Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
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12 巻, 8 号
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原著
  • 菊池 克彦, 吉兼 浩一
    2021 年 12 巻 8 号 p. 1018-1024
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル フリー

    高齢者への脊椎手術は増加しているが,全身予備能力は低下するため,低侵襲手術を行う事が望ましい.今回,後期高齢者に対しての局所麻酔下Full-endoscopic spine surgery(以下局麻FESS)の有用性について報告する.

    対象:2015年9月から2018年9月までに75歳以上に行った局麻FESSのうち,術後1ヶ月以上経過観察可能だった49例を対象とした.既往歴,手術時間,術前後VAS,周術期合併症,Macnabスコアを調査した.

    結果:男性18例,女性31例で平均観察期間は11.5ヶ月,平均年齢は79.5歳.平均手術時間は35.1分,平均術前VASは腰痛66.3,下肢痛79.5,しびれ69.4,平均術後VASは腰痛53,下肢痛49.7,しびれ32.3だった.周術期合併症はなく,Macnabスコアは優6例,良22例,可11例,不可10例で7例に再手術が行われた.再手術は同高位後方除圧2例,別高位後方除圧1例,同高位固定術2例,同高位ヘルニア切除1例,同高位椎間孔拡大術1例だった.

    結語:後期高齢者に対しての局麻FESSは20%で成績不良となったが,低侵襲で施行可能であり有用な方法であった.

  • 圓尾 圭史, 有住 文博, 楠山 一樹, 吉江 範親, 楠川 智之, 都井 政和, 橘 俊哉
    2021 年 12 巻 8 号 p. 1025-1029
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:脊椎内視鏡の経験がない術者が内視鏡下腰椎椎間板摘出術(MED)を開始し学習曲線と問題点について検討した.

    対象と方法:2014年11月から2020年2月までの間に脊椎内視鏡の経験がない単一術者が行った脊椎内視鏡手術191例のうち,MED連続141例を対象とした.平均年齢は48.9±17.5歳,男性84例,女性57例であった.検討項目は手術時間,出血量,合併症を調査した.学習曲線は手術時間を症例30例ごとに分けて検討した.

    結果:平均手術時間は80.4±23.9分,出血量は2.3 ml±10.5 mlであった.初期30例の平均手術時間は107.8±28.9分,31~60例は83.1±16.8分,61~90例は68.8±12.8分で有意に短縮し91例目以降は同程度であった.合併症は硬膜損傷2.1%(3例),下関節突起骨折0.7%(1例),血腫0.7%(1例),ヘルニア再発0.7%(1例)であった.感染,レベル誤認,従来法切り替えは認めなかった.

    結語:本邦の脊椎内視鏡研修システムで脊椎内視鏡を開始したが学習曲線は緩やかであるが合併症は少なく安全に行うことができた.

  • 米山 励子, 大森 一生, 松繁 治
    2021 年 12 巻 8 号 p. 1030-1034
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:Full-endoscopic discectomy(以下FED)の手技習得にラーニングカーブが存在することが知られている.しかし,ドライ,ウエット講習などの寄与によりラーニングカーブも変化していると推測される.

    対象と方法:FED未経験の筆頭演者(術者A)が,脊椎内視鏡下手術・技術認定医(3種)を保持する上級医(術者B)の指導のもとFED経椎弓間法(FED-IL法)を執刀したラーニングカーブと,術者Bが2012年にFED-IL法を導入した際のラーニングカーブとを比較検討した.

    結果:術者Aの平均手術時間は95.8±37.8分,術者Bの平均手術時間は114.7±37.1分であった.多変量線形回帰分析を用いて患者年齢,性別,手術高位で調節した手術時間は,術者Aが術者Bと比し23.4分短かった(P<0.05).

    結語:FED未経験の術者が十分な指導体制の環境下にFED-IL法を執刀し完遂できるようになった.2012年のFED-IL法導入初期と比べ,各種トレーニングの体制が整ってきており,ラーニングカーブの短縮に貢献したと判断された.

  • 松繁 治, 大森 一生, 米山 励子
    2021 年 12 巻 8 号 p. 1035-1039
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル フリー

    TF inside-out法ではしばしばexiting nerve損傷がみられることがあり,その対策としてoutside-in法の報告がある.我々は腰椎椎間孔内ヘルニアに対して,inside-out法を施行した12例(以下I群)とoutside-in法を施行した12例(以下O群)の手術時間,foraminoplastyの有無を比較した.O群で硬性鏡操作時間やexiting nerveを同定するまでの時間は長くなり,foraminoplastyを多く必要とした.本研究の結果からは,outside-in法のinside-out法に対する優位性は確認できなかった.

  • 江藤 文彦, 辰村 正紀, 長島 克弥, 船山 徹, 山崎 正志
    2021 年 12 巻 8 号 p. 1040-1046
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰椎後方アプローチとして棘突起縦割展開は傍脊柱筋に対する侵襲を低減するため広く普及している.しかし,切離した棘突起が椎弓と遊離すると棘突起に付着した伸展筋群の作用が十分に椎体に伝わらない.我々は棘突起と椎弓を癒合させることが重要であると考え,棘突起を還納して吸収糸で椎弓と縫着する手技を採用している.本研究では術後2年における骨癒合を評価した.

    対象と方法:2015年から2018年までに腰部脊柱管狭窄症に対して棘突起縦割展開で2椎間以上の部分椎弓切除術を行い,棘突起と椎弓を縫着した74例203椎弓を対象とした.術後2年でCTを撮像して棘突起と椎弓の骨癒合率を調査した.またすべての椎弓で骨癒合が得られている症例を完全癒合症例としてその割合も調査した.

    結果:203椎弓のうち181椎弓で骨癒合が得られていた(89.2%).また,完全癒合症例は74例のうち56例であった(75.7%).

    結語:脊柱の安定化のために後方支持組織である棘突起は椎弓と連続していることが望まれる.我々が実施した吸収糸を用いて棘突起を還納して椎弓に縫着する手技は高率に骨癒合を獲得できて有用であった.

  • 土屋 邦喜
    2021 年 12 巻 8 号 p. 1047-1052
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル フリー

    目的:FEDによる頚椎手術の成績,問題点の検討.

    対象および方法:頚部神経根症に対しFEDを行い一年以上経過観察可能であった7例を検討した.全例椎間板ヘルニアの症例であった.

    結果:手術時間は平均97分,出血量は全例少量であった.周術期に併発症は認めなかった.田中スコアは平均10.8,術後3ヶ月で平均17.5,術後1年で平均18であった.1例が症状再悪化を来たしMEDによる内視鏡下椎弓形成(CMEL)を施行した.

    考察:FEDはMEDに比べさらに神経組織に近い視野で手術を行うことから神経根を明瞭に観察でき安全な手術のためにも有用である.留意点はオリエンテーションと出血対策であるが上関節突起先端まで容易に鏡視できるFEDの特性を活かせば特に頭側椎における不要な骨切除を回避できる.

    頚椎では神経周辺の繊維性被膜の直下には豊富な静脈叢が存在するためこの血管をできる限り損傷しない操作が必要であるが灌流を用いるFEDでは水圧による剥離が期待できる.深部に到達しての手術操作はFEDのアドバンテージであるが,一方カニューラが小径のため容易に深部に落ち込む危険性もありスコープの保持,器具の操作には十分な注意が必要である.

    結論:FEDによる頚椎椎間板ヘルニア手術の臨床成績は良好であったが十分な経験を積んでの適応が望ましい.

  • 日方 智宏, 飯田 剛, 高野 盛登
    2021 年 12 巻 8 号 p. 1053-1059
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:成人脊柱変形(ASD)に対する側方進入椎体間固定術(LIF)を用いた変形矯正固定術における術中の前縦靭帯損傷(ALL損傷)の危険因子を解析することを目的とする.

    対象と方法:ASDに対してLIFを併用し胸椎から骨盤までの前後方矯正固定術を施行した38例を対象とし,後方矯正時にALL損傷を認めたR群と認めなかったN群で比較検討した.

    結果:ALL損傷を8例(21.1%)に認め,損傷高位はL4/5;7例,L3/4;1例であった.術前X線パラメーターでは,R群はN群に比較して,SVAが有意に大きく,腰椎前弯角(LL;L1-S1),下位腰椎前弯角(LLL;L4-S1),fulcrum backward bending(FBB)での LLとLLLが有意に小さかった.多変量解析の結果より,FBBでの下位腰椎前弯角(LLL)がALL損傷の危険因子と考えられた(p=0.005,odds ratio;0.750,95% CI;0.612~0.918).

    結語:下位腰椎の前弯減少が著しく,rigidな重度矢状面バランス異常の症例では後方矯正手術時にALL損傷を起こしやすい.

  • 石原 昌幸, 谷口 愼一郎, 谷 陽一, 足立 崇, 朴 正旭, 串田 剛俊, 安藤 宗治, 齋藤 貴徳
    2021 年 12 巻 8 号 p. 1060-1066
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル フリー

    側方経路椎体間固定(以下LIF)と経皮的椎弓根スクリュー(以下PPS)を用いた低侵襲前後方固定術における局所前弯(以下SL)の獲得不良要因についてcage設置位置以外の因子を調査した.2015年以降XLIFとPPSを用いて2~3椎間の固定を行った腰部脊柱管狭窄症患者45名106椎間を対象とした.術後SLが7度未満(P群)と7度以上(G群)に分け検討した.術後SLは平均8.7°でありP群において術前後SL及び術後の前方椎体間距離(ADH),ADHと後方椎体間距離(PDH)の変化量が有意に小さく,一方術前後のPDHが有意に大きかった.多変量解析にて術前SL,術前のPDH,椎間板形態(後弯及び前方変性)がリスク因子として検出された.

  • 柳澤 義和, 大賀 正義
    2021 年 12 巻 8 号 p. 1067-1073
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:当科では術中神経モニタリング(INM)を併用し,顕微鏡下低侵襲頸椎後方ヘルニア摘出術/椎間孔拡大術(P-PMCF)を超音波手術装置併用下に行っている.今回,INMが術後神経合併症を予防有用か,検討したので報告する.

    対象と方法:2018年4月以降,INM下にP-PMCFを施行した8例(男性:女性=6:2,平均年齢:47.0±3.2歳)を対象とした.INMは体性感覚誘発電位(SSEP),経頭蓋刺激筋記録誘発電位(Br-MsEP),自発筋電図(fEMG),神経根を刺激する末梢筋記録(tEMG)を記録した.調査項目として平均手術時間,平均出血量,INM異常の有無,tEMG記録の有無,術後合併症,術前後の頸髄症判定基準JOAスコアの推移,追加手術の有無などを検討した.

    結果:平均手術時間は145±30.4分,平均出血量は16.3±20.8 mlであった.INM異常としてfEMG:2例であったが,INM異常なく術中血圧とBIS値の上昇例:1例を認めた.またtEMGは8例中6例で記録が可能であった.術後合併症は認めず,術前後の頸髄症判定基準JOAスコアは術前平均14.19±1.28から最終時点で平均16.44±0.18と有意な改善を認めていた(P=0.0010269).追加手術として1例で椎弓形成術を施行した.

    結語:P-PMCFは低侵襲であるが小皮切であるため術中神経損傷が危惧される.本手術ではfEMGとtEMGが神経根障害を予防でき,有用と考えられた.

  • 吉水 隆貴, 水野 哲太郎, 野坂 潮, 林 卓馬, 石井 啓介, 人羅 俊明, 渡邊 水樹, 佐々木 寛二
    2021 年 12 巻 8 号 p. 1074-1080
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:Biportal Endoscopic Spine Surgery(BESS)による完全内視鏡下ヘルニア摘出術の有用性を顕微鏡下手術と比較検討する.

    対象と方法:対象はヘルニア摘出の89例で,BESS 49例(以下B群)と顕微鏡下摘出術40例(以下M群)である.手術時間,出血量,在院日数,術翌日と退院時の疼痛NRS,術後6ヶ月での下肢痛としびれの改善率と再発率を調査した.

    結果:手術時間はB群で77分,M群で60分とB群で有意に時間を要した.出血量はB群7.9 g,M群9.9 g,在院日数はB群5.3日,M群5.6日で有意差がなかった.術翌日疼痛NRSはB群3.7,M群3.6と差がなかったが,退院時はB群1.2,M群1.7とB群で痛みが少ない傾向にあった.術後6ヶ月での下肢痛の改善率はB群84%,M群80%,下肢しびれの改善率はB群82%,M群75%と有意差はなかった.再発率はB群10%(5/49例),M群10%(4/40例)で有意差がなかった.

    結語:BESSは2つのポータルを使用し視軸と作業軸が別である点が従来の脊椎内視鏡手術と異なり,視野の確保が容易で作業の自由度も高いという利点がある.ポータルはそれぞれ5~7 mm程度の創で侵襲が小さい.当院では2019年2月より腰椎椎間板ヘルニアに対しての治療をBESSに変更したが,手術時間以外は顕微鏡下手術と同等の手術であった.

症例報告
  • 射場 英明, 中西 一夫, 内野 和也, 渡辺 聖也, 三崎 孝昌, 長谷川 健二郎
    2021 年 12 巻 8 号 p. 1081-1085
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:当科では再発ヘルニアに対する再手術の一つとして,Revision MED(Re-MED)を施行している.今回われわれは,MED後の腰椎椎間板再発ヘルニアに対するRe-MED術中に遭遇した硬膜内ヘルニアの1例を経験したので報告する.

    症例:症例は48歳女性で,L5/S右側に腰椎椎間板ヘルニアが認められMEDを施行した.術後症状は改善したが2年後に再燃し,同部位に再発ヘルニアが認められた.よって再発ヘルニアに対しRe-MEDを施行した.しかし,予想されていたヘルニア塊は確認できず,硬膜に癒着した瘢痕組織を切開し内部を確認したところ,ヘルニア塊を摘出できた.当初は逸脱したヘルニア塊が硬膜に癒着し瘢痕化したものであると思われたが,切開部にくも膜の露出を認め硬膜内に脱出した椎間板ヘルニアであると判断した.

    結語:Re-MEDを施行するには,硬膜内ヘルニアをはじめとしたあらゆる病態を想定し,ミエログラフィーなどの造影検査や,術前準備に万全を期しておくべきである.

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