学生並に一般の長距離走者に“24時間リレー”を負荷し, 種々の身体機能の変化を継時的並びに定量的に分析し, 次のような結果を得た。
1.学生長距離走者の1600m平均疾走時間の延長は約8~10回目 (12.8~16km) で明らかに認められるようになった。この出現には鍛練の差があり, 一般の長距離走者では短かく, 約5~6回目 (8~9.6km) に認められた。
2.1600m平均疾走時間とその標準偏差との間には正の相関 (r=0.55) があり, その回帰方程式はy=0.57X-162.3であった。一般の走者ではこの相関係数がr=0.53でその回帰方程式はy=0.348X-93.7となり, 学生長距離走者では一般走者に較べ疾走時間のばらつきが大きかった。
3.1600m疾走時間の大きな標準偏差 (±20sec) の出現時期は学生及び一般長距離走者間には差がなく, その約13回目 (約22.4km) であった。
4.体重減少量並びに1600m平均疾走時間の経過は相互に関連しているように思われるが, 体重減少量は気温, 湿度以外に風力並びに鍛練度の違いに大きな影響を受けた。体重減少の経過には初期とその後の経過とに違いが認められた。初期の体重減少量は最終体重減少量の約30~70%をしめ, 5~6回 (8~9.6km) まで連続した減少を示した。その後体重の増減を繰り返し, 経過も緩やかとなった。この経過を経ない走者は大きな減少を示した。
5.運動時心拍数は昼夜のどの走行においても180~189拍/分に達していた。安静時心拍数には日内変動が明確に認められたが, 被験者群では対照群よりいずれの時刻においても高く, 収縮期血圧も低下する傾向にあった。
6.膝蓋腱反射閾値並びに光反応時間には競技開始初期に亢進する傾向が認められた。しかし, 前者はその後日内変動を示し, 対照群との差は認められなかった。後者ではその後, 約30msec延長し, 競技終了時まで持続していた。しかし, 自覚症状の訴え率では総訴え率, 身体, 精神, 神経感覚症状共に33%, 20%, 25%となり, 酒井の規準をはるかに越えた訴え率となっていた。
7.学生長距離走者の1日当りの摂取カロリーは1240~2540Calであったが, 消費カロリーを平均速度, 総平均疾走時間, Warming-up時間, 安静代謝等を考慮し概算すると7457Calであった。
この背景には生体内での脂肪酸の動員並びに血糖の維持が関与していることが明らかとなった。
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