悪性脳腫瘍に対する全脳脊髄照射(CSI)では頭蓋骨及び全脊椎の骨髄組織が障害されるため,CSI後の強力な化学療法では骨髄抑制が著しく遷延し,結果的に治療全体の強度が低下することが大きな問題である.そこで我々は,CSI及び強力な化学療法を要する悪性脳腫瘍に対しG-CSF単独の末梢血幹細胞(PBSC)採取を試み,化学療法に自家末梢血幹細胞移植(aPBSCT)を併用することとした.早期にCSIを開始するため,術後2週以内の採取完了を目指した.初発未治療例6例では中央値12.6×10
6/kg(3.9–21.6×10
6/kg)のCD34陽性細胞採取が可能だったが,うち2例では複数回のaPBSCTに十分な細胞数に達しなかった.再発例の2例では少なくとも1回の移植に必要な量は採取できた.これら4例ではaPBSCT併用化学療法1コース終了後に再度PBSC採取を行い十分量が確保できた(13.7–42.1×10
6/kg).術後2週以内のPBSC採取では白血球数が増加しやすい傾向にあったが,重篤な有害事象はみられなかった.全例で予定した複数回aPBSCTを実施でき,骨髄抑制の遷延をきたすことなく規定の間隔で化学療法を完遂できた.術後2週以内のG-CSF単独PBSC採取は安全に実施できたものの少数例の経験であり,術後早期にCSIを要する悪性脳腫瘍の集学的治療における有効性に関しては更なる検討を要する.
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