はじめに:外傷性頚髄損傷に対する早期手術介入の効果について,近年24時間以内の早期手術介入の神経学的予後の改善についてコンセンサスが得られてきたが,受傷後何時間までの介入が良いかは未だ定かではない.改良Frankel分類A,Bの重症外傷性頚髄損傷に対する12時間以内の早期手術介入が神経学的予後,術後合併症に与える効果について検討した.
対象と方法:手術加療を行った42例の重症外傷性頚髄損傷を対象とし,Frankel Aが35例,Bが7例であった.受傷後12時間以内に手術を施行した群を早期群,12時間以後に手術した群を晩期群とし,患者背景について2群間比較を行った.12時間以内の手術決定に影響を与える因子を交絡因子とし,傾向スコアを算出し,逆数重み付け法を用いて調整を行い,線形回帰モデルを用いて術後1ヶ月時点での神経学的予後の改善,ICU滞在日数,呼吸器合併症,心停止について解析した.
結果:術後1ヶ月でのFrankel改善とneurological level of injuryの改善では有意差を認めなかった.術後ICU滞在日数と術後呼吸器合併症で有意差を認めたが,術後心停止では有意差を認めなかった.傾向スコアを用いた線形回帰分析ではFrankel改善に有意差を認めなかったが,有意に呼吸器合併と心停止が少なかった.ICU滞在については早期群で短い傾向にあった.
結語:12時間以内の早期手術介入によって術後呼吸器障害・心停止の合併症を軽減できる.
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