日本小児血液・がん学会雑誌
Online ISSN : 2189-5384
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53 巻 , 3 号
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第57回日本小児血液・がん学会学術集会記録
特別講演1
  • 水谷 修紀
    53 巻 (2016) 3 号 p. 175-181
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー

    2014年12月日本小児がん研究グループ(Japan Children’s Cancer Group, JCCG)がNPO法人として誕生しました.JCCGには小児がん治療・研究を専門とする日本のほぼ全ての大学病院,小児病院,総合病院や小児がん中央機関,全ての小児がん拠点病院,小児血液・がん専門研修施設が参加し,施設の数は約170に及びます.小児科,小児外科,脳神経外科,整形外科,耳頭頚部外科(鼻科咽喉科),放射線科,病理科,生物統計学など関連する全ての専門家集団が結集し,幅広い領域の小児がん克服支援体制を構築しています.

    日本においてがん(白血病,固形腫瘍)に罹患するこどもの数は毎年約2500名と考えられています.その9割近いこども達はJCCG参加施設において診断,治療を受けています.JCCGは欧米のCOG(Children’s Oncology Group)やBFM(Berlin-Frankfurt-Munster)グループと協力しながら,小児がんの最先端で最良の治療成果を日本や世界各国の子ども達に届けることを使命とするオールジャパンに立脚する統一組織です.

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特別講演2
  • 森本 幾夫
    53 巻 (2016) 3 号 p. 182-188
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー

    トランスレーショナルリサーチの例としてヒト化CD26抗体の悪性中皮腫への新規治療法開発について述べたい.

    CD26分子は110 kDaの膜タンパク質でdipeptidyl peptidase IV(DPP IV)酵素活性を持ちN末端から2つ目のプロリンやアラニンを切断する酵素である.

    悪性中皮腫(MM)は胸膜中皮細胞から発生する非常に攻撃的な腫瘍で,一般的にはアスベストばく露により発生し,非常に予後が悪い.

    有効な標準治療法は存在しないことから,新規かつ有効な治療法開発は急務とされている.

    我々はCD26分子は正常中皮細胞には発現しないが,上皮型中皮腫の約8割に発現することを報告した.更に,非常に生物学的活性の強い良質なヒト化CD26抗体を開発してゼノグラフトモデルマウスを用いて本抗体が強い抗腫瘍効果を有するという広範なデータを示してきた.

    本結果から,ヒト化CD26抗体は悪性中皮腫の新規治療法として臨床応用できる有望な可能性を強く示唆した.

    本抗体を用いて初めて人に投与する(FIH)第一相臨床試験をフランスにて行い,ヒト化CD26抗体は良好な耐容性及びCD26陽性腫瘍,特に治療抵抗性悪性中皮腫に対して有効性を示す予備的な証拠も得ることができた.これらの結果をふまえて,日本でも悪性中皮腫をターゲットとして,第一相臨床試験が近々開始される予定である.

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シンポジウム2: Novel molecular targets against childhood neoplasms
  • 赤羽 弘資
    53 巻 (2016) 3 号 p. 189-195
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー

    近年の強化された化学療法によってT細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)の治療成績は向上したが,初期治療に不応の症例や再発した症例の予後は依然として不良であり,新たな治療法の開発が望まれている.筆者らは,チロシンキナーゼTyrosine kinase 2(TYK2)がT-ALL細胞の生存維持に関与しているという知見をもとに,TYK2の安定化に関わる分子シャペロンであるHeat shock protein 90(HSP90)を標的とした治療薬の有用性を検討した.HSP90阻害剤であるNVP-AUY922(AUY922)は,複数のヒトT-ALL細胞株において増殖を抑制しアポトーシスを誘導した.AUY922はT-ALL細胞株でTYK2の分解を誘導してSTAT1を脱リン酸化するとともにBCL2の発現を抑制した.BCL2を遺伝子導入したT-ALL細胞株ではAUY922で誘導されるアポトーシスが抑制されたことから,BCL2の発現低下はAUY922によるアポトーシスの誘導に必須であると考えられた.また,更なる解析で,アポトーシス促進性BCL2ファミリー蛋白であるBIMとBADの発現誘導もAUY922によるアポトーシス誘導に関与していることが明らかになった.これらの結果は,HSP90阻害剤がT-ALLの新たな治療薬になりうる可能性を示唆している.

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シンポジウム8: Hematologic disorders in Down syndrome
  • 後藤 裕明
    53 巻 (2016) 3 号 p. 196-202
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー

    ダウン症候群(Down syndrome: DS)の小児では様々な先天性・後天性疾患の罹患頻度が高く,急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia: ALL)もDSの小児に発生することが多い疾患のひとつである.DSの小児では小児全体と比較してALLの罹患率が10~30倍高い.DS-ALLの予後は他の小児ALLと比較して不良であるが,その要因にはDS-ALL細胞そのものの特徴と, DS患児の身体的特徴の両者が関係している.細胞学的な特徴として,DS-ALLには小児ALLにおけるrecurrent chromosomal translocationがみられることが少なく,ETV6-RUX1融合遺伝子など予後良好因子を持つ症例の少ないことが,DS-ALL全体の予後に関係している可能性がある.CRLF2-JAKシグナルの異常活性化はDS-ALLの半数以上において認められ,将来の治療標的となる可能性がある.DSの患児はmethotrexateをはじめとする抗白血病薬に対する忍容性が低く,特に化学療法中の皮膚・粘膜障害,重症感染症が問題となる.強力な化学療法はDS患児における治療関連死亡の原因となるが,一方で,過度な治療薬の減量はALLの再発率を増加させる可能性がある.今後はより多くの症例に対して統一された方針で治療を行い,支持療法を含め,DS-ALLに対する適切な治療法を開発する必要がある.DS-ALLの治療における問題点はDSの小児に決して特異的なものではなく,DS-ALLに対して安全かつ有効な治療法は他の小児ALL症例の多くにとっても有望な治療となりうることが期待される.

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  • 多賀 崇
    53 巻 (2016) 3 号 p. 203-207
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー

    ダウン症候群に発症した骨髄性白血病(ML-DS)は,ほとんどがFAB分類M7の形態で4歳までに発症,芽球の薬剤感受性が高い一方治療毒性が強いなど,非DSに発症したAML(AML-non DS)と違った特性をもち,独立した治療研究が行われている.欧米ではAML-non DSと骨格は同じとし投与量の減量を行ったものが行われているが,本邦ではML-DSに特化したものが行われてきた.これらの背景を踏まえ,日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)によるML-DSに対する前向き臨床試験,AML-D05試験が行われた.本邦でのこれまでの治療研究をもとに,初回寛解導入療法に基づき,形態学的に寛解が得られたものを標準リスク群(SR),非寛解であったものを高リスク群(HR)とするリスク層別化治療で,SRには前研究よりも治療軽減,HRには持続ならびに大量シタラビンによる救済療法を行った.72例の登録があり,3年無病ならびに全生存率はそれぞれ83.3%と87.5%であった.HRはわずか2例で,リスク層別化は不成功であったが,大多数を占めたSRは治療軽減にもかかわらず治療成績の低下はみられなかった.再発・寛解導入不能のML-DSは極めて予後不良であることから,予後因子としての微小残存病変(MRD)の評価を行うべく,JPLSG AML-D11試験が施行されている.

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シンポジウム9: AYA世代に優しいがん治療を目指して ~内科的・外科的新治療の試み~
  • 清水 光樹, 川井 章
    53 巻 (2016) 3 号 p. 208-211
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー

    四肢骨軟部肉腫の手術では患肢温存術が可能である症例が増えている.しかし,腫瘍用人工関節による再建方法は,長期的な成績が必ずしも良好とは言えない.長期の生存が期待されるAYA世代の治療においては,自家組織を積極的に用いた人工関節を用いない再建方法も選択肢として考慮してよいと考える.

    また,AYA世代における肉腫の組織型は全国骨軟部腫瘍登録のデータから調べると通常の成人例とは異なる.AYA世代に頻度の多い肉腫の特徴を反映して,診断時のリンパ節転移率や遠隔転移率が高い特徴がある.

    AYA世代の四肢骨軟部肉腫患者に対しては,長期生存,診断時リンパ節転移率・遠隔転移率を考慮し,成人型骨軟部肉腫とは異なった外科治療のアプローチを検討する必要がある.

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  • 古井 辰郎, 牧野 弘, 竹中 基記, 寺澤 恵子, 菊野 享子, 森重 健一郎
    53 巻 (2016) 3 号 p. 212-218
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー

    がん診療における診断・治療は患者の生命予後を飛躍的に改善し,長期生存患者のQOL(quality of life)という問題にも目が向けられるようになってきている.とりわけAYA(adolescents and young adults)世代に対する化学療法,放射線照射,外科的処置の結果生じる生殖内分泌異常,不妊の発症はQOLを大きく損なう.特に早発卵巣不全(POI)は難治性不妊となる.一方,生殖医療の進歩によって,がん治療前の妊孕性温存の選択肢が検討可能となり,がん治療前の情報提供がより重要と認識されるようになってきている.本稿では,がん治療による卵巣機能低下と不妊,さらに国内のがん・生殖医療の現状について言及する.

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多診療科シンポジウム(教育セッション): 造血幹細胞移植
  • 今村 俊彦
    53 巻 (2016) 3 号 p. 219-222
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー

    小児急性リンパ性白血病は,その85–90%程度の症例が治癒する時代となり,世界的には同種造血細胞移植の適応についても縮小されつつある.

    また,全身放射線照射やブスルファンを用いた骨髄破壊的移植は,特に成長期の小児において,内分泌学的異常を中心とした,様々な晩期併発症を誘発し,たとえ原疾患が治癒したとしても,その後の患児の生活に多くの問題を残す.

    こうした点からも,小児の急性リンパ性白血病の同種造血細胞移植においては,本治療によって最大の恩恵を受ける患者をいかに選ぶか,という点は極めて重要である.

    近年の分子生物学的検査法の進歩により,治療の経過中に体内にどの程度の白血病細胞が残存するか(微小残存病変)を正確に判定することが可能となった.これは,真に治療反応性が悪い患者を最も正確に同定できることを意味し,微小残存病変の有無が,小児急性リンパ性白血病における移植適応を決める,主要な指標となることの所以である.本稿では,再発小児急性リンパ性白血病の症例を提示し,いかにして移植適応を決めていくかを考え,あわせて,同種造血細胞移植の“光と影”について概説した.また,近年の再発クローンの遺伝子解析や,新規抗体および細胞治療の出現をふまえ,再発急性リンパ性白血病の同種造血細胞移植を含めた今後の治療のあるべき姿についても考察したい.

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  • 田中 秀則
    53 巻 (2016) 3 号 p. 223-230
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー

    造血幹細胞移植は,免疫抑制剤の進歩および移植元となる骨髄,臍帯血等のドナー選択の範囲は広がっていることから,HLA適合性の解釈はドナー選択も含めて複雑となっている.骨髄バンクデータ解析で報告された重症GVHDリスクが高まるアリルミスマッチは, HLA分子構造上のアミノ酸の違いからも説明が可能であることから, まれなアリルに対してもドナー選択に応用可能となる.また,HLA-A, -B, -C, -DPB1座では1座ミスマッチが生存に不利になるが,HLA-DRB1-DQB1座の場合,両方がミスマッチの場合生存に不利となる.HLA-C座は再発に有利に働くが,NK細胞のレセプターのリガンドミスマッチによって腫瘍特異的免疫反応が活性化された結果と考えられる.一方,血縁者間移植は,HLA-A, -B, -DR座抗原マッチと非血縁のHLA-A, -B, -C, -DRB1アリルマッチが同等の移植予後であるが,免疫抑制剤の寄与は大きく,実際にHLA遺伝子領域内に存在するHLA以外の多型により免疫反応が誘発される.臍帯血は細胞数やミスマッチ数が小児の場合に予後の影響があり,成人は成績が変わらない.また,臍帯血移植で,ドナー特異的HLA抗体が生着に不利であるデータが報告され,移植前のHLA抗体検査が必要とされるようになった.現状のHLA抗体は,Luminex法で行われる場合が多く,蛍光値として結果が得られるため抗体価の指標となるが,陽性-陰性の閾値は移植片の種類により異なる.Luminex法等の精製HLA抗原を用いた検査では,精製抗原特有の特異性が検出される場合があり,抗体の抗原認識部位(エピトープ)等を推定し同一抗原群での反応性であることを判断する必要があり,ドナーとの仮想(バーチャル)クロスマッチを実施することでドナー特異的抗体陰性のドナーを選択するのが望ましい.

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  • 石田 也寸志
    53 巻 (2016) 3 号 p. 231-238
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー

    小児では成人と比較して移植成績が良好で長期生存率が高く,生存期間も長いことから,成人以上に移植後長期フォローアップ (FU) の重要性が高い.移植後の晩期合併症には,全身照射と大量化学療法のいわゆる前処置に伴うものと慢性Graft versus Host Disease(GVHD)によるものと大きく二つの機序がある.移植群では40%以上にやせが見られ,低身長の頻度は非移植群の2倍となり,晩期合併症は78%(非移植群45%)の高率に観察される.呼吸障害は生命予後に関わる重要な合併症で,内分泌障害が高率に生じ成長障害・甲状腺機能障害が主なものである.骨髄破壊的移植後の性腺機能障害は高率で不妊率も極めて高く,今後妊孕性に関する配慮が必要である.移植後は二次的免疫不全となるためワクチンの再接種は不可欠である.二次がんとしては,移植後の固形腫瘍累積発症率が高く,発症には慢性GVHDと放射線治療が関わっている.移植後のQOLを評価した研究も増加しており,本邦でも31施設が参加し患者調査用紙と医師用調査票が464組で回収される大規模な研究が行われ解析が進んでいる.本邦でも日本造血細胞移植学会が中心となり長期FUガイドラインが作成中であり,長期FU体制整備と移植後早期の積極的な晩期合併症スクリーニングと介入,健康教育の普及が進むことが期待される.

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多職種医療者合同シンポジウム: 小児がんの子どもと家族の治療・検査・処置における意思決定プロセスを支える多職種連携
  • 齋藤 義正, 寺門 浩之
    53 巻 (2016) 3 号 p. 239-244
    公開日: 2016/10/01
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    小児がんに対する化学療法は固形がんから血液腫瘍まで幅広く,子どもに対する治療は,成人とは異なるアプローチが必要になる.小児がん医療における薬剤師の役割は,がん化学療法を安全かつ適切に実施することであり,その活動内容として,がん化学治療レジメンの管理,処方監査,支持療法などの処方提案,服薬指導,副作用モニタリング,および医療スタッフへの情報提供などが挙げられる.患児に治療の理解を促すため,わかりやすい表現を用いた治療の手引きを利用することがあるため,その作成も重要な役割である.

    アドヒアランス低下は予後に影響することが報告され,服薬拒否や飲み忘れをいかに防ぐかという課題に対して小児医療チームとして取り組む必要がある.もし嗜好によるものなら,剤形の変更,単シロップなどによる矯味,オブラートやカプセルの使用,同効薬への変更,脱カプセルや錠剤の粉砕などの解決策を伝え,患児や家族と一緒に考えることが有効である.患児とのコミュニケーションを図るのが難しい場合でも,患者家族や他職種と連携することによって解決できることが多い.

    薬は持っているだけでは効果が得られないため,患児とその家族が受容できる方法を一緒に考えながら薬物療法を支援していく必要がある.適切な薬物療法支援を行うためには,小児医療チームの中で情報を共有し,患児とその家族の背景を含めた治療の全体像を把握することが大切である.

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  • 横川 めぐみ, 恩田 聡美, 石橋 裕子, 野々村 かおり, 片山 麻子, 樋口 明子
    53 巻 (2016) 3 号 p. 245-249
    公開日: 2016/10/01
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    子どもが小児がんになった時,親は様々な思いを抱える.診断当初は混乱も多く,また患児が幼い場合は,親が代わって様々な意思決定を行うようになり,決定に対する迷いが生じることも多い.そのため,多職種が患児・家族をサポートしていくことは重要である.多職種の一員として,ソーシャルワーカーは,患児・家族の話をきくことで,気持ちをうけとめ,状況を整理し,院内外のスタッフや社会資源と連携することで患児・家族を支援する.また,患児・家族に関わる時「生活」という視点を持ち,将来を見据えた支援も行っている.

    小児がん患児の7割から8割が治療を終えることができるようになってきた現在は,患児の自立に関する相談も多い.成長に伴い,患児自身が病気を知り,治療選択や健康管理に関わっていくことも重要になる.しかしながら,親や周囲とのコミュニケーションが難しくなるAYA(Adolescent and Young Adult)期の患児については,患児が話しやすい職種が関わることも重要になる.その選択肢の一つにソーシャルワーカーが挙げられるだろう.

    患児が意思決定に関わるようになる時,患児を支える親の気持ちを受け止め,フォローすることも大切であり,同時に,患児や親に影響を与える存在として,きょうだいという家族の存在もある.ソーシャルワーカーは院内からは見えにくい家族にもアプローチし,他職種と連携していくこともある.

    院内で働く多職種の一員としてソーシャルワーカーが活用されることを願っている.

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教育セッション5: 腎腫瘍・肝腫瘍
  • 大植 孝治, 佐々木 隆士, 田中 夏美, 銭谷 昌弘
    53 巻 (2016) 3 号 p. 250-255
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー

    小児悪性腫瘍の治療成績は,集学的治療の発展とともに急速に向上したが,発生頻度が低いため,新規治療法の開発のためには多施設による共同研究が不可欠である.本邦では2014年に小児腫瘍の研究グループが統合され,日本小児腫瘍研究グループ(Japan Children’s Cancer Group; JCCG)が結成され,小児悪性腫瘍の臨床試験を統一して行われるようになった.

    小児悪性固形腫瘍の中でも,肝芽腫,腎芽腫は手術による全摘出が根治のために重要であり,小児外科医が中心となって他の固形腫瘍に先駆けて1990年代より全国で多施設臨床研究が開始された.本稿では,過去の臨床試験の結果から小児肝腫瘍・腎腫瘍の治療上の問題点を明らかにし,それを克服するべく,どのようなコンセプトで次世代の新たな治療プロトコールが開発されつつあるのかを解説する.いずれの腫瘍においても,新しい治療プロトコールでは患者を低リスク,中間リスク,高リスクとリスク群に応じて群分けを行い,低リスクの症例では治療を軽減して治療合併症の軽減を図り,高リスクのものでは治療を強化して治療成績の向上を目指すことにより,治療成績の向上と,患者のQOLの向上を目指して新しい治療法が開発されている.

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教育セッション6: AML
  • 富澤 大輔
    53 巻 (2016) 3 号 p. 256-265
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー

    小児の急性骨髄性白血病(AML) の治療成績は,シタラビンとアントラサイクリン系抗がん剤(ATC) を中心とした抗がん剤治療の強化,遺伝子染色体異常および治療反応性に基づくリスク層別化と造血幹細胞移植適応の適正化,支持療法の進歩等により,現在では長期の無イベント生存率が約60%,全生存率が約70%にまで到達した.しかしながら,小児AML患者の10%近くが寛解導入不能に陥り,寛解を得た症例でも約30%が現状では再発している.これら再発・難治AML患者の全生存率は30%程度にとどまっており,依然として白血病の克服が小児AMLにおける最大の課題である.AML治療の改善に向けて,①従来治療のさらなる強化,②新規予後因子の抽出とそれに基づくリスク層別化治療,③新規治療の導入,の3本を柱として治療開発が行われている.従来治療の強化として,小児では晩期合併症を軽減する観点から,シタラビンまたは心毒性の少ないATC製剤の強化が中心となっている.新規予後因子としては,遺伝子解析技術の進歩を背景に新たな遺伝子変異が同定されている他,微小残存病変による治療層別化も行われている.最終的には新規治療の開発がAMLの予後改善には必須であり,分子標的治療や免疫療法などの臨床試験が試みられている.AMLの新規治療開発は成人を中心に行われており,小児AMLに対する開発環境の整備も重要な課題である.

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原著
  • 坂田 尚己, 上田 悟史, 岡野 意浩, 今岡 のり, 杉本 圭相, 安井 昌博, 森口 直彦, 岡田 満, 竹村 司
    53 巻 (2016) 3 号 p. 266-272
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー

    当科における小児後天性造血不全症9例の臨床経過について報告する.性別は男5例,女4例で,年齢の中央値は7歳(6~19歳)であった.診断は4例が再生不良性貧血(再不貧)で,4例がrefractory cytopenia of childhood(RCC),1例がrefractory cytopenia with multilineage dysplasiaであった.抗胸腺細胞グロブリン(ATG)とシクロスポリンによる免疫抑制療法(IST)は,5例に計6回施行された.RCCの1例が,IST後半年でpartial response(PR)が得られたが,その他はno responseであった.同種骨髄移植(BMT)は,9例に計10回(血縁同胞;3回,非血縁;7回)施行された.前処置は,fludarabine/cyclophosphamide (CY)/ATGが中心で,症例により全身放射線照射(3 Gy)を加えた.また,骨髄に異形成を認める例では,melphalanを用いた.全例に生着は得られたが,内 1例でドナー型造血不全となり再移植を必要とした.II度以上の急性GVHDは5例(内1例はリンパ球輸注後)に認められ,慢性GVHDは2例(内1例;全身型)であった.その他の移植関連合併症として重症型微小血管障害,重症筋無力症および延髄脳腫瘍(移植後39か月)を認めた.少数例であるが,当院でのISTの有効率はこれまでの報告より低かった.全例,フルダラビンレジメンで生着が得られ,晩期生着不全は認められていないが,GVHDや晩期障害が移植後のquality of lifeに影響した.

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症例報告
  • 伊川 泰広, 西村 良成, 酒井 清祥, 野口 和寛, 福田 正基, 藤木 俊寛, 馬瀬 新太郎, 黒田 梨絵, 荒木 来太, 前馬 秀昭, ...
    53 巻 (2016) 3 号 p. 273-276
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー

    中心静脈カテーテル(central venous catheter:以下,CVC)は悪性疾患に対する化学療法の安全性を向上させた.一方で,カテーテル感染や血栓性静脈炎,fluid extravasationなど,多彩な合併症を呈することも知られている.今回我々は,小児急性白血病患者にCVCを留置中,突然の胸痛と呼吸苦を訴え精査にて静脈穿破が確認された2症例を経験した.両症例とも,左上腕より挿入し,挿入後1ヶ月以内に発症した.画像検査にて大量の胸水貯留を認めるが,CVCから少量の造影剤を注入することでCVC先端と胸腔との間に直接交通がないことを確認した.当院で施行している造影剤注入によるCVC先端位置の確認は,CVCによる静脈穿破の診断に加えてCVC抜去に伴う大量出血の有無を予知する優れた方法と考えられる.

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  • 東間 未来, 山本 裕輝, 小森 広嗣, 広部 誠一, 湯坐 有希, 金子 隆, 藤田 和俊, 河野 達夫
    53 巻 (2016) 3 号 p. 277-280
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー

    今回,我々は腹腔内出血から出血性ショックに至った右副腎原発の進行神経芽腫症例を経験した.症例は18カ月男子で,出血性ショックに対して腫瘍血管塞栓術を施行した.右中副腎動脈のextravasationを確認し,これを塞栓した.その後も断続的に出血が続いたため塞栓術を繰り返したが,3回目の血管造影では出血点を確認できず,一期的腫瘍摘出術を選択した.腫瘍は肉眼的に全摘し,術後化学療法と末梢血幹細胞移植を行って寛解退院した.以後4年間の無病生存を得ている.

    神経芽腫からの出血はoncologic emergencyの一つとして常に念頭に置いておかなくてはいけないものである.特にN-myc増幅例では出血のリスクが高いとされており,化学療法中に腫瘍出血を来す例も散見される.このような状況下での止血法として塞栓術は小児においても有効であった.小児悪性腫瘍の分野での今後の適応拡大が期待される.

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  • 山本 裕輝, 小森 広嗣, 森 禎三郎, 小林 完, 馬場 優治, 緒方 さつき, 下島 直樹, 斎藤 雄弥, 湯坐 有希, 金子 隆, 福 ...
    53 巻 (2016) 3 号 p. 281-285
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー

    症例は特に既往のない3歳男児.発熱と呼吸困難で近医を受診し,CTで後縦隔腫瘍を認めため,当院に紹介された.CTで左第8肋骨に著明な骨破壊を呈し,脊柱管へ浸潤する左後縦隔腫瘍と左胸膜の著明な肥厚と左胸水の貯留を認めた.画像からは骨原発腫瘍を強く疑い,年齢を合わせてAskin腫瘍などを疑い化学療法を開始したが,腫瘍生検で低分化型神経芽腫と診断された.本症例は傍脊髄に発生して肋骨と左胸腔へ浸潤する神経芽腫であり,骨随を含む遠隔転移は認めず,MKIはlowでMYCNの増幅なし,以上からINSS Stage 3,COGのリスク分類は高リスクに該当すると考えられた.JNBSGのプロトコールによる化学療法と自家造血幹細胞移植を含めた大量化学療法,後縦隔腫瘍切除術を施行し,切除部位に対して陽子線治療を行った.13cisレチノイン酸の内服を行い,現在術後2年で再発無く生存している.

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  • 川田 祥子, 山岡 正慶, 寺尾 陽子, 横井 健太郎, 平松 友雅, 桑島 成央, 芦塚 修一, 吉澤 穣治, 井田 博幸, 秋山 政晴
    53 巻 (2016) 3 号 p. 286-288
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー

    我々は腎芽腫に対する腫瘍切除術後に腸重積を合併した11か月女児を経験した.術後2日目から胆汁性嘔吐,腹部膨満,経鼻胃管からの排液の増加を認めたため,癒着性イレウスを疑い術後7日目に再度開腹手術を行った.術中所見で小腸小腸型の腸重積を認め,徒手整復を施行した.術後腸重積は,腹部腫瘤の触知や血便を認めることが少なく,また腹部エコーや小腸造影などの画像検査の有用性が低いとされる.また,術後早期に発症することが多いため,化学療法や放射線治療の副作用と鑑別が困難となる.小児固形腫瘍に対する後腹膜手術を行い,術後早期から嘔吐が遷延する場合には,腸重積を疑う必要がある.

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  • 篠原 珠緒, 渡邊 敦, 杣津 晋平, 大城 浩子, 赤羽 弘資, 合井 久美子, 犬飼 岳史, 森山 元大, 近藤 哲夫, 大西 洋, 杉 ...
    53 巻 (2016) 3 号 p. 289-293
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー

    炎症性筋線維芽細胞腫(inflammatory myofibroblastic tumor, IMT)は,半数の症例にALK遺伝子の再構成が確認され腫瘍性疾患として位置付けられている.しかし,ALK遺伝子の再構成が陰性の症例では,病理学的に類似する炎症性偽腫瘍(inflammatory pseudotumor, IPT)との鑑別が困難である.今回,左側の顔面神経と動眼神経麻痺を主訴とする7歳男児例を経験した.左咀嚼筋間隙に腫瘤を認め,生検組織のHE染色で紡錘形細胞の増加と炎症細胞の浸潤を認めたが,免疫染色でALKは陰性で,in situ hybridizationでもALK遺伝子の再構成は検出されなかった.生検組織の染色体解析において,解析した20細胞中5細胞でt(1;11)(q32;q23)が確認されたため,IMTと診断した.Cyclophosphamide,vincristine,pirarubicin,cisplatinによる化学療法を施行したところ腫瘤は縮小し,治療終了から3年半を経て再発の徴候はない.腫瘍組織の染色体解析はIMTとIPTの鑑別に有用であり,t(1;11)(q32;q23)はIMTの新たな転座である可能性が示唆される.

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  • 大野 通暢, 渕本 康史, 竹添 豊志子, 渡邉 稔彦, 田原 利典, 岩淵 英人, 義岡 孝子, 松岡 健太郎, 金森 豊
    53 巻 (2016) 3 号 p. 294-299
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー

    隆起性皮膚線維肉腫(Dermatofibrosarcoma protuberans;以下DFSP)は小児ではまれな疾患であり,中間悪性群に分類される.遠隔転移は少ないとされているが,緩徐に進行し,しばしば局所再発することが知られている.我々は,5歳時に病変に気づかれ,12歳で診断に至った左前胸部DFSPの症例を経験した.患者は血管腫もしくはリンパ管腫疑いと診断され経過観察されていた.初診より7年目に,腫瘍は急速に増大し,隆起性部位と陥凹部位を認めた.超音波,MRI検査を行った結果,悪性腫瘍が否定できず,腫瘍切除を施行した.病理診断では紡錘形細胞を伴う良性腫瘍が疑われたが,永久標本ではDFSPと診断されたため,残存腫瘍の追加広範切除術を行った.陥凹病変を合併しているDFSPはまれであるとされている.腫瘤の大きさの変化ならびに外観の変化に気づいてからの対応が早かったことが適切な治療へと結びついたと考えている.完全切除後2年経過しているが,再発,転移は認められていない.

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  • 齊藤 悠, 西田 直徳, 野村 恵子, 足立 雄一, 金兼 弘和
    53 巻 (2016) 3 号 p. 300-304
    公開日: 2016/10/01
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    骨髄肉腫は急性骨髄性白血病(AML)の髄外病変として,骨髄病変と同時または先行,あるいは再発時に認める稀な疾患である.われわれはAML M0の先行病変として腹腔リンパ節に骨髄肉腫を発症した5歳男児例を経験した.頻回嘔吐,腹痛,発熱のため近医を受診し腹部CT検査で腹腔リンパ節腫大ならびにイレウス所見を認めた.当院紹介となり,補液ならびに抗菌薬投与で腹部症状が改善し炎症反応の陰性化を認めたため,腸間膜リンパ節炎と診断し退院となった.しかし,腹部リンパ節腫大が持続するとともに可溶性IL-2R値が経時的に上昇し,退院2か月後に末梢血に芽球が出現してきたため骨髄穿刺ならびに腸間膜リンパ節生検を施行した.いずれもミエロペルオキシダーゼ染色陰性かつ免疫染色で骨髄球系抗原陽性であったため,急性骨髄性白血病(AML M0)による骨髄肉腫と診断した.AML(M0)に先行する骨髄肉腫は非常に稀であり,診断に苦慮した.リンパ節腫脹をきたす疾患の鑑別として骨髄肉腫は考慮すべき疾患のひとつと考えられる.

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  • 北澤 宏展, 松林 正
    53 巻 (2016) 3 号 p. 305-308
    公開日: 2016/10/01
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    Spontaneous tumor lysis syndromeによる高カリウム血症,心室性頻拍を合併したB前駆細胞性急性リンパ性白血病の1例を報告する.症例は10歳女児.全身性間代性けいれんと顔色不良のため救急搬送となった.受診時,ショック状態で血圧は測定不能であった.WBC 30,830/μL(芽球91%),RBC 149×104/μL,Hb 4.5 g/dL,Ht 13.3%,Plt 1.0×104/μL,LD 4,125 IU/L,尿酸46.1 mg/dL,urea 85 mg/dL,Cr 1.85 mg/dL,K 9.7 mEq/L,Ca 5.8 mg/dL,P 26. 3mg/dL.心電図ではVTを呈していた.受診2時間半後に血液濾過透析を開始したところ,不整脈はすぐに消失し,血圧も正常化した.末梢血芽球細胞の表面マーカーはCD10+ 19+ HLA-DR+であり,B前駆細胞性急性リンパ性白血病と診断した.

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  • 羽賀 洋一, 三井 一賢, 松岡 正樹, 小嶋 靖子, 高橋 浩之, 小原 明
    53 巻 (2016) 3 号 p. 309-313
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー

    Acral erythema(AE)は,手掌・足底発赤知覚不全症候群(palmar-plantar erythrodysesthesia syndrome)とも呼ばれ,異常知覚や疼痛を伴って手掌足底に出現する紅斑を主徴とする疾患である.治癒過程において時折落屑を伴う水疱疹(bullous AE)を生じることもあり,またしばしば抗がん剤大量療法の副作用として発症する(chemotherapy-induced AE, CIAE).症例はB-cell precursor acute lymphoblastic leukemiaの2歳女児.中枢神経予防相において,大量methotrexate(MTX)を投与する度に手掌と下肢に紅斑が出現.特に手掌に強く,中心部に痺れなどの異常知覚を伴う水疱が認められた.その後に行った中等量MTXの際にも同様の紅斑が再度出現した.CIAEの程度は,MTXの投与量と投与間隔に比例していたことからMTXによる直接的な細胞毒性が疑われたが,一方でMTXに対するdrug-induced lymphocyte stimulation testが強陽性であり,アレルギー反応の関与も示唆された.CIAEの予後は良好で,自然軽快するため,化学療法の計画は変更することなく遂行を優先されるが,ときに副腎皮質ステロイドによる対症療法が必要となる.

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  • 森 麻希子, 加藤 元博, 康 勝好, 栗原 淳, 小熊 栄二, 岸本 宏志, 荒川 ゆうき, 花田 良二
    53 巻 (2016) 3 号 p. 314-318
    公開日: 2016/10/01
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    小児全身性EBV陽性T細胞リンパ増殖症(TLPD)は稀で様々な臨床症状を呈するが,ほとんどが急性の臨床経過で造血幹細胞移植などの治療なしでは予後不良と考えられている.我々はEBV-HLH(EB virus associated hemophagocytic lymphohistiocytosis)が鎮静化した後に中枢神経系にLPDを認め,外科切除のみで寛解を維持している非典型的な臨床経過をたどった例を経験した.症例は5歳の女児.EBV-HLHの病勢コントロールにprednisolon,cyslosporin(CyA),多剤併用の化学療法を行ったが可逆性白質脳症(PRES)を発症した.退院3か月後に,児は無症状であったものの,follow upの目的で撮影した頭部MRIで左頭頂葉に3 cm×3 cm×2 cmの腫瘤性病変と白質の広範な浮腫が認められた.血清・髄液中のEBV-PCRが陽性で,全摘された病理組織ではmonotonousなCD3陽性,CD8陽性,EBV early RNA(EBER)陽性のリンパ球浸潤が認められ,小児全身性EBV陽性TLPDと診断された.切除後には血清・髄液中のEBV-PCRの低下を認め,化学療法などの後療法を行わず,約3年が経過し寛解を維持している.TLPDの臨床症状や経過は多様であることから,TLPDやその他のEBV関連疾患の病型分類を正しく行い,標準治療を確立するため,本邦において症例の集積が望まれる.

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