西平と荒木は本実験において生体を知覚一運動体として捉え, 体性感覚刺激大脳誘発電位成分の中で約25msec後に出現する陰性電位 (S.S.C.P.の中のN
2電位) を第1感覚野に達した電位と考え, 筋放電出現前約50~56msecに出現する電位 (運動電位) を運動皮質ニューロン活動の統合されたものと仮定し, 「動作遂行の遅速は入力―出力間, 具体的に言えば感覚一運動野間の処理過程の遅速に大部分依存している」という仮説を検討するとともに, 同時に運動電位の頭皮上分布も確認することが本実験の目的である。
本実験結果を要約すると次の通りである。
(1) 運動電位の頭皮上分布については, 右手正中神経刺激による左手反応動作の場合, 導出部位C
zを最大に, 導出部位C
4, C
3の順であった。右手正中神経刺激による右手反応動作の場合は, 導出部位C
zを最大に導出部位C
3, C
4の順であった。
(2) 導出部位C
3, C
z, C
4における反応時間と感覚統合時間との相関関係をみてみると, 右手正中神経刺激による左手反応動作の場合にはC
3がr=0.94 (p<0.001) , C
zがr=0.93 (p<0.001) , C
4がr=0.93 (p<0.001) で著明な相関を示した。右手正中神経刺激による右手反応動作の場合1こは, C
3がr=0.96 (p<0.001) , C
z力弐r=0.93 (p<0.001) , C
4がr=0.95 (p<0.001) で著明な相関を示した。
(3) 導出部位C
zにおけるCNVの振幅と反応時間との相関関係をみてみると, 右手正中神経刺激による左手反応動作の場合, r=-0.74 (p<0.02) で, 右手正中神経刺激による右手反応動作の場合はr=-0.83 (p<0.05) で著明な逆相関を示した。さらに反応時間とCNV出現潜時との相関関係をみてみると, 右手正巾神経刺激による左手反応動作の場合, r-0.50 (notsig.) で, 右手正巾神経刺激による右手反応動作の場合はr-0.65 (p<0.05) であった。
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