日本小児血液・がん学会雑誌
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57 巻, 1 号
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会告
原著
  • 原田 和明, 齋藤 武, 照井 慶太, 中田 光政, 小松 秀吾, 秦 佳孝, 工藤 渉, 吉田 英生
    2020 年 57 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/27
    ジャーナル フリー

    胚細胞腫瘍は胎生期の原始胚細胞が胚細胞になるまでの間に発生してくる腫瘍と考えられており,その種類や悪性度は様々である.しかし,本邦における小児頭蓋外胚細胞腫瘍に関するまとまった報告は少ない.我々は,2003年から2017年までの間に当院で治療した頭蓋外胚細胞腫瘍63例について,後方視的に臨床学的特徴と治療経過を検討した.診断時年齢の中央値は6.6歳(日齢10–14歳),原発部位は卵巣40例,精巣9例,仙尾部7例,縦隔7例であった.組織学的分類では成熟奇形腫41例,未熟奇形腫6例,卵黄嚢腫瘍11例,複合組織型3例,絨毛癌1例,組織型不明1例(脳転移・頭蓋内出血により生検未施行)であった.成熟奇形腫摘出後の再発例を含めた13例の悪性胚細胞腫瘍に対して白金製剤をベースにした化学療法を施行し,11例(85%)で寛解が得られた.悪性胚細胞腫瘍は化学療法に対する感受性が高く,再発例に対しても化学療法が奏功する.また,術前化学療法により腫瘍縮小が得られることが多く,自験例においても術前化学療法により腫瘍の完全切除を達成できた症例を経験した.巨大な腫瘍や腹膜播種を伴い初回手術時に完全切除が困難と考えられる症例に対しては,「化学療法+遅延手術」を選択肢の一つとして考えるべきである.

  • 山本 裕子, 嶋田 明, 山口 そのえ, 小田 慈
    2020 年 57 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/27
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は,小児慢性特定疾患治療研究事業から助成を受けている小児がん家族の経済状況を把握し,経済支援への満足感を示すことである.

    【方法】助成を受けている小児がん家族197名に,無記名自記式質問紙調査を実施した.調査内容は基本属性,医療費助成制度,経済支援への満足感,経済負担への困難・不安で構成した.経済支援への満足に関連する因子を評価するためにロジスティック回帰分析を用いた.

    【結果】母親および父親,計107名のうち約70%は入院時の食費や外来通院時の交通費など医療費以外の費用に経済負担を抱えながらも公的な経済支援へ満足していた.さらに,情報伝達時の医療者の姿勢が消極的と比較し,積極的な方が家族の満足度が有意に高かった(OR, 10.3; 95% CI, 2.5–42.3).一方,家族は晩期合併症や民間保険への加入が難しいことに加え,経済支援終了後の経済負担を心配していた.全国平均より子どもの数が多く,収入が少ない岡山県は,経済支援終了後はより経済負担が多くなることが予想される.

    【結論】小児がん家族の経済支援への満足感を高めるためには,情報伝達時の医療者の積極的な姿勢が重要であった.また,経済支援は地域特性や社会状況を反映させた内容にしていく必要性が示唆された.

  • 野口 磨依子, 中山 秀樹, 横山 良平, 白石 恵子, 坂田 友, 一宮 絵美, 上田 圭希, 岡村 純
    2020 年 57 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/27
    ジャーナル フリー

    [背景]高校生がん患者の学習問題は深刻であり,彼らの将来に大きな影響を与えていると考えられる.そこで我々は高校生がん患者の長期入院後の復学と学習支援状況を明らかにするために調査を行った.[方法]2012年4月から2018年3月の期間に,当施設に3か月以上の入院を必要とした高校生がん患者を対象として,診療録から復学状況を調査した.また,他施設での学習支援状況を明らかにするためにアンケート調査を実施した.[結果]当施設の調査対象は,男性7例,女性4例,原疾患は血液疾患5例,固形腫瘍6例であった.治療は化学療法のみ4例,化学療法+手術±放射線治療4例,同種移植3例であった.在学中の入院期間は中央値6か月(範囲,3~18)であった.復学状況は中途退学2例,留年5例,留年なく復学3例,復学せず卒業が1例であった.当施設では2015年から進学塾からの学習支援教師派遣による高校生への学習支援を行っている.他施設へのアンケート調査では,院内学級の設置は1施設あるのみで,訪問指導を行っている施設は3施設であった.[考察]今回の調査で,高校生がん患者は中途退学や留年を余儀なくされる場合が多く,退院後の復学の困難さが示された.学習支援は十分ではなく,高校生がん患者の復学を支援するシステム構築が望まれる.

症例報告
  • 中川 俊輔, 岡本 康裕, 櫨木 大祐, 児玉 祐一, 西川 拓朗, 江口 太助, 林 完勇, 河野 嘉文
    2020 年 57 巻 1 号 p. 20-23
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/27
    ジャーナル フリー

    異所性右鎖骨下動脈–食道瘻は稀だが,止血が困難で,致死的な疾患である.症例は4歳のびまん性橋膠腫の患児で,放射線治療と化学療法中に突然大量に吐血し,出血性ショックを来した.上部消化管内視鏡検査で経鼻胃管による食道潰瘍から出血を認めた.食道バルーンで応急的に止血し,造影CTで異所性右鎖骨下動脈–食道瘻を確認した.その後,経カテーテル的動脈塞栓術で完全に止血でき,救命できた.本症例は,小児がん患者が異所性右鎖骨下動脈–食道瘻を発症した点と,経カテーテル的動脈塞栓術で止血に成功した点のいずれにおいても最初の報告である.化学療法は粘膜障害を引き起こすため,胃管留置による潰瘍や瘻孔形成を増悪させる可能性がある.胃管を留置して化学療法を行う前には異所性右鎖骨下動脈の有無を評価する必要がある.経カテーテル的動脈塞栓術は異所性右鎖骨下動脈–食道瘻に対して有効な止血手段である.

  • 渡邉 俊介, 原普 二夫, 安井 稔博, 宇賀 菜緒子, 直江 篤樹, 近藤 靖浩, 土屋 智寛, 鈴木 達也
    2020 年 57 巻 1 号 p. 24-27
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/27
    ジャーナル フリー

    我々は稀な肝未分化肉腫を2例経験したので報告する.症例1は11歳女児.発熱,腹痛で発症し,CTで肝右葉に巨大腫瘍,PET-CTでは腫瘍辺縁に強く集積を認めた.血液検査所見ではLDHとCA125が高値を示し,生検にて肝未分化肉腫と診断した.VAC療法(ビンクリスチン,アクチノマイシンD,シクロフォスファミド)(5クール)後に腫瘍核出術を施行した.術後VAC療法(8クール)を行い治療終了後5年2ヶ月経過し再発なく生存中である.症例2は12歳男児.右上腹部膨隆と腹痛で発症し,CTで肝右葉に腫瘍,PET-CTで腫瘍辺縁に集積を認めた.血液検査所見ではLDHとCA125が高値を示し,肝未分化肉腫と術前診断し右3区域切除術を行った.摘出腫瘍は肝未分化肉腫の病理診断であった.術後VAC療法(5クール)行い治療終了後1年4ヶ月経過し無病生存中である.年長児で特異的腫瘍マーカーの上昇が伴わない肝腫瘍においては,本疾患を想起することが肝要である.

  • 坂口 公祥, 川上 領太, 小松 和幸, 清水 大輔
    2020 年 57 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/27
    ジャーナル フリー

    病期I,病期II Aかつ巨大腫瘤を有しない小児の早期ホジキンリンパ腫(HL; Hodgkin lymphoma)に対する標準治療は,2–4コースの多剤併用化学療法と初発時に腫瘍が存在したリンパ節領域(IF; involved field)に対する低線量照射(IF照射)である.早期HLに対し,さまざまな化学療法が試みられている.また,晩期合併症の軽減を目的として,治療反応が良好だった場合,IF照射省略が試みられている.我々は2例の小児早期HLに対して,vinblastine,doxorubicin,methotrexate,prednisoloneによるVAMP療法を実施した.VAMP療法2コース後に18F-fluorodeoxyglucose positron emission tomography/computed tomographyで完全寛解に到達したことを確認し,2コースのVAMP療法を追加してIF照射を省略した.肝酵素上昇と好中球減少症が治療中に認められた有害事象であった.2例は4年以上完全寛解を維持しており,晩期合併症を認めていない.VAMP療法は小児早期HLに対して安全な化学療法レジメンである可能性が示唆された.

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