日本門脈圧亢進症学会雑誌
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17 巻, 2 号
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Editorial
臨床研究
  • —食道胃静脈瘤編—
    林 星舟, 今村 潤, 木村 公則, 佐伯 俊一
    2011 年 17 巻 2 号 p. 74-80
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2013/12/24
    ジャーナル フリー
    NBI併用内視鏡を用いて食道胃静脈瘤の形成過程とその所見について検討した.食道静脈瘤は主として粘膜固有層浅部,固有層深部,粘膜下層の3層を走行する静脈の拡張により形成され,それぞれの血管走行やその拡張程度の違いにより内視鏡所見の異なる静脈瘤として観察されている.またRCsignは粘膜下層に存在する静脈瘤自体の屈曲蛇行あるいは局所的な嚢状拡張,その上方に位置する粘膜固有層の血管(主として柵状血管)の拡張あるいはその屈曲蛇行により形成されている.一方,胃静脈瘤は主として粘膜下層の静脈が拡張して形成されており,粘膜表層部の欠損あるいは菲薄化,びらん面,潰瘍面,斑状発赤は胃静脈瘤出血を予知する内視鏡所見と考えられる.これら食道胃静脈瘤の内視鏡所見の解析にはNBI併用内視鏡は有用なツールである.
  • 田邊 暢一, 泡渕 賢, 千田 信之
    2011 年 17 巻 2 号 p. 81-85
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2013/12/24
    ジャーナル フリー
    脾機能亢進肝硬変患者において,部分的脾動脈塞栓術(以下PSE)施行群17例とHassab手術群24例の治療後臨床症状と血液生化学検査を追跡することで,両者の安全性と有効性を比較検討し,それぞれの治療意義を明らかにすることを目的とした.PSE群においては,術後の発熱・疼痛に対して非ステロイド性抗炎症薬内服でコントロール可能であり,重篤な合併症は認められなかった.Hassab群では手術に伴う発熱・疼痛はコントロール可能であったが,門脈血栓1例と幽門形成術部出血1例があり,それぞれ肝不全から死亡に至り,合併症に細心の注意が必要と思われた.術前と術後4週の血液生化学検査を比較すると,PSE群ではプロトロンビン時間,血清アルブミン値,総ビリルビンに変化はなく,白血球数と血小板数に有意な増加が認められた.PSEは外科的介入が困難な症例においても先行治療としての意義があるものと考えられた.Hassab群では静脈瘤や脳症などシャント血管を有する患者においてはそれらの問題が一期的に解決できるだけでなく,白血球数と血小板数の有意な上昇に加え,プロトロンビン時間と総ビリルビンの有意な改善も認められた.
  • 富川 盛雅, 赤星 朋比古, 堤 敬文, 金城 直, 長尾 吉泰, 川中 博文, 前原 喜彦, 橋爪 誠
    2011 年 17 巻 2 号 p. 86-90
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2013/12/24
    ジャーナル フリー
    肝硬変に合併した腹部ヘルニア16例に対し,メッシュを用いた根治術(腹膜外アプローチ腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術(TEP)9例,メッシュプラグ法1例,腹腔鏡補助下オンレイメッシュ根治術5例,腹腔鏡下腹壁瘢痕ヘルニア手術1例)を行った.また,同時期の非肝硬変症例の外鼠径ヘルニアに対し施行したTEPの手術時間,術中出血量,術後入院期間,合併症,再発の有無につき比較検討した.平均手術時間は129分,平均出血量は56gであった.術後合併症として皮下血腫を3例,術後出血を1例,腹水増悪を1例に認めたが,いずれも保存的治療により軽快した.Seromaを1例に認め,穿刺吸引にて軽快した.16例の術後平均観察期間は688日であり,腹水破裂,メッシュ感染,ヘルニア再発はいずれも認められなかった.肝硬変に合併した腹部ヘルニアに対するメッシュを用いた根治術は,非肝硬変症例の外鼠径ヘルニアに対するTEPに比べると,手術時間が有意に長く,術中出血量が有意に多かったが,Child-PughクラスC症例も含めて安全に施行でき,難治性腹水症例に対しても有用であった.末期肝硬変に合併した腹部ヘルニアといえども可能ならばメッシュを用いて待期・予防的に根治術を施行するべきである.
症例報告
  • 橋本 直隆, 川中 博文, 赤星 朋比古, 金城 直, 小西 晃造, 吉田 大輔, 原田 昇, 副島 雄二, 武冨 紹信, 磯 恭典, 前原 ...
    2011 年 17 巻 2 号 p. 91-95
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2013/12/24
    ジャーナル フリー
    症例は59歳の女性で,3年前に総胆管癌に対し,肝左葉切除,胆嚢・胆管切除,右肝管空腸吻合術を施行され,術後1年目に右肝管空腸吻合部に発生した異所性静脈瘤からの出血を認めた.また,食道静脈瘤および脾機能亢進症も合併していた.右肝管空腸吻合部静脈瘤出血に対し,β-blockerの投与ならびに2回の経回結腸静脈的静脈瘤塞栓術(TIO)および,腹腔鏡下脾臓摘出術を行うも,再出血を繰り返すため上腸間膜静脈─下大静脈シャント術を行った.
  • 宮木 大輔, 相方 浩, 村上 英介, 長沖 祐子, 橋本 義政, 河岡 友和, 高木 慎太郎, 平松 憲, 脇 浩司, 高橋 祥一, 茶山 ...
    2011 年 17 巻 2 号 p. 96-102
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2013/12/24
    ジャーナル フリー
    症例は73歳女性,原因不明の慢性肝障害にて他院に通院中であったが,肝性脳症による入退院を繰り返すようになった.腹部造影CT検査にて肝硬変および腎静脈系短絡路を認め,門脈体循環シャントによる肝性脳症を疑われ,B-RTO目的にて当院に入院した.入院時の心エコー検査で,推定平均肺動脈圧35mmHgと肺高血圧を認めた.原因となる循環器,呼吸器疾患,膠原病は認めず,門脈圧亢進症に伴う肺高血圧症と考えた.B-RTOを施行し,脳症は改善を認め,肺高血圧症に対して,シルデナフィルクエン酸投与,在宅酸素療法を導入し退院した.退院後,経過良好であったが,退院6カ月後および8カ月後に脳症再発にて入院,アミノ酸製剤の投与にて軽快した.現在15カ月経過し,脳症の再発なく,肝予備能および肺高血圧症は,改善はないもののB-RTO前の状態を維持している.本症例は,門脈体循環シャントにおける門脈肺高血圧症の病態と治療法を考える上で示唆に富む症例であると思われ報告する.
  • 小畑 達郎, 竹本 隆博, 竹田 彬一
    2011 年 17 巻 2 号 p. 103-108
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2013/12/24
    ジャーナル フリー
    症例は50代男性.2007年8月,初回食道静脈瘤破裂で当院入院.緊急内視鏡ではLiF1CbRC1だったがT-Bil.=20.4mg/dL,PT=34%など肝予備能不良のため,出血点1箇所にO-ringを掛けただけで経過をみた.3カ月後退院.3~6カ月ごとに内視鏡で経過観察し,初回入院後2年1カ月までF1CwRC0以下で経過した.また,当院退院後に精神科受診し,2007年9月以後断酒していた.2010年4月,前日より黒色便を認め,当日鮮血色の吐血を認めて救急搬送された.緊急内視鏡では胃・十二指腸に出血源を認めず,0時方向の静脈瘤下端近くに白色栓を見出し,食道静脈瘤の再出血と診断した.直ちに出血点を含めて14箇所にO-ringを掛けて止血し,翌週EISを追加し,APC地固めを加えて経過観察中である.たとえ内視鏡所見がF1CwRC0にとどまろうとも,肝予備能が許せば静脈瘤を消失させて地固め療法を加えるべきと考えられる.
総説
  • 佐藤 隆啓, 山崎 克, 赤池 淳, 荒川 智宏, 桑田 靖昭, 中島 知明, 小関 至, 大村 卓味, 狩野 吉康, 豊田 成司
    2011 年 17 巻 2 号 p. 109-113
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2013/12/24
    ジャーナル フリー
    門脈圧亢進症患者における直腸静脈瘤の頻度はさまざまであるが,時に大出血を来す病態である.最近は門脈圧亢進症患者の予後改善により,食道胃静脈瘤以外の異所性静脈瘤の頻度が増加している.その中で最も頻度が多いのは直腸静脈瘤で,門脈圧亢進症患者が下血を起こしたときには本症も念頭に入れて,内視鏡検査を行うことが重要である.直腸静脈瘤を含めた門脈側副血行路全体の評価にはmagnetic resonance angiographyやcomputed tomographyが有効であるが,局所血行動態診断には超音波カラードプラ法が有用である.超音波カラードプラは直腸静脈瘤の存在診断のみならず,血流速度から直腸静脈瘤のgradeの評価が可能である.すなわち,血流速度の計測により,治療適応の判断に有用であることが示唆された.
  • —ガイドライン作成に向けて—
    橋本 直樹
    2011 年 17 巻 2 号 p. 114-118
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2013/12/24
    ジャーナル フリー
    脾摘後症例は,肺炎球菌を中心とした莢膜保有菌により重症感染症に罹患しやすくoverwhelming postsplenectomy infection(以下OPSI)として知られている.急激な臨床経過と高い死亡率のため治療法よりもむしろ予防に重点がおかれ,肺炎球菌ワクチンの接種,抗菌薬の予防的投与などが臨床的に推奨されている.欧米においては,OPSIの予防のため脾摘後患者に対する肺炎球菌ワクチンのガイドラインは普及している.しかし,我が国では,ITPに対するガイドラインのみであり,また脾摘後患者に対するアンケート調査においても,肺炎球菌ワクチンの投与はほとんどされていなかったのが現状であり,いまだ我が国においては,欧米のように脾摘後患者に対する肺炎球菌ワクチンのガイドラインが普及しておらず,早急に消化器病医,消化器外科医,救急医が中心になり,欧米のようなガイドラインの作成が急務のように思われる.
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