日本小児血液・がん学会雑誌
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第59回日本小児血液・がん学会学術集会記録
教育セッション2: 急性リンパ性白血病
  • 岡本 康裕
    2018 年 55 巻 3 号 p. 217-222
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/27
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    ダウン症候群(DS)において急性リンパ性白血病(ALL)の発症する頻度は,非DS-ALLの20倍とされる.21番染色体上にあるHMGN1の働きでリンパ系の増殖が起こり,さらにP2RY8-CRLF2融合などによるCRLF2の過剰発現により,JAK-STATの活性化が起こり,ALL細胞が増殖するという機序が考えられる.このCRLF2の融合はDS-ALLの50–60%に認められる.現在,CRLF2の下流のPI3KとmTORの阻害薬や,TSLPR/CRLF2抗体などが開発中で,JAK2阻害薬は第二相試験が米国で開始された.世界の研究グループからの658例を対象とした後方視的研究では,DS-ALLの8年無病生存率は64%で,非DS-ALLの81%より有意に低い.DS-ALLでは,予後良好である高二倍体やETV6-RUNX1異常などが少ないこと,予後不良のCRLF2の異常が多いこと,また粘膜障害,感染合併症などによる副作用死亡が多いために,ALLの治療成績の向上の歴史から取り残された.しかし,最近のDana-Farber癌研究所の報告では,38例と少数であるが,5年無病生存率が91%で,非DS-ALLと差がなかった.微小残存病変などによるリスクに応じた適切な治療や,適切な副作用対策を行えば,DS-ALLの治療成績が改善する可能性がある.このためDS-ALLを独立した疾患として特化した臨床研究が望まれる.DS-ALLの希少性を克服するために,シンガポール,マレーシア,台湾,香港と日本が参加する国際共同研究が2018年に始まった.微小残存病変をフローサイトメトリー法によって評価し,予後良好群では治療を軽減する.本試験によりDS-ALLに対する標準治療が確立され,さらに特異的な治療が開発されることが期待される.

シンポジウム3: AMLの新規治療
  • 野口 勇貴, 能浦 三奈, 岩井 詩咲花, 嶌田 紗英, 鈴木 雄太, 杉山 弘, 足立 壮一, 上久保 靖彦
    2018 年 55 巻 3 号 p. 223-228
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/27
    ジャーナル 認証あり

    Runt-related transcription factor (RUNX) はRUNX1,RUNX2,RUNX3の3つのファミリーからなる転写因子である.従来“がん抑制遺伝子”と認識されていたが,近年はむしろそのオンコジェニックな側面(腫瘍増殖促進,癌幹細胞維持,薬剤耐性獲得など)が注目されつつあり,様々な癌の特質となるHallmarksに関わる主要因子と深く関連していることが明らかになりつつある1–3).我々のグループは,世界に先駆けてこのRUNXのオンコジェニックメカニズムの解明とそれをターゲットとする制御戦略を構築中である.我々は,RUNX familyに共通するconsensus binding sequence (5′-TGTGGT-3′) に着目し,これを阻害できる薬剤であるChlorambucil-conjugated pyrrole imidazole polyamide (Chb-M′) を開発中である.本稿では,第59回日本小児血液・がん学会学術集会AMLシンポジウムで発表した議題を中心に,新薬開発基盤となる急性骨髄性白血病(AML)の増殖性維持機構,薬剤耐性獲得機構をそのメカニズムの一端と,我々の遺伝子スイッチ法を用いた新規制御コンセプトを述べたい.

シンポジウム7: 固形腫瘍のゲノム医療(がん学会と合同シンポジウム)
  • 木村 俊介, 滝田 順子
    2018 年 55 巻 3 号 p. 229-234
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/27
    ジャーナル 認証あり

    神経芽腫は神経堤細胞を起源とする小児がんで最も多い頭蓋外固形腫瘍である.過去のゲノム解析は染色体異常と比較して遺伝子変異が非常に少ないことを示した.このことは他の小児腫瘍と同様に分化の過程の異常が神経芽腫の主な原因であることを示唆している.原発部位として最も多い副腎髄質は主にchromaffin cellにより構成される.近年,神経堤細胞から直接分化する今までのモデルに加えて,schwann cell precursorを介する新規知見が明らかになった.また,発現を制御するスーパーエンハンサーにより,神経芽腫はnoradrenergic (ADRN) 群とmesenchymal (MES) 群の2つに分類されることが報告された.本研究では30例のStage 4神経芽腫に対して統合的ゲノム解析を行い,発現パターンによって交感神経系の特徴を有するADRN群とchromaffin cellの特徴を示すMES群に分類した.さらにADRN群はATRX異常を高頻度に伴うATRX群とMYCN増幅を高頻度に伴うMYCN群に分類され,神経芽腫は3群に分類されることが明らかとなった.これらの群は起源や分化の過程が異なるだけでなく,発現・遺伝学的異常にも大きな特徴を有していた.高リスク神経芽腫の治療強度はすでに限界に近くこれ以上の治療強化は大きく望めないため,これらの特徴を考慮した新規治療戦略の開発が期待される.

シンポジウム9: 小児がん患者の治療中のQOLの向上を目指して
  • 吉田 衣里, 森川 優子, 仲野 道代
    2018 年 55 巻 3 号 p. 235-238
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/27
    ジャーナル 認証あり

    小児の悪性腫瘍の代表的な疾患である白血病あるいは固形腫瘍である横紋筋肉腫や髄芽種のうち,重度でステージが高く重症な症例においては放射線治療や大量化学療法に続き,その後に生じる造血機能不全を補うために造血幹細胞移植を行うケースが多い.造血幹細胞移植の際には,化学療法,免疫抑制剤,放射線治療を行うために,好中球がほとんど存在しない状態となり,口腔内には口腔粘膜障害が発症するリスクが最も高い.口腔粘膜障害の症状としては,発赤,出血,口内炎,潰瘍,および口角炎などがみられ,重度なものでは開口障害を生じる.口腔粘膜障害の治療としては対症療法が主となるが,周術期において早期に歯科的介入を行うことにより,症状を軽減させることが可能である.そのため,患者および保護者に口腔ケアの重要性を理解してもらうことが重要である.口腔ケアとしては,ブラッシング,含嗽,および保湿が挙げられる.さらに口腔粘膜障害は一旦消失しても慢性的に口腔内粘膜に拘縮が生じ,刷掃困難や唾液の減少による口腔内乾燥等が生じることが多くみられ,重度齲蝕や歯周病の発症がみられることもある.そのため小児においては,周術期の口腔ケアのみならず,長期にわたるフォローアップが重要である.

  • 大濵 江美子
    2018 年 55 巻 3 号 p. 239-248
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/27
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パネルディスカッション1: 骨肉腫の治療
  • 北河 徳彦
    2018 年 55 巻 3 号 p. 249-253
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/27
    ジャーナル 認証あり

    肺転移は骨肉腫の重要な予後因子である.転移巣の切除が有効な症例もあるが,制御できない症例も経験する.どのような症例に転移巣切除を行うべきかは文献的にも論争が終結していない.我々の適応,手技,成績について概説する.

    【手術適応】原発巣が完全切除されており,肺外転移・再発がないことが基本的条件である.個数・大きさによる適応の基準は設けていない.呼吸機能は,術後予想1秒量が標準値の30%以上を一応の目安としている.

    【手術手技】術中視触診を重視し,ステープラーによる必要以上の正常肺切除と術後アーチファクトを避けるため,胸腔鏡下手術は行わず,開胸で楔状切除あるいは核出を行っている.

    【成績】1983~2016年の期間に当院で初回治療から行った骨肉腫50例のうち,肺転移を伴った28例について解析した.肺外転移・再発のない場合の5年生存率は77%(転移巣手術あり89%,なし60%),肺外転移・再発が出現した場合は27%(転移巣手術あり33%,なし0%)であった.

    【考察】骨肉腫の予後は,まず肺転移の有無により大きな差があり,次に肺外転移・再発の出現が大きく予後に影響した.肺外転移・再発のない症例では積極的な手術の方針を否定する根拠はないと考える.しかし多数回手術による癒着剥離等で呼吸機能低下が生じ,手術回数の限界に直面する.この場合に行いうる非手術的な局所療法についても今後検討する必要がある.

特別企画2: 医療研究開発における知財と産学官連携 ―医薬品開発について,医療機器開発について―
  • 内海 潤, 神谷 直慈
    2018 年 55 巻 3 号 p. 254-260
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/27
    ジャーナル 認証あり

    我が国では現在,「産」(企業)と「学」(アカデミア)が連携して国産の医薬品や医療機器の研究開発を進める活動が,かつてないほどに盛んになってきている.「官」(国)がファンディングし,産学官連携という形になることも多い.医療製品が実用化される際に必須の2つの行政的な手続きがある.それは薬事承認の取得と知的財産権の確保である.すなわち,医療製品を製造販売しようとする者は,製品を知的財産権(主に特許権)で競合他者から守り,国の薬事審査の承認を得て,事業化ができるのである.医薬品や医療機器などの医療製品は,製造販売を行うのは企業で,ユーザーは医療従事者と患者であるが,その研究開発・性能験評価の過程からアカデミア及び医療機関の関与が必須である.それゆえ,円滑な研究開発を進めるうえでは,医療製品の研究開発に係る産学関係者が,知的財産に係る仕組みと特徴を知ることが極めて重要である.ただし,医薬品と医療機器では,特許の価値と取扱いも異なっており,留意が必要である.本稿では,医薬品と医療機器の研究開発における産学連携の意義と仕組みと知的財産の係わりについてまとめた.さらに,従来は産学連携の取組みが少なかった小児科領域における国の施策についても言及した.

原著
  • 石田 也寸志, 前田 美穂, 岡村 純, 川口 浩史, 佐藤 真穂, 徳山 美香, 清谷 知賀子, 堀 浩樹, 小林 良二, 吉永 信治, ...
    2018 年 55 巻 3 号 p. 261-268
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/27
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    治療終了後の小児がん経験者の晩期合併症の中で生命予後に直接影響する最も深刻なものは二次がんであり,二次性甲状腺がんに関して検討した.

    方法:研究デザインはケースシリーズ研究で,対象は1980年1月1日~2009年12月31日に15病院で小児がんと診断され,2010年3月31日現在の時点で2か月以上生存していた10,069人の中で,病理組織学的に二次性甲状腺がんと診断された症例である.その症例に関して二次調査で二次がんの詳細な臨床経過情報を収集した.

    結果:二次性甲状腺がんは12例見られ,原発がんは,ALL3例,ホジキンリンパ腫1例,神経芽腫4例,骨軟部肉腫2例,脳腫瘍1例,その他(胸膜肺芽腫)1例であった.原発がん診断年齢の中央値は3歳(1か月~15歳6か月)で,男女比は4:8で女性に多く,甲状腺がんの病理診断は,乳頭状6例,濾胞性5例,乳頭状癌の濾胞性バリアントが1例であった.二次がん発症までの期間は中央値13年3か月(4年6か月~21年11か月)であった.11例で放射線照射歴を認め,造血細胞移植は5例で施行されていた.最終転帰時点で二次がん発症後も全例が生存し,11症例は無病生存であった.

    結論:二次性甲状腺がん発症例は,濃厚な治療が大きなリスク因子になっており,今後甲状腺近傍の放射線照射歴あるいは難治・再発の移植症例においては甲状腺超音波検査によるスクリーニングが望ましいと考えられた.

  • 斎藤 雄弥, 松井 基浩, 山岡 祥子, 横川 裕一, 牧本 敦, 湯坐 有希
    2018 年 55 巻 3 号 p. 269-273
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/27
    ジャーナル 認証あり

    高リスク神経芽腫に対する導入化学療法は強度が高く,重度の骨髄抑制,重症感染症が危惧されるため,毒性の軽減が望まれる.

    今回,rapid COJECを実施した症例の急性毒性について後方視的に解析し,Regimen A(05A1, 05A3)で治療された症例との比較検討を行った.対象症例は,2007年2月1日から2016年12月31日までに当院で治療を実施した初発高リスク神経芽腫18例(Regimen A 10例,rapid COJEC 8例)とした.導入化学療法終了後にCRもしくはVGPRであった症例は,Regimen A群で7/10(70%),rapid COJEC群で7/8(87.5%)であり,両群間に差は認められなかった.急性毒性の所見として,rapid COJEC群はRegimen A群と比較し,100日当たりの白血球減少期間(中央値22日と44日,P<0.002)および好中球減少期間(中央値22日と42日,P<0.005)において有意に短かった.G-CSFの投与期間や発熱性好中球減少症の回数については両群で差は認められなかった.

    以上より,高リスク神経芽腫に対する導入化学療法であるrapid COJECは急性毒性が軽減されたレジメンとして期待される.ただし,聴力障害,腎機能障害などの晩期合併症については評価しておらずフォローアップが必要である.

  • 西村 志帆, 溝口 洋子, 下村 麻衣子, 笹木 忍, 小林 正夫
    2018 年 55 巻 3 号 p. 274-278
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/27
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    半減期延長型第IX因子製剤による血友病B患者のquality of lifeの改善が期待されている.重症血友病B患者に対し,半減期延長型製剤(エフトレノナコグアルファ,rFIXFc)による定期補充療法に変更した4症例で,その有効性を検討した.症例1,2は高校,中学のテニスクラブで活動中の17歳と14歳の兄弟で,従来の遺伝子組み換え第IX因子製剤であるノナコグアルファ40 U/kgを2–3日に1回投与する定期補充療法を行っていた.rFIXFc に変更し,投与後のIX因子活性測定に基づいたクラブ活動時のIX因子活性を推測し,40 U/kgを4日毎投与に定期補充療法のレジメンを変更した.クラブ活動時のIX因子活性を10%以上に維持することで,出血を経験することなくクラブ活動を継続している.症例3,4は7歳と3歳の兄弟で,乾燥濃縮人血液凝固第IX因子を兄は44 U/kg,弟は33 U/kgを,週2回投与する定期補充療法を行っていた.rFIXFcへの変更に伴い,兄は56 U/kg,弟は42 U/kgを6日毎投与のレジメンとし,トラフ値を3%以上に保った.4症例すべてで注射回数を減少しつつ,変更前と比較して年間出血回数はほぼ0にコントロールすることができた.これらの結果から,半減期延長型製剤は,患者個々の生活スタイルに応じたIX因子レベルを維持し,注射回数の少ない定期補充療法として有用であると考えられた.

  • 梅田 雄嗣, 五井 理恵, 田中 邦昭, 上月 景弘, 窪田 博仁, 濱端 隆行, 大封 智雄, 加藤 格, 平松 英文, 足立 壯一
    2018 年 55 巻 3 号 p. 279-283
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/27
    ジャーナル 認証あり

    精子保存が開始された2008年から2015年の間に当科で造血幹細胞移植を計画した移植時10歳以上の男性患者19例に対する精子保存の実施状況について後方視的に検討した.19例の年齢は10–27歳(中央値15歳)で,原疾患は血液悪性疾患8例,非悪性疾患11例であった.19例中10例が精子保存の説明を受け,うち7例が保存を試み,5例に実施された.骨髄破壊的前処置群10例中6例,骨髄非破壊的前処置群9例中4例が精子保存の説明を受けた.化学療法歴のある6例中3例が保存の説明を受けたが,いずれも移植直前の説明であった.今回の検討により心身ともに未熟な小児・若年成人患者への精子保存について様々な問題点が浮き彫りになった.今後は精液検査,挙児の有無,保存体制等を検討項目に含めた多施設による後方視的研究が必要と考えられた.

症例報告
  • 野口 和寛, 西村 良成, 荒木 来太, 福田 正基, 藤木 俊寛, 黒田 梨絵, 伊川 泰広, 前馬 秀昭, 谷内江 昭宏
    2018 年 55 巻 3 号 p. 284-287
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/27
    ジャーナル 認証あり

    神経芽腫はカテコラミン産生腫瘍であり,尿中バニリルマンデル酸(VMA),ホモバニリン酸(HVA)の測定は有用な補助診断法の一つである.以前はVMAスポット法が唯一のVMA検査法であったが,偽陽性が多く,近年では高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による定量法が普及している.神経芽腫の10%は尿中VMA・HVAともに陰性である.しかし,これらの半数はVMA・HVA以外のカテコラミンおよび代謝物質の尿中濃度が高値である.過去の研究でVMAスポット法はVMAだけでなく,VMA以外の様々なカテコラミンおよびカテコラミン代謝産物を検出できると報告されている.今回,HPLCで尿中VMA陰性であったがVMAスポット法が陽性となり神経芽腫と早期から推定できた副腎腫瘍の2症例を経験した.画像検査で腫瘍性疾患を認める場合,VMAスポット法はVMA・HVA陰性の場合も含めて,神経芽腫の診断に有用である.

  • 小池 隆志, 今井 枝里, 福村 明子, 大坪 慶輔, 清水 崇史, 森本 克, 杉山 延喜, 池上 真理子, 石黒 寛之, 新村 文男, ...
    2018 年 55 巻 3 号 p. 288-292
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/27
    ジャーナル 認証あり

    造血幹細胞移植後の治療抵抗性閉塞性細気管支炎(BO)に対しては肺移植が唯一の根治療法となるが,成長期の小児に対する肺移植後の長期管理においては,拒絶や感染症などの合併症に加えて,移植肺が体の成長に適応するかという問題がある.症例は肺移植時10歳の急性骨髄性白血病の男児で,非血縁骨髄移植後にBOを合併したため,両親からの両側生体肺移植を施行した.肺移植後の晩期合併症として,慢性拒絶,サイトメガロウイルス感染症,腎機能低下等がみられたが,いずれも治療により軽快した.Quality of life(QOL)は劇的に改善し,日常生活は自力で可能となった.肺移植後7年6か月を経過した現在,停滞していた身長の伸びと体格に応じた肺の成長を認めている.肺移植後の長期管理は,呼吸器外科と小児血液専門医のみでなく,内分泌,腎臓,神経など各専門医によるチーム医療体制による注意深い経過フォローアップが重要である.

  • 小野 貴志, 望月 一弘, 佐野 秀樹, 小林 正悟, 藁谷 朋子, 大原 喜裕, 高橋 信久, 細矢 光亮, 大戸 斉, 菊田 敦
    2018 年 55 巻 3 号 p. 293-297
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/27
    ジャーナル 認証あり

    症例は極早期骨髄単独再発したB前駆細胞性急性リンパ性白血病の5歳男児.第2寛解期に母親をドナーとしたHLA半合致末梢血幹細胞移植を施行した.Grade IIIの急性移植片対宿主病(GVHD)及び皮膚・肺に慢性GVHDを認めたが,移植後18ヶ月に全ての免疫抑制剤を中止し得た.外来フォロー中の移植後26ヶ月に1回目の侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)を,その7ヶ月後に2回目のIPD(血清型:15A)を認めた.各種免疫能に明らかな異常なく,初回IPD前からHowell-Jolly小体が出現していたため,脾臓シンチグラフィーを行ったところ,脾臓への集積欠損を認めた.腹部CTでは,移植時には腫大していた脾臓が経時的に縮小し,初回IPD発症前には高度に萎縮していた.自験例は非ワクチン型によるIPDで2回目以降はST合剤内服によりIPDの再発は認めていない.

  • 棈松 貴成, 岡本 康裕, 中川 俊輔, 倉内 宏一郎, 児玉 祐一, 西川 拓朗, 田邊 貴幸, 新小田 雄一, 畠中 美帆, 義岡 孝子 ...
    2018 年 55 巻 3 号 p. 298-303
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/27
    ジャーナル 認証あり

    播種性のムコール感染症は致死的な疾患である.早期診断が必要不可欠だが,生物学的指標物質はなく診断は困難である.我々は治療が奏効した急性骨髄性白血病に合併した播種性皮膚ムコール感染症例を経験した.治療による骨髄抑制や原疾患の悪化に伴う重症の好中球減少や単球減少,血液悪性疾患,骨髄移植症例であったこと,輸血による鉄過剰状態であったこと,ボリコナゾールの先行投与があったことなど多数のリスク因子に基づき,ムコール感染を想定して確定診断前にアムホテリシンBの投与を行った.皮膚病変は外科的切除なしに改善した.血液悪性腫瘍の診療の現場において,ムコール感染症のリスク因子の理解に基づいた迅速な治療が必要不可欠である.

  • 中島 秀明, 漆原 直人, 大山 慧, 矢本 真也, 渡邉 健一郎, 岩淵 英人, 福本 弘二, 関岡 明憲, 野村 明芳, 山田 豊
    2018 年 55 巻 3 号 p. 304-308
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/27
    ジャーナル 認証あり

    両側性Wilms腫瘍の治療では腎機能温存が重要である.当院で経験した2例で術前化学療法を行うことで両側の腎温存が可能であったため,文献的考察を加えて報告する.症例1は1歳の女児で,両側腫瘍生検を行った後に,症例2はWAGR症候群を背景に持つ2歳の男児で,現行のプロトコールに従い,生検を行わずに,腫瘍切除前に化学療法を先行させ,画像検査で経時的に腫瘍体積の縮小度を評価した.腫瘍の縮小が得られたとしても,縮小率が不良となった時点で両側腎温存手術を行った.術前・術後の腎静態シンチグラフィーを行い,腎機能予後の評価を行った.治療後は2例とも無病生存と腎機能温存が得られている.両側Wilms腫瘍の治療では腎温存を目指し,術前化学療法による腫瘍の経時的縮小度と術後の腎機能予後を評価することが重要である.

  • 澤田 彩李, 梅田 雄嗣, 田中 邦昭, 加藤 格, 平田 拓也, 馬場 志郎, 平松 英文, 吉澤 淳, 岡島 英明, 上本 伸二, 本山 ...
    2018 年 55 巻 3 号 p. 309-314
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/27
    ジャーナル 認証あり

    腎芽腫の3歳女児に対してdoxorubicin(DOX)を含む術後化学療法と全腹部照射10.5 Gyを施行した.治療開始25週目(DOX累積投与量116 mg/m2)に多呼吸,SpO2低下を認め,胸部レントゲンで著明な心拡大と肺門部のうっ血像・胸水貯留,心臓超音波検査で左室駆出率低下(36%)を認めた.急性心不全の診断の下,水分制限に加えてdobutamine,olprinone,human atrial natriuretic peptide,furosemide投与により心不全症状は改善した.原疾患治療終了から9ヶ月経過し,enalapril,carvedilol,furosemide内服により心機能は改善し,原疾患の再燃も認めていない.腎芽腫では発症時低年齢,心臓近傍への放射線治療など他のリスク因子を有する症例が多いため,DOX累積投与量が少ない症例でも重篤な心毒性を発症する可能性があることを念頭に置く必要がある.

  • 北井 文恵, 成田 幸太郎, 片岡 伸介, 濱田 太立, 鈴木 喬悟, 村瀬 成彦, 坂口 大俊, 吉田 奈央, 金子 健一朗, 伊藤 雅文 ...
    2018 年 55 巻 3 号 p. 315-319
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/27
    ジャーナル 認証あり

    乳児期に発症する腎悪性ラブドイド腫瘍は予後不良である.今回,集学的治療にも関わらず進行し致死的経過を辿った乳児例について報告する.症例は8か月男児.腹部膨満と肉眼的血尿を主訴に受診した.腹部CTにて右腎に長径75 mmの腫瘍を認め,転移は認めなかった.一期的に右腎腫瘍摘出術を実施し,術後化学療法を施行した.しかしながら,病理診断では腎悪性ラブドイド腫瘍と診断され,腎被膜を超えた浸潤を認めた.確定診断後,腫瘍床への放射線治療とビンクリスチン,ドキソルビシン,シクロホスファミド併用化学療法を3コース行ったが,腹膜播種を来たし,第130病日に永眠された.腎悪性ラブドイド腫瘍の中でも乳児発症例は進行も早く,予後不良である.未だ標準療法は確立されておらず,病態の解明と新規治療薬の導入が待たれる.

  • 富田 晃正, 宮地 充, 柳生 茂希, 土屋 邦彦, 家原 知子, 小原 将人, 石橋 秀信, 外村 仁, 寺内 竜, 白井 寿治, 久保 ...
    2018 年 55 巻 3 号 p. 320-323
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/27
    ジャーナル 認証あり

    小児がん治療による妊孕性喪失の危険性が高い男児の場合,妊孕性温存のため治療開始前に精子凍結保存が望ましい.我々は,精巣内精子採取術 (TESE) により精子凍結保存を施行した骨外性ユーイング肉腫ファミリー腫瘍の症例を経験した.症例は17歳男性.臀部痛と膀胱直腸障害で発症し,仙骨部腫瘍の生検によりユーイング肉腫と診断した.妊孕性温存療法として化学療法開始前にマスターベーションによる精子採取を試みたが,仙骨部腫瘍による神経圧迫に起因する射精障害のため射精できず,2日後にTESEにより精子採取し凍結保存した.術後は同日中に化学療法を開始し,大幅な治療開始の遅延はなくTESEに伴う術後合併症も認めなかった.腫瘍による射精障害がある症例でもTESEにより精子凍結保存が可能である.TESEは短時間,低侵襲で施行可能であり,小児がん治療医も知っておくべき妊孕性温存療法の選択肢の一つである。

  • 三藤 賢志, 米田 光宏, 中岡 達雄, 上原 秀一郎, 高間 勇一, 東尾 篤史, 中村 哲郎, 原 純一, 藤崎 弘之, 青野 勝成, ...
    2018 年 55 巻 3 号 p. 324-328
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/27
    ジャーナル 認証あり

    14歳女児.左股関節痛が出現し,前医で骨盤内腫瘤を指摘され,当院を受診した.画像診断,腫瘍生検で左恥骨原発ユーイング肉腫(EWS-ERG融合遺伝子発現),右大腿骨,左坐骨転移と診断した.化学療法で腫瘍縮小を得たが右大腿骨と左坐骨転移は残存した.恥骨原発巣摘出の後,骨盤照射による治療を計画した.内分泌機能温存の目的で原発巣摘出と同時に腹腔鏡下右卵巣移動術を行った.卵巣血管を温存し,右傍結腸溝に固定した.原発巣とともに左恥骨と腹直筋の一部を合併切除した.病理所見では,一部に顕微鏡的腫瘍遺残が認められた.術後16日目より骨盤照射(計50.4 Gy)を開始した.術後9か月でE2,FSHは正常値となったが月経は発来しなかった.術後14か月に胸腰椎に遠隔転移再発を認め,化学療法を再開したが術後25か月に死亡した.思春期がん患者においても骨盤照射前の卵巣移動術は考慮すべきである.

  • 池上 由希子, 梅田 雄嗣, 岩井 篤, 田坂 佳資, 神鳥 達哉, 緒方 瑛人, 三上 貴司, 加藤 格, 平松 英文, 岡本 健, 青山 ...
    2018 年 55 巻 3 号 p. 329-332
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/27
    ジャーナル 認証あり

    症例は14歳男児.左脛骨原発骨肉腫と診断され,術前・術後化学療法,原発巣全摘により寛解となったが,その後肺再発を2回来した.塞栓に関連した症状は認めなかったが,2回目再発病変に対する左肺部分切除後に施行したFDG PET-CTにて左膝窩静脈内に腫瘍塞栓が確認された.Gemcitabine+docetaxelを6コース,腫瘍塞栓を含んだ血管切除および大伏在静脈置換術を施行したが,術後pazopanib内服開始から6か月後に左肺に3回目再発を来した.現在治療継続中であるが以降は再発なく1年6か月生存中である.骨肉腫における腫瘍塞栓の頻度は比較的高いため,FDG PET-CTによる全身検索を積極的に盛り込んでいく必要があると考えられた.

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