日本静脈経腸栄養学会雑誌
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33 巻 , 3 号
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特集
  • 曹 英樹
    2018 年 33 巻 3 号 p. 831-834
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/20
    ジャーナル フリー

    小児においても経腸栄養が優先するが、栄養貯蔵量も少ない小児では、栄養の投与が十分でないと容易にタンパク栄養状態が悪化し、創傷治癒の遅延や易感染性、免疫力の低下などが生じる危険がある。したがって、経腸栄養が不可能な場合、不十分な場合にはすみやかに静脈栄養を導入すべきである。また、小児期発症の短腸症候群やヒルシュスプルング病類縁疾患などの腸管不全症例には長期間にわたる中心静脈栄養(total parenteral nutirition:以下、TPNと略)が命をささえる唯一の手段となる。TPNに伴う合併症に注意し、正しい知識による厳密な管理を行うことで、成長および長期生存が可能となる。

  • 片山 寛次
    2018 年 33 巻 3 号 p. 835-842
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/20
    ジャーナル フリー

    がんと診断された時から、緩和と栄養管理は治療と並行して進めるべきである。腸管が使えるなら生理的で免疫能維持に必要な経腸栄養(enteral nutrition;以下、ENと略)を優先すべきだが、病態や、環境によって静脈栄養(parenteral nutrition;以下、PNと略)の方が有利な場合があり、PN管理の技術が必要である。術前栄養スクリーニングの結果、必要なら入院前栄養管理計画を行う、経口補助が理想であるが不十分な場合、紹介医に依頼するが、我が国では末梢静脈栄養(peripheral parenteral nutrition;以下、PPNと略)が多く用いられる。検査絶食中のPPN、術後の栄養管理もENとPPNを中心に中心静脈栄養(total parenteral nutrition;以下、TPNと略)は必要ない。化学療法中・放射線治療中の栄養管理も重要で、できるだけ経口、ENで行うが、PNも有用である。悪性消化管閉塞症例の在宅緩和ケアでは在宅TPN(home parenteral nutrition;HPN)も用いられる。C/N比の低下、高血糖予防、PPNでは末梢血管維持のため高脂血症に注意しながら脂肪乳剤の側注が賞用される。PPNでは、TPNより水分負荷が高く、心不全、腎不全、高齢者や著しい低栄養症例では水過剰に注意する。HPNでは、地域で栄養・緩和に関する地域連携が必要で、在宅栄養パスや在宅緩和ケアパスの運用、地域でもクリーンベンチ設置によるHPNや持続皮下鎮痛薬剤の調整処方などが必要である。

  • 馬場 重樹, 髙岡 あずさ, 佐々木 雅也
    2018 年 33 巻 3 号 p. 843-847
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/20
    ジャーナル フリー

    炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis: UC)やクローン病(Crohn’s disease: CD)では消化管病変の増悪により静脈栄養を選択する場合がある。潰瘍性大腸炎治療の基本は薬物治療であり、静脈栄養は腸管安静や栄養状態改善の意味合いが強い。一方、クローン病治療は薬物療法と栄養療法の二本立てを基本とし、静脈栄養にて炎症の沈静化や粘膜治癒が期待できる。ここでは潰瘍性大腸炎とクローン病における栄養障害の特徴と静脈栄養の位置づけを記載するとともに、実際のエネルギー投与量の設定方法についても概説する。また、静脈栄養が有用であったクローン病の1例を提示し、免疫統御療法全盛の炎症性腸疾患診療における静脈栄養の意義について解説を行う。

  • 濵田 康弘, 井上 愛莉沙, 白井 由美子, 三木 誓雄
    2018 年 33 巻 3 号 p. 848-852
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/20
    ジャーナル フリー

    急性腎障害(AKI)患者においては、たんぱく質(アミノ酸)を強化し、overfeedingを避けるような栄養必要量の設定が必要であるが、腎不全というよりはむしろ、その元になる疾患によって大きく対応が異なる。一方で、慢性腎臓病(CKD)患者が低栄養をきたしやすいことは知られており、近年、「protein-energy wasting(以下、PEWと略)」という用語が提唱されている。CKD患者においては、体液・電解質異常を含めたホメオスターシスが維持されていない点を念頭に置く必要があるが、静脈栄養の適応自体はその他の疾患の患者と違いはない。経腸栄養ができるのであれば、静脈栄養より経腸栄養を優先するというのは基本原則ではあるが、経口摂取ができていても、状態改善のために静脈栄養を使用すべき症例も少なからず存在する。静脈栄養の利点と欠点を十分に理解した上で栄養管理・栄養療法を実施する必要がある。

  • 海塚 安郎
    2018 年 33 巻 3 号 p. 853-862
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/20
    ジャーナル フリー

    重症患者の栄養療法では、優先すべきは経腸栄養であり、経腸投与が実施出来ない、もしくは栄養投与量が不足する場合静脈栄養を開始する。開始時期、初期目標投与エネルギー値の明確なエビデンスは存在しないが、簡易推算式からの算出値を用い、漸増法で投与計画を立てる方法が一般的である。その際、高度な栄養リスク症例(入院前栄養障害、高度侵襲)では早期に開始し、目標値へ到達する積極的な静脈栄養療法は一考に値する。末梢静脈ルートでは、浸透圧比3以上の輸液製剤は血管障害のため投与出来ず、中心静脈経由では濃度の如何に関わらず投与可能である。栄養輸液製剤の浸透圧はブドウ糖液濃度に依存し、結果として投与水分量の多寡に関連する。複雑な病態時には、静脈栄養に精通したスタッフ(上級医師、薬剤師など)と共に処方を作成し、開始後はモニタリングを繰り返し、至適栄養に向けた処方調整が必要である。また、末梢静脈、中心静脈カテーテルいずれもカテーテル関連感染症のリスクがあることに留意する必要がある。

  • 星野 伸夫
    2018 年 33 巻 3 号 p. 863-868
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/20
    ジャーナル フリー

    本邦における静脈栄養の動向と問題点を示す1事例として、滋賀医科大学医学部附属病院における静脈及び経腸栄養製剤の購入量の調査を行った。その結果、末梢静脈栄養(peripheral parenteral nutrition;以下、PPNと略)及び中心静脈栄養(total parenteral nutrition;以下、TPNと略)キット製剤の購入量は、それぞれ2010年及び2012年をピークとする大幅な増加が認められたが、2012年以降は、静脈栄養製剤全般の購入量は減少した。一方、経腸栄養製剤の購入量は経年的に増加していた。TPNキット製剤の大幅な使用拡大は、同一組成の輸液の安易な長期連用につながる可能性があり、一方で、近年の静脈栄養製剤の使用の減少は、経腸栄養を偏重する風潮を示唆しているとも考えられる。栄養療法を完遂するためには、静脈栄養製剤の特徴と患者の生理機能の変化を把握しながら、静脈栄養と経腸栄養を適正に使い分けることが重要である。

原著
  • 清水 敦哉, 村松 博士, 倉 敏郎, 坂田 隆
    2018 年 33 巻 3 号 p. 869-874
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/20
    ジャーナル フリー

    【目的】胃瘻造設患者において高粘度の半固形造影剤投与時の胃食道逆流の頻度と食道裂孔ヘルニアの存在がどのように影響するか明らかにする。【対象・方法】内視鏡的胃瘻造設術(PEG)施行後2日以内の患者67例に粘度10,000mPa・sの半固形造影剤の投与を行い胃食道逆流の抑制効果について既報1)の粘度6,000mpa・sの効果と比較検討した。食道裂孔ヘルニアの合併による影響についても検討した。【結果】粘度10,000mPa・sの半固形造影剤の投与による胃食道逆流発生率は67例中9例(13%)で粘度6,000mpa・sの頻度66例中18例(27%)よりも低率であった。高度食道裂孔ヘルニアを有する症例では9例中4例(44%)に逆流を認めた。【結論】半固形造影剤の粘度を高めることにより胃食道逆流は有意に抑制された。しかし、高度食道裂孔ヘルニア患者では十分な抑制は困難であった。

  • 宮﨑 智徳, 井出 宏, 猪田 秀子, 堀内 美佳, 稲垣 清美, 中森 玲子
    2018 年 33 巻 3 号 p. 875-880
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/20
    ジャーナル フリー

    「目的」胃瘻は、摂食嚥下訓練も進めやすく経口摂取が可能となる症例も経験する。当院での摂食機能改善例と非改善例においてpercutaneous endoscopic gastrostomy(以下、PEGと略)前の臨床背景及び嚥下造影検査所見videofluoroscpic assessment(以下、VFと略)を解析し、PEG後の摂食機能改善の予測因子について検討した。「対象及び方法」当院でVFを施行後PEG導入し、経過を追跡し得た16例を対象とした。PEG後摂食嚥下機能が改善した10例(改善群)と、改善の見られなかった6例(非改善群)の臨床背景とVF所見を比較検討した。「結果」単変量解析では、改善群と非改善群とで臨床的背景因子に有意差は認めなかった。VF所見に関して喉頭蓋谷残留所見のない(咽頭クリアランス可能)症例が、改善群に有意に多かった。「結論」PEG術前嚥下機能評価のVF検査において喉頭蓋谷残留所見のない症例は、摂食・嚥下機能改善がみられる可能性が高いと考えられた。

  • 吉年 俊文, 岩間 達, 菊地 馨, 勝連 真人, 泉川 留里子, 儀部 由紀子
    2018 年 33 巻 3 号 p. 881-887
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/20
    ジャーナル フリー

    【目的】大腸全摘術が必要と考えられる小児難治性潰瘍性大腸炎患者における糞便移植の有効性を検討する。【方法】沖縄県立中部病院における単施設記述研究である。2015年8月から2017年7月に糞便移植を施行した15歳以下の潰瘍性大腸炎患者を対象に、患者背景や移植目的、方法、治療効果、合併症など、診療録を用いて後方視的に検討した。【結果】対象者は2歳から14歳の4名で、生物学的製剤などを使用しても寛解導入が困難な難治性潰瘍性大腸炎例であった。投与経路は、1例は大腸内視鏡下で経結腸投与し、3例は食道経由経腸栄養用チューブを使用した。1例は24ヶ月間の臨床的寛解維持に成功し、2例は一時的な臨床的寛解を示した。糞便移植による重篤な合併症はなかった。【結論】小児難治性潰瘍性大腸炎に対して糞便移植は安全に施行でき、一部の症例は臨床的寛解を示した。糞便移植は手術に繋がる前の一時的な寛解導入の治療となりうる。

臨床経験
  • 田中 美波, 本多 葵, 中村 真知子, 平野 憲二, 曽野 弘士, 貝田 英二, 前田 滋
    2018 年 33 巻 3 号 p. 888-891
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/20
    ジャーナル フリー

    【症例】①90歳男性、下腿熱傷:認知症により喫食量が不安定であり、デブリードマンを実施したが低栄養のため植皮術は保留となった。胃瘻で経管栄養を開始した後、身体拘束を減らした事で経口摂取量は安定した。栄養状態も改善し植皮術が行われた。②95歳男性、慢性閉塞性肺疾患増悪:嚥下障害のため経口摂取が困難であり胃瘻を造設した。リハビリテーションとの協働により喫食量も次第に増え経管栄養は終了、歩行器での歩行も可能となった。③91歳女性、脳梗塞:意識障害のため、総必要エネルギー量の4割しか摂取できない状態が続いた。胃瘻の造設後、ラウンジでの食事を試みたところ喫食量は増加、軽快退院した。【考察】90歳以上の超高齢症例において、胃瘻造設後に経管栄養を離脱し経口摂取を再開できた症例を経験した。胃瘻造設後も、ADLの維持・向上を目指した早期離床やストレスなく過ごせる環境の整備、生活リズムの調整が重要である。

症例報告
  • 村前 直和, 田渕 聡子, 上岡 美和, 山岡 慶子, 生田 智子, 北秋 翔子, 山本 育子, 山本 将士, 高橋 路子, 宇佐美 眞
    2018 年 33 巻 3 号 p. 892-895
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/20
    ジャーナル フリー

    43歳,女性.神経性やせ症で他院に通院中,摂食不良・体重減少が進行したため入院となった.refeeding症候群に留意し,少量から経腸栄養を開始した.経口摂取に切り替え後,腹部膨満感の訴えあり,腹部画像所見で多量の残渣を含んだ著明な胃および腸管拡張と腸管ガスの貯留を認めた.入院後徐々に下剤への強い依存がみられ,入院前から大量の下剤を服用していたことが判明し,下剤乱用による腸管機能低下が疑われた.下部消化管内視鏡では,病理所見で大腸メラノーシス(大腸黒皮症)を認め,下剤乱用症候群に合致すると考えられた.本人の嗜好にも配慮しながら,腸内環境改善を考慮した栄養剤を調整し,濃厚流動食を中心として栄養量の確保を行った.また,下剤依存からの離脱を目指した精神科的アプローチに加えて,排便トレーニングの指導を行った.多職種の介入によって,退院時には栄養状態の改善とともに下剤の使用を減らすことができた.

  • 佐原 稚基, 岡 正巳, 寺澤 宏, 藤田 洋一, 北谷 純也, 原 倫子, 木村 宴子, 林 郁絵, 瀧藤 克也
    2018 年 33 巻 3 号 p. 896-899
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/20
    ジャーナル フリー

    症例は79歳、男性。直腸癌術後3ヵ月以上経過してから発症した遅発性乳糜腹水に対し、オクトレオチドを中心とした薬物投与と脂肪制限食や成分栄養剤、total parenteral nutritionなどによる栄養管理を行った。しかし、食事制限を緩めると再び増悪傾向となり、十分な効果を得ることができなかった。入院5ヵ月後に在宅栄養管理へと移行し、退院後3ヵ月を経過して腹水のコントロールと栄養状態の改善が得られた。大腸癌術後の乳糜腹水の多くは経口摂取開始早期に発症し、症例の多くは保存的に治癒するため治療に難渋することは稀ではある。しかし、特に癒着や外因性圧排などが原因で起こる晩期発症例では、従来の保存的治療で速やかな改善が得られない場合がある。難治性乳糜腹水に対しては、たとえ長期間の治療を要してもきめ細かな栄養管理で全身状態が維持できれば、リンパ管の側副路が形成されると供に病態の改善が得られる可能性が示唆された。

日本静脈経腸栄養学会認定地方研究会
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