小児急性リンパ性白血病の治療成績は近年飛躍的に向上したが,1歳未満に発症する乳児白血病の予後は未だ不良である.
われわれは,これまでに高度免疫不全マウスであるNOD/SCID/IL2rgKO(NSG)マウスを用いたヒト化マウスのシステムを確立し,研究を行ってきた.このモデルでは,NSGマウスに,ヒト造血幹細胞を移植することで,マウスの体内でヒト造血・免疫細胞が再構築される.さらに,NSGマウスに,患者由来のヒト白血病細胞を移植することで,マウスの体内にヒト白血病状態を再現することに成功した.
われわれは現在,乳児白血病の病態解明と治療成績向上を目指し,JPLSGとの共同研究を行っている.研究参加施設を通していただいた28例の患者検体の解析ならびに,これらの検体を用いた乳児白血病のヒト化マウスの作成を行った.これらの研究から,乳児白血病では,CD34やCD38の発現パターンや白血病発症能を有する分画(Leukemic Initiating cells: LICs)が,
MLL融合遺伝子のサブタイプにより異なることを示した.また,乳児白血病患者のLICsと正常造血幹細胞の遺伝子発現プロファイルの比較検討により,LICsに特異的に発現する表面マーカーを同定した.
近年,乳児白血病の病態生理について,理解が深まりつつある.われわれも,ヒト化マウスを用いた研究を通して,臨床へ還元したく考えている.
抄録全体を表示