Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
Print ISSN : 1884-7137
13 巻, 7 号
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Editorial
総説
  • 横山 泰孝
    2022 年 13 巻 7 号 p. 897-902
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:近年の脊椎手術は側方経路腰椎椎体間固定術の発展により進歩が目覚ましい.しかし,OLIF(Oblique Lateral Interbody Fusion)は侵襲が少ない反面,合併症として命に関わる血管損傷が報告されており,手術を安全に行うには血管損傷を回避する事が必要となる.

    技術報告:術前に造影CTを用いた3D構築画像で手術のイメージングを行うことで血管損傷を回避する可能性が高くなる.不幸にも血管損傷をした際には適切な対応を行えるかどうかで命を失うかどうかが決まる.そこで,本稿では心臓血管外科医の視点から血管損傷を回避するための術前画像解析,さらに血管損傷をした際にどのように対応するのが最良と考えるか動脈損傷と静脈損傷に分けて報告する.

    結語:OLIF手術時に一定数起こりうる血管損傷に対して十分な術前準備と血管損傷時の対処法を知っておくことは患者の生命に直結する重要なことである.

原著
  • 笹井 邦彦, 鋳谷 敏夫, 勝本 桂史, 村田 実, 南谷 哲輝, 齋藤 貴徳
    2022 年 13 巻 7 号 p. 903-909
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:En-bloc椎弓形成術用のHAスペーサーを簡便かつ強固に固定するチタンプレートを開発し,その安全性と骨癒合の変化を前向きに検討した.

    対象と方法:最初の連続した9例を対象とした.観察期間は3ヶ月~2年,術前JOAスコアーは平均12.3点.術後3,6,12,18,24ヶ月時にCTを撮影し,ガターとスペーサー周囲での骨癒合率を調査した.各レベルで骨癒合が1スライス以上あれば一部癒合とし,全スライスにあれば癒合完成とした.

    結果:JOAスコアー改善率は平均68%であり,術後合併症は無かった.25枚のプレートと75本のスクリューが使用されたが,インストルメントフェイリャーも生じなかった.一部癒合率は,ガターで,48,79,94,92,83%,外側塊で,8,16,39,58,50%,椎弓で,8,16,39,42,50%であった.癒合完成率は,ガターで,12,58,94,92,83%,外側塊で,0,0,11,17,33%,椎弓で,0,0,11,17,17%であった.

    結語:本プレートは十分な安全性を有した.ガターでの骨癒合は,術後3ヶ月から約半数で始まり12ヶ月には9割以上で完成し,HAスペーサー周囲では,緩徐に進行する傾向を認めた.

  • 土谷 弘樹, 石川 紘司, 工藤 理史, 谷 聡二, 早川 周良, 山村 亮, 丸山 博史, 岡野 市郎, 大下 優介, 豊根 知明, 稲垣 ...
    2022 年 13 巻 7 号 p. 910-914
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:びまん性特発性骨増殖症(DISH)患者における骨折は癒合椎では不安定型骨折を生じることが多い一方で,非癒合椎では安定型骨折が多いと報告されている.本研究では癒合椎体の位置関係に注目し,QCTを用いてDISHの椎体内骨密度を領域別に検討した.

    対象と方法:QCTによる骨密度評価を行ったDISH群20例とControl群32例を対象とした.骨密度はDISH群では癒合椎体中間部,癒合下端椎体,下端隣接椎体,非癒合椎体の高位別に評価しControl群では,それぞれ対応する椎体の高位で測定した.

    結果:QCTによる椎体内骨密度は,癒合椎体中間部と非癒合椎体の骨密度は前方領域においてDISH群が有意に低値であったが,癒合下端椎体と下端隣接椎体では2群間で椎体内骨密度に有意差は認められなかった.

    結語:癒合椎体中間部での前方骨密度低下は,靭帯骨化により応力が分散したためと考えられる.本研究ではレバーアームの影響を強く受ける癒合下端椎体と下端隣接椎体では見られなかった前方骨密度低下を非癒合椎体で認めており,非癒合椎体での前方骨密度低下と骨折の関連が示唆された.

  • 橘 安津子, 河野 仁, 伊賀 隆史, 諸井 威彦, 中道 清広, 渡邉 泰伸, 片岡 嗣和, 細金 直文
    2022 年 13 巻 7 号 p. 915-921
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:胸椎椎間板ヘルニア(TDH)に対する手術療法は前方除圧固定術が基本であったが,近年手術手技の向上などにより,後方からの手術も可能となりその成績が報告されている.今回当院におけるTDHに対する後方手術の治療成績を検討した.

    対象と方法:当院では,大きなヘルニアが正中にある症例,アライメント不良な症例,椎間板高が保たれ不安定性のある症例のいずれかにあてはまる場合には後方経路胸椎椎体間固定術(posterior thoracic interbody fusion;以下PTIF)を,ヘルニアが脊髄前側方や側方にあり不安定性のない症例には後側方固定術(PLF)を選択している.対象は2018年1月から2021年5月までの間に当院でTDHに対し後方手術を施行した8例とした.

    結果:手術時年齢は平均64.6歳,ヘルニア高位はT10/11が4例,T11/12が1例,T12/L1が3例であった.PTIFを3例,PLFを5例に施行した.術後全例で歩行機能の改善,疼痛の軽快が認められた.日本整形外科学会治療成績判定基準も有意な改善を認め,改善率は平均52.8%であった.周術期合併症はなかった.

    結語:TDHに対する後方手術は,ヘルニアが後方から安全に摘出可能な症例にはPLFが適応できるが,前方の大きなヘルニアに対してはPTIFが望ましく,全体の治療成績は良好であった.

  • 石原 昌幸, 谷口 愼一郎, 足立 崇, 朴 正旭, 谷 陽一, 安藤 宗治, 田中 貴大, 政田 亘平, 齋藤 貴徳
    2022 年 13 巻 7 号 p. 922-929
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:Anterior column realignment(以下ACR)とextreme lateral interbody fusion(XLIF),経皮的椎弓根スクリュー(以下PPS)を用いた低侵襲前後方固定術におけるACR施行椎間の局所前弯(以下SL)獲得不良要因について調査した.

    対象と方法:2018年以降ACRとXLIF,後方はPPSを用いて手術施行した成人脊柱変形(ASD)患者74名とした.術後SLが17°以上のG群と術後SL 17°未満のP群に分け,使用cage前弯角及びcage高,術前椎間板性状,ACR施行レベル,固定椎間数,脊柱骨盤パラメーター,SL,前方及び後方椎間板高(ADH,PDH),cage設置位置に関して検討した.術前椎間板性状は変性が少ない前弯(type N)変性が少ない後弯(type K),片側変性(type U),椎間板腔消失(type D),前方変性(type A),後方変性(type P)の6つに分類した.

    結果:二群間で年齢,性差,使用cage前弯角,cageの高さ,cage設置位置に関して有意差はなく,固定椎体数はG群で有意に多く,術前椎間板性状はP群で有意にtype Aが多かった.各種パラメーターは二群間で有意差はなく術前後SLはP群で有意に小さかった.術前PDHはP群で有意に高かった.多変量解析の結果,術後SL 17°未満となるリスク因子は術前PDH,術前SLが確認された.ROC解析にてカットオフ値は術前SL 4°,術前PDH 3.7 mmであった.

    結語:ACR施行椎間における術後SL獲得不良因子は術前の小さいSL,及び術前の大きなPDHであった.

  • 門田 領, 相庭 温臣, 望月 眞人
    2022 年 13 巻 7 号 p. 930-938
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:骨粗鬆症を伴う胸腰椎骨折(OVF)に対する経皮的dynamic stabilization法(本法)の成績を報告する.

    対象と方法:65歳以上の胸腰椎OVFに対し本法を施行したものを対象とした.本法は1above-1belowのPPSの尾側ロッド連結部に可動性を有することが特徴であり全ての操作は経皮的手技で行った.全20例で手術侵襲を,術後3ヶ月以上経過の17例で日常生活自立度の変化を,術後1年以上経過の12例で局所後弯角,骨癒合,OVF上下椎間の仰臥位―座位の可動域,椎体楔状化率,術直後から観察時の頭尾側PPS間距離の短縮を調査した.

    結果:全症例では平均手術時間142.8分,平均出血量73.6 mlであり,標準的術式である非除圧・椎体形成併用の12例ではそれぞれ117.9分,31 mlであった.術前後の平均値比較で局所後弯角は20度から14.3度,OVF上下椎間可動域は18.9度から6.1度,椎体楔状化率は79%から61%となり有意差のある改善を得た(それぞれp<0.05,p<0.01,p<0.01).頭尾側PPS間距離は5.1 mm短縮していた.1年以上経過観察可能であった12例中11例に骨折椎体自体あるいは周辺との骨性架橋を伴う骨癒合が得られた.日常生活自立度は全例に改善を認め,65%は受傷前レベルに復帰できていた.

    結語:本法はOVFに対して堅固な固定ではなく経皮的手技により制動を行うことが特徴であり,症例に応じ有効な治療選択肢となる可能性がある.

  • 土田 隼太郎
    2022 年 13 巻 7 号 p. 939-945
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:不安定性を伴う腰椎変性疾患に対して除圧術とrigidな固定術が行われているが,問題点もある.非固定制動術Segmental Spinal Correction System(以下SSCS)を用いた非固定制動術を施行し,5年以上(平均76ヶ月)経過例の可動域の推移,不動化,治療成績について報告する.

    対象と方法:2012年11月から2016年5月までに不安定性を伴う腰椎変性疾患に対してSSCSによる制動術を行い,5年以上経過観察が可能であった24例を対象とした.

    結果:日本整形外科学会治療成績判定基準(JOAスコア)は術前平均14.4点から25.1点へと有意に改善し,改善率は平均70.4%であった.制動椎間の可動性は術前平均9.2度から最終観察時平均3.7度へと有意に減少し,7症例(29%)に椎間の不動化を認めた.制動椎間の再狭窄や椎間板ヘルニアの発症はみられなかった.隣接椎間障害による症状悪化を3例(13%)に認めたが,再手術症例はなかった.

    結語:本術式は制動椎間の再狭窄はみられず隣接椎間障害の発生率も低いことから,不安定性を伴う腰椎変性疾患に対する除圧術や椎体間固定術などの有力な代替法となりうると考える.

  • 中村 歩希, 工藤 忠, 小野寺 英孝, 榊原 陽太郎, 小林 博雄
    2022 年 13 巻 7 号 p. 946-951
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:胸腰椎部の硬膜内への手術アプローチにおいて両側椎弓切除後の後方要素を再建したい場合,ハイドロキシアパタイト(HA)を使用している.LAMIFIXを用いることで,HAの固定が容易になり手術時間が短縮できたので,その使用経験について報告する.

    対象・方法:対象は5例である.硬膜縫合後に椎弓切除されていない左右の椎弓外側部分にLAMIFIXのスクリューを挿入し,このスクリューヘッドに2号ナイロンでHAを結紮・固定して,棘突起をHAの上端に結紮する.この方法を,1例で3椎弓に,3例で2椎弓に,1例で1椎弓に用いた.

    結果:5例とも術後CTで椎弓の損傷やスクリューおよびHAの脱転は認めなかった.12ヶ月後のCT(3例)においてもスクリューの脱転なく,良好な後方要素の再建が確認された.この方法により,硬膜縫合後創閉鎖までの時間が20~30分短縮された.

    考察・結語:椎弓外側部にスクリューを刺入することで,椎弓外側への展開や骨孔作成が不要になり,後方要素再建のためのハイドロキシアパタイトの固定が確実かつ簡素化できた.

  • 田岡 拓也, 瀧川 朋亨, 森田 卓也, 石丸 啓彦, 石原 健嗣, 伊藤 康夫
    2022 年 13 巻 7 号 p. 952-957
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:胸腰椎破裂骨折に対してPPS(Percutaneous Pedicle Screw)を用いて矯正固定を行い良好な成績が得られるようになっている.当院ではside loading systemとtop loading systemのデバイスを使用している.本研究の目的は,デバイスの違いによる胸腰椎破裂骨折の手術成績を明らかにすることである.

    対象と方法:2012年4月から2020年3月の間に加療を行った胸腰椎損傷287例の中で基準を満たした55症例を対象とした.

    術前,術直後,フォロー時のCT検査で放射線学的項目を計測しside loading system(S群)とtop loading system(T群)間で比較し検討した.

    結果:術直後,フォロー時のAnterior Vertebral Height(AVH),Posterior Vertebral Height(PVH),Vertebral Body Angle(VBA),Canal Occupying Ratio(COR)の矯正に関しては有意な差は認めなかった.術直後,フォロー時のLocal Kyphotic Angle(LKA)の矯正に関してはS群が有意に優れていた(p<0.05).

    結語:Side loading systemは本来PPSのシステムではなく手技がやや煩雑だが矯正力が強い可能性がある.必要な矯正力と低侵襲性の観点からインプラント選択を行うことが重要である.

  • 上本 真輝, 石原 昌幸, 谷口 愼一郎, 足立 崇, 朴 正旭, 谷 陽一, 安藤 宗治, 齋藤 貴徳
    2022 年 13 巻 7 号 p. 958-964
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    目的:Anterior column realignment(以下ACR)とextreme lateral interbody fusion(XLIF),経皮的椎弓根スクリュー(以下PPS)を用いた低侵襲前後方固定術におけるACR施行椎間のcage subsidence(以下CS)の発生危険因子について調査した.

    対象と方法:2018年以降ACRとXLIF,後方はPPSを用いて手術を施行した成人脊柱変形(ASD)患者42名を対象とした.CS発生群(CS群)とCS発生無し群(NCS群)において使用cage角度,cage高(前方高,後方高),cage設置位置,終板骨硬化の有無,局所前弯角(SL),椎間板高,脊柱骨盤パラメーターを検討した.

    結果:CS群において平均年齢が有意に高く,20°cageと比較し30°cageの使用が有意に多く,後方cage高が有意に低く,cageの前方設置が有意に多かった.またCS群では有意に術後PI-LLが大きく,有意にADHが低かった.前方設置と中央設置で局所のパラメーターを比較したところ,前方設置群で有意にADH及び術前後SLが低かった.多変量解析の結果30°cageの使用がCSのリスク因子として検出された.

    結語:20°cageを椎体中央に設置することがCSの予防及び良好な前弯獲得において重要である可能性が示唆された.

症例報告
  • 伊藤 清佳, 樋口 一志
    2022 年 13 巻 7 号 p. 965-969
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:脊髄髄膜瘤(Myelomeningocele:MMC)は神経管閉鎖障害の中で頻度の高い疾患である.MMC閉鎖術における皮膚閉鎖法は,合併する突背,皮膚欠損の程度等により異なるが一定の見解はない.当科で手術した新生児MMCの皮膚閉鎖法について文献的考察を加え検討した.

    症例:正期産にて出生した女児.胎生28週時に胎児エコーにて異常を認め当院へ紹介された.胎児MRIにてMMC,突背,小脳下垂,水頭症を認め,38週1日に予定帝王切開にて出生した.出生時体重は2,892 g,頭囲は34.5 cm(+1.1SD),MMCの皮膚欠損範囲は50 * 62 mmであった.第2日齢にMMC閉鎖術を施行した.神経管の各層の閉鎖後に皮膚をU-shaped sutureにて3回間欠的に牽引し一期的に良好な閉鎖を得た.

    結語:皮膚,筋膜全層の血流を温存でき,出血量を低減できるU-shaped sutureは皮膚の発達がまだ幼弱な新生児には侵襲が小さい利点があり,50 mm以上の皮膚欠損でも閉鎖が可能であると示されている.新生児MMC閉鎖術において,U-shaped sutureを行い良好な皮膚閉鎖を得た1例を報告した.

  • 中山 雄太, 岡本 直樹, 田 翔太, 岡崎 廉太郎, 東 成一
    2022 年 13 巻 7 号 p. 970-974
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:2椎体に及ぶ腰椎硬膜管背側への巨大脱出ヘルニアの1例を報告する.

    症例:65歳男性.誘引なく腰痛,両下肢痛,筋力低下を自覚し,歩行困難となり前医受診.腰椎単純MRIで脊髄硬膜外血腫または腫瘍の疑いで,当院へ転院.MRI上,L2頭側終板からL3尾側終板に及ぶ硬膜外腔背側にT1でlowからiso,T2でやや不均一にhighの信号強度を呈する紡錘形腫瘤があり,硬膜管は腹側に圧排されていた.硬膜外血腫を第一に疑い,緊急でL1~3の片側椎弓切除を行った.しかし,硬膜外腔には血腫ではなく,淡黄色の髄核様組織が存在し,ほぼ一塊にして摘出した.術後病理による最終診断は椎間板ヘルニアであった.術後,症状は速やかに改善した.硬膜管背側に脱出する腰椎椎間板ヘルニアは,高齢者の上位腰椎に発生することが多いと報告されている.極めて稀な発生頻度と特徴的な画像所見が乏しいことより,術前診断は困難であり術中に診断がつくことがほとんどである.本症例は2椎体に及ぶ巨大ヘルニアであり,血腫や腫瘍との鑑別が困難であった.

    結語:上位腰椎の硬膜外背側腫瘤は,鑑別として脱出型の椎間板ヘルニアである可能性も考慮して,精査加療すべきである.

  • 本田 英一郎, 劉 軒, 白石 昭司, 田中 達也
    2022 年 13 巻 7 号 p. 975-980
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    類骨骨腫(Osteoid osteoma)は20歳以下の若年男性に多く発生し,好発部位は下肢などの長管骨である.大きさは15 mm以上になることはないとされている.症状発生にはプロスタグランジンの関与があり,小さい骨腫ではあるが,周囲組織に浮腫をもたらし,疼痛を惹起している.症例は17歳の女性で,頚椎C5椎弓根より発生し,進展して頚部痛とC6神経根症状を呈した.治療法としてCT,MRIをガイドとしたablationでは低侵襲ではあるが,周囲の重要組織への影響が危惧される.本症例のような神経組織近傍に発生した脊椎病変では,CTガイドを利用したopen surgeryがより安全で正確にnidus摘出が可能であった.

  • 清水 曉, 小林 洋介, 青田 洋一, 隈部 俊宏
    2022 年 13 巻 7 号 p. 981-986
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:特発性脊髄ヘルニアidiopathic spinal cord herniation(ISCH)の術後に,これまで報告のない特異な様式で髄液が貯留した症例を経験した.

    症例:57歳男性.Brown-Séquard症候群で発症.T4/5高位のISCHを腹側硬膜裂孔から続く壁内囊胞から解除し,expanded polytetrafluoroethylene(ePTFE)人工硬膜によるハンモック法を用い修復した.術後7ヶ月に症状が再発し,MRIでは頚椎から腰椎の硬膜管腹側に液体信号がみられ髄液漏と診断,再手術を施行した.癒着膜で覆われたePTFE人工硬膜を除去すると硬膜裂孔の腹側に広大な腔がみられた.視診と同腔の造影所見から,既存の腹側硬膜の壁内囊胞が頚椎と腰椎まで拡大したものと判明した.硬膜裂孔を拡大し手術を終えた.

    結語:本症例では,ISCHの修復に用いたePTFE人工硬膜による癒着が一方向弁となり,壁内囊胞に髄液を浸透させ,ここから腹側硬膜を脊柱管のほぼ全長に渡り分離・拡大させたと考えられた.

  • 下島 康太, 吉岡 克人, 納村 直希, 高田 泰史, 池田 和夫
    2022 年 13 巻 7 号 p. 987-991
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:高齢者のDISHを伴う椎体骨折に対して,強固に椎体を把持できるPES法を用いて,転位した骨折部を整復した1例を報告する.

    症例:83歳男性.前後方向に転位をきたしたDISHを伴う第1腰椎の椎体骨折があり,Frankel Bの麻痺を同時に認めた.手術は腹臥位で,PES法を用いてアンカーとなるスクリューを経皮的に設置した.整復位にbendingしたロッドを尾側3椎体に設置したスクリューに固定し,頭側のスクリューを徐々にロッドに引き寄せて整復した.スクリューの緩みなく整復が可能であり,術後Frankel C1に麻痺は改善した.術後1年が経過したが,画像上スクリューの緩みは認めない.

    結語:経皮的に整復することで低侵襲なだけではなく,棘突起や椎弓を残すことで術後の骨癒合にも有利であると考える.PES法による強固な固定力を利用した本手技は治療オプションの一つになりうると考えた.

  • 中山 雄太, 渡邉 健一, 熊埜御堂 雄大, 山口 泰輝, 唐司 寿一, 安部 博昭, 東川 晶郎
    2022 年 13 巻 7 号 p. 992-998
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:今回我々は胸椎化膿性脊椎炎で硬膜外膿瘍による急速な下肢麻痺の悪化をきたした症例,及び肺化膿症・大動脈周囲の炎症へと感染が波及した症例に対して迅速な脊髄の除圧と感染巣の速やかなコントロールを目的に経椎弓根的ドレナージを併用した脊椎固定術を2例経験したので報告する.

    症例:症例1は62歳,男性.誘引なく両下肢筋力低下,直腸膀胱障害を自覚.胸椎単純MRIにおいてT7~8レベルで化膿性椎間板炎,硬膜外膿瘍の所見があったため,T6~8は椎弓切除に加え,T8椎弓根からT7/8椎間板腔にドレーンを挿入し,T5,6~10,11と経皮的に後方固定を施行した.徐々に下肢筋力は改善し,術後1年で独歩可能となった.症例2は61歳,女性.T4/5の化膿性椎間板炎により右肺化膿症,大動脈周囲へ炎症波及の所見があり,手術を施行した.片側病巣部は筋層より深部は展開せずにT2,3~6,7に後方固定.非展開側で経皮的にT5椎弓根から4/5椎間板にドレーンを留置した.術後より炎症反応値は徐々に改善し,その後増悪はなく症状も消失した.

    結語:今回我々が施行した術式は即時的な脊髄の除圧効果,及び感染巣の速やかなドレナージが可能な術式と考えられた.

テクニカルノート
  • 門田 領, 相庭 温臣, 望月 眞人
    2022 年 13 巻 7 号 p. 999-1004
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:市販フローアブル止血剤は頑固な硬膜外静脈叢出血に対して強力な止血作用とドラッグデリバリー性能に優れるが,償還価格が高額であるため腰椎単椎間除圧など実際に頻度の高い脊椎手術ではルーチン使用はできずその恩恵にあずかれない.今回この問題を解決する方法を考案したので紹介する.

    技術報告:微繊維性コラーゲン製剤をトロンビン希釈液に溶解し軽く10秒ほど撹拌するのみで調整可能である.この混合溶液を注射筒に充填し出血部位に散布,上からサージカルコットンをのせ吸引すると圧迫不要で速やかかつ容易に止血される.止血原理として微繊維性コラーゲン製剤による1次止血作用に加えトロンビンによる2次止血作用により凝血塊の安定化がもたらされる.また微繊維性コラーゲン製剤は単剤では鑷子に粘着するなど扱いが困難だがフローアブルな剤形とすることで必要最小量のみが出血点へ自動的に到達し止血効果を高めると同時にこの難点も克服できる.加えて調整が簡単で償還価格が安価である点などが利点であり,部位を問わず適用可能で汎用性が高い.

    結語:優れた効果を持つ止血剤の混合調整法について報告した.

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