長時間運動時の心周期分画及びQS
2/DTの変化の機序を明らかにするために, 健康な男子大学生16名を被検者とし, 短時間の漸増負荷と40分間の一定強度 (65%VO
2max) の2種類の自転車運動を行わせた.運動中の心電図, 心音図, 耳朶脈微分波, インピーダンス・カルジオグラフ及び動脈圧波からHR, SV, 血圧及び心周期分画を測定し, 結果について考察した.得られた主な所見は以下の通りであった.
1) 短時間運動の場合にはLVETi, QS
2i及びQS
2/DTはHRの増加に伴ってほぼ直線的に増加したのに対して, 長時間運動の場合にはいずれも運動2分目を境にして短時間運動時より減少し, そして15分目を境にして再び増加に転じて, その勾配は短時間運動時とほぼ一致した.またPEPiの変化には, 両運動において明らかな差異は認められなかった.
2) 短時間運動の場合と比較すると長時間運動の場合は同一HRに対するSVは運動2分目から減少し, 血圧は5分目から著しく低下した.
3) HR, SV及び血圧を独立変数とする重回帰式によってLVET, PEP及びPEP/LVETを補正して比較した結果, 長時間運動の場合にはいずれのパラメーターも短時間運動の場合より小さくなった.
以上の結果から, 長時間運動時のLVETi, QS
2i及びQS
2/DTが運動の初期から中期にかけて一旦減少する機序として, SVの減少及び血圧の低下の関与が考えられた.また, 長時間運動時には短時間運動時に比べると心筋収縮性の亢進が示唆されたが, 運動の中期から終了時にかけて心筋収縮性が低下し, これが同時期にLVETi, QS
2i及びQS
2/DTの増大した原因になったのであろうと推察された.
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