近時大会社或は官庁などに於ての統計処理のオートメーシヨン化が進むにつれて, この種作業が更に多くなると考えられるが, このパンチング作業が女子に限られて居り, 女子の精神作業として今回の調査研究から今後の労働衛生学的対策を考えて, 次の如くに一応要約した。
膝閾値の測定及び反応時の測定から見ると, 現在の労働並びに休憩時間の配慮に於ては, 特に生理的に危険な疲労度を示すものとは考えられないが, 一般女子事務員と女子パンチヤーのブリツカー値から見た一日の疲労の変動を比較すると, 明かにパンチヤーの精1作業としての負荷が大きいことがわかる。それ故特に午前, 午後に各一回休憩時間を置くことは合理的と考える。現在ここに於て配慮されている休憩時間 (合計1時間45分) と労働時間 (実働7時間) では, 特に生理的に危険な疲労を発現するものとは見られないが, この種精神作業に於ては夏季に於ける作業環境の温度条件に対する考慮が必要である。即ち夏季には冷房効果によって作業室気温を夏季の最高気温時には26℃~27℃にし, 室内気温を28℃以上にしないことが望ましい。又出来得れば夏季にはビタミンB
1の投与なども望ましい。
作業環境条件として問題となるのは騒音である。穿孔作業によって起る騒音の高さは恕限度を越えるものであり (台数と作業室の広さにもよるが) , 労働衛生上今後の検討が考慮さるべきであろう。
パンチヤーの技能は, 経験年数1年数ケ月でほぼ一定に達するようであるが, 最初の数ケ月に於て技能が向上せず, 作業負荷に伴う疲労の大きな者は不適性と考えられる。
尚パンチヤーの一日の技能ストローク数の時間的変化は, 同社の報告によれば, 作業開始して午前の休憩までの能率は低く, 午後1時より3時頃の能率が最も高い傾向があるが, フリツカー値の変動から見て, 朝作業を始めてから午前の機械に慣れるまでのエネルギー消費が一日のうち最も大きく, そのため午前の休憩までにフリツカー値が最も大きく低下し, 午後は作業に慣れてリズムにのって作業が行われて能率の高い時にはフリツカー値の低下も少ないものと考える。
尚その他2, 3労働衛生上今後の問題点として考慮すべきは, 手痙攣の問題と, 1日7時間の拘束坐業による胃腸障碍の問題であろう。
稿を終るに当り御校閲を賜つた竹村助教授に感謝の意を表します。尚本論文の要旨は第11回日本公衆衛生学会総会に於て発表した。
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