はじめに:本研究では,70歳以上の腰椎椎間板ヘルニアに対するコンドリアーゼ椎間板内注入療法の治療成績とその予後因子を検討した.
対象と方法:当施設にて70歳以上の腰椎椎間板ヘルニアに対しコンドリアーゼ椎間板内注入療法を施行した20例を対象とした.腰痛と下肢痛,JOAスコアを治療前と治療後1ヶ月,3ヶ月,12ヶ月で評価し,画像評価は立位単純レントゲンとMRI,CTで行った.下肢痛の改善率が50%以上の症例を有効群,50%未満または1年以内に手術に移行した症例を非有効群と定義し,各項目の比較を行った.
結果:有効群は6例(30.0%),非有効群は14例(70.0%)であり,1年以内に手術に移行した症例は7例(35.0%)あった.手術に移行せず1年以上経過観察可能であった13例を検討すると,下肢痛は治療後1ヶ月と3ヶ月,12ヶ月で有意に改善し,JOAスコアは治療後3ヶ月と12ヶ月で有意に改善した.また,有効群と非有効群を比較検討すると,Pfirrmann分類のgradeが有効群で有意に大きかった.
結語:高齢者に対するコンドリアーゼ椎間板内注入療法は椎間板変性が進行している症例で効果があることが分かった.高齢者でも椎間板変性が進行した椎間板ヘルニア症例で有用な治療法であることが示唆された.
腰椎椎間板ヘルニアに対してコンドリアーゼ椎間板内注入療法を施行した70歳以上の症例20例の治療成績を調査した.施行後1年で下肢症状が半減した症例が6例あり,1年以上経過観察可能であった症例では下肢痛とJOAスコアが有意に改善していた.若年者と比較し効果は劣るものの,椎間板変性が進行している症例で一定の効果が得られることが分かった.高齢化社会の到来に伴い,今後も本疾患に罹患する症例は確実に増加することが考えられる.このため,合併症が少なく,入院の必要がない,より低侵襲な本治療法の適応が増加すると考えられる.
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