体力科学
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35 巻, 3 号
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  • 北村 潔和
    1986 年 35 巻 3 号 p. 127-133
    発行日: 1986/06/01
    公開日: 2010/09/30
    ジャーナル フリー
    筋持久力トレーニングが, 安静時, 作業中, 回復期の血流量に及ぼす影響を検討した.筋持久力トレーニングは, 3週間とし1日1回最大筋力の30%の負荷を60回/分のテンポに合わせて, 1cmの高さに疲労困憩まで持ち上げることによって行わせた.
    筋持久力作業は, ハンドエルゴメーターを用いて, 前腕血流量 (安静時, 作業中, 回復期) の測定は, 水銀ラバーストレインゲージプレチスモグラフ法を用いて行った.
    筋持久力は, 3週間のトレーニングによって約171.6%増大した (p<0.001) .
    安静時血流量は, トレーニングによって有意な変化を示さなかった.
    作業中最高血流量 (p<0.01) , 作業終了直前血流量 (p<0.05) , 作業終了直後血流量 (p<0.05) は, トレーニングによって有意に増大した.
    また, トレーニング3週間目の作業中血流量は, トレーニング前に比べて作業開始直後から高い値を示した.
    以上の結果は, これまでに報告されている筋持久力トレーニング効果の結果を確認し, さらに, 作業中血流量がトレーニングによって増大することを明らかにしたものと考えられる.
  • 杉浦 崇夫, 的場 秀樹, 村上 悳
    1986 年 35 巻 3 号 p. 134-144
    発行日: 1986/06/01
    公開日: 2010/09/30
    ジャーナル フリー
    Postnatal changes of myosin light chain patterns and enzyme activities were examined in the fast extensor digitorum longus and slow soleus muscles of Wistar strain rats aged 5, 10 and 20 weeks. Sex differences in each parameter were also studied.
    The results were summarized as follows:
    1) The extensor digitorum longus muscle contained mostly the fast light chains (fLC 1, fLC 2, fLC 3) . However, small amounts of the slow light chains (sLC 1, sLC 2) were also found. There were no postnatal changes in myosin light chain patterns in the extensor digitorum longus muscle.
    2) The soleus muscle contained slow and fast light chains (sLC 1, sLC 2, fLC 1, fLC 2, fLC 3) in 5 weeks of age, slow light chains being more predominant than fast light chains. There were an increase in the percentage of slow light chains and a concomitant decrease in the percentage of fast light chains with age. FLC 3 which was found at 5 weeks of age did not be detected in the soleus muscle from the 20-week-old rat.
    3) PFK activity decreased significantly with age in the soleus muscle, whereas there was no postnatal changes in PFK activity in the extensor digitorum longus muscle.
    4) There was a significant increase in SDH activity during growth in both the extensor digitorum longus and soleus muscles with the exception of the extensor digitorum longus muscle from the male rat.
    5) The enzyme activity ratio (PFK/SDH) significantly decreased with age in all muscles with an exception of the extensor digitolum longus muscle from the male rat.
    6) In the soleus muscle an increase in the relative amount of slow type myosin light chains and a decrease in the enzyme activity ratio (PFK/SDH) occurred coincidentally during postnatal growth.
    7) In most cases no significant sex differences existed in myosin light chain pattern and enzyme activity examined.
  • 安部 孝, 坂元 晃史, 広田 公一, 東 悳彦
    1986 年 35 巻 3 号 p. 145-151
    発行日: 1986/06/01
    公開日: 2010/09/30
    ジャーナル フリー
    Wistar系雄ラットを用い, 自由運動のトレーニング及び食塩の過剰摂取が血圧や体内コレステロール代謝に及ぼす影響についてしらべた.食塩負荷は1%食塩水とし, 飲料水として与えた.運動のトレーニングは10週間とした.結果は次のようであった.
    1) 収縮期血圧の上昇はわずかで各群間に差は認められなかった.2) 血清及び肝コレステロール値は運動群が有意に低い値を示した.3) 総コレステロールに対するHDLコレステロールの割合では運動一水道水摂取群で有意に高かった.4) 安静群の肝コレステロール合成能は食塩負荷によって有意に低下した.5) 運動群では週当りの運動レベルと肝コレステロール合成能との間に正の相関関係が認められた.
    以上の結果が示唆するように, Wistar系ラットでは水道水条件下と同様に, 1%食塩水を負荷した条件下においても, 運動のトレーニングは体内コレステロール代謝を改善し, 動脈硬化もしくはそれに起因する疾患の予防上, 好影響をもたらすものと結論した.
  • 向笠 由美, 金子 佳代子, 小池 五郎, 桜間 幸次, 万木 良平
    1986 年 35 巻 3 号 p. 152-160
    発行日: 1986/06/01
    公開日: 2010/09/30
    ジャーナル フリー
    体重階級制スポーツ選手の試合前の急速減量は, 急激な食事制限や水分制限, 発汗によるものであり, 著者らはそれらによる減量について適正な方法についての検討をしてきた.今回は, 体重調整期, 減量期から回復期に至るまでの体構成々分, 特に水分及び窒素の出納の面に着目し, 学生選手権に出場する62kg級のレスリング選手を対象として諸調査を実施した.その結果は次のとおりであった.
    各選手の体重は, 体重調整期及び減量期の9日間で4~11%減少したが, 試合終了とともに増加し, 回復期の3日間でほぼ調査開始時の体重に戻った.
    各栄養素の平均摂取量は体重の変化に伴い増減したが, 回復期において調整期のレベルで摂取されたのはエネルギー, 水分, ナトリウム, ビタミンAであった.他の栄養素は回復期における摂取に片寄りがみられ, 特に鉄については全期間を通じて所要量を下回っていた.ビタミンB群, ビタミンCについては個人差が大きかった.
    食物摂取量についても, 回復期において調整期のレベルで摂取されたものが見当らず, その摂取に片寄りがみられ, 栄養学的に不十分な食事であり, 体重の回復の内容は水分による度合が大きいことが示唆された.
    なお, D2O法による被検者の平均体水分量は体重の約68%であった.
    窒素及び水分の出納をみると, ともに調整期から減量期にかけて負の出納になったが, 試合終了とともに正に転じ, 体内への蓄積がみられた.しかし, 窒素については, 減量期において失われたものを完全に回復するまでには至らなかった.
  • 中塘 二三生, 田中 喜代次, 渡辺 一志, 福田 隆
    1986 年 35 巻 3 号 p. 161-167
    発行日: 1986/06/01
    公開日: 2010/09/30
    ジャーナル フリー
    本研究は, WingateおよびEvans-Quinney testが, 非乳酸性のエネルギー供給を主とした短時間の最大作業による最大無酸素性パワーの測定に応用できるかどうかを検討した (以下前者をWingate変法, 後者をEvans-Quimey変法とする) .これらの方法による無酸素性パワーの妥当性は, 幾つかの負荷から得た複数の無酸素性パワーの中の最大値を選ぶ方法 (以下, Selection法) および複数の無酸素性パワーを二次回帰式の利用によりPeak値を求める方法 (以下Peak法) との比較から検討した.これら4法の最大無酸素性パワーは, toe-stirrupの付いたモナーク社製自転車エルゴメーターを用いて, 8秒間の最大作業から測定した.被検者は, 男子25名と女子19名の運動選手である.結果は, 以下の如くとなった.
    1.Selection法とPeak法による最大無酸素性パワーの絶対値には有意差はなく, 両者間にr=0.995 (P<0.001) の有意な相関関係が認められた.
    2.Wingate変法による最大無酸素性パワーは, Peak法に比べて有意に低い絶対値を示したが両者間にr=0.937 (P<0.001) の有意な相関関係が認められた.
    3.Evans-Quimey変法による最大無酸素性パワーとPeak法による最大無酸素性パワーとの相関は, r=0.890 (P<0.001) であった.しかしWingate変法と同じくその絶対値は, Peak法に比べて有意に低く, 特に女子について著差が認められた.
    以上の成績より, 8秒間の作業によるWingate変法およびEvans-Quinney変法は, 男女の競技選手をプールした場合, 個人の非乳酸性エネルギー供給能を表す最大無酸素性パワーの有用な測定手段になりうると推察される.しかし, 特に女子選手を対象とする場合, これらの方法の利用には限界が認められる.
  • 琉子 友男, 福永 哲夫
    1986 年 35 巻 3 号 p. 168-174
    発行日: 1986/06/01
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    トレーニング経験のない16名の健康成人男子を用いて, 脚伸展筋の等尺性最大筋力に対する筋断面積の影響, および, 筋断面積あたりの等尺性最大筋力に対する外側広筋の筋線維組成の影響について検討し, 次の結果を得た.
    1.等尺性最大筋力と筋断面積との間には, 先行研究と同様, 有意な正の相関係数 (r=0.61, p<0.05) が得られた.
    2.筋断面積あたりの等尺性最大筋力と外側広筋の筋線維組成との間には, 統計的に有意な相関係数は得られなかった.
    以上の結果から, 静的な最大筋力を発揮することに対しては, 筋線維組成よりも筋断面積の方がより重要な影響を及ぼしていること, さらに, 筋断面積あたりの等尺性最大筋力の大きな個人差の生ずる原因は, 筋線維組成以外の要因に依るものであることが示唆された.
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