Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
Print ISSN : 1884-7137
12 巻, 10 号
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Editorial
原著
  • 木村 浩明, 三浦 寿一, 和田山 文一郎
    2021 年 12 巻 10 号 p. 1228-1234
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:洋梨形状椎間板がPLIF後cage脱転のリスクファクターになり,洋梨形状椎間板に対してexpandable cageが有効とする報告がある.洋梨形状椎間板に対して角度可変型cageが骨癒合に有効か検討した.

    対象と方法:2015年7月~2018年9月に腰椎変性疾患に対して角度可変型cageを用いて1,2椎間PLIFを施行し,術後1年以上経過観察した68例(男性38例,女性30例,平均年齢71.8歳)を対象とし,94椎間にcageを挿入した.洋梨形状椎間板群(P群20椎間)とコントロール群(C群74椎間)に分け,術後6ヶ月のCT,術後1年のXP機能撮像による骨癒合率を比較検討した.

    結果:cageの後方移動は両群とも認めなかった.術後6ヶ月の骨癒合率はP群50%,C群79.7%で有意差を認め(P=0.01),術後1年の骨癒合率はP群85%,C群94.6%で有意差は認めなかった(P=0.16).

    結語:角度可変型cage使用下でP群は術後6ヶ月における骨癒合で劣るものの術後1年ではC群と同等であった.角度可変型cageは洋梨形状椎間板でも設置面を確保し安定するため,骨癒合に有効な可能性が示された.

  • 五味 基央, 櫻本 浩司, 林 孝儒, 高橋 良介, 中原 大志, 野尻 英俊, 石島 旨章
    2021 年 12 巻 10 号 p. 1235-1239
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー

    目的:腰椎側方進入椎体間固定術(Lateral Lumbar Interbody Fusion:LLIF)のケージ内充填材料は多種あり骨癒合についても違いがあるとされている.LLIF手術に限らず移植骨に自家腸骨を使用する機会はしばしばある.自家腸骨は骨癒合が良い反面,術後の採骨部痛が問題となり,腸骨骨折など合併症も多く報告されている.2019年より本邦でヒト脱灰骨基質(Demineralized bone matrix:DBM)が使用可能となり,今回LLIFケージ内にDBMと骨髄穿刺液(Bone marrow aspirate:以下BMA)を併用した術後早期の椎体間癒合について調査した.

    対象:2019年4月から2019年12月までに当院にてLLIFを施行した7症例,14椎間とした.全例ともDBMに腸骨から骨髄穿刺液を採取して混合し,後方固定術は経皮的に行った.骨癒合は術後半年のCT画像で評価を行なった.

    結果:上下終板との連続性が出現していたのは3/14椎間(21.4%)であった.

    考察:LLIFの自家腸骨移植は術後の採骨部痛が大きな問題となる.人工骨と自家骨の併用や同種骨移植は長期的な癒合率は自家骨移植と有意差がないと報告もあるが,本邦での同種骨は使用できる施設が限定的であった.DBMはどの施設でも使用可能な同種骨で新たな選択肢として期待される.今回我々はDBMに骨髄穿刺液を混合するという方法で採取部痛を回避することはできたが,短期的には自家骨移植や人工骨移植ほどの早期骨癒合は得られない可能性が示された.

  • 都井 政和, 圓尾 圭史, 有住 文博, 楠山 一樹, 木島 和也, 橘 俊哉
    2021 年 12 巻 10 号 p. 1240-1245
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:Hounsfield unit value(HU)値は骨密度と相関性を示し計測は簡便で,脊椎固定術におけるPS緩みの危険因子と報告されている.本研究はHU値が腰椎後方椎体間固定術の骨癒合に影響するかを検討した.

    対象と方法:2016年~2019年に腰椎後方椎体間固定術を行い1年以上経過観察した106例(141椎間)を対象とした.患者,画像,手術関連因子を評価し,HU値(L1~4の椎体中央で計測しL1のHU値,L1~4の平均,固定椎体の平均HU値),PS緩み,cage subsidence(CS),positive cyst sign(PCS)の有無も評価した.臨床成績は腰痛VAS,ODI,JOABPEQを調査した.骨癒合群と骨癒合不全群で上記を比較検討した.

    結果:術後1年の骨癒合率は84%であった.骨癒合不全群で有意に高齢であったが,性別,BMI,骨密度,各項目のHU値は2群間で有意差を認めなかった.不全群ではPS緩み,CS,PCSの頻度が有意に高かった.HU値はPS緩みがあると有意に低いがCSとPCSでは有意差を認めなかった.不全群で術後1年後ODIは有意に高く,JOABPEQの疼痛関連,腰椎機能,歩行機能,社会生活障害において有意に低かった.

    結語:HU値はPS緩みの予測因子になりうるが骨癒合との関連は認めなかった.骨癒合不全因子は多岐にわたり,同定は困難であるが臨床成績悪化の原因となるため更なる調査が必要である.

  • 尾崎 友則, 山田 賢太郎, 中村 博亮
    2021 年 12 巻 10 号 p. 1246-1250
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:脊椎固定術において椎弓根スクリュー(PS)の逸脱は神経・血管損傷,椎弓根の骨折などの合併症を引き起こす.今回,3次元術前計画ソフトウェアを用いた胸腰椎の固定術におけるPSの刺入精度を調査したので報告する.

    対象と方法:対象は2019年4月から2020年3月までにPSによる胸腰椎の固定術を行った33例(263本)である.3次元ソフトウェア(ZedSpine,LEXI,Tokyo,Japan)を用いて全例に対しスクリュー径・長さ・刺入経路を術前に計画した.PSの刺入精度を術後CTで評価した.刺入方法(経皮的手技,open手技),術者(A;脊椎手術経験10年以上,B;脊椎手術経験5年未満,C;脊椎非専門整形外科医)による逸脱率の違いに関しても検討を行った.

    結果:PSの逸脱は合計12本(4.6%)あり,Grade 1が8例,Grade 2が3例,Grade 3が1例であった.PS逸脱例による神経,血管損傷は認めなかった.またGrade 1以上を逸脱群とした時,経皮的手技とopen手技とでは逸脱率に有意な差を認めなかった(経皮的手技5.0%(6/119),open 4.2%(6/144).p=0.73).術者間による差も認めなかった(A 4.5%(7/157),B 4.3%(3/69),C 5.4%(2/37),p=0.96).

    結論:3次元ソフトウェアによる術前計画はPS刺入において逸脱率を低下させる一助になる.

症例報告
  • 岩沢 太司, 小原 徹哉, 齋藤 敏樹, 田内 亮吏, 山内 一平, 川上 紀明
    2021 年 12 巻 10 号 p. 1251-1256
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:成人脊柱変形(以下ASD)に対しての矯正固定術は,合併症の発生率は多い.その中でも,インプラント関連合併症としてのRod折損の頻度が最も高い.Rod折損は術後5年以内に発症することが多く,遅発性(5年以降)に発症することは少ないとされる.当科で2例の遅発性Rod折損を経験したため報告する.

    症例:症例1:64歳女性,麻痺性側弯症.術後13年目に固定範囲内で骨癒合していたL2レベルでRod折損と椎体骨折を認めた.腰背部痛が持続し,Rodの入れ替えと前方固定の追加を行った.症例2:39歳男性,先天性側弯症.術後6年で椎体間固定を行っていないL3/4でRod折損を認めた.疼痛が持続するため,Rodの入れ替えと前方固定の追加を行った.

    結語:2症例とも,初回手術から5年以上経過してRod折損が生じた.症例1は,長期固定椎体の粗鬆化によるアンカーが脆弱なL2椎体レベルで,骨折とRod折損がほぼ同時期に生じた.症例2では,椎体間固定をしなかった椎体でRod折損をきたした.力学的に脆弱な部位が残る症例では,骨癒合後にも遅発性にRod折損をきたす可能性があり,長期にわたる経過観察が必要である.

  • 山田 賢太郎, 尾崎 友則, 中村 博亮
    2021 年 12 巻 10 号 p. 1257-1263
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:DISHを伴う胸腰椎椎体骨折は骨性架橋の存在により骨折部に力学的ストレスがかかりやすく,長範囲に固定するなど工夫が必要である.近年,椎体終板を貫くPenetrating Endplate Screw(PES)法が考案され,良好な固定力や成績が報告されてきた.本症例報告の目的は当院でPES法を用いた3例の手術成績を報告するとともにPES法の適応について考察することである.

    症例:スクリューはDISH架橋椎体にはPES法で,非DISH架橋椎体には従来のpedicle screw(PS)軌道で設置した.2例は経過良好であったが,1例は術後1週で固定最尾側L2のスクリューの引き抜きが生じ,次第にゆるみが大きくなりL2根症状を呈し経過不良であった.経過不良であった1例はDISH架橋椎体最尾側の骨折であり,PES法を2aboveに従来のPSを2belowに設置していた.

    結語:経過不良の1例は脊椎アンカーの固定力に頭尾側で差があった事が原因と推察された.DISH架橋椎体内の骨折にはPES法は有用であるが,DISH非架橋椎体にも固定を行う必要のある症例に対しては,非架橋椎体の固定法の工夫が必要である.

  • 小幡 新太郎, 茶薗 昌明
    2021 年 12 巻 10 号 p. 1264-1268
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:抗リン脂質抗体症候群(APS)を合併した腰椎破裂骨折に対して後方固定術を施行した1例を経験したので報告する.

    症例:18歳,男性.12歳時より他院でAPSと診断され加療されていた.2019年12月に交通事故により受傷.X線でL1に椎体後壁の突出を認め,CTで脊柱管内骨片占拠率は約40%であった.ASIA分類Grade E,TL AOSIS Type A4のL1破裂骨折,5点であった.入院後,抗リン脂質抗体(aPL)と血栓症の有無を精査し,ヘパリン置換後にT11~L3まで後方固定術を施行した.術翌日から抗凝固療法を再開,術後2日目から歩行開始し,術後血腫やVTE等の合併症なく術後2週で退院した.

    結語:術前に原因不明な凝固能異常がある場合はAPSの合併を考慮し,aPL精査と周術期の綿密な抗凝固療法が必要である.

二次出版
  • 山田 勝久, 須藤 英毅, 岩崎 倫政
    2021 年 12 巻 10 号 p. 1269-1276
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー

    我々は,特発性側弯症に対する次世代型手術治療戦略の一環として,術中の曲げ加工が不要なプリベントロッドを世界で初めて製品化した.本論文では,現在市販されているプリベントロッドと同等の方法を用いた,機械曲げ加工によるコバルトクロム(CoCr)合金製ノッチなし(notch-free)カーブロッドの力学特性について報告する.径5.5 mm CoCrストレートロッドに,従来式のフレンチベンダーによる曲げ加工(ノッチあり)と特殊治具による曲げ加工(ノッチなし)を行った.ASTM F2193規格に準じて静的圧縮4点曲げ試験を施行し,径6.0 mmチタン(Ti)合金ノッチありロッドと比較した.さらにCoCrロッドは動的圧縮曲げ試験を行った.静的圧縮曲げ試験において,ノッチなしCoCrロッドはnotchありTiロッド及びCoCrロッドに対して有意に高い最大負荷荷重を示した(p<0.01).ノッチなしCoCrロッドは250万回の動的圧縮曲げ試験後も破断はなく,ノッチありロッドより耐荷重性に優れていた.ノッチなしCoCr合金ロッドは有意に高い最大負荷荷重を示したことから,本ロッドが破損やspring-backなど従来の手曲げ加工ロッドの課題を克服し,脊柱変形矯正手術において有用であることが示唆された.

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