小児・思春期・若年成人(Adolescent and Young Adult, AYA)世代のがん患者および家族には,幅広いライフステージにおける多様なニーズが存在する.本研究では,現在の小児がん医療に対する患者家族のニーズを把握するための横断的質問紙調査を実施した.対象は,大阪府小児がん連携施設連絡会参加の9病院において,2015年から2018年までに小児がんの治療を受けた,20歳未満の患者の家族で,調査内容は,(1)参加者の基本情報(2)治療前の情報提供(3)支持療法・疼痛緩和・精神的苦痛の軽減(4)多職種連携・相談支援(5)療養環境(6)サバイバーシップ(7)小児がん医療全般についてとした.249人にアンケート調査票を配布し,200人の回答を得た(回収率80%).多くの患者が納得のいく治療を選択していた一方で,晩期合併症,生殖機能への影響についての説明状況は,診療病院によってばらついていた.治療による生殖機能への影響については,約半数(95人)が説明を受けておらず,うち8割(76人)が説明を希望していた.全体として,きょうだい支援,病院食,付き添い家族の生活環境,情報提供,医療費制度の手続きの改善などへのニーズが高いことが明らかとなった.具体的なニーズを各診療病院・行政にフィードバックし,対策を検討することで,今後の小児がん医療提供体制の改善につながると考える.
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