日本静脈経腸栄養学会雑誌
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31 巻 , 4 号
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特集
  • 藤原 大
    2016 年 31 巻 4 号 p. 939-943
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    ジャーナル フリー
    リハビリテーション栄養とは、栄養状態も含めて国際生活機能分類 (ICF) で評価を行ったうえで、障害者や高齢者の機能、活動、参加を最大限発揮できるような栄養管理を行うことである。これまでも臨床的な重要性は感じられながら、実質的な取り組みは広まっていなかった。リハビリテーションの対象者には低栄養が多く、低栄養ほど ADLや QOLの回復が得られにくいことが徐々に明らかになり、リハビリテーション栄養管理による効果の向上が期待される。しかしリハビリテーション介入と栄養サポートの併用効果についてはまだエビデンスが不足しており、今後の課題である。リハビリテーション栄養の取り組みは、地域包括ケア時代を迎えた日本の医療・介護をつなぐ key wordになりえる。リハビリテーション栄養チームマネジメントのできる人材育成が重要である。そして世界一の超高齢社会を迎える日本における多くのリハビリテーション栄養管理の実践と研究が、世界へ発信され応用されるべきものになる。
  • -特にエネルギー必要量に関して-
    西岡 心大
    2016 年 31 巻 4 号 p. 944-948
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    ジャーナル フリー
    リハビリテーション (以下、リハと略) 病院・施設入院患者では40~ 50%に低栄養が認められ、リハアウトカムに悪影響を及ぼす。低栄養を認めるリハ対象者には国際生活機能分類 (以下、ICFと略) に基づきリハと栄養管理を同時に行うリハ栄養管理の考え方が有効だと考えられる。近年、欧州臨床栄養代謝学会および米国静脈経腸栄養学会により、低栄養は飢餓関連、慢性疾患関連、急性疾患/外傷関連の3タイプに整理され、栄養摂取不足のみならず炎症反応が低栄養の進展に寄与していることが明確化された。低栄養を認める場合、これらの成因を評価することは介入戦略の決定や栄養状態の予後予測に役立つ。一方、リハ栄養管理においては低栄養を認める場合、エネルギー必要量には体細胞成分の回復を考慮したエネルギー蓄積量を付加する必要がある。今後、代謝栄養学を踏まえた栄養障害と生活機能障害との関連の検証や、栄養管理とリハを組み合わせる最適な方法論の確立が望まれる。
  • 森 隆志
    2016 年 31 巻 4 号 p. 949-954
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    ジャーナル フリー
    摂食嚥下に関与する骨格筋群のサルコペニアによる嚥下障害は、サルコペニアの摂食嚥下障害 (Sarcopenic Dysphagia) と呼ばれる。サルコペニアの摂食嚥下障害の直接的な原因は脳卒中等のこれまで明らかに摂食嚥下障害を引き起こす疾患ではなく、フレイルの高齢者に低栄養、侵襲、廃用といったサルコペニアを亢進させる要素が加わる事で摂食嚥下障害が生じると考えられている。嚥下関連筋群の筋肉量・筋力の低下を観測した報告は複数されているがサルコペニアの摂食嚥下障害の明確な診断基準はこれまでなかった。2013年に全身の筋肉量・筋力・嚥下機能を勘案した診断法が提案され、この考え方を発展させた診断フローチャートが研究中である。サルコペニアの摂食嚥下障害への対策としては適切な栄養サポートと運動療法を用いるリハビリテーション栄養管理が有用である可能性がある。
  • 御子神 由紀子
    2016 年 31 巻 4 号 p. 955-958
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    ジャーナル フリー
    急性期病院の患者は高齢者、障害者が多く、入院前より低栄養、フレイルやサルコペニアを呈する者もいる。このような患者は短期間の入院でも不適切な栄養管理、安静、侵襲によりフレイル、サルコペニアを悪化させ、ADLの低下をまねく危険性がある。ADL低下を予防するためにも集中治療を含む急性期治療だけでなく、入院時よりリハビリテーション栄養の考え方にのっとり栄養とリハビリテーションの介入を開始していく。また、患者、患者家族を支えるために、入院中は積極的に多職種連携を行い情報共有をしていく。さらに、退院、再入院防止にむけ、医療保険、介護保険を駆使し、地域の介護、医療、福祉とも連携していくシステムが求められる。
  • 吉村 芳弘
    2016 年 31 巻 4 号 p. 959-966
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    ジャーナル フリー
    回復期のリハビリテーションを行う高齢者には、脳卒中、大腿骨近位部骨折、廃用症候群が挙げられ、いずれの疾患においても低栄養とサルコペニアが好発する。さらに、低栄養とサルコペニアはともにリハビリテーションの転帰に悪影響を与える。つまり、回復期リハビリテーションを行うすべての高齢者に対して、リハビリテーション単独の介入ではなく、リハビリテーション栄養管理を行うことが必須であると言える。リハビリテーション栄養のアセスメントのポイントは、「栄養障害を認めるか、原因は何かを評価する」「サルコペニアを認めるか、原因は何かを評価する」「摂食嚥下障害を認めるか評価する」「現在の栄養管理は適切か、今後の栄養状態はどうなりそうか判断する」「機能改善を目標としたリハビリテーションを実施できる栄養状態か評価する」の5つである。回復期のリハビリテーションにおけるリハビリテーション栄養に関する先行研究をレビューし、脳卒中、大腿骨近位部骨折、廃用症候群の疾患別のリハビリテーション栄養について考察しつつ、回復期リハビリテーションにおけるリハビリテーション栄養の現状と今後の展望について概説する。
  • 藤本 篤士
    2016 年 31 巻 4 号 p. 967-974
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    ジャーナル フリー
    慢性期高齢者は, 在宅居住者は居宅サービス施設・事業所などを利用したり, 施設定員が約160万人の介護保険施設や老人ホームで生活している. これらのサービス利用者や施設入所者には PEMの割合が多く, 廃用や栄養低下などに伴う筋萎縮の割合は介護度が上がるにつれて増加している. 高齢者の栄養管理の最重要目標は, 骨格筋量を維持して日常生活活動度の低下を防止することであると言われている .これを達成し, 再入院などを避けるためにも腎機能低下や摂食嚥下障害など高齢者の特性を考慮した適切な栄養管理と並行して, 十分なリハビリテーションを行うことが必要であるが, 現状の調査結果ではいずれも十分とはいえない. またサルコペニアやフレイルの予防にもリハビリテーション栄養の考え方が重要であり, 高齢化が進行する日本において, さらなる研究と実践が求められる.
原著
  • 堀内 俊克, 宮嶋 千秋, 圓谷 郷, 飯田 良平, 濱田 良樹
    2016 年 31 巻 4 号 p. 975-980
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    ジャーナル フリー
    【目的】「あいーと®」は、食べる意欲を喚起するために開発された摂食回復支援食である。本研究では、顎矯正手術後の咀嚼障害を有する患者における「あいーと®」の臨床的有用性を検証した。【対象と方法】咀嚼障害の状態にある顎矯正手術後の27例を対象とし、「あいーと®」群 (A群) 12例と従来食 (粥、軟菜キザミ食) 群 (C群) 15例に分けた。各群に術後9食を提供し、「見た目」、「味」、「分量」、「食べやすさ」、「食事中の疼痛」、「食後の口腔内残渣」など9項目の Visual Analogue Scale (VAS) を用いたアンケート調査を1食ずつ行った。また、アンケートの結果と各栄養素の摂取量を2群間で比較した。【結果】A群の方が、「主食・副食の見た目」「主食の味と分量」「副食の食べやすさ」「食後の口腔内残渣」で高く評価され、エネルギーとたんぱく質が効率的に摂取できた。【結論】「あいーと®」は、顎矯正手術後の咀嚼障害を有する患者の摂食回復支援食として有用であることが示唆された。
  • 神崎 憲雄, 西村 道明, 相澤 悟, 佐藤 法子, 山口 宗之, 山田 由美子
    2016 年 31 巻 4 号 p. 981-985
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    ジャーナル フリー
    【目的】経皮内視鏡的胃瘻造設術 (PEG) 症例における胃食道逆流の発生率と胃瘻からの造影検査 (胃瘻造影) の有用性について考察した。【対象と方法】2009年4月から2014年3月までに当院で PEGを行った216例である。PEG後、胃瘻より造影剤50mLを含む水250mLを注入し、透視にて食道への逆流の有無を観察した。【結果】胃瘻造影の結果、胃食道逆流は37例 (17.1%) に認めた。このうち6例は特に症状を認めなかった。胃瘻造影にて逆流を認めなかった179例 (82.9%) のうち、7例は胃食道逆流に伴う嘔吐や誤嚥性肺炎を認めた。栄養剤注入後、食道への逆流に伴う症状は17.6%に認めた。胃瘻造影の、栄養剤の胃食道逆流に伴う症状に対する感度は81.6%、特異度は96.6%であった。【結論】高齢者の PEG症例において、胃瘻造影は栄養剤の胃食道逆流に伴う症状に対する感度、特異度とも高く、胃食道逆流の予測において有用と考えた。
  • 三好 真琴, 宇佐美 眞, 寒原 芳浩, 石川(青山) 倫子
    2016 年 31 巻 4 号 p. 986-993
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    ジャーナル フリー
    【目的】腸内フローラは脂質代謝に関与するとされるが、臨床研究は少ない。今回は、肝癌患者の糞便フローラ・有機酸濃度と血中脂質・有機酸濃度の関連を検討した。【対象及び方法】肝癌患者46名を切除肝病理所見から正常、慢性肝炎 /肝線維症、肝硬変の3群に分け、上記を解析した。【結果】糞便フローラ・有機酸濃度は群間での差を認めなかった。正常肝群ではCandidaと血中リン脂質とは正の、Bifidobacteriumと血中エイコサペンタエン酸 (EPA) および EPA/アラキドン酸 (AA) 比は、負の相関を示した (p < 0.05) 。他方、肝硬変群ではLactobacillusとドコサヘキサエン酸、Candidaと EPA、EPA/AA比が正の相関を示した (p < 0.01) 。以上より、腸内フローラは脂質代謝に作用し、その効果は肝障害の程度によって異なっていた。【結論】腸内フローラは脂質代謝に影響する可能性が示唆された。
症例報告
  • 曽野 弘士, 平野 憲二, 三原 信, 山中 健生, 前田 滋
    2016 年 31 巻 4 号 p. 994-996
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    ジャーナル フリー
    【症例】褥瘡治療のため入院となった100歳の女性に、経皮内視鏡的胃瘻造設術 (Percutaneous Endoscopic Gastrostomy; 以下、PEGと略) を Introducer変法で実施した。術後は順調に経管栄養を開始したが、PEG後8日目に嘔吐が出現した。腹部 CTで胃壁気腫および門脈ガス血症 (hepatic portal venous gas; 以下、HPVGと略) を指摘された。血液生化学検査では、肝障害や炎症反応を認めなかったことから、保存的に胃瘻からの減圧と経管栄養の中止にて経過観察としたところ、PEG後14日目の CTではガス像は消失していた。【考察】PEGの合併症としての HPVGは稀である。HPVGは予後不良な病態とされ厳重な管理が必要だが、腹膜炎や腸管壊死などを伴わない場合には、保存的に治癒が可能と考えられた。
臨床経験
  • 櫨川 岩穂, 楊 淑恵, 藤枝 典子, 堀尾 香織, 狩場 宏美, 橋本 洋一郎
    2016 年 31 巻 4 号 p. 997-1002
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者において手術翌日食事再開時にも良好な血糖管理を行う目的で、術前状況を考慮したインスリン振分けスケール (以下、Scと略) を作成。Scでは術前治療内容と管理状況で症例を層別化し、体格、高齢、腎機能その他を考慮して最終的に8パターンに振分けた。目標血糖は食前140mg/dL未満、食後1hr 180未満 (220まで許容) に設定。期間を設けて評価し、Scを見直し修正した (計4期間 : 第1期48人、第2期49人、第3期121人、第4期103人) 。第4期における術翌日血糖 (全例平均± SD) は朝食前134±30.9、朝食後204±43.0、昼食前166±46.4、昼食後200±54.8、夕食前146±40.7、夕食後205±52.5、眠前 170±49.2であった。今回の方法で、1) 様々な症例をある程度目標内に管理し得た、2) 結果の評価が容易となり Scの修正や管理の改善につながった、3) 院内で指示が標準化された等の利点があった。Sc強化は低血糖増加につながる可能性もある。適応症例を適切に選別することも重要である。
  • 並木 真貴子, 大石 英人, 橋本 尚武
    2016 年 31 巻 4 号 p. 1003-1006
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    ジャーナル フリー
    ワルファリンと、ビタミン Kを含む TPNキット製剤フルカリック®輸液を併用し、プロトロンビン時間国際標準比 (PT-INR) のコントロールに大きく影響を与えた症例を複数経験したので報告する。それらを通して今後の NST薬剤師としての対応を検討し、NST勉強会で院内スタッフへ情報提供を行った。両剤の併用に気づいたときには、NST薬剤師と病棟薬剤師が協同して、他の抗凝固薬もしくはビタミン Kを含まない TPN組成への変更を提案することを考えた。しかし、各抗凝固薬の適応の問題や、ビタミン K未投与による PT-INR過延長のリスクなど検討すべき課題もある。ビタミン Kの静脈投与量の見直しも必要であり、薬剤師は併用薬との相互作用のリスクを評価しながら栄養モニタリングに努めることが重要である。
日本静脈経腸栄養学会認定地方研究会
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