本研究は, 日本人成人女子27名を対象に皮脂厚を基礎とした体脂肪率 (%Fat) 推定法とD
2Oをトレーサーとして体内総水分量 (TBW) を求め体脂肪率を推定するD
2O希釈法とを比較検討した。
結果は次のように要約できる。
1) D
2O希釈法では, %TBWが同一の個体はすべて%Fatが同一であるが, 皮脂厚を基礎とした%Fatとの関係では, %TBWが同一であっても%Fatにかなりのバラツキがみられた。
2) 皮脂厚を基礎とした%Fatの推定傾向線はD2O希釈法の直線とほぼ平行ではあるが, %Fatを約10%過小推定することが明らかになった。
3) D
2O希釈法と皮脂厚を基礎とした推定式の2方法によって得られた%Fat間の相関係数は0.600で, それほど高いものではなかった。
4) クレアチニン法によって得られた%Fatは皮脂厚を基礎としたものより大きく, D
2O希釈法による%Fatと近似していた。
5) D
2O希釈法による%Fatと皮脂厚との相関は, どの部位もそれほど高くなく, Nagamine and Suzukiの推定式に採用されているtricepsとsubscapularの合成変量との相関係数 (r=0.600) はabdomenとの相関係数 (r=0.650) よりむしろ小さかった。
6) TBWと比較的高い相関は, 体重 (r=0.865) , 大腿骨端幅 (r=0.779) , 上腕骨端幅 (r=0.808) にみられた。
7) 人体計測値及び皮脂厚とTBWとの重回帰分析の結果, 重相関係数 (R) が0.903, 推定の標準誤差 (SEE) が1.276である体水分推定式が求められた。
TBW (liters) =-8.704+1.801 (Humerus breadth, cm) +1.798 (Femur breadth, cm) -0.092 (A.bdomen skinfold, mm) +0.190 (Weight, kg)
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