小学生1, 3, 5学年児童 (99名) を対象に静的筋力トレーニングを行なわせ, 主に筋断面積と筋力からトレーニング効果の有無を検討することを目的とした.トレーニング群 (以下TG, 52名) は以下に述べるトレーニングを行ない, コントロール群 (以下CG, 47名) には特に運動制限を加えず, 通常の学校生活を営むよう指示した.トレーニング内容は肘関節静的最大屈曲の10秒間維持を3分以上の休息を挾んで3回行なうことを1セットとし, 頻度は1日2セット, 1週隔日の3日, 期間は12週間とした.トレーニング効果判定のための測定として, 肘関節屈曲, 伸展の静的および動的筋力はCybexIIを用いて, また上腕組織横断面積は超音波法により測定した.また各被検者の骨年齢をTW2法により算出した.
結果は以下のとおりである.
1) 骨年齢の平均値 (標準偏差) は, 1年生では6.27 (0.98) 歳, 3年生では8.48 (0.89) 歳, 5年生では10.77 (1.22) 歳であった.
2) 上腕の全断面積の増加量 (増加率) は, TG全体で2.52cm
2 (8.9%) , CG全体で2.11cm
2 (7.3%) を示し, TGおよびCG両群とも増加した.
3) 筋断面積は, TGでは1年男子を除く各学年男女において統計上有意な増加が見られ, TG全体からみた増加率は10.3% (1.29cm
2) を示した.特にこの増加傾向は5年生の男子 (12.5%, 1.29cm
2) と女子 (12.7%, 1.80cm
2) に顕著であった.これに反して, CGでは5年女子を除いて, 統計上有意な変化を示さなかった.
4) 骨断面積は, CGでは統計上変化しなかったものの, TGでは3年男子 (p<0.01) および5年の男子 (p<0.001) と女子 (p<0.05) において有意に増加した.
5) 皮下脂肪断面積は, CGでは3年男子と5年女子を除く各学年男女で統計上有意に増加したのに対し, TGでは各学年男女とも統計的変化が見られなかった.
6) 骨年齢とトレーニングによる筋断面積増加量との間には, TGにおいて有意な正の相関関係 (r=0.36, p<0.01) が示され, 骨年齢の高いものがトレーニングにより大きな筋肥大を生じていることが推察された.
7) 静的最大筋力は, TG全体では屈曲力で5.7% (0.3kg) , 伸展力で17.5% (1.2kg) の増加を示した.一方, CG全体では屈曲力では殆ど変化は見られず, 伸展力で5.7% (0.3kg) の増加を示した.
8) 単位断面積当たりの筋力は, TGの5年男子においてのみ有意に増加 (22.5%, p<0.01) した.
9) 以上のことから, 思春期前児童においても成人と同様に, 静的筋力トレーニングにより静的最大筋力は増加し, しかも筋肥大が生じている可能性のあることが結論として考えられる.
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