Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
Print ISSN : 1884-7137
15 巻, 4 号
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Editorial
原著
  • 伊藤 大貴, 井上 太郎, 吉原 永武
    2024 年 15 巻 4 号 p. 695-699
    発行日: 2024/04/20
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル フリー

    症例は7歳,女性.特に誘因なく頚部痛が出現し他院にて頚椎椎間板石灰化症と診断された.頚椎CTでC3/4椎間板の脊柱管内への突出,頚椎MRIで髄内輝度変化を伴う脊髄圧迫所見を認めた.治療は頚椎カラー固定,アセトアミノフェン定期内服を行い,症状,画像所見ともに改善した.小児頚椎椎間板石灰化症は脊髄圧迫を呈していたとしても保存加療を考慮するべきである.

  • 井上 太郎, 吉原 永武
    2024 年 15 巻 4 号 p. 700-706
    発行日: 2024/04/20
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:本研究の目的は,当院における下位頚椎損傷患者に対する頚椎後方固定術後神経症状悪化の頻度と特徴について調査することである.

    対象と方法:2015年4月から2022年3月に頚椎骨折,脱臼にて当院で頚椎後方固定術が施行された68名中,固定範囲にC3-C7の下位頚椎が含まれた51名を対象とした.平均年齢は65歳(29~86),性別は男性39名,女性12名だった.損傷形態は頚椎骨折が37名,脱臼・亜脱臼が14名だった.

    結果:51名中9名(18%)に術後神経症状の悪化を認めた.症状の内訳はC5麻痺が6名(67%),他神経根障害が2名(22%),四肢不全麻痺が1名(11%)だった.再手術は51名中4名(8%)に施行されていた.3名に椎間孔拡大術が施行,1名に椎弓切除術が施行されていた.2名は同日緊急手術が施行されていた.

    結語:頚椎損傷後の後方固定術は比較的高頻度に神経症状の悪化を認めることを念頭に置くべきである.

  • 伊藤 裕哉, 神原 俊輔, 松本 智宏, 伊藤 圭吾
    2024 年 15 巻 4 号 p. 707-712
    発行日: 2024/04/20
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰下肢痛のためMRI検査を受けた患者の1.7%が腰椎椎間関節近傍囊腫(Lumbar Juxta-facet cyst(以下,LJFC))という報告がある.椎間関節穿刺による破砕術は再発率が高いという報告から,十分な保存療法が行われていない状態で手術に至ることも多い.当院では原則的に,手術の前にFacet block(以下,FB)やSelective nerve root block(以下,SNRB)を行っており,その有効性について検討した.

    対象と方法:2014年4月から2022年9月までに,当院でLJFCの保存療法を行った59例(男性39例,女性20例)を対象とした.手術に至らなかった症例を保存療法有効例(34例),手術に至った症例を保存療法無効例(25例)と判断した.なお,保存療法の有効性に寄与する因子(椎間辷り,椎間板変性,椎間関節変性,椎体終板変性,囊腫内MRI輝度変化,SNRB追加の有無)についても検討した.

    結果:34例(58%)で保存療法は有効であった.有効性に寄与する因子は,①T2強調画像でCyst内部が強高信号,②FBのみで軽快し,SNRBを必要としなかった症例であった.

    結語:LJFCの加療としては,まずはFBなどの低侵襲な保存療法を行うべきであることが示唆された.

  • 榮枝 裕文, 松岡 佑嗣, 松岡 竜輝, 服部 明典, 深谷 英昭, 川上 太郎
    2024 年 15 巻 4 号 p. 713-720
    発行日: 2024/04/20
    公開日: 2024/04/20
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    目的:腰椎椎間板ヘルニア治療で,condoliase椎間板内注入療法が手術を避ける保存治療となり得るかを検討した.

    方法:酵素注入療法後6ヶ月以上観察できた83例を解析.保存治療に抵抗する有痛症例には,神経根ブロックを優先して選択し,改善しない症例に酵素注入療法を勧めた.施行前・施行後2週間・4ヶ月・6ヶ月・12ヶ月の経緯と,MRIを解析した.

    結果:(1)酵素注入療法は,効果発現は2週間と早く,6ヶ月で1年到達点の92%に達し,1年時まで症状の改善が見られた.(2)JOAスコアとNRS両者で判定した83例の有効率は6ヶ月で73%,1年で80%であった.Dropoutで他院手術例を成績不良例として加算した当院成績は,有効率79%,手術は3例であった.(3)MRIでヘルニア縮小は77%で見られ,ヘルニアの退縮が一部でも見られれば,89%に良成績が期待できた.(4)脊柱管狭窄・多椎間椎間板障害・不安定症・既存手術などが成績不良に関係していた.

    結語:Condoliase注入療法は,中等度の椎間板変性があっても,脊柱管狭窄や不安定症などのリスク因子を避けて症例を選べば,選択し得る非手術治療となり得る.

症例報告
  • 藤井 論, 両角 正義, 村本 明生, 松原 祐二
    2024 年 15 巻 4 号 p. 721-725
    発行日: 2024/04/20
    公開日: 2024/04/20
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    はじめに:転移性髄内腫瘍は予後不良であり,化学療法が有効ではないとされている.今回,転移性髄内腫瘍摘出術後に免疫チェックポイント阻害薬にて経過良好であった1例を経験したので報告する.

    症例:74歳,男性.肺癌に対し肺上葉切除術を施行された.再発なく経過していたが術後7ヶ月で尿閉と歩行困難が出現した.造影MRIでC7~Th1高位に内部が均一に造影される硬膜内髄外腫瘍を疑う病変を認め緊急腫瘍摘出術を施行した.術中所見で腫瘍の一部は脊髄に強固に癒着していたため癒着部分は焼灼にとどめた.術直後より対麻痺は改善し杖歩行可能となった.病理組織学的診断は肺癌転移であり,術後MRIにて髄内残存病変を認めたため転移性髄内腫瘍と診断された.腫瘍細胞はPD-L1高発現であったため免疫チェックポイント阻害薬で治療を始め,脊髄浮腫は改善し歩行機能は維持された.

    結語:近年PD-L1高発現の肺癌脳転移に対する免疫チェックポイント阻害薬の有効性が示された.本症例では脊髄浮腫が改善し,良好な神経機能が維持されており,転移性脊髄髄内腫瘍でも免疫チェックポイント阻害薬が有効である可能性が示唆された.

  • 貝沼 慎悟, 福岡 宗良, 渡邊 宣之, 山田 宏毅, 遠藤 浩二郎, 井村 直哉, 桑山 剛, 片岡 真弥, 伊藤 慈紘, 宮下 竣
    2024 年 15 巻 4 号 p. 726-731
    発行日: 2024/04/20
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:Tight filum terminale(TFT)とは,脊髄終糸の緊張により脊髄円錐部が牽引されて神経症状を呈するものであり,頑固な腰痛や下肢痛の原因の1つとして報告される.MRIなどの画像では異常を判断しにくいため,未治療のまま放置されることがある.

    症例1:13歳 男性.2ヶ月前,運動中に腰痛が出現.腰痛で座位をとるのも困難であった.体幹および頚部の前屈で疼痛を誘発させるテスト(TFT誘発テスト)は陽性であった.CTミエログラフィーでは腹臥位および仰臥位で緊張した脊髄終糸が確認できた.脊髄終糸の切離を行い,腰痛は改善してTFT誘発テストも陰性となった.

    症例2:47歳 男性.2ヶ月前,長時間の運転後に腰痛が出現.腰椎の前屈で腰痛は増悪し,TFT誘発テストは陽性であった.歩行は痙性のために不安定であった.頚椎・胸椎には異常所見を認めなかったが,CTミエログラフィーで脊髄終糸が確認できた.脊髄終糸の切離を行い,腰痛は改善して歩容も若干改善した.TFT誘発テストも陰性となった.

    考察:画像診断で神経圧迫所見のない腰痛・両下肢痛の鑑別診断として,TFTを考慮する必要がある.

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