筋力発揮における反動々作の役割を, 運動速度ならびに筋パワーを指標として検討した一1運動には, 肘関節を支点とした上肢の伸展一屈曲動作を用いた。被検者は健康な成人男子4名, 負荷は最大屈腕力の10%と30彩とした。反動々作は3つの条件で行なわせたが, 屈曲動作はいずれも最大努力で行なわせた。おのおのの条件はつぎのごとくである。
Type Iは装置のギヤーが停止状態の時, 上肢を脱力させておく, ついで検者がストッパーを解除すると同時に負荷の落下を停止させる筋活動を行い, つぎに素速く屈曲動作に移行する。
Type IIはそれぞれの負荷を肘関節90°で支持し, 一時的に上腕二頭筋の活動を消失させて伸展する。
Type IIIはIIと類似していたが, 筋活動を消失させないで伸展する緩慢な動作であった。
また, 拮抗筋として上腕三頭筋の筋電図を記録し, 各Typeの特徴を検討した。
各Typeで伸展角度の大きさに違いがあるので, それぞれに対応した肘関節角度から屈曲動作のみを行なわせ対照とした。
(1) 筋パワーはType IIIがI, IIに比較して大きくなる傾向を示した。対照に対する増減率でも, 同様な成績を認めた。
(2) 立ち上り速度は, Type間に明らかな差異が認められなかった。対照との比較では, 10%P
0においてTypeH, 30%P
0ではType IとIIが有意に速くなる例がみられた。
(3) 伸展速度は, Type II, I, IIIの順に速かった。TyperIIとIIIでは, 同一被検者の場合10%P
0と30%P
0がともに近似した値を示したのに比べ, TypeIでは30%P0の方が10%poより速く, 他のTypeとは異なる成績を示した。
(4) Type IIの伸展動作時の筋電図に, 2つのパターンが認められた。ひとつは上腕三頭筋を積極的に活動させて上腕二頭筋の活動を抑制する例, 他の1つは拮抗筋をともに弛緩させる活動様式であった。後者の筋活動を示したものは, 伸展速度が速い傾向にあった。
(5) Type IIの伸展動作に対応させて弛緩動作を行なわせ, おのおのの動作時の筋電図を検討した。弛緩動作は等尺性に10%P
0と30%P
0の筋力を発揮させ, ついで随意に脱力して肘関節を伸展させる方法である。この時, 上腕三頭筋の活動が完全に消失しないものとするものがいた。消失しないものは, 反動々作の伸展時に上腕三頭筋を積極的に収縮させる傾向が認められた。拮抗筋をともに弛緩させたものは, 反動々作においても同様な弛緩状態を示した。
反動々作にみられる主運動に先立つ逆方向への動作は, 主運動の口的に応じて, その速度ならびに筋活動が異なってくるものと考えられる。筋の弾性要素や, 伸張受容器への伸張効果が, 逆方向への動作の行い方により異なってくるとすれば, 相反神経支配に依存した筋活動, あるいは拮抗筋をともに弛緩する方法を適切に利用しうることも重要なことと考えられる。
以上, 機敏な動作ならびにある時点で最大の筋力を発揮しようとするための有効な反動々作について, 2, 3の成績を得た。
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