椎間板は非特異的腰痛の一因となる.腰痛のほとんどは自然に改善するが,臨床上問題となるのは腰痛が慢性化する病態である.腰痛の慢性化の機序については,急性腰痛が遷延化した病態と,持続的にトリガーとなる損傷が繰り返し起こる病態の可能性がある.これらの病態に,椎間板内への神経伸長,椎間板内に発現する炎症性サイトカインや神経成長因子といった疼痛関連物質とその発現に関与するマクロファージ,椎間板に持続的に加わるメカニカルストレスが関与している可能性がある.
腰痛や脊柱変形は健康寿命の延伸を目指す我が国にとって克服すべき課題である.体幹筋は体幹支持に重要な要素だが,体幹筋の萎縮や脂肪変性がこうした病態に与える影響は明らかになっていない.我々は多施設横断研究によって体幹筋量の低下と腰痛や機能障害,脊柱後弯が関連していることを証明した.本稿ではその研究結果を中心に,体幹筋の加齢に伴う変化と,腰痛や脊柱アライメントとの関連,介入方法に関して文献をレビューした.
腰椎の椎間板変性分類は主にPfirmannの分類やSchneidermanの分類が使用されるが,頚椎では確立された分類法はない.本研究の目的は,一般住民547名の頚椎MRIを用い,腰椎椎間板変性分類が頚椎でも使用可能かを検討することである.2つの腰椎と5つの頚椎の椎間板変性分類法は,全ての分類で年齢とグレードは中等度に相関し,最も重度の椎間板変性は,どの計測法でもC5/6が最多だった.頚椎の椎間板変性は腰椎と同一の指標で評価することが可能である.
慢性腰痛患者では,多裂筋の筋細胞内脂肪(intramyocellular lipids:IMCL)が上昇していることが報告されている.本研究では,慢性腰痛患者における多裂筋のIMCLが腰痛の経過とともにどのように変化するかを縦断的に解析した.腰痛VASの改善率とIMCLの変化率の間には,正の相関(r = 0.818,p < 0.001)が認められ,腰痛の改善とともにIMCLが低下する傾向であった.多裂筋のIMCLは,慢性腰痛と深い関連があることが示唆された.
座位での異なる姿勢における腰部多裂筋の血液循環動態の経時的変化の検証を目的とした.過去1年以内に腰痛症状のない健常男女12名(平均年齢20.9±0.4)に,近赤外線組織血液酸素モニター装置(NIRS)を用い,腰部多裂筋の血液循環動態を,座位体幹中間位,屈曲位,伸展位で測定した.結果,腰部多裂筋のoxy-Hbおよびtotal-Hbが,屈曲では動作直後から屈曲位保持までに減少し,伸展では,姿勢保持後から10秒後まで増加することが示唆された.
多発性骨髄腫患者の初発症状と初診の診療科,最終診断までの期間を調査した.
多発性骨髄腫と確定診断された59例を対象に後方視的に調査した.
整形外科を初診した患者は45.0%だった.整形外科全体での診断遅延は34.0%,整形外科開業医での診断遅延は63.6%だった.整形外科的な症状が55.1%,内科的な症状が28.2%で,腰痛が最多だった.
多発性骨髄腫を遅延なく診断するには,血液検査を行う必要がある.
馬尾型腰部脊柱管狭窄症(平均69.7歳,術後観察期間21.5ヶ月)を除圧椎間数別に3群(1椎間15例,2椎間14例,3椎間10例)に分け,JOAスコア,JOABPEQ(疼痛),腰痛VAS,腰椎X線機能写による椎体すべり距離・椎間可動角を比較した.術前・最終観察時は3群間で有意差を認めず,全群においてJOAスコア,JOABPEQ,腰痛VASの有意な改善が得られ,動態撮影では有意な変化を認めなかった.
はじめに:胸椎黄色靭帯骨化症(OLF)は診断が遅れるという報告がある.
対象と方法:2007年よりOLFに対して手術を行った28例を後ろ向きに調査した.
結果:確定診断までに平均10.4ヶ月であった.胸髄群では腰椎疾患や糖尿病合併例が多く,円錐部群と円錐上部群では腰椎疾患と類似する症状を呈し,診断の遅れの原因と考えられた.
結語:腰椎MRIを撮影する際に腰椎レベルだけでなく胸腰椎移行部まで評価する事が重要である.
はじめに:慢性腰痛を有する高齢脊柱変形患者に対する運動療法効果は散見される.本研究では3ヶ月間の運動療法効果を検証した.
対象と方法:3ヶ月間の運動療法を受けた43名を対象とし,介入前後にVAS,6MWT,JOABPEQを評価した.
結果:VASの改善が20 mm以上だったのは22名(51%)だった.全体として,VAS,6MWT,JOABPEQ(4/5ドメイン)の改善を認めた.
結論:慢性腰痛を有する脊柱変形に対する3ヶ月間の運動療法介入の有用性が示唆された.
MRI画像を調査し椎間板内酵素注入療法の治療効果に影響を及ぼす因子を検討した.10例を対象とし,平均年齢42.3歳,椎間板変性はPfirrmann分類にてGradeIII7例,GradeIV3例であった.画像効果あり群(20 mm2以上のヘルニア縮小)は,4例(全例GradeIII)であった.画像効果あり群の治療後ODIの中央値は,4.4%,なし群は28.9%であり有意差を認めた.ヘルニア縮小面積と椎間板変性には負の相関がみられ,椎間板変性の少ない症例において,治療効果が高いことが推測される.
CTにおけるfacet joint opening(FO)は不安定性の指標になるとの報告がある一方で,腰椎変性疾患に対して低侵襲除圧術の限界について一定した見解がない.本研究は低侵襲除圧術で手術加療を行い最低5年の経過観察をしえた244例の再手術についてFOを含めて危険因子解析を行った.その結果,除圧椎間のFOのみならず,腰椎全体でFOをきたす椎間が多いことも再手術の危険因子であることが示された.
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