日本小児血液・がん学会雑誌
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58 巻, 2 号
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第62回日本小児血液・がん学会学術集会記録
シンポジウム2: 再照射
  • 橋本 孝之, 森 崇, 西岡 健太郎, 打浪 雄介, 安田 耕一, 木下 留美子, 田口 大志, 加藤 徳雄, 清水 伸一, 青山 英史
    2021 年 58 巻 2 号 p. 89-93
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/18
    ジャーナル フリー

    陽子線治療は通常のX線による放射線治療に比べて線量集中性に優れ,標的への線量を保ったまま周囲の正常組織線量を低減することで,小児がん患者の急性期並びに晩期有害事象の軽減が可能である.2016年4月からは20歳未満の限局性固形悪性腫瘍に対する根治的な陽子線照射が保険適応となり,各施設で小児がんの陽子線治療実施件数が増加傾向にある.局所領域再発に対する再照射は,腫瘍進行抑制・症状緩和と,時に治癒や長期の腫瘍制御による健康状態・QOLの維持をもたらす可能性がある.小児患者に対する再照射における重要臓器・器官の累積耐容線量や安全性は確立していないが,中枢神経腫瘍に対する陽子線再照射により,有害事象の発生を抑えた良好な治療成績が報告されている.今後,小児がん再発の治療選択肢における陽子線再照射の有用性については,前向き臨床試験での評価が必要と考える.

  • 藤 浩
    2021 年 58 巻 2 号 p. 94-98
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/18
    ジャーナル フリー

    小児がんは放射線治療の治療効果が高い疾患であり,根治的治療,姑息的治療として有用である.しかしこのような放射線治療を行われた部位に再発することも稀ではなく,そのような場合しばしば,他の有効な治療法がないことが多い.初回治療により制御できなかった病巣に対する2回目以降の治療を再照射と呼ぶ.再照射では初回治療よりも効果が得られる可能性が低く,初回治療との線量の積み重ねにより有害事象のリスクが高くなると考えられる.初回治療に比べ,不利な点が多いにもかかわらず近年,小児がんにおいて再照射の臨床的有用性が示されるようになってきた.この総説では,実地臨床において再照射の適応を検討するうえで必要な知識として,再照射に求められるエビデンス,再照射による臓器の線量の累積について解説する.そして代表的な病態に対する再照射の有効性と安全性に関する知見を紹介する.

  • 副島 俊典, 福光 延吉, 出水 祐介, 美馬 正幸, 鈴木 毅, 小阪 嘉之, 河村 淳史
    2021 年 58 巻 2 号 p. 99-102
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/18
    ジャーナル フリー

    小児腫瘍に対する再照射は日常診療では検討されるがそのまとまった報告は少ない.そこで今回再照射例について検討した.2013年から2019年までに放射線治療を行った158例のうち2回以上の照射を行った33例(21%)を対象とした.その結果,脳腫瘍が10例と多く認められた.さらに2015年から2019年までに再照射を行った髄芽腫を対象として詳細を検討した.髄芽腫の再発例は3例あり,いずれも12 Gy/8回の全脳全脊髄照射を行ったが,その後に髄膜播種再発をきたした.髄芽腫治療後に二次がんを発症し,二次がんに対して再照射を行った症例が3例あり,3例とも膠芽腫であった.いずれも40.05 Gy/15回の照射を行ったが,早期に再発をきたし,死亡した.再照射は長期生存の報告もあり,選択肢のひとつと考えられるが,効果について今後検討する必要がある.

教育セッション7: 造血細胞移植
  • 梅田 雄嗣
    2021 年 58 巻 2 号 p. 103-110
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/18
    ジャーナル フリー

    第1・第2寛解期に同種造血細胞移植が施行された小児急性白血病症例の全生存率は60–70%であるが,第3以降の寛解期や非寛解期に移植が施行された症例の全生存率は30%未満と不良であり,移植後再発を減少させる対策が必要である.さらに,移植後長期生存者では骨髄破壊的前処置で使用される高線量全身放射線(TBI)や大量抗がん剤,または慢性GVHDに関連した晩期合併症が問題となる.移植後再発を減らすために移植前処置を強化しても,合併症死亡が増加するため移植成績の改善は期待できない.そのため,移植前残存腫瘍量の減少,移植後再発の予防または早期治療介入を目指した様々な治療が試みられている.また,高線量TBIまたはbusulfanを避けた毒性減弱前処置による晩期合併症の減少も長期的な移植成績の向上に寄与すると考えられる.これら移植前後の治療法選択や治療効果判定には,精度の高い微小残存病変の測定が必須である.

How I Treat 1
  • 富澤 大輔
    2021 年 58 巻 2 号 p. 111-117
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/18
    ジャーナル フリー

    FLT3はタイプIII受容体型チロシンキナーゼであり,成人急性骨髄性白血病(AML)の約30%,小児AMLの約10%で変異を認める.AMLのFLT3変異は,FLT3遺伝子内縦列重複変異(FLT3-ITD)とチロシンキナーゼドメイン変異(FLT3-TKD)の2種類が知られているが,頻度が高く,また予後と相関するのは前者のFLT3-ITDである.FLT3-ITD陽性AMLは小児においても予後不良であり,寛解導入率が低く,再発率も高い.現在,本邦の小児AMLプロトコールでは高リスク群として第1寛解期における造血細胞移植の適応であるが,残念ながら予後の改善には至っていない.近年,FLT3を標的としたチロシンキナーゼ阻害薬の開発が進んでおり,本邦においてもギルテリチニブとキザルチニブの2種類の薬剤が成人の再発・難治FLT3変異陽性AMLに対して承認されている.現段階では小児適応のあるものや通常化学療法との併用の適応のあるもの,さらには初発例への適応のあるFLT3阻害薬は本邦では存在しないが,再発・難治FLT3変異陽性AMLに対しては小児例においても治療の選択肢となりつつある.FLT3阻害薬の現在,新たなFLT3標的治療の開発,今後のFLT3変異陽性AMLに対する治療の展望について概説する.

要望演題2: 妊孕性温存
  • 京野 廣一, 中村 祐介, 宮本 若葉, 石井 実佳, 奥山 紀之, 橋本 朋子
    2021 年 58 巻 2 号 p. 118-123
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/18
    ジャーナル フリー

    世界では小児・AYA世代のがんの妊孕性温存(FP)として1997年頃より卵巣組織凍結(OTC)が開始された.小児がんは進行が早いため,短期間で実施できるOTCが選択され,大規模施設では小児がん症例が全OTCの12–18%を占める.一方,日本の小児がん拠点病院は15か所あるが,OTCに関するネットワークは未だ整備段階である.この解決策として,長期間,安全かつ高品質なOTC実績を持つデンマークやFertiPROTEKTの形を踏襲した“Centralized system”が有益と考える.システムの実施には,小児外科医・小児科医・生殖補助医療専門医らが密な連携を取り,患者の意思決定支援やOTCの術後管理を円滑に実施できる環境整備が不可欠となる.また,卵巣組織の保存に関しても,日本においては大きな問題がある.小児期にOTCを実施した場合,その凍結期間は10年を超える場合も少なくない.日本は地震や水害といった天災の多い地域であり,それらに対するリスクマネジメントは必須となる.当院では,OTC実施のための保管機器や専門家不在の施設に代わり,全国のがん患者のOTCを可能にするための搬送システムを構築し,東京に卵巣組織凍結保存センター(HOPE)を立ち上げた.少子高齢化に直面する我が国にとって,小児がん患者のためのFPは重要であり,妊孕性温存に関する積極的な啓発ならびに支援体制づくりが求められる.本稿では世界のOTC実施状況と比較しながら,国内でのOTCに関する課題について言及する.

総説
  • 中野 嘉子, 熊本 忠史
    2021 年 58 巻 2 号 p. 124-131
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/18
    ジャーナル フリー

    小児がん症例の10%近くが,cancer predisposition geneの病的バリアントをもつ遺伝性腫瘍であり,ゲノム医療の普及により診断される機会も増えつつある.本稿では,小児遺伝性腫瘍の臨床における課題について概説する.遺伝性腫瘍の診断は,それに基づいた治療選択やサーベイランスといった介入により予後改善につながることが期待される.一方で,その診断は,患者や家族の心理やライフイベントにも様々な影響を及ぼすため,遺伝学的検査やサーベイランスの実施は対象者に不利益が伴う可能性もある.また,保険診療の対象となっていない事項も多く,日本小児血液・がん学会専門医研修施設に対して実施したアンケート調査の結果からも,遺伝性腫瘍の診療の障壁の一つであることが示唆された.遺伝性腫瘍の小児患者に対する診療の均てん化と充実のためには,保険制度や家族への心理的ケア,症例登録制度などを含めた医療体制の整備,それを推進する根拠となるエビデンスの構築が求められる.

原著
  • ~九州・沖縄ブロック小児がん連携病院における調査~
    東矢 俊一郎, 古賀 友紀, 岡本 康裕, 野村 優子, 中山 秀樹, 大園 秀一, 本田 裕子, 興梠 雅彦, 西 眞範, 右田 昌宏, ...
    2021 年 58 巻 2 号 p. 132-137
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/18
    ジャーナル フリー

    【背景】2020年に始まったCOVID19のパンデミックは長期化の様相を呈し,人々の生活様式を一変させた.小児がん患者家族および医療者も同様であり,感染による重症化を回避するため,十分な対策のもとに原疾患治療を進めている.【方法】九州・沖縄ブロック小児がん拠点病院連携病院に,(COVID19,第1波後)2020年6月および(第2波後)9月の2回にわたり,①COVID19の経験,②診療への影響,③患者および医療従事者への社会的・精神的影響につき調査を行い,毎月施行されている拠点病院連携病院TV会議において議論した.【結果】2020年6月は16施設,9月は17施設から回答を得た.COVID19感染例はなかった.原疾患治療の変更を余儀なくされた例では転帰への影響はなかった.全施設で面会・外泊制限が行われ,親の会,ボランティア活動,保育士・CLS,プレイルーム・院内学級運営にも影響が生じた.多くの患者家族に精神的問題を認め,外来患者数は減少,通学に関する不安も寄せられた.6施設で遠隔診療が行われた.第1波から第2波にかけて制限は一部緩和され,外来受診者数も元に戻りつつある.【まとめ】COVID19パンデミックにより,小児がん患者にはこれまで以上の精神的負担がかかっている.小児における重症化は稀だが,治療変更,中断による原疾患への影響が懸念される.十分な感染対策を行いながら,少しでも生活の質を担保できるよう,意義のある制限(および緩和),メンタルケアおよび情報発信が求められる.

  • 中田 佳世, 大川 純代, 上田 崇志, 濱 秀聡, 宮村 能子, 橋井 佳子, 時政 定雄, 井上 彰子, 坂田 尚己, 藤野 寿典, 塩 ...
    2021 年 58 巻 2 号 p. 138-148
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/18
    ジャーナル フリー

    小児・思春期・若年成人(Adolescent and Young Adult, AYA)世代のがん患者および家族には,幅広いライフステージにおける多様なニーズが存在する.本研究では,現在の小児がん医療に対する患者家族のニーズを把握するための横断的質問紙調査を実施した.対象は,大阪府小児がん連携施設連絡会参加の9病院において,2015年から2018年までに小児がんの治療を受けた,20歳未満の患者の家族で,調査内容は,(1)参加者の基本情報(2)治療前の情報提供(3)支持療法・疼痛緩和・精神的苦痛の軽減(4)多職種連携・相談支援(5)療養環境(6)サバイバーシップ(7)小児がん医療全般についてとした.249人にアンケート調査票を配布し,200人の回答を得た(回収率80%).多くの患者が納得のいく治療を選択していた一方で,晩期合併症,生殖機能への影響についての説明状況は,診療病院によってばらついていた.治療による生殖機能への影響については,約半数(95人)が説明を受けておらず,うち8割(76人)が説明を希望していた.全体として,きょうだい支援,病院食,付き添い家族の生活環境,情報提供,医療費制度の手続きの改善などへのニーズが高いことが明らかとなった.具体的なニーズを各診療病院・行政にフィードバックし,対策を検討することで,今後の小児がん医療提供体制の改善につながると考える.

  • 南條 由佳, 佐藤 篤, 早坂 広恵, 渡辺 裕美, 名古屋 祐子, 小川 真紀, 鈴木 資, 鈴木 信, 小沼 正栄, 今泉 益栄
    2021 年 58 巻 2 号 p. 149-155
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/18
    ジャーナル フリー

    血友病診療は日々進歩しているが,血友病保因者をめぐる課題は残されている.近年,血友病保因者の出血傾向が注目されている.血友病保因者支援へ向け,当院に通院している血友病患児の母親に対し,出血傾向の有無,出産時の状況について調査を施行した.確定保因者14名,推定保因者9名の計23名に聞き取り調査を施行し,うち17名の凝固因子活性を測定した.凝固因子活性測定を実施した17名中8名で第VIII因子あるいは第IX因子活性が40%未満であった.確定保因者の半数以上に抜歯後止血困難,月経過多がみられた.出血傾向の有無と凝固因子活性には明らかな相関は認められなかった.確定保因者14名中8名が出産時,産後出血が多かったと自己申告し,うち4名が分娩時1000 mL以上の大量出血を来し,2名が輸血を施行されていた.輸血を施行された2名は非妊娠時の凝固因子活性は40%以上であった.共に家系内に血友病患者が存在したが,保因者である可能性について伝えられておらず,事前の理解と準備なしに出産し,出血多量で輸血を要した.血友病保因者の中には出血症状に困っている女性が予想以上に多くいることが明らかになった.保因者が医療者から十分な説明を受けていない場合もまだ多いと思われる.血友病診療に携わる医療者が保因者へ十分な説明や支援を行うと共に,産科医や新生児科医と連携し出産時のリスク軽減に努めることが保因者の心理的負担軽減にもつながり,重要と考えられる.

症例報告
  • 佐藤 智信, 遠藤 愛, 杉山 未奈子, 寺下 友佳代, 長 祐子, 井口 晶裕
    2021 年 58 巻 2 号 p. 156-159
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/18
    ジャーナル フリー

    造血幹細胞移植(HSCT)により胆石症発生のリスクが上昇することが知られている.今回2度の移植を経た後,広汎性慢性GVHDの経過中に症候性胆石症による肝障害を呈したAMLの女児例を経験したので報告する.2度目の骨髄再発を来した後にHLA半合致末梢血幹細胞移植が施行され寛解を維持した.移植から1年後に腹痛および肝胆道系酵素の上昇が出現した.広汎性慢性GVHDによる肝障害が疑われたが,腹部超音波検査で胆嚢内に複数個の結石を認め,症候性胆石症と診断された.その後保存的治療で軽快したため定期的に腹部超音波検査を行いながら経過観察をしている.HSCT後の小児患者における胆石形成のリスクとして,複数回の移植,HLAの不一致,GVHDなどが報告されている.複数のリスク因子を有するHSCT後の症例に対しては,簡便で非侵襲的な腹部超音波検査を積極的に行うことを考慮する必要があると考える.

  • 渡壁 麻依, 荒川 ゆうき, 柳 将人, 森 麻希子, 藤永 周一郎, 野村 耕司, 康 勝好
    2021 年 58 巻 2 号 p. 160-165
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/18
    ジャーナル フリー

    我々はタクロリムス(Tac)血中濃度上昇に対し,フェニトイン(PHT)が有効と考えられた1例を経験した.症例は9歳女児.急性骨髄性白血病と診断し,化学療法を行ったが,寛解に至らず,骨髄破壊的前処置による同種造血細胞移植を行った.移植後20日目に生着を確認したが,移植後33日目から右季肋部痛と軽度肝胆道系酵素の上昇を認め,肝類洞閉塞症候群と診断した.移植後38日目にTacを中止したが,移植後40日目にTac血中濃度は34.6 ng/mLと上昇した.Tacは血液透析で除去困難なため,薬物相互作用による血中濃度の低下を期待しPHTを投与した.PHT開始翌日にはTac血中濃度は18.4 ng/mLとなり,以降も順調に低下した.Tac血中濃度上昇時にPHT投与は有効な選択肢となる可能性がある.

  • 下村 育史, 中川 俊輔, 棈松 貴成, 櫨木 大祐, 児玉 祐一, 西川 拓朗, 岡本 康裕, 河野 嘉文
    2021 年 58 巻 2 号 p. 166-170
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/18
    ジャーナル フリー

    重篤な心不全と腎不全で発症する神経芽腫は稀である.症例は2歳の女児.上気道炎罹患後に心原性ショックと腎不全を来し,経皮的心肺補助と持続血液濾過透析を開始した.経皮的心肺補助離脱後に高血圧を認め,造影CTで左副腎腫瘍を認めた.尿中vanillylmandelic acid,homovanillic acid,血中neuron specific enolase,カテコラミンが高値で,I123-MIBGシンチで腫瘍に一致する集積を認めた.骨髄に異常細胞を認め,神経芽腫と診断した.また,造影CTで左右の重複腎動脈を認め,両側の尾側の腎動脈起始部に狭窄を認めた.レニン,アルドステロンが高値で,腎血管性高血圧と診断した.神経芽腫と腎血管性高血圧の合併が,重篤な高血圧性急性心不全と過度な腎血管収縮による腎不全を引き起こしたと考えた.心毒性を考慮し治療強度を軽減した化学療法を開始すると,高血圧と腎不全が改善し,持続血液濾過透析を離脱できた.重篤な高血圧性心不全や腎不全で発症し,体外循環に依存した状態でも,速やかに神経芽腫に対する化学療法を開始することは,症状の改善に有用な可能性がある.

  • 前村 遼, 山下 大紀, 佐治木 大知, 坂口 大俊, 吉田 奈央, 千馬 耕亮, 村瀬 成彦, 髙瀬 裕樹, 山田 哲也, 吉川 佳苗, ...
    2021 年 58 巻 2 号 p. 171-174
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/18
    ジャーナル フリー

    Image-defined risk factor陽性の左後腹膜原発MYCN増幅3期神経芽腫を発症した初診時1歳2か月の男児に対して,寛解導入療法5コースを施行し,部分奏功を維持したまま,静注ブスルファンとメルファランによる自家骨髄移植併用大量化学療法を施行した.移植後72日目に腹腔鏡下腫瘍部分切除術を施行し,組織診にてviabilityの高い神経芽腫細胞を認め,77日目にCTで原発巣の増大を認めた.救援化学療法を施行したが100日目のCTでは多発胸膜転移も認めた.化学療法に加えて,30.6 Gy/17分割の原発巣局所照射および15 Gy/10分割の全肺照射を施行したが,腹膜播種を来し,207日目に死亡した.剖検後の解析にて,初発および剖検検体でのALK高発現を認めた.MYCN増幅およびALK高発現の神経芽腫では急速な増悪を示す可能性があり,ALK阻害剤など新規薬剤の導入が望まれる.

委員会報告
  • ―JCCG施設調査より―
    鈴木 孝二, 福島 啓太郎, 山本 暢之, 篠田 邦大, 矢野 道広, 石田 裕二, 大曽根 眞也, 嘉数 真理子, 加藤 陽子, 斎藤 雄 ...
    2021 年 58 巻 2 号 p. 175-181
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/18
    ジャーナル フリー

    【目的】本邦の小児がん患者に対する化学療法中の食事栄養管理指針の作成に向けて,現状を把握するための全国調査を行った.【方法】2017年4月~7月に日本小児がん研究グループ(Japan Children’s Cancer Group; JCCG)支持療法委員会より参加153施設の診療担当者に対してSurvey Monkey®を利用した食事栄養管理に関するWeb調査を実施した.【結果】調査対象となった153施設のうち110施設(72%)112診療科(内科系106診療科,外科系6診療科)から有効回答を得た.ほとんどの診療科で化学療法中に食事制限が行われ,その開始時期は「化学療法開始時から」が47%,「好中球500/μL未満から」が46%であった.持ち込み食は条件付きを含め90%の診療科で許可されていた.非加熱食品は制限されることが多かったが,牛乳,発酵飲料,密封されている惣菜や弁当,家人の手料理については対応が分かれた.栄養士または栄養サポートチームがいる診療科であっても,全ての患者に介入しているのは4割程度だった.【考察】小児がん診療における食事栄養管理について,本邦で施設によるばらつきが大きいことが分かった.今後,JCCG参加施設間で共有可能な指針が必要と考えられた.

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