門脈-大循環短絡路を有する肝硬変合併肝性脳症に対して, バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術 (B-RTO) などの短絡路閉塞術が施行され, 良好な成績が報告されている.今回, 内科的治療抵抗性の反復性肝性脳症に対し, コイルによる巨大短絡路閉塞術が奏効した肝硬変症例を経験したので報告する.症例 : 62歳, 男性, アルコール性肝硬変.飲酒歴 : 日本酒5合/日, 35年間.55歳時, 肝機能障害を指摘されたが放置していた.56歳時, 腹水貯留, 57歳時, 食道静脈瘤破裂, 60歳時, 肝性脳症にて他院へ入院し, 内科的治療および内視鏡的静脈瘤結紮術 (EVL) を受けた.61歳時, 同院で肝S5に20mm大の肝細胞癌 (HCC) を指摘され, 当科紹介受診した.HCCは経皮的エタノール注入療法 (PEIT) により改善したが, その後, 肝性脳症を反復したため, 精査加療目的で再入院した.入院時羽ばたき振戦を認め, 血中アンモニア値は210μg/dlと上昇していた.入院後も内科的治療にかかわらず肝性脳症を反復した.各種画像検査および循環動態検査にて脾腎短絡路に加えて回結腸静脈-腎皮膜静脈-下大静脈 (IVC) 短絡路を有する正常圧門脈圧亢進症で, 脾腎短絡路内のアンモニア値は125μg/dl, 回結腸静脈-IVC短絡路内は368μg/dlであったため, 回結腸静脈-IVC短絡路に対しコイルによる閉塞術を施行した.施行後, 症状は軽快しアンモニア値も78μg/dlと低下した.巨大短絡路を有する正常圧門脈圧亢進症に合併した難治性肝性脳症に対する短絡路閉塞術は有効で, QOL、を改善させる治療法である.
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