脊髄髄膜腫の手術成績より摘出におけるアプローチについて報告する.対象は8例,観察期間は1~10年である.アプローチは,5例は両側,2例は片側,1例は両側椎弓・椎間関節・椎弓根切除+後方固定で,全例で完全に摘出でき,SimpsonIIで終了した.合併症は片側椎弓切除の1例に棘突起骨折を認め,全例で再発はない.脊髄髄膜腫の治療の主体は手術であり,腫瘍を確実に摘出でき硬膜の処置が可能な適切なアプローチの選択が重要である.
当院の90歳以上の超高齢者の脊椎手術症例を調査し,70歳代と比較した.術式は椎体形成(BKP),除圧術が多く,固定術が少なかった.周術期合併症発生率,平均在院日数,患者満足度は70歳代と有意差はなかった.ASA-PS III以上で合併症が有意に増加しており,90歳以上の脊椎手術はASA-PSに基づいた適切な患者選択,低侵襲な術式選択により,安全に施行でき成績も良好であると考えられた.
脊椎再手術において,骨欠損が大きく通常の骨盤アンカーでは固定性を得るのが困難な場合がある.このような症例に対し,骨盤アンカーとしてのIliosacral screwの有効性について検討した.20名のCT画像を評価し,後上腸骨棘外側の浅い刺入点からS1PSと同一平面上で約30°傾け仙腸関節面を通過させることで,神経損傷のリスクを抑えながら挿入できると考えられた.実際にサルベージとして用いた4名で良好な短期成績を得ることができた.
変性や椎体骨折による腰椎後弯・側弯の矯正,腰椎すべり症のすべり矯正後の前弯角を獲得するためには,手術時にdistractorやspreaderを用いて前縦靭帯や関節包を十分に弛緩・伸長し,前弯位を保持することが重要である.lordotic typeのexpandable interbody cageを用いることで良好な腰椎前弯角を得ることができたので報告する.
硬膜欠損を伴う脳表ヘモジデリン沈着症(SS)の硬膜欠損部の同定が困難なことがある.本症例ではdynamic digital subtraction myelography(DSM)でC6/7に,phase-contrast(PC)cine MRIでT1/2に硬膜欠損が疑われた.術中所見でT1/2腹側に硬膜欠損を認め,縫合した.SSの硬膜欠損孔の同定にPC cine MRIがDSMより有用であった.
首下がり症候群は以前より筋側索硬化症,重症筋無力症,パーキンソン病など多様な疾患が関与していることは知られているが,長寿化に伴い,高齢者での頚髄症の手術も数多く行われるようになった.今回高齢者の後方椎弓形成術を行った直後より高度な首下がり現象が起こり神経学的には改善しているものの,日常生活でこれが新たな障害として発現した例を経験した.今回この1例から術前に首下がり現象を発現する要因について検討した.本例は高齢者の頚髄症であったこと,C2-7 SVAが40 mmに近く,T1 slopeも40°前傾を呈していたこと,さらに後部の頚椎伸展筋の高度な萎縮があったことが今回の首下がりの大きな術前因子と考えられた.
はじめに:我々は脊髄硬膜内くも膜囊胞内にピオクタニンを注入して手術を行っている.
症例:症例は76歳男性,両下肢痛の精査でTh5~7高位に脊髄を後方から圧迫する囊胞性病変を認めた.くも膜囊胞の診断のもと手術加療を行う方針とし囊胞内に5倍希釈したピオクタニンを注入し囊胞全摘出を施行した.
結語:ピオクタニンの囊胞内注入は囊胞の可視化だけでなく囊胞内の髄液動態も観察することができ有用と思われた.
はじめに:転移性脊椎腫瘍に対する術前の動脈塞栓後に両下肢麻痺を生じた1例を報告する.
症例:80歳男性,前立腺癌の胸椎転移による脊髄圧迫による不全麻痺に対して,術前に両側肋間動脈塞栓をした.塞栓後から両下肢麻痺が悪化し,手術後も改善がなかった.
結語:術前の動脈塞栓は術中出血などの周術期リスク軽減を期待して頻用されるが,重篤な神経合併症を引き起こす可能性があるので,適応を十分に検討するべきである.
はじめに:経皮的内視鏡下椎間板ヘルニア切除術では良好な鏡視下術野が重要だが,時折混濁や曇りなどで術野が不良になることがある.その要因と対処法を考察する.
技術報告:以下7点が要因として考えられた.1.出血,2.焦点が合っていない,3.不適切な還流,4.先端レンズへの組織片付着,5.バイポーラーの熱,6.カメラ接続部への還流水浸入,7.スコープ本体のトラブル.
結語:要因を推測し対処することで良好な術野を回復しうる.
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら