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~造影剤注入によるカテーテル先端位置確認法の有用性~
伊川 泰広, 西村 良成, 酒井 清祥, 野口 和寛, 福田 正基, 藤木 俊寛, 馬瀬 新太郎, 黒田 梨絵, 荒木 来太, 前馬 秀昭, ...
2016 年 53 巻 3 号 p.
273-276
発行日: 2016年
公開日: 2016/10/01
ジャーナル
フリー
中心静脈カテーテル(central venous catheter:以下,CVC)は悪性疾患に対する化学療法の安全性を向上させた.一方で,カテーテル感染や血栓性静脈炎,fluid extravasationなど,多彩な合併症を呈することも知られている.今回我々は,小児急性白血病患者にCVCを留置中,突然の胸痛と呼吸苦を訴え精査にて静脈穿破が確認された2症例を経験した.両症例とも,左上腕より挿入し,挿入後1ヶ月以内に発症した.画像検査にて大量の胸水貯留を認めるが,CVCから少量の造影剤を注入することでCVC先端と胸腔との間に直接交通がないことを確認した.当院で施行している造影剤注入によるCVC先端位置の確認は,CVCによる静脈穿破の診断に加えてCVC抜去に伴う大量出血の有無を予知する優れた方法と考えられる.
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東間 未来, 山本 裕輝, 小森 広嗣, 広部 誠一, 湯坐 有希, 金子 隆, 藤田 和俊, 河野 達夫
2016 年 53 巻 3 号 p.
277-280
発行日: 2016年
公開日: 2016/10/01
ジャーナル
フリー
今回,我々は腹腔内出血から出血性ショックに至った右副腎原発の進行神経芽腫症例を経験した.症例は18カ月男子で,出血性ショックに対して腫瘍血管塞栓術を施行した.右中副腎動脈のextravasationを確認し,これを塞栓した.その後も断続的に出血が続いたため塞栓術を繰り返したが,3回目の血管造影では出血点を確認できず,一期的腫瘍摘出術を選択した.腫瘍は肉眼的に全摘し,術後化学療法と末梢血幹細胞移植を行って寛解退院した.以後4年間の無病生存を得ている.
神経芽腫からの出血はoncologic emergencyの一つとして常に念頭に置いておかなくてはいけないものである.特にN-myc増幅例では出血のリスクが高いとされており,化学療法中に腫瘍出血を来す例も散見される.このような状況下での止血法として塞栓術は小児においても有効であった.小児悪性腫瘍の分野での今後の適応拡大が期待される.
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山本 裕輝, 小森 広嗣, 森 禎三郎, 小林 完, 馬場 優治, 緒方 さつき, 下島 直樹, 斎藤 雄弥, 湯坐 有希, 金子 隆, 福 ...
2016 年 53 巻 3 号 p.
281-285
発行日: 2016年
公開日: 2016/10/01
ジャーナル
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症例は特に既往のない3歳男児.発熱と呼吸困難で近医を受診し,CTで後縦隔腫瘍を認めため,当院に紹介された.CTで左第8肋骨に著明な骨破壊を呈し,脊柱管へ浸潤する左後縦隔腫瘍と左胸膜の著明な肥厚と左胸水の貯留を認めた.画像からは骨原発腫瘍を強く疑い,年齢を合わせてAskin腫瘍などを疑い化学療法を開始したが,腫瘍生検で低分化型神経芽腫と診断された.本症例は傍脊髄に発生して肋骨と左胸腔へ浸潤する神経芽腫であり,骨随を含む遠隔転移は認めず,MKIはlowでMYCNの増幅なし,以上からINSS Stage 3,COGのリスク分類は高リスクに該当すると考えられた.JNBSGのプロトコールによる化学療法と自家造血幹細胞移植を含めた大量化学療法,後縦隔腫瘍切除術を施行し,切除部位に対して陽子線治療を行った.13cisレチノイン酸の内服を行い,現在術後2年で再発無く生存している.
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川田 祥子, 山岡 正慶, 寺尾 陽子, 横井 健太郎, 平松 友雅, 桑島 成央, 芦塚 修一, 吉澤 穣治, 井田 博幸, 秋山 政晴
2016 年 53 巻 3 号 p.
286-288
発行日: 2016年
公開日: 2016/10/01
ジャーナル
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我々は腎芽腫に対する腫瘍切除術後に腸重積を合併した11か月女児を経験した.術後2日目から胆汁性嘔吐,腹部膨満,経鼻胃管からの排液の増加を認めたため,癒着性イレウスを疑い術後7日目に再度開腹手術を行った.術中所見で小腸小腸型の腸重積を認め,徒手整復を施行した.術後腸重積は,腹部腫瘤の触知や血便を認めることが少なく,また腹部エコーや小腸造影などの画像検査の有用性が低いとされる.また,術後早期に発症することが多いため,化学療法や放射線治療の副作用と鑑別が困難となる.小児固形腫瘍に対する後腹膜手術を行い,術後早期から嘔吐が遷延する場合には,腸重積を疑う必要がある.
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篠原 珠緒, 渡邊 敦, 杣津 晋平, 大城 浩子, 赤羽 弘資, 合井 久美子, 犬飼 岳史, 森山 元大, 近藤 哲夫, 大西 洋, 杉 ...
2016 年 53 巻 3 号 p.
289-293
発行日: 2016年
公開日: 2016/10/01
ジャーナル
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炎症性筋線維芽細胞腫(inflammatory myofibroblastic tumor, IMT)は,半数の症例にALK遺伝子の再構成が確認され腫瘍性疾患として位置付けられている.しかし,ALK遺伝子の再構成が陰性の症例では,病理学的に類似する炎症性偽腫瘍(inflammatory pseudotumor, IPT)との鑑別が困難である.今回,左側の顔面神経と動眼神経麻痺を主訴とする7歳男児例を経験した.左咀嚼筋間隙に腫瘤を認め,生検組織のHE染色で紡錘形細胞の増加と炎症細胞の浸潤を認めたが,免疫染色でALKは陰性で,in situ hybridizationでもALK遺伝子の再構成は検出されなかった.生検組織の染色体解析において,解析した20細胞中5細胞でt(1;11)(q32;q23)が確認されたため,IMTと診断した.Cyclophosphamide,vincristine,pirarubicin,cisplatinによる化学療法を施行したところ腫瘤は縮小し,治療終了から3年半を経て再発の徴候はない.腫瘍組織の染色体解析はIMTとIPTの鑑別に有用であり,t(1;11)(q32;q23)はIMTの新たな転座である可能性が示唆される.
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大野 通暢, 渕本 康史, 竹添 豊志子, 渡邉 稔彦, 田原 利典, 岩淵 英人, 義岡 孝子, 松岡 健太郎, 金森 豊
2016 年 53 巻 3 号 p.
294-299
発行日: 2016年
公開日: 2016/10/01
ジャーナル
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隆起性皮膚線維肉腫(Dermatofibrosarcoma protuberans;以下DFSP)は小児ではまれな疾患であり,中間悪性群に分類される.遠隔転移は少ないとされているが,緩徐に進行し,しばしば局所再発することが知られている.我々は,5歳時に病変に気づかれ,12歳で診断に至った左前胸部DFSPの症例を経験した.患者は血管腫もしくはリンパ管腫疑いと診断され経過観察されていた.初診より7年目に,腫瘍は急速に増大し,隆起性部位と陥凹部位を認めた.超音波,MRI検査を行った結果,悪性腫瘍が否定できず,腫瘍切除を施行した.病理診断では紡錘形細胞を伴う良性腫瘍が疑われたが,永久標本ではDFSPと診断されたため,残存腫瘍の追加広範切除術を行った.陥凹病変を合併しているDFSPはまれであるとされている.腫瘤の大きさの変化ならびに外観の変化に気づいてからの対応が早かったことが適切な治療へと結びついたと考えている.完全切除後2年経過しているが,再発,転移は認められていない.
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齊藤 悠, 西田 直徳, 野村 恵子, 足立 雄一, 金兼 弘和
2016 年 53 巻 3 号 p.
300-304
発行日: 2016年
公開日: 2016/10/01
ジャーナル
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骨髄肉腫は急性骨髄性白血病(AML)の髄外病変として,骨髄病変と同時または先行,あるいは再発時に認める稀な疾患である.われわれはAML M0の先行病変として腹腔リンパ節に骨髄肉腫を発症した5歳男児例を経験した.頻回嘔吐,腹痛,発熱のため近医を受診し腹部CT検査で腹腔リンパ節腫大ならびにイレウス所見を認めた.当院紹介となり,補液ならびに抗菌薬投与で腹部症状が改善し炎症反応の陰性化を認めたため,腸間膜リンパ節炎と診断し退院となった.しかし,腹部リンパ節腫大が持続するとともに可溶性IL-2R値が経時的に上昇し,退院2か月後に末梢血に芽球が出現してきたため骨髄穿刺ならびに腸間膜リンパ節生検を施行した.いずれもミエロペルオキシダーゼ染色陰性かつ免疫染色で骨髄球系抗原陽性であったため,急性骨髄性白血病(AML M0)による骨髄肉腫と診断した.AML(M0)に先行する骨髄肉腫は非常に稀であり,診断に苦慮した.リンパ節腫脹をきたす疾患の鑑別として骨髄肉腫は考慮すべき疾患のひとつと考えられる.
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北澤 宏展, 松林 正
2016 年 53 巻 3 号 p.
305-308
発行日: 2016年
公開日: 2016/10/01
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Spontaneous tumor lysis syndromeによる高カリウム血症,心室性頻拍を合併したB前駆細胞性急性リンパ性白血病の1例を報告する.症例は10歳女児.全身性間代性けいれんと顔色不良のため救急搬送となった.受診時,ショック状態で血圧は測定不能であった.WBC 30,830/μL(芽球91%),RBC 149×104/μL,Hb 4.5 g/dL,Ht 13.3%,Plt 1.0×104/μL,LD 4,125 IU/L,尿酸46.1 mg/dL,urea 85 mg/dL,Cr 1.85 mg/dL,K 9.7 mEq/L,Ca 5.8 mg/dL,P 26. 3mg/dL.心電図ではVTを呈していた.受診2時間半後に血液濾過透析を開始したところ,不整脈はすぐに消失し,血圧も正常化した.末梢血芽球細胞の表面マーカーはCD10+ 19+ HLA-DR+であり,B前駆細胞性急性リンパ性白血病と診断した.
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羽賀 洋一, 三井 一賢, 松岡 正樹, 小嶋 靖子, 高橋 浩之, 小原 明
2016 年 53 巻 3 号 p.
309-313
発行日: 2016年
公開日: 2016/10/01
ジャーナル
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Acral erythema(AE)は,手掌・足底発赤知覚不全症候群(palmar-plantar erythrodysesthesia syndrome)とも呼ばれ,異常知覚や疼痛を伴って手掌足底に出現する紅斑を主徴とする疾患である.治癒過程において時折落屑を伴う水疱疹(bullous AE)を生じることもあり,またしばしば抗がん剤大量療法の副作用として発症する(chemotherapy-induced AE, CIAE).症例はB-cell precursor acute lymphoblastic leukemiaの2歳女児.中枢神経予防相において,大量methotrexate(MTX)を投与する度に手掌と下肢に紅斑が出現.特に手掌に強く,中心部に痺れなどの異常知覚を伴う水疱が認められた.その後に行った中等量MTXの際にも同様の紅斑が再度出現した.CIAEの程度は,MTXの投与量と投与間隔に比例していたことからMTXによる直接的な細胞毒性が疑われたが,一方でMTXに対するdrug-induced lymphocyte stimulation testが強陽性であり,アレルギー反応の関与も示唆された.CIAEの予後は良好で,自然軽快するため,化学療法の計画は変更することなく遂行を優先されるが,ときに副腎皮質ステロイドによる対症療法が必要となる.
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森 麻希子, 加藤 元博, 康 勝好, 栗原 淳, 小熊 栄二, 岸本 宏志, 荒川 ゆうき, 花田 良二
2016 年 53 巻 3 号 p.
314-318
発行日: 2016年
公開日: 2016/10/01
ジャーナル
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小児全身性EBV陽性T細胞リンパ増殖症(TLPD)は稀で様々な臨床症状を呈するが,ほとんどが急性の臨床経過で造血幹細胞移植などの治療なしでは予後不良と考えられている.我々はEBV-HLH(EB virus associated hemophagocytic lymphohistiocytosis)が鎮静化した後に中枢神経系にLPDを認め,外科切除のみで寛解を維持している非典型的な臨床経過をたどった例を経験した.症例は5歳の女児.EBV-HLHの病勢コントロールにprednisolon,cyslosporin(CyA),多剤併用の化学療法を行ったが可逆性白質脳症(PRES)を発症した.退院3か月後に,児は無症状であったものの,follow upの目的で撮影した頭部MRIで左頭頂葉に3 cm×3 cm×2 cmの腫瘤性病変と白質の広範な浮腫が認められた.血清・髄液中のEBV-PCRが陽性で,全摘された病理組織ではmonotonousなCD3陽性,CD8陽性,EBV early RNA(EBER)陽性のリンパ球浸潤が認められ,小児全身性EBV陽性TLPDと診断された.切除後には血清・髄液中のEBV-PCRの低下を認め,化学療法などの後療法を行わず,約3年が経過し寛解を維持している.TLPDの臨床症状や経過は多様であることから,TLPDやその他のEBV関連疾患の病型分類を正しく行い,標準治療を確立するため,本邦において症例の集積が望まれる.
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