Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
Print ISSN : 1884-7137
13 巻, 9 号
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Editorial
原著
  • 外村 仁, 長江 将輝, 高取 良太, 清水 佑一, 寺内 竜, 白井 寿治, 高橋 謙治
    2022 年 13 巻 9 号 p. 1067-1073
    発行日: 2022/09/20
    公開日: 2022/09/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:原発性仙骨腫瘍は腫瘍学的予後が不良であり,膀胱直腸機能に影響するため治療後の機能温存が患者のQOLに重要である.本研究では本腫瘍の治療成績を明らかにする.

    対象と方法:集学的治療を行なった原発性仙骨腫瘍15例を対象とした.生検術で組織診断を行ない,腫瘍局在をType I(S3以下),Type II(S2以下),Type III(S1以下)およびType IV(仙腸関節や腸骨まで拡大)に分類した.腫瘍学的予後と膀胱直腸機能を評価した.

    結果:脊索腫では全例に粒子線照射を,Type IVの骨巨細胞腫はデノスマブ投与を行ない,機能障害なくAWDである.Type III,IVの悪性腫瘍では手術は施行せず化学療法を行なったが,機能悪化を認めDODであった.Type I,IIのユーイング肉腫2例と悪性胚細胞腫1例に片側S3神経を温存した仙骨切断術を施行した.1例はDODであったが,2例ではCDFであり機能悪化はなかった.

    結語:本腫瘍の局所制御に粒子線照射やデノスマブ投与が組織型によっては有効であった.片側S3神経温存仙骨切断術は治療後の機能障害を生じにくく,切除範囲が許されれば本手術を検討すべきである.

  • 玉置 康之, 室谷 和弘
    2022 年 13 巻 9 号 p. 1074-1078
    発行日: 2022/09/20
    公開日: 2022/09/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:Modic change Type1を伴う腰部脊柱管狭窄症に対する腰椎後方除圧術の臨床成績を検討した.

    対象と方法:対象は腰部脊柱管狭窄症に対し棘突起縦割式椎弓切除術を行った122例である.男性78例,女性44例,年齢は平均72歳,観察期間は平均303日であった.以上の症例のうちModic change Type1を認めた29例をM群,認めなかった93例をNM群とし比較検討した.

    結果:M群とNM群のJOA score改善率はそれぞれ平均55.6,58.2%,腰痛VAS変化量は平均14.0,22.5 mm,下肢痛VAS変化量は平均18.0,35.8 mm,下肢しびれVAS変化量は平均22.3,30.9 mm,JOABPEQ獲得点数では,疼痛関連障害は平均26.1,22.4点,腰痛機能障害は平均9.3,11.8点,歩行機能障害は平均21.1,22.6点,社会生活障害は平均16.6,17.7点,心理的障害は平均9.0,7.8点であった.

    結語:Modic change Type1を伴うと腰痛,下肢痛,しびれが遺残する可能性はあるが,他の臨床成績に大きな影響はなかった.

  • 玉置 康之
    2022 年 13 巻 9 号 p. 1079-1083
    発行日: 2022/09/20
    公開日: 2022/09/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:仙腸関節変性が腰部脊柱管狭窄症に対する後方除圧術の臨床成績に与える影響について検討した.

    対象と方法:対象は腰部脊柱管狭窄症107例である.男性66例,女性41例,年齢は平均72歳,観察期間は平均315日であった.仙腸関節変性はEnoらの分類を用い,変性が軽度であるType0,1の67例をN群,変性が高度であるType2,3の40例をD群とし比較検討した.

    結果:N群とD群のJOA score改善率はそれぞれ平均56.5%,58.9%,腰痛VAS変化量は平均14.2 mm,30.9 mm,下肢痛VAS変化量は平均27.9 mm,39.0 mm,下肢しびれVAS変化量は平均30.3 mm,28.1 mmであった.腰痛VAS変化量に有意差を認めた.JOABPEQ獲得点数では,疼痛関連障害は平均19.2点,31.4点,腰痛機能障害は平均9.4点,17.0点,歩行機能障害は平均21.8点,26.4点,社会生活障害は平均16.1点,20.9点,心理的障害は平均8.0点,8.5点であった.

    結語:腰部脊柱管狭窄症の後方除圧術においては,仙腸関節変性が高度であった方が,腰痛VASの変化量が有意に大きかった.

  • 藤澤 俊介, 古谷 英孝, 五十嵐 秀俊, 大森 圭太, 星野 雅洋
    2022 年 13 巻 9 号 p. 1084-1090
    発行日: 2022/09/20
    公開日: 2022/09/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰椎疾患術後患者のOswestry Disability Index(ODI)とCoronavirus disease 2019(COVID-19)に対する恐怖感との関連性を調査した.

    対象と方法:対象は,腰椎変性疾患に対して手術を施行した者とした.外来診察時に年齢,性別,BMI,術後日数,術式(固定術,除圧術),固定椎間数,緊急事態宣言下の有無,精神的健康度,感覚障害の有無,Functional Reach Test(FRT),30秒椅子立ち上がりテスト(CS30),腰痛,下肢痛,COVID-19に対する恐怖感を評価できるThe Fear of COVID-19 Scale(FCV-19S),脊椎矢状面アライメント[SVA,LL,PI,PT,TK,SS]を測定した.統計解析は多変量解析を行った(有意水準は5%).

    結果:多変量解析の結果,ODIに関連する要因としてFRT(p<0.001,β=-0.45),腰痛(p=0.005,β=0.28),FCV-19S(p=0.004,β=0.28)の順に抽出された(寄与率45%).

    結語:COVID-19に対する不安が腰椎変性疾患術後患者のODIに関連することが示された.

  • 大山 素彦, 本田 剛久
    2022 年 13 巻 9 号 p. 1091-1096
    発行日: 2022/09/20
    公開日: 2022/09/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:S2AISは脊柱変形に対する矯正固定術における強力な尾側アンカーであるが,可動域を有する仙腸関節を通過するため,関節に対する影響が危惧される.本研究ではS2AISのゆるみが仙腸関節に及ぼす影響について調査した.

    対象と方法:成人脊柱変形に対して胸椎から仙椎までの固定を行い術後2年以上経過観察しえた38症例を対象とした.ゆるみの有無で2群(Non-loosening群/Loosening群)に分け,立位全脊柱X線像,仙腸関節のCT画像,SRS-22,術後仙腸関節痛について比較検討を行なった.

    結果:S2AISのゆるみは32本(42%)に生じていた(N群26例,L群22例).立位全脊柱X線像では両群に有意差は認めなかった.仙腸関節のCT画像ではN群5関節,L群5関節で術前後での関節変化を認めた.SRS-22は両群間に有意差は認めなかった.仙腸関節痛はN群5関節,L群4関節に認め,仙腸関節ブロックで全例に疼痛改善を認めた.

    結語:2群間で仙腸関節の関節症変化や仙腸関節痛の発生の差はなくS2AISのゆるみが仙腸関節に及ぼす影響はほとんどないことが示唆された.

症例報告
  • 網代 泰充, 米澤 郁穂, 栗本 久嗣, 大堀 靖夫
    2022 年 13 巻 9 号 p. 1097-1104
    発行日: 2022/09/20
    公開日: 2022/09/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:頚髄,胸髄の圧迫病変によりまれに下肢痛を呈することがあり,“false localizing sign”と呼称されている.下肢痛もまれであるが下垂足は非常にまれである.今回,上位胸髄圧迫病変により下垂足を呈した2例を経験したので報告する.

    症例:症例1:72歳男性,第2~3胸髄圧迫による右下垂足の診断にて除圧固定術を施行し,術後下垂足の改善を認めた.症例2:42歳女性,第1胸髄レベルの髄膜腫による左下垂足に対し腫瘍摘出術を施行し,術後左下垂足は回復した.

    結語:自験例の共通点は,①下垂足を説明し得る腰椎,胸腰椎移行部病変の欠如②腸腰筋筋力の低下③上背部痛④画像上脊髄外側での圧迫所見が強い,ことであった.頚胸椎移行部は可動性や弯曲の変化するところであり,さらに側副血行路も乏しい.この解剖学的特徴がfalse localizing signとして発現したのかもしれない.上位胸髄圧迫病変により下垂足を呈することがあり,腰椎画像所見に乏しい下垂足を認めた際は脊髄病変の可能性を考慮するべきである.

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