Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
Print ISSN : 1884-7137
13 巻, 4 号
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Editorial
原著
  • 則竹 洋和, 鈴木 喜貴, 飛田 哲朗, 安藤 智洋, 鵜飼 淳一, 佐藤 公治
    2022 年 13 巻 4 号 p. 689-696
    発行日: 2022/04/20
    公開日: 2022/04/20
    ジャーナル フリー

    骨粗鬆症症例における脊椎固定術では,骨質の低下により術後の偽関節率が高い.偽関節症例に対する再建手術に関して有効な方法は確立されておらず,治療に難渋する.我々は,pedicle screw(以下PS)に対して同種骨を用いた経椎弓根的impaction allogenic bone graftによりPSの支持力を向上させ,偽関節部の損傷した椎体終板に加工した腓骨を設置することで終板を補強し,新たに設置するインプラントの沈み込みを防いでいる.これらの工夫により矯正損失なく骨癒合が得られた5症例を経験した.疾患は透析性破壊型脊椎症3例,骨粗鬆症性椎体骨折1例,化膿性脊椎炎1例,性別は男2例,女3例,平均年齢70.8歳であった.全例で骨癒合が得られ,骨癒合までの平均期間は5.4ヶ月であった.本法は骨脆弱性を伴った脊椎固定術後偽関節に対する再建方法として有用であるのみならず,骨粗鬆症症例における脊椎固定術においても有用な方法となりうる可能性がある.

  • 森 悠祐, 伊藤 圭吾, 片山 良仁, 松本 智宏, 都島 幹人, 松本 太郎, 岩田 愛斗
    2022 年 13 巻 4 号 p. 697-700
    発行日: 2022/04/20
    公開日: 2022/04/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:前方掻把固定術(ASF)は化膿性脊椎炎の一般的な手術療法であるが,近年,経皮的椎弓根スクリュー(PPS)固定の使用の有用性が報告されるようになった.当院でも2014年からASFにPPSを併用して手術を行うようになったのでその有用性を報告する.

    対象と方法:2003~2013年間に手術施行したASF群8例と,2014年以降のPPS群11例を対象とした.起因菌,Kulowski分類,術後新規麻痺発生,術後CRP陰転化と術後離床までの期間,骨癒合について検討した.

    結果:培養陽性率はASF群62.5%,PPS群72.2%.Kulowski分類はASF群では亜急性3例,慢性5例,PPS群では亜急性4例,慢性7例であった.術後新規麻痺症状は両群とも認めなかった.CRP陰転化期間はASF群で40.9日,PPS群で34.9日と差を認めず,離床期間はASF群52.8日,PPS群3.7日と有意にPPS群で短かった.骨癒合不良例はASF群37.5%,PPS群9.1%で差を認めなかった.

    結語:化膿性脊椎炎に対しての手術症例において,ASF+PPSは早期離床早期リハビリテーションで有効であった.

  • 井上 太郎, 吉原 永武, 舘 寛人
    2022 年 13 巻 4 号 p. 701-705
    発行日: 2022/04/20
    公開日: 2022/04/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:脊椎術後の皮下まで及ぶ広範な髄液漏に対する治療,経過について後ろ向きに検討することを目的とした.

    対象と方法:2010年4月から2021年3月までの間に皮下まで及ぶ広範な髄液漏をきたした患者8名(男性6名,女性2名)を対象とした.

    結果:平均年齢は60.3歳(18~81歳),頚椎5名,腰椎3名であった.1名は術中硬膜損傷を認めなかった.症候性の3名に髄液漏閉鎖術が施行されていたが,無症候性の5名については保存加療にて全例髄液漏の自然退縮が認められた.

    結語:たとえ皮下まで及ぶ広範な髄液漏でも無症候性であれば追加の外科的介入を行わず経過を見る選択肢もある.

症例報告
  • 柴田 隆太郎, 村本 明生, 松原 祐二, 両角 正義
    2022 年 13 巻 4 号 p. 706-711
    発行日: 2022/04/20
    公開日: 2022/04/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:我々は酷似したパターンの術中急変(閉創時に急激な高度低血圧を認め,蘇生処置)を起こした4症例を短期間に経験したため報告する.

    症例:代表症例は79歳女性.L3辷り症に対しL3/4後方進入腰椎椎体間固定術(PLIF)施行した.PLIFは問題なく完了した.閉創中,創部ドレーンバッグに吸引チューブをつなげ術野血液を吸引し,筋膜閉創直後に高度低血圧を認めたため,仰臥位に戻しCPR開始した.すぐに蘇生され,側臥位で皮下縫合行い手術を完了し,ICUへ入室した.バイタル,意識ともに問題なく経過し,翌日ICU退室した.その後の入院経過も問題なく,術後12日で後遺症なく独歩退院した.他の3症例も1,2椎間のPLIF症例であり出血量・手術時間も多く,明らかな術中硬膜損傷を認めた症例もなかった.術後ICUに長期滞在した症例も麻痺が残存した症例もなかった.

    結語:吸引チューブにより筋膜閉創直後に硬膜外腔に高い陰圧が生じ,神経原性ショックを呈したと考えられた.

  • 大島 和馬, 両角 正義, 村本 明生, 松原 祐二
    2022 年 13 巻 4 号 p. 712-719
    発行日: 2022/04/20
    公開日: 2022/04/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:脊椎固定術の椎弓根骨折は合併症のひとつであるが,早期に再手術を必要とする事は稀である.今回,我々は脊椎固定術後に,固定端の椎弓根骨折を起こし早期に再手術を施行した3例を経験したので報告する.

    症例1:72歳男性.腰部脊柱管狭窄症に対しL2-4 TLIFを施行し,術後7日左下肢痛が再燃した.CTにてL2/3のケージの脱転を認めたため再手術を施行したが,術中に左L2椎弓根骨折が判明した.スクリュー径のサイズアップにより対処した.

    症例2:79歳男性.第12胸椎圧迫骨折後の偽関節に対してTh9-L5の除圧固定術を施行.術後20日,左大腿痛が再燃した.CTで両側L5椎弓根の骨折が判明し,腸骨までの固定延長を行った.

    症例3:72歳女性.パーキンソン病を伴う腰椎変性側弯症に対して,L1-5の矯正固定術を施行.術後13日右下肢痛が再燃した.L5/Sの椎間孔病変を疑い,再手術を施行したが,術中に右L5椎弓根の骨折が判明し,腸骨までの固定延長を行った.

    結語:腰椎固定術術後の新たな下肢痛は椎弓根骨折によるものの可能性がある.CTでも骨折の診断は難しく,その可能性を考慮して対処する必要がある.

  • 貝沼 慎悟, 福岡 宗良, 渡邊 宣之, 早川 和男, 山田 宏毅, 遠藤 浩二郎, 神田 佳洋, 井村 直哉
    2022 年 13 巻 4 号 p. 720-725
    発行日: 2022/04/20
    公開日: 2022/04/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)はMTX内服中に認められるリンパ増殖性疾患の総称である.今回我々は,胸椎にMTX-LPDが発生した極めて稀な症例を経験したため報告する.

    症例:37歳女性.関節リウマチと診断され,10年前からMTXを内服していた.両下肢の麻痺を認め近医を受診したところ,緊急MRIでTh11椎体周囲に腫瘍性病変を認めた.両鼠径部から遠位の感覚は肛門周囲を除いて脱失しており,両下肢の筋収縮は全く認めなかった.同日,緊急でTh10~11椎弓切除および腫瘍の部分切除を行った.病理組織学的診断は悪性リンパ腫であった.MTXの投与を中止し,2週間後のMRIで腫瘍の著明な縮小を認めたが,4週間後に再発した.

    結語:MTX-LPDは骨や関節などのリンパ節以外の組織でも発生する可能性があるため,MTXによる治療を受けている患者の脊椎脊髄腫瘍を鑑別する際に考慮するべき疾患である.

  • 井村 直哉, 貝沼 慎悟, 福岡 宗良, 渡邊 宣之, 早川 和男, 山田 宏毅, 遠藤 浩二郎, 神田 佳洋, 中井 拓也
    2022 年 13 巻 4 号 p. 726-730
    発行日: 2022/04/20
    公開日: 2022/04/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:骨盤輪骨折は様々な合併症を引き起こすが,神経障害はQOLに関わる重要な合併症のひとつである.神経障害がもたらす弊害は深刻なものであるにも関わらず,外傷急性期の重篤な病態ゆえに見落とされることも多い.我々は骨盤輪骨折後,遅発性にS1神経根障害を来した症例を経験し,手術加療を行うことで症状が改善したため報告する.

    症例:23歳,女性.仕事中に倒れてきた建材に挟まれて受傷し救急搬送された.骨盤輪骨折を認め,受傷後6日目に骨接合術を施行した.術後4週間の両下肢免荷訓練後に荷重訓練を開始した.荷重訓練を開始した直後から,右下肢の疼痛と筋力低下を認めた.CTおよびMRI検査から,仙骨骨折部周囲での右S1神経根障害を疑った.保存的加療後も症状は改善しなかった.術後4ヶ月で右S1神経根の除圧術を行い症状の改善を認めた.

    結語:骨盤輪骨折後の遅発性S1神経根障害を来した症例を経験した.まれではあるが,骨盤骨折後に遅発性の神経障害が生じることがあるため,注意深い経過観察が必要である.

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