1) トレーニング期間を通してみると, 持久走所要時間は「夏から秋へ」, また「冬から春へ」において短縮されるが, 反面, 「春から夏へ」, また「秋から冬へ」において延長されるという一貫した季節的な反復性の周期が見受けられた.
2) とりわけ「夏から秋へ」のおよそ3ヶ月間の短縮相では, 走行速度が負荷強度としてますます大きくなっていく.そして, それがトレーニング効果をもたらし, トレッドミル走行の最終段階の走行速度 (Vmax) において, T1ではE群の147.5m・min
-1とC群の142.5m・min
-1の間に有意差はなかったが, 両群とも徐々に高まっていく中で次第に差が大きくなり, 特にT2とT4においてE群が有意に上回るようになった.
3) 同様に, 体重当り最大酸素摂取量 (VO
2max・TBW
-1) においても, E群ではこれらの短縮相を含むT1からT2, T3からT4にかけて有意の増加がみられ, そしてT2におけるE群の46.2ml・kg
-1・min
-1とC群の42.6ml・kg
-1・min
-1の問に, さらにT4におけるE群の50.4ml・kg
-1・min
-1とC群の45.9ml・kg
-1・min
-1の間に有意差が認められた.一方, C群ではすべての連続する2つのテストの間に有意の増加はみられなかった.
4) 延長相においては, 負荷強度は徐々に低下していくので, トレーニング効果をさほど期待することはできず, したがってフィールドにおける持久走のトレーニング効果の把握にあたっては, トレーニング期間とその季節的位置づけはもとより, トレーニング効果の確認の時期を考慮しないと相反する結論を導く危険性がある.
5) E群におけるVO
2maxの優位性は, 主として動静脈酸素較差の増大によるものであり, その背景には, 活動筋としての骨格筋組織における毛細血管の発達や有酸素性能力に関わる生化学的能力の改善が考えられる.
6) 幼児における持久走の導入にあたっては, 特に年中組においては, 季節的にみた最初の延長相は, 次に来たるべき短縮相の準備段階としてとらえ, 競走形式をとらず, ある一定の距離を数分間, 歩行を挿入しながら緩走する程度にとどめ, そして短縮相に入って子どもが自然に徐々に完走できるようになり, 所要時間も短縮されるというような姿で進めることが望まれる.
稿を終わるに当たって、ECGの解読にご協力いただいた循環器専門医桜井 杲先生, 実験群の栃木県烏山町宮原保育園長白川健一氏,対照群の宇都宮市御幸保育園長直井義親氏ならびに両保育園の職員各位,そして18ケ月という長い期間にわたって辛抱強く研究に参加していただいた園児に心から敬意を表し,深く感謝申し上げます.
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