Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
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Editorial
原著
  • 松井 寛樹, 酒井 義人, 竹市 陽介, 長田 直祥, 新畑 豊, 山岡 朗子
    2025 年 16 巻 1 号 p. 2-8
    発行日: 2025/01/20
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:パーキンソン病(PD)における姿勢異常は機序が不明で特徴も詳細には分かっていない.当施設ではPD患者のデータベース(DB)を構築しており,PD患者における脊椎バランスと骨格筋量の特徴につき調査した.

    対象と方法:DB登録されたPD患者426名のうち42名を解析した.検討項目は全脊柱レントゲンによる脊椎アライメント評価,全身DXA法による骨格筋量評価を行った.

    結果:PD罹病期間は9.1±5.0年で,Yahr分類はI度:1名,II度16名,III度17名,IV度6名,V度2名であった.脊椎アライメントはC7-CSVL高値,C7-SVA高値,PI-LLミスマッチ,胸椎過後弯,T1 slopeの上昇を認め,高度バランス不良は45.2%と高率で,病期進行とともに悪化する傾向にあった.筋量サルコペニアの有病率は38.1%でYahr III以上では48.0%と高率であった.

    結語:PD患者は冠状面,矢状面バランスが高度不良で,重症度とともに脊椎バランス不良となる傾向にあること,サルコペニアの有病率が高く,姿勢異常や脊椎バランスに関与する可能性がある.

  • 高橋 雅人, 今釜 史郎, 重松 英樹, 舩場 真裕, 後迫 宏紀, 中西 一義, 町野 正明, 谷口 愼一郎, 藤原 靖, 小林 和克, ...
    2025 年 16 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2025/01/20
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:脊髄高位以外,すなわち馬尾高位である腰仙椎手術における脊髄モニタリングの有効性を,脊髄高位の頚胸椎手術と比較し検討した.

    対象と方法:多機関共同前向き研究.脊椎脊髄手術6,196例で頚胸椎群と腰仙椎群に分類した.アラームポイントは経頭蓋刺激-運動誘発電位(Tc-MEP)振幅変化率70%以上低下とした.主要評価項目は,感度,特異度,陽性・陰性的中率,陽性・陰性尤度比とした.副次評価項目は術後麻痺発生率,術後麻痺を生じるTc-MEP振幅変化率のカットオフ値とした.

    結果:頚胸椎群の感度,特異度,陽性・陰性的中率,陽性・陰性尤度比はそれぞれ77.6%,90.1%,21.1%,99.2%,7.9,0.2だった.腰仙椎群はそれぞれ60.7%,95.9%,23.0%,99.2%,14.8,0.4だった.腰仙椎群の感度は低い傾向だったが,特異度,陽性尤度比は有意に高かった.術後麻痺発生率は,頚胸椎群3.1%,腰仙椎群1.9%だった.Tc-MEP振幅変化率の最適カットオフ値は30%(ベースライン波形の70%低下)で,感度64.7%,特異度87.5%だった.

    結語:腰仙椎手術の脊髄モニタリングは,頚胸椎手術に比し感度が低い傾向にあったが,特異度,陽性尤度比は有意に高く,有効であった.

  • 小野 直登, 石原 昌幸, 川島 康輝, 中 信裕, 朴 正旭, 谷 陽一, 足立 崇, 谷口 愼一郎, 安藤 宗治, 齋藤 貴徳
    2025 年 16 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2025/01/20
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:成人脊柱変形術後ADL障害発生危険因子を調査した.

    対象と方法:中下位胸椎から骨盤まで矯正固定術を行い2年以上経過しADL調査可能であった49名を対象とした.調査項目は術後2年時点での靴下着脱,足趾爪切り,お尻ふき,湯船入浴,寝返り,ズボン着脱,椅子からの立ち上がり,正座,落下物拾い,乗車の10項目に関して独力で難なく可能(2点),苦労して可能(1点),不能(0点)の3段階で評価し,合計20点満点でLumbar stiffness score(以下LS score)と定義し,合計点数14点以下(Low群)と15点以上(High群)の2群間で術前後各種パラメーター,術前の下肢関節柔軟性,足部保持,歩行速度及び下肢筋力を評価した.

    結果:術後2年の時点で足趾爪切り,正座は約6割で不能であった.Low群でPI及び術後LL,術前後SSが有意に高く,股関節外旋,膝深屈曲,足部保持率は有意に低く,歩行速度が有意に遅く,腓腹筋が有意に弱かった.多変量ロジスティク回帰分析の結果,14点以下となる因子として足部保持不能が検出された.

    結語:術後ADL障害危険因子は足部保持不能,またADL障害に関しては下肢筋力,歩行速度等が術後ADL制限に影響している可能性が示唆された.

  • 吉松 弘喜, 柴山 元英, 三浦 恭志, 中村 周, 伊藤 全哉, 伊藤 不二夫, 山田 実, 松原 庸勝
    2025 年 16 巻 1 号 p. 23-32
    発行日: 2025/01/20
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:TELD(transforaminal full-endoscopic lumbar discectomy)は,後方アプローチ術後の癒着瘢痕をさけて再発ヘルニアを切除できる優位性が報告されているが,その限界については未だ不明瞭である.

    対象と方法:L4/5高位にTELDを施行した腰椎椎間板ヘルニア再手術症例131例を対象とした.術後早期MRIでのヘルニア完全摘出の有無を判定し,後ろ向きに臨床成績を評価した.さらに初回手術症例420例の治療成績と比較した.

    結果:再手術例では,ヘルニア完全摘出77.1%,術後ヘルニア再発19.8%,術後再手術19.8%であった.術後合併症を9.9%に認め,手術満足群は81.7%であった.再手術例と初回手術例との比較では,ヘルニア完全摘出,術後殿部下肢痛VAS,術後JOAスコア,術後再手術,術後合併症,手術満足群の因子で有意差を認めた.

    結語:TELDは有効であったが,再手術例は初回手術例より治療成績が劣っていた.再手術例では後縦靭帯同定,癒着剥離,除圧確認が重要となる.

  • 今林 英明, 藤井 武, 増渕 茉侑
    2025 年 16 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2025/01/20
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:脊椎手術後の末梢血リンパ球数減少(<1,000/uL)は手術部位感染(surgical site infection:SSI)の指標とされるがSSIでない症例を経験する.非感染群における術後7日目のリンパ球減少に関連する因子を検討した.

    対象と方法:対象は脊椎手術329例(SSI:9例),術前・術後2/7/14日目の末梢血リンパ球数減少(<1,000/uL)・リンパ球数・白血球との比率(リンパ球比率)についてSSI群と非感染群間の有意差を検証した.術後7日目のリンパ球減少に関連する術前リンパ球数を算出,その値に関連する既往・併存疾患を検索した.

    結果:2群間比較でリンパ球比率のみ有意差を認めた.術前リンパ球数のcut off値は1,386/uLで,非感染群における術前リンパ球低値群(<1,386/uL)は周術期全般でリンパ球数は低値で推移し,術前低蛋白・免疫抑制剤・腎障害が関連因子であった.

    結語:術前低栄養・併存疾患が関連するリンパ球数低値を呈する群が存在し,術後7日目のリンパ球減少はこれら非感染群に留意する必要がある.

  • 志村 有永, 野尻 英俊, 森平 泰, 新井 秀和, 高田 知史, 山田 勝祟, 近藤 直也, 森野 忠夫, 中村 英一郎, 友利 正樹, ...
    2025 年 16 巻 1 号 p. 39-47
    発行日: 2025/01/20
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:側弯症の術後肩バランス不良(PSI)はQOLに影響する.肩バランスはRadiographic shoulder height(RSH)やT1 tiltで評価されるが,それらの値を規定する因子は不明である.Vertebral coplanar alignment(VCA)におけるRSHとT1 tiltを規定する因子を検討した.

    対象と方法:11施設においてVCA法で矯正固定術を行ったLenke type 1患者76例を対象とした.術前・術後のRSHとT1 tiltの変化量(ΔRSH,ΔT1 tilt)とその他のパラメータの相関係数を解析した.

    結果:近位胸椎カーブ(PTC)flexibilityはΔRSHと弱い負の相関を示した.PTC矯正率は術前から術後2年のΔT1 tiltで弱い負の相関を示した.主胸椎カーブ(MTC)の頂椎変化量(ΔMT-AVT)は術前から術直後のΔRSH,ΔT1 tiltでは術直後・術後2年ともに正の弱い相関を示した.

    結語:ΔMT-AVTがΔRSH・ΔT1 tiltを規定する因子であり,肩バランスを調整する術中評価を行う指標と考える.

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