重量挙競技の一流選手を対象にしてプレス, スナッチおよびジャークの三種目の動作分析をおこなうとともに体力測定値, 競技記録などの年次的変遷を追求し, 国際的な競技会における競技記録などを資料に加えて比較検討し, 大要次のごとき結果を得た。
1.プレス種目では, 競技記録は経年的に増加が認められたが, 動作分析の結果においては全体的にはとくに指摘されるべき著しい変化は示されなかった。
2.プレス開始時の速度の変化がやや経年的に増加の傾向を示しており, 他との関連よりみて技術的な面では変改があり, プレス開始時の起動力の補助的な動作を下肢に求める傾向が認められた。
3.スナッチ種目においては, 重量の増加に伴いS.P点通過前の速度が大きいことが望ましいという関係は必ずしも認められなかった。
4.ジャンプバック距りは, 対象者の大部分が6競技会を通じて15cmより25cmの間に収斂していた。
5.ジャーク種目においては, 各時点間での加速性にかなりの差がみられ一定の傾向は見出せなかった。
6.躯幹角においても, KAでもその角度が僅かではあるが経年的に増加がみられたことは, 技術的な面の向上の結果を推定させた。
7.三種目において, クリーン動作中におけるS.P点での躯幹角, 即ち, A.H.J.はスナッチ, プレス, ジャーク種目の順で大きくなっていた。S.P点通過前後の速度の変化は, その角度と逆の関係を示した。
8.筋力, 努責圧, 反復横跳, ハーパードステップ, 垂直跳, 柔軟度および体型指数には特徴的な変化はみとめ得なかった。
9.競技記録のトータルにおいては, 経年的にかなりの上昇が認められ, 併せて選手間での差が小さくなっていることが認められた。
10.競技記録の三種目での各々の増加の割合は, プレス, ジャーク, スナッチ種目の順となっており, プレス種目に対して後二者は同程度の増加が認められた。
11.国外も含めて競技記録と挙上点数の変遷では, 経年的にはかなりの増加が認められたが, 国内の増加の割合は高く, 国際的な水準に接近してきた。
12.経年的な記録の上昇率は, 国内では三種目とも前回の増加率を僅かつつ上廻って上昇していたが, 国外ではスナッチ種目の割合が経年的に他の二者に比して小さくなりつつある傾向が認められた。
13.体重1kg当りの挙上重量は1960年に示されたものに比較して, その増加の割合は最小で約104%, 最大で約113%の値が示されており, 重量級になるに従ってその割合が大きい傾向が認められた。
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