。指導実践において安全面を充分に配慮することに異論はない。一方で、危ないものを一切禁止・排除しようとする風潮は極端な論理と考える。そこで、体育における身体活動に伴うリスクへのあり方について論議を深めることで、体育の未来像を具体的に模索する。柔道や組(立)体操におけるリスクを社会的な話題にした「火付け役」とも言える内田良氏には、これまで発信されてきた情報、これに対するネット上などでの様々な反応や各種行政的な対応などを総括していただき、体育における「リスク」について存分に語っていただく。さらに、組(立)体操の安全性について、多数のメディアで具体的な提言をされてきた荒木達雄氏には、実際に実技を交えながら、今回の問題の本質について問うてもらう。歴史的な経緯や身体的交流を深める教育的な意義について理解を深めた上で、安全で効果的な指導方法を提示していただく。加えて、これからの新たな組体操・組立体操の具体的なプログラムを参加者とともに体験する。ワークショップには、運動着・裸足での参加が望ましいが、スーツ姿のネクタイを取り、そのまま参加も可である(見学可)。

◆キーノートレクチャー◆
  • リスク研究の視点から
    内田 良
    p. 61_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     リスク研究において、ゼロリスクは神話である。リスク研究の使命は、ゼロリスクを目指すことではなく、さまざまな活動のリスクを比較検討することから、とくにリスクが高いものについてそのリスクを低減していくことにある。スポーツ事故のなかでこの数年話題となった組(立)体操や柔道もまたそのような視点からリスクが検討されるべきであり、「安全な組(立)体操」「安全な柔道」こそが最終的な目標となる。

     組(立)体操についていうと、近年、組み方の巨大化と組み手の低年齢化が進み、立体型ピラミッドの場合、幼稚園で6段、小学校で9段、中学校で10段、高校で11段が記録されている。頂点の高さ、土台の負荷、崩れるプロセス等において多大なリスクが想定される。実際に小学校において組(立)体操は、体育的活動のなかでは跳箱運動、バスケットボールに次いで負傷件数が多く、かつ実施学年((5~)6年生)や地域(実施していない学校や自治体もある)が限られるため、事故の発生率は高いと推定される。なお、低い段数でも事故が多く起きていると考えられることから、高低にかかわらず安全な指導方法を学校に伝えていくことが、私たちの課題である。

◆ワークショップ◆
  • 実践から発表作品例まで
    荒木 達雄
    p. 62_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     内田良氏の提言で組(立)体操がクローズ・アップされ、文科省の指針発表にまで発展した。この問題は、体育の授業内ではなく「体育祭」という「スポーツ・イベント」内での事故が多発しているためである。もともとは体操領域に「組(立)体操」は位置しているわけであるが、指導要領にその種目の文言が戦後、一度明記されたのみであり、現在の「体つくり運動」でも明記されていない。また、名称の不徹底も問題となっている。それは「組立体操」、「組体操」の区別の仕方である。「組立体操」は、人間が2段、3段に積み上げて造形美を表現する「静的」な運動形態である。「組体操」は、2人以上で互いの力を利用し合って動く、「動的」な運動形態である。体育の指導者であれば、この違いを理解したうえでこれらの運動種目を指導すべきであろう。また、普段の授業内での練習した種目を厳選したうえで、体育祭での発表作品として選択すべきと考える。今回は、「組立体操」、「組体操」の目的を明確にして実践例を参加者に体験してもらい、発表作品にまで発展させていく企画である。

シンポジウム
  • コーチング実践に活用できる“情報”とは
    森丘 保典
    p. 62_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     「情報」という言葉は、明治時代にフランス陸軍の用語を翻訳したものという説が有力であるが、現代の日本語においては「インフォメーション(information)」と「インテリジェンス(intelligence)」という二つの英単語の訳語にあてられている。

     明日の外出を考えるとき、私たちが拠り所にするのは「気圧配置や湿度(インフォメーション)」ではなく、私たちの判断や行動に対して何らかの指針や方向性を与えてくれる「天気予報(インテリジェンス)」である。天気予報は、そのままでは使えない断片的な「情報」の長きにわたる蓄積と分析方法の発展によって飛躍的にその精度・確度を高めてきているが、コーチング現場に無数に存在する量的・質的な「インフォメーション」を「インテリジェンス」へと昇華させるためには、明確な目的意識を持った「情報」の収集と蓄積、そして目標の達成に向けた分析と判断が必要となる。

     そこで本シンポジウムでは、日々のコーチングにおける“情報”の蓄積・活用について試行錯誤されているコーチ(指導者)の方々にご登壇いただき、コーチング実践に活用できる“情報”のあり方について議論を深めてみたい。

  • 金丸 雄介
    p. 62_3-63
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     演者はこれまで全日本男子強化コーチを8年間務めた。また、所属する実業団柔道部のコーチを務め、世界選手権やオリンピックのメダリストを輩出した。コーチとしての情報活用を振り返ると、膨大な試合データの中から、選手が必要とする真の情報(結果論)を抽出し、分かりやすく伝えることは想像以上に難しかった。しかし、この部分がコーチの感性(実践知)が最も必要とされるところであり、コーチの技量が試されたところだと考える。

     2012年ロンドンオリンピックでは、男子チームが金メダル0という結果に終わり、歴史的敗戦となった。その後、井上康生男子新監督の指揮のもと、情報戦略の充実が強化プランの一つに挙げられた。2013年から情報戦略部隊が外国人選手の試合を撮影・収集するだけでなく、試合内容を詳細に分析し、数値化した。この情報をコーチが持つ情報と擦り合わせながら、各大会で活用した。また、柔道のための試合分析ツールが構築され、コーチは自身で簡単に試合分析ができるようになった。これにより、コーチ特有の分析も可能になった。

     本シンポジウムでは、世界で戦う最前線での「情報活用」の一端を事例として、今後の課題解決に向けて議論を深めてみたい。

  • 田内 健二
    p. 63_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     近年、コーチングを行う上では、主観的な情報(いわゆる経験知)だけでなく、客観的な情報を活用することが必要であると言われるようになってきている。演者は、陸上競技における投擲種目のコーチとして、またスポーツバイオメカニクスの研究者として活動しており、主観的評価および客観的評価の両者を頼りにして、日々、競技者のパフォーマンス向上を図っている。

     今回は、様々なバイオメカニクスデータの中から、世界トップレベル競技者の平均動作モデルを活用したコーチングの実践例を紹介する。平均動作モデルとは、文字通り各競技者の動作(身体部分の座標値)を平均化したモデルである。平均値で議論を行う既存の科学的手法では、トップパフォーマンスを導くことは困難であるという意見がある中で、演者は、この平均動作モデルを活用してやり投げの世界トップ選手らに携わってきた。そのコーチングの過程を提示することによって、「コーチング実践に活用できる“情報”とは」に対する話題を提供したい。

  • 青山 清英
    p. 63_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     コーチングの実践においては様々な「情報」が用いられている。学問的知見もそのひとつである。これらの知見の有効性については、様々な議論が繰り返し行なわれてきた。特に、自然科学的データという「情報」に関しては、実践に対する有効性の観点から多くの議論がなされてきた。このような議論を学問的に意味のあるものするためには、まず、それぞれの学問領域がスポーツ実践におけるどのような運動問題を研究課題として検討しようとしたのかということを確認しておく必要がある。そして、その研究課題が「実践に役立てようとする」といった観点から議論される場合、選手や指導者の「主観的事実」と自然科学的データの「客観性事実」の関係をどのように捉えるかということが重要な課題となってくる。今回のシンポジウムでは、筆者の行なってきた陸上競技の上級競技者に対する技術トレーニングを事例として取り上げながら、コーチング実践におけるバイオメカニクス、心理(精神)物理学、現象学的心理学、現象学的人間学的運動学などの量的・質的な様々な科学的データの学問的位置づけを確認し、それぞれの「情報」の機能について論じたい。

専門領域企画(10) 保健
シンポジウム
  • 杉崎 弘周, 片岡 千恵, 岩田 英樹, 山田 浩平, 棟方 百熊, 物部 博文
    p. 64_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     「保健専門領域活性化検討ワーキンググループ」報告(2015年8月)の中で、保健科教育に関する研究の不足が指摘され、本領域設置50周年を見据えたこれからの10年間においては特に、保健科教育の研究の活性化が必要であることが強調された。

     保健科教育の研究成果が蓄積され生かされてこそ授業実践の改善が成し遂げられ、さらなる充実・発展が可能となることから、授業実践の発展に向けては、それを基礎づける学問あるいは科学としての「保健科教育学」が不可欠である(野津有司、2015年)。

     本シンポジウムでは、テーマを「保健科教育学への道」として、保健科教育学の構築に向けて議論を深め、研究の活性化に向けた契機としたい。4名のシンポジストからは、保健授業において積極的な工夫が求められる学習指導方法に関して、保健で育成すべき資質や能力を考える上で重要となる学習評価に関して、授業における児童生徒の学習や教師の指導の過程などを捉える授業分析に関して、保健を担当する教員の養成に関して、それぞれ研究の現状と課題について報告いただく。

キーノートレクチャー
  • 中央教育審議会教育課程部会「総則・評価特別部会」等での議論を基に
    野津 有司
    p. 64_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     中央教育審議会の教育課程部会「教育課程企画特別部会(第7期)」から、平成27年8月に「論点整理」が報告され、次期学習指導要領の改訂における基本的な考え方が示された。これを受けて、教育課程部会では「総則・評価特別部会」、「体育・保健体育、健康、安全ワーキンググループ」など学校段階等別・教科等別のワーキンググループ等が設置され、専門的な議論が進められている。

     グローバル化や情報化等が一層進展する中で社会状況も急激に変化し、子供たちをめぐる健康課題は山積している。そうした中で、教科としての「体育」・「保健体育」における保健を中核として学校全体で進められる保健教育は、今後どう改善・充実され、進められていくべきであろうか。

     「総則・評価特別部会」等における議論を踏まえながら、これからの保健教育において重視すべき考え方や、子供たちが身に付けるべき資質・能力の育成に向けたアクティブ・ラーニングの視点に基づく授業等について、考えてみたい。

専門領域企画(11) 体育科教育学
シンポジウム
  • 白旗 和也, 吉永 武史
    p. 65_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     昨年度の第66回大会では、保健専門領域との合同によるシンポジウムを開催した。「保健体育教師(保健授業と体育授業を担当する教師)教育の課題と未来」というテーマに基づき、保健体育教師教育の課題の把握とその解決に向けて、現職教師に求められる体育と保健の授業に関する資質や能力に焦点を当て、シンポジストによる話題提供ならびにディスカッションを行った。この議論を今後さらに継続させていくために、第67回大会においても体育と保健の双方の内容を取り扱うシンポジウムを企画することとした。体育と保健の関連性に迫るためには、「保健体育教師が行っている保健の授業はどのようなものか?」(現状の把握)や、体育の内容と保健の内容を関連付けるようなカリキュラムの可能性、保健体育教師の力量形成や学校内でのネットワークづくりなどが検討課題としてあげられる。そこで本シンポジウムでは、保健授業の実態と課題を明らかにし、体育で学んだことを保健で生かしたり、保健で学んだことを体育で生かしたりするカリキュラムの構想などについて検討するために、「体育と保健の関連性を生かした体育科・保健体育科の在り方」をテーマとして設定した。

  • 杉山 正明
    p. 65_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     保健授業は小学校から高等学校まで系統的に実施されているが、本シンポジウムでは、高等学校において保健体育教師が担当する保健授業の現状と課題、そして体育と保健の関連性はどうあるべきかについて論じてみたい。保健授業の現状としては、「教科書に書いてあることを教えなければ…」「自分の知っていることや経験したことを教えたい」「書けばきっと覚えるはずだ」という、いわゆるKAPモデルにおける一斉講義形式が多いことが挙げられる。また、体育と保健の関連性については、体育と保健は別物的なとらえ方をする保健体育教師は多い。この原因としては、体育は技術の習得を、保健は知識の習得という意識を強く持っているからである。では今後、体育と保健をより関連させていくためには、将来を見通した目指す生徒像を描き、総合的にとらえて授業を実践していくことが重要である。そのためにも、保健体育科の目標である「生涯にわたる豊かなスポーツライフと健康の保持増進のための実践力と体力の向上」という視点を持ち、「スポーツ・体力・健康」というキーワードを軸にした保健授業を実施していくこととともに、体育授業においてもQOLと関連させる必要がある。

  • 佐藤 豊
    p. 66_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     現行学習指導要領の具体的な目標である「体力の向上」は、体育、保健の双方からアプローチ可能なキーワードである。また、解説で示される健康・安全についての具体的な指導については、保健学習の様々な単元で具体的に学習する内容であり、体育の分野においては、運動領域(A ~ G)の(2)態度の指導内容および(3)知識・思考・判断の指導内容のうち「体力や健康・安全に関する思考・判断」の指導内容に関連が深い。さらに、体育理論においても、例えば中学校第2学年の「運動やスポーツが心身の発達に与える効果と安全」では、保健学習との関連性を生かした指導の充実が求められる単元となっている。カリキュラム・マネジメントの視点が一層着目されると考えられるが、これまで年間指導計画では、体育および保健の大まかな時間配当は示されるが、内容の関連性まで細部まで示されるケースは少ない。新たな領域内容論を論じる前に、授業者があらかじめカリキュラムを俯瞰しやすい年間指導計画の検討が必要と考える。そこで本シンポジウムでは、保健及び体育の年間指導計画および「体育・健康に関する指導」との関連も踏まえた年間指導計画に焦点を当てた提案をしたい。

  • 野井 真吾
    p. 66_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     子どもの「からだのおかしさ」が指摘されて随分と長い年月が経過してしまった。このような状況を踏まえて、われわれの研究グループではほぼ5年に1度のペースで「子どものからだの調査」、通称「実感調査」を実施している。この実感調査は、子どもの「からだのおかしさ」に関する保育・教育現場の“実感”を収集することを目的としており、2015年調査がその最新結果ということになる。それによると、「アレルギー」、「すぐ“疲れた”という」、「保育・授業中、じっとしていない」、「背中ぐにゃ」、「首・肩のこり」、「夜、眠れない」、「平熱36度未満」、「うつ傾向」等の子どもが「最近増えている」との実感が保育・教育現場に広がっている様子を窺うことができる。故・佐々木賢太郎氏が述べたように、子どもの「からだのおかしさ」は周囲のおとなだけでなく子ども自身もその悲惨さに気づくことが大切である。そのため、「からだの学習」に寄せられている期待は小さくない。

     本報告では、現代の子どもが呈する健康問題の中から主として睡眠・覚醒問題に注目し、その現状と解決に向けた取り組みの成果と課題を紹介してみたい。

専門領域企画(12) スポーツ人類学
シンポジウム
  • 石井 隆憲
    p. 67_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     これまでのスポーツ人類学研究では、この学問の中核となる民族スポーツの技術や身体技法、あるいは民族スポーツの民族的知識(エスノサイエンス)の研究を言語や観察による「表象主義的な立場」からのみ進めてきた。しかし、こうした表象主義的な研究では身体化された技術を明らかにすることはできないとして、直截経験(身体を通して知るフィールドワーク)による人類学研究の可能性が検討されてきた。直截経験による人類学的研究とは、研究者自身の身体を測定器具としながら、対象となる他者との間主観的な共同性を客観的な世界の手掛かりとしつつ、それを資料および解釈の枠組みとして活用していくという方法であり、スポーツ理解に効果的な方法であることが、昨年度のシンポジウムにおいて確認された。

     しかしながら、これまでのスポーツ人類学では、未だスポーツの実践を通した研究が成熟しておらず、現在でもその研究方法は手探りの状況にある。そこで今年度は、これまでスポーツ実践を行いながら研究を進めてきた研究者の方々をお迎えし、どのような形で研究を進めてきたのかについてご紹介いただき、スポーツ人類学研究への貢献の可能性を検討していく。

  • 実践によるブフの理解
    富川 力道
    p. 67_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     文化人類学において参与観察は非常に重要な方法である。しかし、観察やインタビューだけでは理解することが困難なものも多く存在している。報告者はこれまでモンゴルのブフ、いわゆる「モンゴル相撲」を研究してきた。ブフには、実に多くの技が存在しているが、それらの技の全てを観察やインタビューで理解することは不可能であり、理解するにあたっては、自らが身につけることで初めて「わかる」という実感が湧いてくる。また技の体系などについても理解することが可能となってくる。さらに、こうしたことと同時に、力士たちの語りの背景にあるものも、おぼろげながら見えてくる。つまり、ブフを身につけることによって、それが確かな理解の手助けになっているのである。そこで今回のシンポジウムでは、調査対象となるスポーツを実践することが、文化人類学的研究にとって、どのような有効性をもつのかについて、ブフを事例として紹介するものである。

  • 新しいコーチング学の創造
    伊藤 雅充
    p. 68
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     コーチングは構造化された即興である。コーチは、複雑で動的なコンテキストの中で状況を読み、意志決定を行い、行動を起こす(あるいは起こさない)。より良い即興を行えるようになるため、我々の研究室ではシステム思考や非線形教授法などをベースにした大学院コーチ教育プログラムを提供している。そこでは、コーチング場面で次々に表面化してくる現象に対処するだけでなく、その背後にある前提認識や強力な固定概念などを読み取り、自らのコーチング行動の修正を行うことで、できるだけ根本的な課題の解決に結びつけようとしている。このプロセスにおいて、個人の思考や心理、個人間の関係性、組織文化などを解釈していく様々な研究手法が大いに役立っている。今回のシンポジウムでは、勇気ある大学院生とともにおこなってきた、既存の学問の枠組みを越えた新しいコーチング学創造に向けた挑戦について紹介する。

専門領域企画(13) アダプテッド・スポーツ科学
シンポジウム
  • 次期学習指導要領の改訂と必修化の課題について
    松原 豊
    p. 69_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について」(答申案)では、教員養成の新たな教育課題の一つとして、「特別支援教育の充実」が挙げられ、特別な支援を必要とする子どもに関する理論及び指導法について、教職課程に独立した科目として位置付けることが明記された。また、「障害者差別解消法」が施行され、学校現場でも「合理的配慮の提供」が求められることとなった。それにより、体育を担当する教員には、特別支援の必要な子どもに対する適切な体育指導ができる知識と技術が必要となった。本シンポジウムでは、体育免許の取得者に、「アダプテッド体育」に関する科目の履修必修化を提案し、これまで中学校におけるアダプテッド体育の現状、大学におけるアダプテッド・スポーツに関する科目の開講状況の報告を行い、履修必修化の必要性と、ロードマップを確認した。今回は、「次期学習指導要領の改訂と必修化の課題について」をテーマに、中央教育審議会における学習指導要領の改訂をめぐる議論や次期学習指導要領において、特別支援教育の更なる充実を図る必要性などについて情報提供をいただき、アダプテッド体育の履修必修化について検討したい。

  • 岡出 美則
    p. 69_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     2015年秋以降、中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会体育・保健体育、健康、安全ワーキンググループにおいて、体育、保健体育科の学習指導要領の改訂の方向をめぐる審議が重ねられてきた。この論点の一つが、第5回会議で設定された「体育・保健体育における特別支援教育の観点から必要な支援等」であった。同会議では、平成28年4月から施行される障害者差別解消法を踏まえつつ、改善の方向性が論議され、総則における障害種の特性に関する記述に加え、各教科と編制において、学習の過程で考えられる困難さごとに対応方法の案を示すことが検討されている。また、中央教育審議会(2015)は、教員免許状の見直しのイメージにおいて小学校、中学校、高等学校ともに「特別の支援を必要とする幼児、児童及び生徒に対する理解(1単位以上修得)」を明示している。

     これらの動きは、保健体育の授業においても特別支援教育の充実が個に応じた学習の充実と同様に求められるようになることを示している。他方で、個々の教員のみならず、学校としての支援体制や父兄、地域との連携も含めた支援システムの改善に向けた取り組みの必要を示唆するものである。

  • 長沼 俊夫
    p. 70
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     我が国は、平成26年1月に障害者の権利に関する条約を批准した。教育においては、障害のある者と障害のない者が共に学び、障害のある者が一般的な教育制度から排除されないこと、自己の生活する地域において初等中等教育の機会が与えられること、個人に必要な「合理的配慮」が提供される等が必要とするインクルーシブ教育システムの構築を図ることが明確となった。次期の学習指導要領の改訂に向けて中央教育審議会は、平成27年8月には、「教育課程企画特別部会における論点整理について(報告)」をまとめた。この報告では、小学校、中学校、高等学校等においては、個々の学びの特性に配慮した、きめ細かな授業が実施できるよう、小・中・高等学校学習指導要領等において、特別支援教育に関する記述にさらなる充実を図る必要が示された。その内容として、各教科等の目標を実現する上で考えられる困難さに配慮するために必要な支援を示すこと等が挙げられた。また、こうした支援を適切に行うために、特別支援学校における自立活動の指導を改善・充実させ、指導目標・指導内容の設定から評価までの手続の工夫や分かりやすい示し方について検討されている。

専門領域企画(14) 介護福祉・健康づくり
シンポジウム
  • 虚弱化予防からスポーツ参加
    田中 喜代次
    p. 71_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     日本人の平均寿命が90年の間に男女とも約2倍に延伸し、2016年のWHO発表によると女性86.8歳(世界1位)、男性80.5歳(世界6位)となっている。また、2000年から2015年にかけて世界の平均寿命が5年も長くなっているらしい。寿命の延伸やスポーツ人口の増加とともに、高齢者がlife enjoyment目的や健康増進目的で運動・スポーツに勤しむケースが格段に増えてきている。従来では、心不全、腎不全、肝疾患などに対しては運動を控える指示が出ていたが、最近では推奨される例が多い。運動の医療的効果が過剰に発信されるせいか、アメリカスポーツ医学会(ACSM)はEIM (= Exercise Is Medicine) とまでプロパガンダするようになっている。

     今回のシンポジウムでは、ワールドマスターズゲームズ2021組織委員である東直也氏にスポーツライフの真髄について熱く語ってもらう予定である。司会の田中喜代次(筑波大学)は、27年にわたる中高年者(有疾患者)の運動習慣化生活の実態、体力の推移、老化抑制効果などを紹介し、かつ自身のスポーツライフの実態について語る予定である。また、吉中(京都学園大学)は、介護予防(フレイル予防、寝たきり予防)に向けて導入している京都式総合介護予防プログラムとレクリエーションの実際についてプレゼンしていただくこととなっている。

  • 田中 喜代次
    p. 71_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     満足のゆく人生が送れることをサクセスフルエイジング(successful aging)と言うが、日本語訳は統一されていない。「豊かな老い」と表現する専門家もいるが、演者は“健やかで、幸せで、華やかに、年を積み重ねて生きたい”という万民共通の願いを汲んで、「健幸華齢」なる造語を使っている。今回のシンポジウムでは、健康や老いについて不安を感じやすい中高齢者に前向きに気丈に生きていただきたいとの思いから、日々の生活の中に運動・スポーツ・レクリエーションを取り入れることの有益性について、演者自身の体験談も交えて議論したい。

     シンポジウムでは、小中高時代、大学時代、大学院時代、30 ~ 60歳台において楽しんできた演者自身の“EnjoyスポーツLife”、特に、高校時代の3年間と40歳台後半から再開したボウリング競技の実態についても紹介する。また、心筋梗塞、がん、糖尿病、身体障害などを有する中高齢者の“EnjoyスポーツLife”の実際例を紹介し、体力つくり効果や元気長寿(健幸華齢)効果などの有益性(メリット)とともに、身体的負傷や精神的落ち込みといったデメリットの一面にも触れながら、スポーツ活動の意義を学会員の皆さまと一緒に考察したい。

  • 高齢者の運動習慣獲得のために、マルチ体操プログラムの考案とその効果
    吉中 康子
    p. 72_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     高齢者の健康余命の延伸には、主に生活習慣病や廃用性萎縮を起因とする機能障害への予防的介入が不可欠といわれ、運動のはたす役割が再認識されるようになってきた。我々は現在、地域で現実的に実施可能な方法を用いて運動介入をしながら、前向きコホート研究(亀岡スタディ)を進めている。今回は、このような取り組みの中から、演者が提供している『マルチ体操プログラム』について報告する。

     本プログラムは、①誰もが楽しく実施可能、②多種多様な生活動作を含む、③有酸素運動の効果、④グループダイナミクスの楽しさ、⑤音楽の利用、⑥参加者同士の交流、を特徴とする。なお、運動は、低負荷強度とし、立位と座位のバージョンを設け、虚弱高齢者にも実施可能なものとした。

     3ヶ月の介入により筋量や体脂肪率、下肢筋力などを有意に改善させた。この体操は、我々が設立した「NPO法人元気アッププロジェクト」が運営する「元気アップ体操教室」で地域展開し、教室への参加者数増加と継続率向上、演者が企画した「体操祭」に参加するなど、大きな広がりに発展している。

  • 関西ワールドマスターズゲームズ2021
    東 直也
    p. 72_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     2021 関西ワールドマスターズゲームズでは「する」スポーツに繋げ、生涯スポーツ社会を実現するために、アジア初となるワールドマスターズゲームズを関西広域で開催する。

     本大会では、「スポーツ・フォー・ライフの開花」をテーマとして掲げ、理念として、

     1 日本の歴史・文化が集積する関西で、生涯スポーツ先進地域としてわが国のスポーツ文化を世界に発信

     2 関西で育まれてきた人的資源やおもてなし文化を発揮しながら、後世に残る世界最高峰の生涯スポーツ大会開催

     3 2019年、2020年に開催されるラグビーワールドカップと東京オリンピック・パラリンピックとの一体的推進により「みる」「支える」スポーツの機運を「する」スポーツへの醸成

     4 開催地の主体性を発揮した広域開催による地域創生

     5 スポーツと観光を融合させたスポーツツーリズムによる地域活性化の促進

     6 健康・スポーツ関連産業の更なる振興を推進

     7 高齢化の進展を視座に入れ、成熟社会におけるスポーツを通じた健康社会への寄与

     本講義では、歴史、参加者、テーマ、理念を中心に生涯スポーツの国際競技大会であるワールドマスターズを紹介する。

キーノートレクチャー
  • 金 憲経
    p. 73
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     体重減少、筋力の衰え、歩行速度低下、活動量減少、疲労の中で3つ以上に該当するフレイル、骨格筋量の減少に伴う筋力の衰え、または歩行機能の低下と定義されるサルコペニアは、要介護状態となる原因であると共に身体的障害、転倒、慢性疾病、死亡の危険性を上昇させる因子であり、その早期予防策の確立が課題といえる。これらを予防するためには、多様な危険因子の中で可変的要因を見出し、その改善に焦点を当てた包括的支援が有効である。その手法として運動が勧められ、高齢者でも筋肉量や筋力の増大が報告されている。効果的な予防には、運動の強度、頻度、期間が重要であり、先行研究では、週2回、VO2maxの40-45%、10分以下の運動では体力の維持・向上は難しいとの主張が優勢である。しかし、最近では低強度、低頻度でも効果が期待できるとの研究も散見されている。これらの背景を踏まえ、効果的な予防法について、疫学研究を踏まえて論議する。一方、高齢者の筋量上昇に栄養補充が有効であるとの研究も多く報告され、関心が高まっている。本講演では、フレイル・サルコペニア予防における運動・栄養の役割、効果を紹介し、今後の展望について論議する。

一般研究発表抄録
一般研究発表(00) 体育哲学
  • ディースターヴェークの教育学に基づいて
    阿部 悟郎
    p. 78_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     体育学において体育の本質論を構成しようとするとき、必然的に教育学的思考が喚起されていく。体育の本質論は、体育を教育として誠実に構成しようとする試みを通してこそ、構成されていくのである。それでは、人類は、教育を、あるいは教育の本質をどのように論じてきたのか?これについての知的営為の蓄積とその動態が教育学であるならば、体育学は、教育学の諸知見を方法として、体育の本質に立ち迫っていくべきであるだろう。そこで、本発表においては、近代?ドイツの教育思想家の一人であるディースターヴェークDiesterweg, A. (1790-1866) の教育学論議に基づいて、体育の本質の一つの語り方を模索していきたい。

  • 神野 周太郎
    p. 78_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     本研究の目的は、デューイ哲学を再評価する中で、特に彼の社会論に注目しつつ、それに基づく体育概念の方向性について検討することである。デューイの社会論は、「社会」「共同体」「個人」の「より以上の成長(more growth)」を目指すものとして提示され、それを実現するための教育、とりわけ「個人の経験」の教育の重要性を説くものである。デューイは、個人の経験とは社会生活の過程で絶えず生起するもの、すなわち個人の「実践的」活動の中で生起する出来事に付随して獲得されるものとする。実際的な出来事とそこでの個人の経験に着目しつつ、その教育的意義の視点から社会の在り方を見通すというプラグマティックな態度は、まさにデューイ独自のものといえよう。このような議論の体育への接続は、彼の社会論に基づいて個人の「身体的実践」の教育的意義に注目することであろう。デューイ哲学に依拠した体育論議は、「身体的経験」に依る人間の「成長」を現在的な教育問題から問うことでもある。

  • 跡見 順子
    p. 78_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     体育は、身体を通して人間を育てる教育である。それ故、時代の先端知であり体育の軸となる細胞生命科学と脳科学の本質を取り入れ、教育課程を見直すべきである(1:身体の生命原理の導入)。学習の成立は、「生命の単位「細胞」(身体は細胞の住処)が、刺激に応じて変化する能力」をもつことに依存する(人間は多細胞動物であり細胞の環境が身体である(2:身心の教育可能性)。地球環境で創発した生命の能力はほぼ生得的・活動依存的に獲得される(3:身体運動が必須な根拠)。それ故人間は他の動物と同様に自分のシステムを自動的に理解できず、「汝をしれ」が必須(3:自分を対象化(俯瞰)する視点)。体育教育が身体運動を基盤とする本質性は、「いのちの原理」を創発させた条件としての重力と細胞の生存原理であるメカニカル応答が適応原理にあることによる(4)。それ故、ことば・科学等により抽象的理解が可能である人間の特性(5)につなぎ、さらに「いのちの原理」から、人間はすべて等しく(WHOでの定義)健康に生きる権利をもつ故、いのちである身体に直接働きかける体育は、現憲法から出発すべきである(6:人権・健康・共生)。

  • 齋藤 健治
    p. 79_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     「トレーニングの原理・原則」は、形態学に端を発した機能的適応の理論をもとに、スポーツ科学で唯一principleと位置づけられている(名付けられている)理論である。ただし、これら原理、原則をその言葉の意味と、命題論理の観点から検討してみると、原理として記述される「過負荷」は必ずしも妥当とはいえない。一方、持久力トレーニングの分野において、スプリント・インターバルトレーニングが伝統的な持久的トレーニングと同等のトレーニング効果をもたらすことが明らかにされ、トレーニングの「特異性」に疑問が投げかけられている。ここでは、言葉の意味の共有の問題、決定不全性の問題などが浮かび上がる。このような例をもとに、スポーツ科学の研究にみられる特徴を考察する。

  • 「科学的指導」への拘泥を超えて「偶然性の自覚」へ
    松田 太希
    p. 79_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     スポーツ指導における体罰の根絶が叫ばれ続けている。本大会でも、体罰根絶のためのシンポジウムが企画されている。一般的にいえば、「体罰根絶」という訴えは、スポーツ指導を改善しようとする純粋な良心に基づいたものであることは認めてよいだろう。しかし、哲学的なまなざしの中にその訴えを置いてみたとき、それが、単なるスローガンになり下がってしまう可能性を見ないわけにはいかない。そのことは、「暴力的な指導ではなく科学的な指導を」などといわれたりする点において認められる。しかし、「科学的な指導」という場合、「科学的」とはどういうことなのかが判然としていないし、そもそも、スポーツを指導するということが暴力性と無縁なものであり得るのかということを考えてみなければならない。本発表では、「体罰根絶」という理念自体の重要性を認めつつも、スポーツ指導に暴力性は原理的につきまとうことを明らかにし、その暴力性は、「科学的指導」によってではなく、偶然性によって乗り越えられるしかないのではないかということを議論する。

  • 大橋 奈希左, 原田 奈名子
    p. 79_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     戦後学校教育における表現運動・ダンス領域では、自由で創造的な表現活動を目指して、指導・支援が行われてきた。だが、一方で、教員を対象とした調査研究では、指導者側が指導の難しい領域であると感じていることが繰り返し指摘されてきた。「こんな風に動いてみよう」という指導者の投げかけに素直に乗ってくる学習者と、なかなか動けない学習者がいるといった実態があることは容易に推測できるであろう。久保(2015)は、ダンスと体育科教育学とのかかわりについて意見する中で、「子どもたちのからだには生活履歴がある」ことを指摘し、「ダンスする身体」と「生活する身体」の関係性を問うている。表現運動・ダンス領域の授業では、学習者の「ダンスする身体」が前面に出てくるが、背後には「生活する身体」を背負っていると考えられる。本発表では、「ダンスする身体」と「生活する身体」という視点から、表現運動・ダンス領域でどのようなからだを育てるのかを問い直すことを目的とする。原田の提案した「1・2・3あそびからはじまる教材」の実践を具体例として、学習者の変容を手がかりに考察を進めていく。

  • 身体運動の捉え直し
    滝沢 文雄
    p. 80_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     本研究の目的は、運動実践に潜んでいる身体運動の論理を背景に、運動を「する」から「つくる」へと視点を移すことによって、身体運動が知的営みであることを明示することである。では、なぜ身体運動を「する」から「つくる」へと視点を変更する必要があるのか。これまで、運動について考えることはあっても、運動はするものであり、運動実践そのものが知的であることに気付くことは少なかった。言い換えれば、ブラックボックスとして身体を扱い、心が体をコントロールするという図式で身体運動を捉えてきたと言えよう。運動習得の際にも、指導者は運動を外側から観察することによって生徒を指導し、生徒はその指摘に応えるために、同様に外側からみずからの身体を統御し、運動しようとしているようである。それは、意図すれば動けるようになる、という幻想にもつながっているのではないだろうか。この視点の捉え直しによって、身体運動の実践が知的営みであることが明らかになり、さらに、人間が行う運動実践の複雑さと多様さへの配慮、運動の習得過程の変更、運動指導での指摘内容の変更が可能となるであろう。

  • 長島 和幸, 友添 秀則, 根本 想
    p. 80_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     外来スポーツとしてのレスリングは、柔道家であった八田一朗を中心にわが国において導入および展開がなされた。その過程において八田は、各種史料(「八田コレクション」や「日誌・日記」)を遺した。これらの分析によって、わが国のレスリングの導入および展開に加え、八田の精神性に関する理解が可能となるだろう。これまでレスリング史や八田一朗史に関しては筆者の管見の限り、一般書籍の中で語られるのみで学術研究は極めて少ない。さらに八田の精神史研究は殆ど手が付けられていない状況である。八田の精神史研究によって、特にわが国において戦後から1960年代かけて定着したスポーツ根性論の形成要因に関する実証的な解明が期待される。これまで八田によるスポーツ根性論は、武道家としての八田が異文化であるレスリングと遭遇し幾多の衝突を重ね、醸成させていったレスリング観を基盤としていると、自伝的書籍の中で語られてきた。しかし本研究において、日誌・日記に加え、機関紙における八田の記述内容から八田の精神性を分析することで、彼のレスリング観が、異文化であるレスリングと遭遇した当初から武道精神との融合によって形成されていたことが示唆された。

  • 「武」の字意及び、「武術」、「武芸」、「武道」の語意的検討
    劉 暢, 佐藤 皓也
    p. 80_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     世界のあらゆる「武芸」がグローバル化の今日において、実戦、競技、審美、健康向上などといった様々な姿をあらわしている。このような「武芸」に起きた変容をいかに捉えるのか、そして将来、中国武術そして日本武道を含む様々「武芸」はどのようなあり方を求められているのか。これらの問題に答えるには「武」という言葉の概念を明確に把握する必要がある。言葉は時の移り変わりと共に、その意味内容も変化してしまう。「武」の字の解釈は、儒家の古典である『春秋左氏伝』で初見する。そこで「武とは戈を止める」(止戈論)と解釈されていた。しかし、後に「武とは戈<武器>をもって、止<あし>で進む」(原意論)、という甲骨文や金文の原意に基づく言語学的批判があった。また、「武」に関わる言葉として、「中国武術」、「韓国武芸」、「日本武道」とよく耳にするが、「術」、「芸」、「道」の漢字がそれぞれ違うように、「武術」、「武芸」、「武道」にも微妙な意味合いの区別がある。本研究は「止戈論」と「原意論」踏まえた上での「武」の字意の再検討と「武技」、「武術」、「武道」、「武芸」の相違を明確にすることから論を展開していく。

  • 高田 哲史
    p. 81_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     大西要の『教育的体育学』(1926)は、現在の体育学の一専門領域である「体育科教育」のようなイメージで「教育的体育学」を論じたものではなく、「体育学」自体が現在のように確立されていない当時において、まずは体育学とは何かという観点に立ち、議論を進める中において、「体育は教育的に」という基本姿勢を貫き、また体育学確立に、基盤として哲学が必要であることを主張したものである。従って、『教育的体育学』の中で述べられた「体育哲学」も、現在のような体育学の一専門領域としての「体育哲学」を著したものでもなく、大西の体育学を論じるために必要な体育の哲学的議論を行ったものと推察される。当時の体育の哲学的議論は、多分にこの水準をこえることができず、体育学の確立を目的としたものが多かったと筆者は結論する。

  • 荒川 勝彦
    p. 81_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     夏季オリンピック競技大会のようすと結果を伝えるものは、活字で伝える新聞、音声でつたえるラジオなどがあるが、テレビは映像で伝えることができる。そのためオリンピック競技大会の発展とテレビ放送の相互関係は深い。テレビオリンピック放送は、モノクロ放送、カラー放送、衛星放送、デジタル放送、ハイビジョン放送といった放送技術の進化により、臨場感溢れる映像を世界中の視聴者に提供しているといえる。これまで夏季オリンピック競技大会については、参加国・地域数や競技・種目数や参加選手数などについての報告はみられるが、夏季オリンピック競技大会の放送時間についての報告はあまりみられない。そこで本研究では、オリンピック研究の一資料として、夏季オリンピック競技大会のテレビ放送時間の変遷を調査することにした。調査資料は、朝日新聞縮刷版のテレビ番組欄であった。調査範囲は、1956年第16回メルボルン競技大会から2016年リオデジャネイロ競技大会までであった。

  • 両者の体育論に着目して
    安藤 健太
    p. 81_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     ピエール・ド・クーベルタンは、近代オリンピックの復興者として知られているが、スポーツの教育者という一面も持っていると指摘されている。彼のスポーツ教育思想形成の源流は、パブリックスクールラグビー校の校長であったトーマス・アーノルドである。そのことは、多くの研究により、指摘されてきた。本研究は、彼を教育者という立場から、教育学的・哲学的知見から検討を進める。しかし、教育という観点から見てみると、アーノルドだけではなく、イギリスの教育学者であるハーバート・スペンサーとの関連性が疑われる。特に、三育論に関してはその両者の関連性があるのではないかと考える。クーベルタン研究の多くはオリンピック関連からの視点が大部分を占めている。教育的思想に関連した研究はいくつか存在するが、その中でも三育論に焦点を当てた研究は少ない。そこで、本研究は、教育という視点に重きを置き、その中でも、両者の体育論に着目をしていく。両者の体育論を比較することにより、両者の体育の位置づけの関連性や、新たな体育の概念の一端になるのではないかと考える。

  • 「人間の尊厳」に着目して
    野上 玲子
    p. 82_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     オリンピックはこれまで、パリ大会(1900年)での「宗教」論争によるアメリカ選手団の分裂や、セントルイス大会(1904年)での人種差別による「民族競技」の開催など、「人間の尊厳」を脅かす問題が幾度となく生起してきた。1935年のクーベルタンのラジオ演説においても、精神や肉体の創造は、「人間の尊厳」を損なう出来事の下ではあり得ないと述べている。このような歴史的教訓から、IOCによって2015年に採択されたオリンピズムの目的は、「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会を奨励すること」とし、今日でも人間性の尊重が強調されている。しかし、依然として、オリンピズムの特徴や理念について、十分に解明されているとは言い難く、オリンピズムの価値それ自体が批判的に考察されることも少なくない。未だ、民族紛争やメダル争いが激化するオリンピックの世界で、「人間の尊厳」という理念は何を意味し、どのような内在的価値を持つのだろうか。本研究では、オリンピズムにおける「オリンピック」と「人間」との関わりを通じた道徳的な価値を再評価しつつ、オリンピックで発揮される「人間の尊厳」の根源的な意味を解明することを目的とする。

  • アリストテレス思想援用の試論
    佐藤 洋
    p. 82_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     平成32(2020)年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会を控えて、体育・スポーツの業界、またかかる研究の機運は高まっている。その対象として、競技者は注視に値する存在であろう。本研究では、競技スポーツの領域で、競技大会における社会的責任や期待を背負う存在とみられる競技者を対象とする。先行研究では、競技者がスポーツ論や競技論の見地から考察され、体育・スポーツというある種で限られた、ないしは閉ざされた空間で議論されることが多くみられる。研究の趨勢から競技者は、競技スポーツにて自らに勝利や成功を課す存在とみられるが、改めてその存在を問い、社会における一構成員としての本質的な理解が求められよう。本研究の目的は、体育・スポーツ研究の垣根を越えて、競技者を本質的に解釈するための理論を提示することである。本研究の方法は、競技者解釈の一考察として、「善く生きること」が根底にあるアリストテレス思想における倫理学を手掛かりとし、競技者の行動に孕む「選択」らの各論点から検討を深めていく。本研究は、とりわけ「善さ」と「選択」にかかる思想を援用し、競技者の本質的解釈を導こうとする試論である。

  • 森田 啓
    p. 82_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     文科省は、わが国のスポーツ政策の基本的方向性を示す「スポーツ立国戦略」(2010)を策定しているが、その基本的な考え方は「人」の重視であり、「する人、観る人、支える(育てる)人」を掲げている。「支える(育てる)人」としては指導者やスポーツボランティアが具体例としてあげられている。また、中教審の質的転換答申(2012)では、学長・学部長アンケートにおいて、地域社会や企業による「インターンシップなど体験・実践活動のための協力」が重要との認識が強いことが示されている。以上の指摘などに基づき、近年、体験・実践活動を重視し、ボランティア関連の取り組みを科目化する大学も増加している。2020年の東京五輪に向けて、各大学でスポーツに関連する授業が開講されているが、本研究では、スポーツイベントを開催するノウハウを習得し、実際にスポーツイベントを企画・運営するPBL型の大学教育について報告する。

  • 岸本 肇
    p. 83_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     本研究は、『私たちの道徳』(文部科学省)の教育観・内容を体育教育学的に分析し、「道徳の教科化」の問題性について考察した。その結果、教育の内容・題材・方法として適切かどうか、少なくとも下記の事柄を指摘したい。①健康と体力をつくる規則正しい生活が、徳目的な生活上の心得と同列に並んでいる。②トップ・アスリートの目標設定の仕方、目標を達成する方法と精神力・努力が、一般に通用するかのごとくに描かれている。③スポーツのルールが、そのまま社会に通じる秩序・規律のように扱われている。④どう答えれば「正答」なのか、一概に判断できない遊びやスポーツの状況設定が、討論材料に使用されている。⑤スポーツにおける礼法や団結、人との繋がり、国際連帯などの扱いが、日本の伝統・文化の尊重、国土・郷土愛と結び付けられている。⑥生命の取上げ方は、環境改善より、環境との「共生」志向が強い。総じて戦前の修身復活を直接想起させる内容は表面的ではないが、「しつけ」「なせばなる」「規則は守れ」「日本精神の強調」は看取できる。

  • 「体育の再定義」および自然哲学に向けた序
    林 洋輔
    p. 83_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     会員総数6000人強を数える日本体育学会において、躊躇なく自らを「体育学者」と規定し得る会員はどれほど存在するだろうか。学問として存立し社会貢献を続ける体育学の諸研究者は時に自らの修める研究方法に拠りつつ学徒を任ずる一方、「体育学者」なる呼称が恣意のまま用いられることは体育学の実質ならびに斯学の研究者像を不明瞭なものとする。本発表は学問の歴史的源泉である古代哲学、また「実践の一元論」として哲学史を貫流する「精神の修練Exercices Spirituels」さらに「生圏倫理学Eco-Ethica」に着眼しつつ、体育学の全体像および独自性の解明を問う研究史にも目配りしながら「体育学者」の実質を解明する。結論として「体育学者」の実質は二様に定められる。一方では「人間の身体運動の最高度の可能性を構想し、その実現を試みる学問」である体育学研究に従事し、その成果を社会へ発信する「体育-学者」である。他方では体育学の研究成果を自ら実践しそれを使用する「体育学-者」である。当の結論はわが国学術界における体育学の位置および「学問の使用」と自然哲学の再考をめぐる議論、さらに「体育」概念の再定義に向けた緒論の糸口となるものである。

一般研究発表(01) 体育史
  • 神奈川県藤沢市におけるヨット競技開催の成果と課題
    杉並 伸勉
    p. 86_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     1964年東京オリンピック競技大会では、開催都市である東京都以外の千葉県、埼玉県、神奈川県においても競技を実施した。特に神奈川県では、サッカー競技、カヌー競技、バレーボール競技、ヨット競技が県内各地で実施された。本研究で着目するヨット競技は藤沢市江の島沖、相模湾海上で行われ、また競技以外に着目する点として代々木選手村からの移動距離の懸念を踏まえて大磯町に選手村分村が設けられたことが挙げられる。本研究では、国立公文書館、神奈川県公文書館、神奈川県下図書館に保存される大会組織委員会、神奈川県および藤沢市の当時の行政文書また当時の新聞記事をもとに、江の島がオリンピック競技開催地となった経過を明らかにした。その結果、地方競技開催によってもたらされた成果と当時の課題が明らかになった。この事例は、1964年ヨット競技に引き続き2020年東京オリンピック競技大会セーリング競技会場となった神奈川県、および藤沢市が大会準備を進める上で史的資料になり得る。

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