日本小児血液・がん学会雑誌
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56 巻 , 3 号
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第60回日本小児血液・がん学会学術集会記録
シンポジウム5: 血友病の現状と今後の治療選択
  • ―保因者診断・健診と周産期管理
    白山 理恵, 小野 織江, 伊藤 琢磨, 押田 康一, 佐藤 哲司, 酒井 道生, 楠原 浩一, 白幡 聡
    2019 年 56 巻 3 号 p. 275-281
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/16
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    近年,血友病患者に対する医療は飛躍的に進歩した.しかし,一方のX染色体のみに血友病の病因遺伝子を認める女性(保因者)のなかで血友病診断基準を満たす例は20%以上ともいわれるのにも関わらず,保因者への医療ケアの普及は遅れている.保因者診断は従来,次世代の血友病リスクの評価が主目的で実施されており,自施設でも女性親族が凝固検査を受けた血友病患者は20%にとどまっていた.保因者を出血から守るためにも保因者とその疑いのある女性親族には凝固第VIII(FIX)因子活性の測定がなされるべきである.周産期管理については血友病周産期管理指針にあるように各分野の連携が重要である.分娩様式は児の頭蓋内出血(ICH)が経腟分娩より選択的帝王切開で有意に少ないという報告があるが,帝王切開でもICHリスクはゼロではなく,母体の出血リスクもある.現状では十分な説明を行って家族と相談し,ケースごとに判断することが求められる.医療者が妊婦を保因者と認識しているだけで血友病児の新生児期ICHは減少するともいわれ,この点からも保因者に対する積極的なアプローチが望まれる.女性親族を受診につなげていくため,医療者が患者姉妹と幼少期から関わっていくことが一助となりえる.また,保因者診断のみにとらわれず最新の知識の共有や心理的ケア,メディカルチェックを受けられる保因者健診という新たな受診のかたちが理想的であると考える.

  • 野上 恵嗣
    2019 年 56 巻 3 号 p. 282-286
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/16
    ジャーナル 認証あり

    血友病Aは,血液凝固第VIII因子(FVIII)の遺伝子異常に基づく先天性出血性凝固障害症である.FVIII製剤を出血時あるいは定期的に補充することにより,血友病患者は出血抑制により関節症発症が著しく抑制され,結果としてQOLは飛躍的に向上した.一方,補充療法に伴い,重症血友病Aの20–30%に抗FVIII同種抗体(インヒビター)が出現する.一旦インヒビターが出現すると,既存の止血治療を極めて不安定かつ困難にさせるため,血友病治療の大きな課題となっていた.インヒビター保有患者の止血治療戦略として,1)インヒビター発生要因を解明して出現を防ぐこと,2)インヒビター消失を図ること,3)有効な止血ならびに予防治療を確立することである.最近,本邦での免疫寛容導入療法の成績報告,そして皮下注射のbispecific抗体(emicizumab; ヘムライブラ®)が市販され,インヒビター患者において著明な出血抑制効果を示している.本稿ではインヒビター治療の現状について概説する.

  • 白幡 聡
    2019 年 56 巻 3 号 p. 287-292
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/16
    ジャーナル 認証あり

    血友病AとBは人口1万人あたり1~5人発症する遺伝性出血性疾患である.我が国では約6000名の患者が1000前後の施設に分散し,血液凝固因子製剤による治療を受けている.血液凝固因子製剤の近年の進歩は目覚ましいものがあるが,患者が多くの施設に分散している結果,製剤の適正使用に関して大きな較差がある.止血管理に加えて,血友病性関節症など様々なハンデイキャップを抱える血友病患者には包括医療の提供が必要であるが,血友病センター以外では包括医療の提供は難しい.そこで日本血栓止血学会では,血友病診療連携委員会を設置した.血友病診療連携委員会は,ブロック拠点病院,地域中核病院,そのほかの診療施設に分類される.ブロック拠点病院は,地域中核病院およびそのほかの診療施設と連携して,包括的個別的ケアを提供していく予定である.

シンポジウム6: 固形腫瘍における基礎医学の新展開
  • ~神経芽腫ステージ4Sに着目して~
    山田 思郎, 伊東 潤平, 早野 崇英, 中岡 博史, 木村 哲晃, 杉本 竜太, 望月 博之, 井ノ上 逸朗
    2019 年 56 巻 3 号 p. 293-303
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/16
    ジャーナル 認証あり

    トランスポゾン(Transposable Element: TE)はゲノム内を転移する能力を持つDNA配列で,ヒトゲノムに散在し,ほぼ半分を占める.TEは転移により遺伝子を破壊するなど負の側面もあるが,転写因子結合部位(Transcription Factor Binding Site: TFBS)を持っているため,近傍遺伝子のエンハンサーとしての性格も持ち,遺伝子ネットワークの一部となっている.TEのTFBSは大量にゲノムに散在しているため,細胞機能に合わせてフレキシブルに使われ,ゲノムの柔軟な環境適応に寄与している.活動性のあるエンハンサーは転写されてRNAになるが,TE由来のRNAもエンハンサー機能を反映していると思われ,細胞の性質を見る一つの手段となる.

    神経芽腫(Neuroblastoma: NB)にはステージ4S(4S)という自然消退する一群がある.予後の悪いステージ4(st4)との比較研究はNBの病態や治療を考える上で重要である.遺伝子変異の少ないNBでは,ゲノム機能の破綻を検出するためには遺伝子以外の多角的視点での評価が必要である.我々はTE発現を用いてst4と4Sを比較し,NBの性質が反映されることを示した.今後,TE発現がどのような意味を持ち,臨床像や治療反応性と関連するかの検討が必要であるが,種々の疾患で新しい細胞機能の指標になるであろう.

シンポジウム7: 小児固形腫瘍に対する遺伝子細胞療法の新展開
教育セッション2: 放射線治療
  • 水本 斉志, 大城 佳子, 櫻井 英幸
    2019 年 56 巻 3 号 p. 311-318
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/16
    ジャーナル 認証あり

    悪性腫瘍の治療において,放射線治療は手術,化学療法と並び重要な役割を担う.特に小児領域では放射線に対する感受性が高い腫瘍が多く,集学的治療のなかで果たす役割は大きい.しかしながら,成長過程にある小児は細胞分裂が盛んであり,正常細胞も放射線に対する感受性が高く,有害事象に注意を要する.そして,成長発達障害や二次がん等,小児特有の有害事象も考慮する必要がある.そして,恐怖感を与えることなく円滑に放射線治療を遂行するために多職種の連携が必要になる.筑波大学附属病院では1980年代から小児腫瘍に対する陽子線治療に取り組んできた.その経験を踏まえて小児腫瘍に対する放射線治療について解説する.

英語口演2: 晩期合併症・支持療法
  • 野田 優子, 古賀 友紀, 上田 圭希, 鈴木 麻也, 小野 宏彰, 大場 詩子, 中島 健太郎, 宗崎 良太, 若杉 陽子, 濵田 裕子, ...
    2019 年 56 巻 3 号 p. 319-324
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/16
    ジャーナル 認証あり

    はじめに:抗がん剤は抗腫瘍効果を有する一方で,催奇形性,生殖毒性,発がん性などが知られている.近年,抗がん剤を取り扱う医療従事者への抗がん剤曝露が問題となっており,日本がん看護学会,日本臨床腫瘍学会および日本臨床腫瘍薬学会合同の職業性曝露対策ガイドラインが策定された.小児がん患児の入院加療においては,日常的に患児家族が付き添い生活援助が行われているが,家族への曝露の実態は明らかではない.

    方法:患者家族への抗がん剤曝露の実態を明らかにするために,シクロホスファミド(CPM)投与を受けた患児に付き添う家族,治療に関わった医師,看護師および他医療スタッフの尿,唾液におけるCPM濃度測定の他,環境曝露調査を実施した.本研究は九州大学医系地区部局倫理審査委員会にて承認を得ている.

    結果:対象は大量CPM投与を受けた小児がん患児(乳幼児7名,学童・思春期8名)家族.乳幼児家族の尿から(192 ng/10 mL,0–1,510),学童・思春期家族から(0 ng/10 mL,0–58.4)のCPMが検出され,学童・思春期家族に比し,投与絶対量が少ないはずの幼児家族への曝露量が有意に多かった(p=0.005).医療者からは検出されず,唾液も同様の結果であった.患児沐浴後のお湯をはじめ,肌着,シーツからもCPMが検出され,患児体液,排泄物を介した曝露が明らかとなった.

    結論:小児がん領域においては,医療者のみならず,家族や同室の他患児に対する健康被害を最小限に留めるために,患児年齢に応じた曝露対策を講じる必要がある.

英語口演4: 血液基礎
  • 木村 俊介, 滝田 順子
    2019 年 56 巻 3 号 p. 325-330
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/16
    ジャーナル 認証あり

    次世代シーケンサーの発展に伴いT細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)の分子生物学的特徴が明らかになり,DNAメチル化を含むエピゲノム領域の研究が急速に広まっている.本研究では79例の小児T-ALLに対してEPICメチル化アレイを用いたDNAメチル化解析を行い,DNAメチル化プロファイルによって4群(Cluster 1–4)に分類されることを明らかにした.Cluster 1はTAL1に関連した群であり,ALDH1A2などのTAL1の下流遺伝子が高発現であるlate corticalの分化段階の一群であると考えられた.Cluster 2はCluster 1と真逆のメチル化プロファイルを示し,DEPTORの高発現によるPI3K-AKTパスウェイの活性化が特徴的であった.細胞表面抗原ではCD4/8 double negativeであり,最も幼弱な分化段階の一群と考えられた.Cluster 3は高メチル化が特徴的であり,JAK-STAT関連やエピゲノム関連の遺伝子異常を多く有していた.症例数は少ないものの11例全例が生存していた.Cluster 4はSPI1に関連した群で低メチル化のプロファイルを示した.SPI1関連だけでなく細胞増殖やRAS/MAP関連の遺伝子が高発現となっていた.この群には極めて不良なサブタイプであるSPI1融合遺伝子を有する症例が全例含まれていた.この群に含まれたSPI1融合遺伝子を有さない2症例も死亡しており,SPI1融合遺伝子の有無に関わらずCluster 4は極めて予後不良であることも明らかとなった.これらのゲノム・エピゲノム情報を基盤としたさらなる検討が,今後の治療層別化や新規治療の開発に期待される.

英語口演5: 新規治療・萌芽的研究
総説
  • 金子 安比古, 春田 雅之
    2019 年 56 巻 3 号 p. 334-337
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/16
    ジャーナル 認証あり

    次世代シークエンサーによる小児がんの遺伝子解析が実施され,その10%は,がん素因遺伝子の生殖細胞変異が原因であることが明らかになった.Wilms腫瘍の生存率は改善し,90%に達している.しかしながら,24%の患者は重度の晩期障害を経験する.WT1は腎発生のマスター遺伝子なので,その生殖細胞変異はWilms腫瘍だけでなく,慢性腎臓病の原因になる.慢性腎臓病とそれが進展した終末期腎不全は,手術,放射線照射,化学療法の有害事象であると同時に,WT1生殖細胞変異がその発生に関与することがある.その場合,腫瘍自体ではなく,終末期腎不全が,死亡原因になることが多いので,対策が重要である.WT1生殖細胞変異保因者を遺伝子検査により確定し,サーベイランスにより,無症候の腫瘍を小さいうちに発見し,腎温存手術を実施する.これにより,終末期腎不全を含む晩期障害の軽減を図る取り組みが必要である.がん素因遺伝子変異(病的バリアント)保因者の遺伝カウンセリングと遺伝子検査は,小児がんの早期発見・治療により,晩期障害や予後の改善につながると期待される.

症例報告
  • 三谷 友一, 関 正史, 鬼澤 真実, 日高 もえ, 藤村 純也, 樋渡 光輝, 滝田 順子
    2019 年 56 巻 3 号 p. 338-342
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/16
    ジャーナル 認証あり

    HLA一致同胞ドナー不在かつ免疫抑制療法(IST)不応例における治療選択は,最重症再生不良性貧血(VSAA)における課題である.造血器腫瘍性疾患の移植適応例において適合ドナーを得られない場合,臍帯血移植(CBT)は有力な選択肢の一つだが,再生不良性貧血(AA)に対するCBTの有効性はまだ明らかではない.我々は感染症を反復したIST不応のVSAAに対して,感染管理目的で早急な移植が必要と判断し,CBTを行った.移植前処置は,フルダラビン,メルファランと低線量全身放射線照射で行い,GVHD予防にタクロリムスとミコフェノール酸モフェチルを使用した.day 16に好中球の生着が得られ,合併症としてgrade Iの急性GVHD,血球貪食症候群,ウイルス性出血性膀胱炎を認めたが管理可能であった.VSAAに対するCBTは適合ドナーを得られない場合の治療選択肢になりうると考えられた.

  • 伊藤 由作, 塩田 光隆, 野末 圭祐, 桝野 浩彰, 飯塚 千紘, 木村 美輝, 三上 貴司, 南原 利彦, 水本 洋, 梅田 雄嗣, 平 ...
    2019 年 56 巻 3 号 p. 343-347
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/16
    ジャーナル 認証あり

    急性巨核芽球性白血病(AMKL)は新生児発生例が多く,原因遺伝子変異により予後に差があることが判明している.症例は日齢0の女児.血小板減少を主訴に紹介となった.身体所見に外表奇形はないものの著明な肝脾腫を認めた.血液検査では播種性血管内凝固症候群を呈していた.感染症が原因と考え抗生剤および対症療法を開始した.末梢血中に芽球を2.7%認め,徐々に増加し日齢5には11%まで上昇したため骨髄検査を行った.細胞表面抗原検索から一過性骨髄異常増殖症(TAM)またはAMKLを疑った.その後対症療法のみで芽球は2%まで減少したため,非Down症候群に発生したTAMと考えた.しかし末梢血染色体検査でt(1;22)(p13;q13)が検出され,AMKLと確定診断し治療を開始した.芽球が自然に減少するTAMに類似した経過であり,診断に苦慮した.Polymerase chain reaction法による遺伝子変異の速やかな検索が簡便に利用できるようになることが期待される.

  • 田坂 佳資, 梅田 雄嗣, 赤澤 嶺, 神鳥 達哉, 磯部 清孝, 加藤 格, 平松 英文, 前田 由可子, 大封 智雄, 足立 壯一, 滝 ...
    2019 年 56 巻 3 号 p. 348-352
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/16
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    症例は9か月の男児.先天性無巨核球性血小板減少症に対して非血縁者間骨髄移植を行った.移植後速やかな造血回復が得られ,経時的なキメリズム解析ではday 91以降は完全キメラを達成した.Day 56頃より自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を発症し,PSL,免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)を開始したが効果がなく,輸血依存性が続いた.Day 69よりrituximab, day 102よりmTOR阻害薬everolimusを併用し,貧血は徐々に改善した.近年,小児造血細胞移植例においてステロイドやIVIGに不応なAIHAの合併が増加しており,rituximabやmTOR阻害薬を第一選択治療として投与するなど,治療アルゴリズムの再評価が必須と考えられた.

  • 中西 達郎, 佐藤 真穂, 塩見 和之, 野村 明孝, 石原 卓, 當山 千巌, 五百井 彩, 樋口 紘平, 清水 真理子, 澤田 明久, ...
    2019 年 56 巻 3 号 p. 353-357
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/16
    ジャーナル 認証あり

    患者は14歳男性.発熱と腰痛を主訴に前医を受診した.前縦隔に胚細胞性腫瘍を認めたことに加え急性巨核芽球性白血病を合併していた.これらの稀な疾患を合併していることから,縦隔原発胚細胞性腫瘍―悪性腫瘍症候群と診断した.日本小児白血病リンパ腫研究グループ(以下,JPLSG)AML12 protocolに基づいて治療を開始し白血病は寛解となった.胚細胞性腫瘍の治療強化のため強化療法にシスプラチンを追加した.しかし強化療法2コース終了後に,白血病の骨髄再発をきたし,胚細胞性腫瘍の増大をきたし呼吸苦症状が出現した.追加治療のため当院へ転院した.胚細胞性腫瘍摘出術後,可及的速やかに造血細胞移植を施行した.しかし,移植後約1か月で白血病のCNSおよび骨髄再発をきたし,移植後117日で死亡した.この疾患に対する症例の蓄積により,より有効な治療方法の確立が望まれる.

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