Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
Print ISSN : 1884-7137
13 巻, 8 号
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原著
  • 中川 智刀, 髙橋 永次, 徳永 雅子, 星川 健, 兵藤 弘訓, 佐藤 哲朗
    2022 年 13 巻 8 号 p. 1005-1010
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:頚髄症に対する手術療法として脊椎内視鏡を使ったCMEL(Cervical MicroEndoscopic Laminotomy)が報告されている.当科では椎弓切除術に変更の上(CMEL変法)導入した.この術式は低侵襲であるが,選択的除圧および椎弓切除であることで,従来の治療法に比し治療成績悪化の危惧があり,治療成績の検討が必要である.

    目的:当科で行ったCMEL変法と黒川法の1年成績を比較検討し,CMEL変法の有用性,問題点を明らかにすることである.

    方法:CMEL変法は,開窓椎間の椎弓を完全に切除する方法である.対象はCMEL変法31例,黒川法39例である.検討項目は,手術時間,出血量,合併症,術後入院期間,術前と1年後のJOAスコアー,JOACMEQ,頚部痛NRSとした.

    結果:平均手術時間に差はなかった.平均出血量はCMEL変法の方が少なかった.術後入院期間はCMEL変法がより早期に退院していた.JOAスコアーは術前後ともに差がなかった.JOACMEQは,術前の頚椎機能以外は差がなかった.頚部痛NRSは,術前,術後ともに差がなかった.

    結論:CMEL変法は,黒川法と同等の術後成績であり,しかも低侵襲手術のため早期退院が可能な優れた術式である.

  • 谷 陽一, 田中 貴大, 政田 亘平, 朴 正旭, 石原 昌幸, 足立 崇, 谷口 愼一郎, 安藤 宗治, 齋藤 貴徳
    2022 年 13 巻 8 号 p. 1011-1017
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:骨粗鬆症性下位腰椎椎体骨折の椎体圧壊とそれに伴う神経症状に対しては後方除圧固定が一般的であるが,我々は低侵襲手術としてBKP,LLIF,PPSを組み合わせて行っており,その場合にLLIFの間接的神経除圧効果が期待できるかどうかを検討した.

    対象と方法:対象は上記に該当する症例のうち術後2年以上経過した4例である.手術は,まず腹臥位で骨折椎体にBKP,次に側臥位にて罹患椎間にLLIF,そして再度腹臥位にてPPS固定を行った.

    結果:CT計測にてLLIF施行椎間の椎間板高,左右椎間孔高はいずれも術後有意に増大し,それらは術後2年時まで維持されていた.MRI計測にて硬膜管断面積は術後有意に増大し,一方,黄色靭帯断面積・厚さは術後有意に縮小した.それら増大と縮小は術後2年まで経年的に有意に進行した.術後2年のCTにてLLIF施行の全8椎間に骨癒合が確認され,JOAスコアは術前平均9点から術後平均22.5点に有意に改善した.

    結語:BKP,LLIF,PPSの順に一期的低侵襲手術を行えば,LLIFによる強固な椎体間固定と間接的神経除圧効果が期待できる.

  • 吉水 隆貴, 渡邊 水樹, 石井 啓介, 野坂 潮, 水野 哲太郎, 佐々木 寛二
    2022 年 13 巻 8 号 p. 1018-1023
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    目的:当院ではポータルを二つ作成し生理食塩水の灌流下に行う内視鏡手術であるBiportal Endoscopic Spine Surgery(BESS)を行っている.Kambin's safety Triangleからケージ挿入を行うTrans-Kambin Lumbar Interbody Fusion(KLIF)とBESSを併用して完全内視鏡下に腰椎椎体間固定術を行うBE-KLIFを開発した.本術式の術後1年の成績を検討した.

    方法:対象は単椎間の腰椎椎体間固定を行った18例である.診断はすべり症13例,不安定性を伴う脊柱管狭窄3例,再発ヘルニア1例,椎間孔狭窄1例であった.術後1年での腰痛,下肢痛,下肢しびれ感,JOAスコアの改善率,骨癒合状況を評価した.

    結果:術後1年での改善率は,腰痛56%,下肢痛73%,下肢しびれ感65%,JOAスコア78%であった.CT画像上骨癒合が確認できたのは61%であった.

    考察:BE-KLIFは内視鏡下でのケージ挿入に使用したポータルを経皮的椎弓根スクリュー挿入にも共用できるので,約2 cm長の4つの皮膚切開のみで椎体間固定が可能である.上関節突起を除くほとんどの後方要素の温存が望める点でも最小侵襲な腰椎椎体間固定である.また,expandable cageを両側から挿入し間接除圧を確実にすることが良好な術後成績につながっていると考えた.

    結語:BE-KLIFは術後成績も良好な新たな完全内視鏡下腰椎椎体間固定術である.

  • 小出 知輝, 辰村 正紀, 山路 晃啓, 長島 克弥, 江藤 文彦, 竹内 陽介, 船山 徹, 山崎 正志
    2022 年 13 巻 8 号 p. 1024-1029
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰椎分離すべり症における脊髄造影CT検査機能写での脊柱管狭窄の変化について評価したので報告する.

    対象と方法:2017年7月から2021年5月までに当院で脊髄造影CT検査機能写を行った腰椎分離すべり症患者のうち,狭窄により造影剤が描出されず計測不可能な症例を除外し,9例を対象とした.症例毎に脊髄造影CT検査の前屈時,後屈時で分離部における硬膜管前後径,横径,断面積を計測し,前屈時と後屈時の変化率を計算した.対応のあるt検定を用いて統計学的に解析した(P < 0.05).

    結果:前後径の平均は前屈時が13.4 mm,後屈時が11.4 mmであった(P = 0.049).横径の平均は前屈時が14.0 mm,後屈時が11.9 mmであった(P < 0.001).断面積の平均は前屈時が168.6 mm2,後屈時が126.7 mm2であった(P < 0.01).いずれも後屈時に有意に縮小していた.前後径より横径の方が縮小の変化率が大きいのは5例であった.

    結語:今回の腰椎分離すべり症9例のうち5例は,ragged edgeによる左右からの圧迫があり,前後径より横径の方が縮小の変化率が大きかった.矢状断で前後径が保たれていると,横径の縮小を認識せずに脊柱管狭窄を過小評価することがあるため,腰椎分離すべり症の画像評価には注意が必要である.

  • 延與 良夫, 中川 幸洋, 寺口 真年, 原田 悌志, 北山 啓太, 北裏 清剛
    2022 年 13 巻 8 号 p. 1030-1036
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:脊柱管狭窄を合併した腰椎椎体骨折に対して,経皮的椎体形成術(Balloon Kyphoplasty:BKP)と内視鏡下後方除圧術(Microendoscopic laminotomy:MEL)を併用した臨床成績について検討したので報告する.

    対象と方法:当科と関連病院で脊柱管狭窄を合併した腰椎椎体骨折に対して,BKPとMELを併用し加療した7例(男性2例,女性5例,平均年齢85歳,術後経過観察期間13ヶ月)が対象である.術前,術後,最終観察時において腰痛・下肢痛Numerical rating scale(NRS),X線での骨折部椎体前面・後面高,椎体楔状角,局所後弯角を計測した.術前,最終観察時のJOA scoreとADL,骨癒合,周術期合併症の有無も評価した.

    結果:腰痛・下肢痛NRSは,術後,最終観察時に改善していた.最終観察時には骨折部椎体高は比較的維持されていたが,局所後弯角は術直後改善したが術前レベルまで矯正損失を認めた.全例骨癒合は平均6.7ヶ月で得られており,周術期合併症はなかった.

    結語:BKPとMELの併用手術は,低侵襲であり後方支持組織を温存することで,術後矯正損失は認めるものの術前より局所後弯進行は生じず,腰下肢痛を軽減しADLも改善させていた.

  • 延與 良夫, 中川 幸洋, 寺口 真年, 原田 悌志, 北山 啓太, 北裏 清剛
    2022 年 13 巻 8 号 p. 1037-1043
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:本研究の目的は,DISH合併の骨粗鬆症性胸腰椎椎体骨折に対するBKPの適応と有効性を検証することである.

    対象と方法:対象はDISH罹患椎体骨折に対してBKPを施行した16例(男性7例,女性9例,受傷時平均年齢は84.1歳,術後経過観察期間は平均16.9ヶ月)である.骨折型(AO分類),局所後弯角,骨折椎体楔状角,骨癒合の有無,腰背部痛Numerical rating scale(NRS),術後隣接椎体骨折の有無,外固定期間および骨粗鬆症薬物治療の有無・期間について検討した.

    結果:骨折型はwedge compression type(AO分類type A1)14例,不全骨折2例で,腰背部痛NRSは術前8.6±1.2,術直後0.8±1.1,最終観察時1.7±2.1と改善していた.局所後弯角は術前20.1±9.1度,術直後10.2±5.4度,最終観察時18.1±9.6度,骨折椎体楔状角は術前15.5±5.3度,術直後6.4±4.6度,最終観察時10.9±4.2度であり矯正損失が認められた.全例にて骨粗鬆症薬物療法をおこない,外固定は術後平均4.1ヶ月使用し,術後平均6.4ヶ月で骨性架橋による骨癒合を得た.術後隣接椎体骨折は16例中4例(25%)において生じたが,保存的に加療可能であった.

    結語:DISH合併のOVFに対するBKPは,後方支持組織損傷のないAO分類type A1(wedge compression type)と不全骨折が適応であり,外固定と骨粗鬆症に対する薬物療法で,術後早期除痛と骨癒合が得られた.

  • 福武 勝典, 鎌倉 大輔, 中村 一将, 長谷川 敬二, 和田 明人, 高橋 寛
    2022 年 13 巻 8 号 p. 1044-1048
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:脊椎内視鏡下手術には学習曲線が存在し,脊椎内視鏡下手術を学ぶにあたり大きな障害となっている.今回,脊椎内視鏡技術認定医の元で研修できる施設で5ヶ月間の短期研修を行い,研修後に直接指導なしで施行した症例の学習曲線を内視鏡下椎間板ヘルニア摘出術(MED)と内視鏡下椎弓切除術(MEL)に分けて示し,単一術者が脊椎内視鏡手術を開始した経験を提示する.

    対象と方法:対象は医師免許取得後10年・整形外科専門医取得後4年の整形外科医.脊椎手術を約130例執刀した後に,5ヶ月間の短期研修を行い脊椎内視鏡下手術を90例程度見学,19例の執刀を経験した.研修終了直後からの9ヶ月間に施行した脊椎内視鏡下手術52例(MED 15例 15椎間,MEL 37例 63椎間)を検討対象とし,手術時間・出血量・JOAスコア改善率,合併症の検討を行った.

    結果:MEDの平均手術時間は1時間2分,平均出血量は11.3 ml,平均JOAスコア改善率は77.1%であり,学習曲線は認めず合併症もなかった.MELの1椎間当たりの平均手術時間は1時間9分,平均出血量は9.3 ml,平均JOAスコア改善率は66.9%であった.手術時間は初期の14例で学習曲線を認め,18例目で硬膜損傷・35例目で高位誤認の合併症を経験した.

    結語:短期研修による脊椎内視鏡下手術のトレーニング後に行った,単一術者による脊椎内視鏡手術の学習曲線を示した.短期研修は良好な手術成績と学習曲線の回避・短縮に寄与した.

  • 菊池 克彦, 吉兼 浩一
    2022 年 13 巻 8 号 p. 1049-1054
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:MED未経験術者によるFull-endoscopic spine surgery(FESS)の学習曲線を検討した.

    対象と方法:2017年4月から2021年3月までで,演者が行ったFESSで骨掘削が不要だったinterlaminar(IL)法50例とtransforaminal/posterolateral(TF/PL)法63例を対象とした.手術時間による学習曲線,術中・術後イベント,手術頻度が多かった初期(E)(147例/2年)と,少なかった後期(L)(53例/2年)での学習曲線を検討した.

    結果:平均手術時間はIL 51.2分,TF/PL 45.2分で,学習曲線は両方下降していた.初期と後期では,後期で学習曲線は上昇していたがTF/PLの方が緩やかだった.術中イベントはアプローチの問題がILで6例,除圧完了の判断の問題がTF/PLで2例みられた.術後イベントは神経根刺激症状がILで3例,早期再手術がTF/PLで1例みられた.

    結語:MED未経験でもFESSの手技取得は可能である.ILよりTF/PLの方が導入しやすく,手技を維持するには症例を維持する必要があると思われた.

  • 山路 晃啓, 辰村 正紀, 長島 克弥, 江藤 文彦, 竹内 陽介, 船山 徹, 山崎 正志
    2022 年 13 巻 8 号 p. 1055-1060
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:複数椎間にLIFを行う場合のL1/2へのアプローチとして,第10肋間から別に皮膚切開を加えることで横隔膜切開を回避可能とする術式と術後成績を紹介する.

    対象と方法:2015年12月から2021年7月までにL1/2に対し第10肋間からのアプローチでLIFを行なった10例を対象とした.平均年齢は71歳,男性4例,女性6例.周術期合併症を調査した.

    後腹膜アプローチでL2/3を展開し,後腹膜側から逆行性に横隔膜を肋骨との付着部から剥離.第10肋間に皮膚切開を加え,肋間筋を切開し,L1/2にLIFケージを挿入する.

    結果:合併症は2例に壁側胸膜損傷を認めた.術中に吸収糸で縫合,術後経過で気胸の出現はなかった.終板損傷やALL損傷,腹壁偽性ヘルニアの合併症は認めなかった.

    考察:通常L1/2のLIFでは横隔膜の切離や第11肋骨の切除が必要になる.高齢者の横隔膜は薄く,再建困難なことがある.横隔膜に愛護的な本アプローチはL1/2ケージを挿入する際に有用と考える.

  • 米山 励子, 大森 一生, 松繁 治
    2022 年 13 巻 8 号 p. 1061-1065
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:Full-endoscopic discectomy(FED)法は,LOVE法やMicro-endoscopic discectomy(MED)法を経験した後に導入する術者が多いと推測される.今回,両法共に未経験の術者のFED法のラーニングカーブについて検討した.

    対象と方法:2019年10月から2021年8月までにLOVE法およびMED法未経験の同一術者が腰椎椎間板ヘルニアに対し1椎間のFED法を施行した90例を対象とした.IL法52例(男性36例,女性16例),平均年齢48.4歳,TF法38例(男性26例,女性12例),平均年齢53.1歳であった.手術時間と合併症,JOAスコア改善率を調査した.

    結果:平均手術時間はIL法80.2分,TF法78.7分であった.両法ともに症例数の増加に従い手術時間が短縮した(IL法 R=-0.4,p<0.05,TF法 R=-0.4,p<0.05).合併症はIL法で術後筋力低下が1例,神経根損傷が1例の計2例(3.8%),TF法で神経根損傷が2例(5.2%)であった.再発はIL法が7例(13.5%),TF法が3例(7.9%)であり,JOAスコア改善率はIL法が88.2%,TF法が84.1%であった.

    結語:LOVE法やMED法未経験であっても各種トレーニングや十分な指導体制の環境下にFED法を貫徹することができた.

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