男子被検者 (22才から58才まで) 9名のうち6名は50kmを8時間で歩き, 他の3名は40kmを7時間で歩いた.女子被検者 (21才から49才まで) 11名のうち2名は50kmを8.5時間, 4名は35kmを7時間, 残りの5名は20kmを5時間で歩いた.
全被検者が歩行開始前, 歩行終了後5分と1時間とに採血され, 血圧と尿の検査が行なわれ, 次のような所見が得られた.
1) 一般に収縮期・拡張期血圧ともに歩行後下降する傾向がみとめられたが, 尿には有意の変化が認められなかった.
2) 血液濃縮度は歩行距離とは関係がないが, 女子の20km歩行群を除き白血球数が著しく増加した.中性好性白血球が増加し, 淋巴球は著明に減少した.
3) 血中乳酸, 血糖及びFFAの増加度は必ずしも歩行量と比例しなかった.
4) CPK及びLDHの増加率は歩行量と比例的な関係にあったが, CPKの増加度の方が大きい.
5) 女子20km歩行群以外のLDH-5の増加度が大きいのは骨格筋のものと思われるが, 女子35km群以上, 男子50km群でLDH-1が有意に増大した点に注目したい.
6) 男子被検者3名につき, 20km歩行, 13km走, 20km走のLDH, LDH isoenzyme, CPK, GOT, GPTを検査した結果, 20km走が強度のストレスとなっていると思われる所見を得た.
以上の結果から一般成人に走歩の運動を処方する場合, 女子は20km歩, 男子は40km歩, 13km走程度までにするのが無難と思われた.
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