Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
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Editorial
原著
  • 檜山 明彦, 野村 慧, 加藤 裕幸, 酒井 大輔, 佐藤 正人, 渡辺 雅彦
    2025 年 16 巻 5 号 p. 746-753
    発行日: 2025/05/20
    公開日: 2025/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:日本人における骨粗鬆症診断に使用するHounsfield Unit(HU)のカットオフ値に関する報告は限られている.本研究の目的は,腰椎の若年成人平均骨密度(YAM)の70%を基準として,HUのカットオフ値を算出することである.

    対象と方法:2019年から2024年の間に手術を受けた患者のうち,術前3ヶ月以内に腰椎のCTスキャンおよび腰椎・大腿骨頚部の二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)による骨密度測定を実施できた114例を対象とした.

    結果:L1~L4のHU値とlowest YAMの相関係数はr=0.608(P<0.001)であり,lowest YAMとL1~L4のHU値の回帰式はL1~4 HU=-4.25+1.57×lowest YAMと求められた.この回帰式から,YAMの70%に相当するHU値は105.7であった.

    結語:腰椎HU値の測定は,腰椎変性疾患患者の術前評価においてDXAに代わる有用な診断手段となる可能性が示唆された.

  • 後藤 豪, 大場 哲郎, 田中 伸樹, 小田 洸太郎, 波呂 浩孝
    2025 年 16 巻 5 号 p. 754-762
    発行日: 2025/05/20
    公開日: 2025/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:成人脊柱変形(ASD)は,脊柱の三次元的な変形により高齢者のQOLに大きな影響を与える疾患である.ASDの評価には立位X線が用いられるが,被曝リスクや姿勢変動による評価の再現性の低さが課題となっている.そこで今回は,可視光画像を用いた姿勢推定AIの有用性を検討することを目的とした.

    対象と方法:ASD患者23名に対して,立位全脊椎・下肢全長X線を撮影すると同時に,可視光画像を取得した.姿勢推定AIを用いて計17点のキーポイントを出力し,姿勢推定パラメーターを定義した.そのパラメーターとX線で取得したパラメーターとの相関を解析した.

    結果:姿勢推定パラメーターで,冠状面では肩バランス・体幹傾斜・膝内外反,矢状面では体幹傾斜・膝屈曲伸展とX線パラメーターとの有意な相関を認めた.これにより,可視光画像を用いた姿勢推定AIでの姿勢評価がASD患者に対して有効であることが示唆された.

    結語:姿勢推定AIは,着衣下でも簡便かつ非侵襲的にASD患者の姿勢評価を可能とするため,臨床現場での応用が期待される.今後,さらなる症例を用いた研究により精度向上を検討する必要がある.

  • 橘 安津子, 高見澤 悠平, 木瀬 英喜, 中道 清広, 渡邉 泰伸, 片岡 嗣和, 河野 仁, 宮本 梓, 細金 直文
    2025 年 16 巻 5 号 p. 763-767
    発行日: 2025/05/20
    公開日: 2025/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:徒手筋力テスト(MMT)は筋力評価に広く用いられているが,L4神経根障害を伴う腰椎疾患では大腿四頭筋筋力がMMT5でも膝崩れを自覚し日常生活に支障を来す症例があり,手術適応を検討する際に筋力低下をMMTのみで判断することの正確性に疑問を感じることがある.本研究では問診による自覚症状の評価と,MMTと徒手筋力測定器による膝伸展筋力を用いた大腿四頭筋の筋力評価の比較を行い,MMTによる筋力評価の正確性を検討した.

    対象と方法:2023年7月から9月までの間に腰椎疾患で手術を予定した233例のうち,取り込み基準を満たした82例を対象とした.問診にてG群(膝崩れあり)とC群(膝崩れなし)に分類し,両群とも術前に膝伸展筋力を測定し健患比を計算した.

    結果:82例中G群は16例,C群は66例であった.膝伸展筋力の健患比はG群では77.8%,C群では90.7%と膝伸展筋力はG群で左右差が大きくみられた.

    結論:大腿四頭筋はMMT5でも約20%の患者が膝崩れを自覚し,膝伸展筋力の左右差を認めた.大腿四頭筋のMMT評価は正確性を欠く可能性が示唆された.

  • 高宮 成将, 田中 将, 金 勝乾, 野尻 英俊, 野沢 雅彦, 有冨 健太郎, 坂本 優子, 権田 芳範, 名倉 奈々, 有田 均, 石島 ...
    2025 年 16 巻 5 号 p. 768-773
    発行日: 2025/05/20
    公開日: 2025/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰椎化膿性脊椎炎における罹患椎のHounsfield unit値(HU)や,椎弓根スクリュー(PS)挿入について検討した.

    対象と方法:腰椎化膿性脊椎炎32例,160椎(うち罹患椎65椎)が対象.初診時CTでL1~5の椎体,椎弓根,PS挿入予想部(PSS)のHUを測定,罹患椎(I群)と非罹患椎(NI群)で平均値を比較.罹患椎の各HUは,Griffiths分類の病期ごとにも検討.手術症例では術後6ヶ月以内のPSの緩みの有無を検証した.

    結果:I群/NI群の各HUは,全部位においてI群で有意に高値だった(p<0.001).Griffiths分類病期ごとの罹患椎HUは,椎体,PSSで病期の進行と共に有意に高値となった(p<0.001).手術症例6例(罹患椎PS12本),うち術後6ヶ月以内の緩みは2症例(4本)に生じたが,その他の有害事象はなかった.

    結語:罹患椎の各HUは非罹患椎に比して有意に高値であり,病期進行と共に罹患椎の椎体,PSSのHUが上昇した.より短い固定範囲で固定性向上を得るためには,骨欠損に留意した上で罹患椎PS挿入が望ましいと考える.

  • 楊 寛隆, 村上 秀樹, 山部 大輔, 鈴木 忠, 千葉 佑介, 四戸岸 完知, 土井田 稔
    2025 年 16 巻 5 号 p. 774-780
    発行日: 2025/05/20
    公開日: 2025/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:患者適合型カスタムガイドを使用した椎弓根スクリュー刺入精度と術中放射線被曝について検討した.

    対象と方法:患者適合型カスタムガイドを使用して椎弓根スクリューを刺入し脊柱側弯手術を施行した17名.スクリュー刺入精度はGertzbein scaleを用いて検討した.また術中X線照射線量と術中X線照射時間について調査し,術中放射線被曝について検討した.

    結果:全17名中,思春期特発性側弯症7名,症候群性側弯症4名,遺残性側弯症5名,先天性側弯症1名.男性5名,女性12名,平均年齢17.1±4.1歳であった.刺入された椎弓根スクリューは計295本,胸椎241本,腰椎54本.Gertzbein scaleでは99.0%がSafe zoneであった.また術中透視画像の平均照射線量は30.4±20.5 mGy,平均照射時間は4.9±3.4分であった.

    結語:脊柱側弯手術において患者適合型カスタムガイドを使用し椎弓根スクリューを刺入する方法は,高いスクリュー刺入精度と放射線被曝の低減化という観点から有用な選択肢の一つである.

  • 菅野 晴夫, 兵藤 弘訓, 田中 靖久, 中村 聡, 橋本 功, 高橋 康平, 両角 直樹, 関口 玲, 佐藤 哲朗, 国分 正一, 小澤 ...
    2025 年 16 巻 5 号 p. 781-787
    発行日: 2025/05/20
    公開日: 2025/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:骨粗鬆症性椎体骨折(OVF)による神経障害について前向き多施設調査を行い,疫学的特徴を検討した.

    対象と方法:OVFによる神経障害で加療した108例について骨折高位,狭窄部位,受傷機転の有無,神経障害型式,神経症状の局在,遅発性神経障害の有無を調査した.

    結果:骨折高位はT11:1例,T12:14例,L1:14例,L2:15例,L3:26例,L4:26例,L5:12例であった.狭窄部位は脊柱管:69例(64%),椎間孔:24例(22%),脊柱管と椎間孔:15例(14%)であった.38例(35%)で受傷機転がなかった.神経障害型式は脊髄:22例(20%),神経根:54例(50%),馬尾:18例(17%),混合型:14例(13%)であった.神経症状の局在は片側:49例(46%),両側:59例(54%)で,遅発性神経障害は63例(58%)にみられた.

    結語:OVFによる神経障害は中下位腰椎で多く,受傷機転がない例,椎間孔狭窄が全症例の1/3にみられた.半数以上の例で遅発性神経障害を呈していた.これらの特徴を認識することでOVFによる神経障害の適切な診療が可能となる.

  • 平山 次郎, 橋本 将行, 高橋 進
    2025 年 16 巻 5 号 p. 788-795
    発行日: 2025/05/20
    公開日: 2025/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:Biportal脊椎内視鏡手術(UBE/BESS)は,低侵襲性と高い汎用性を持つ術式として注目されている.本研究では,UBE/BESSの術後成績と合併症を評価した.

    対象と方法:2019年4月から2023年7月までに当院で施行された腰椎椎間板ヘルニアおよび腰部脊柱管狭窄症に対するUBE/BESS 320例を対象に後ろ向き解析した.VASおよびJOABPEQスコアを用い術後成績を評価,術中・術後合併症も解析した.

    結果:腰椎椎間板ヘルニア136例では,VASスコアが腰痛55±3から12±17,下肢痛74±23から10±15へと改善,JOABPEQスコアも全ドメインで改善した.腰部脊柱管狭窄症184例でもVASスコアが下肢痛74±23から10±15へ改善し,JOABPEQスコアも全ドメイン改善した.術中合併症はオープンコンバージョン1例,硬膜損傷6例,術後合併症は硬膜外血腫3例,下関節突起骨折3例,早期再発ヘルニア1例だった.

    結語:UBE/BESSは安全かつ効果的な術式であり,術後成績は良好だった.一方,灌流下手術特有の合併症への注意が必要である.

  • 長本 行隆, 古家 雅之, 髙橋 佳史, 松本 富哉, 海渡 貴司, 岩﨑 幹季
    2025 年 16 巻 5 号 p. 796-802
    発行日: 2025/05/20
    公開日: 2025/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:椎体HU値低値例に対する単椎間PLIFの臨床成績ならびに骨関連合併症について調査した.

    方法:75歳以上の女性に限定し単椎間PLIFを施行し術後1年以上観察が可能であった99例を対象とした.年齢は78歳,観察期間は6年.L2~5平均HU値100をカットオフ値として2群に分類し,背景データ,手術データの他,ケージ沈下,術後1年,最終の骨癒合,術後脆弱性骨折発生数,骨脆弱性に起因する再手術,最終JOAスコア,最終移動能を調査し比較した.

    結果:52例が低HU群であった.ケージ沈下,術後1年,最終骨癒合率,術後脆弱性骨折発生率,再手術率,最終JOA,最終移動能は低HU群で19%,46%,83%,17%,2%,22点,3.5点,対照群で6%,56%,88%,21%,2%,22点,3.5点であり,低HU群でケージ沈下が有意に多かったが,その他の合併症や臨床成績に差を認めなかった.

    結語:単椎間PLIFでは,低HU値はケージ沈下のリスク因子となるものの最終的な臨床成績やADLには差を認めなかった.

  • 葉 清規, 松田 陽子, 大石 陽介, 対馬 栄輝, 村瀬 正昭, 土居 克三, 竹内 慶法, 亀島 将士
    2025 年 16 巻 5 号 p. 803-812
    発行日: 2025/05/20
    公開日: 2025/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:本研究の目的は,慢性腰痛患者に対するストレッチ,体幹筋強化,マッケンジー法(以下,MDT)を併用した運動療法の有効性について検討することである.

    対象と方法:本研究は後ろ向きコホート研究である.対象は,3ヶ月以上の慢性腰痛を有しており,当院で定期的な外来通院での運動療法を実施した腰椎変性疾患患者410例とした.運動療法でストレッチ,体幹筋強化にMDT併用の有無で群分けした(MDT併用なし群:238例,併用あり群:172例).初回から運動療法開始1ヶ月,3ヶ月における臨床成績を腰部痛・下肢痛VAS,ODI,JOABPEQで比較した.

    結果:両群ともに腰部痛・下肢痛VAS,ODI,JOABPEQの各スコアは初回から1ヶ月,3ヶ月で有意な改善がみられた.MDT併用あり群はMDT併用なし群に比べ,JOABPEQ歩行機能障害スコアの獲得点数は,1ヶ月,3ヶ月で有意に大きかった.

    結語:慢性腰痛に対してストレッチ,体幹筋強化にMDTを併用した運動療法を実施することは,併用しない場合と比較して歩行機能障害が改善していたことからQOLの改善に有効な可能性がある.

  • 玉置 康之
    2025 年 16 巻 5 号 p. 813-817
    発行日: 2025/05/20
    公開日: 2025/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰部脊柱管狭窄症(以下LSS)に対する除圧術における腰痛改善の術前予測因子について検討した.

    対象と方法:LSSに対し除圧術を行った148例を対象とした.男性90例,女性58例,年齢は平均72歳,観察期間は平均305日であった.最終観察時に腰痛Visual analog scale(以下VAS)が改善した113例をR群,改善しなかった35例をNR群とし検討した.

    結果:R群とNR群の男性はそれぞれ71,19例,年齢は平均71.3,72.9歳,除圧椎間数は平均2.2,2.1椎間であり有意差はなかった.術前JOA scoreは平均21.6,14.1点,術前腰痛VASは平均66.2,46.4 mm,術前下肢痛VASは平均72.1,55.8 mm,術前下肢しびれVASは平均67.3,54.7 mmであり,術前腰痛VAS,術前下肢痛VASに有意差を認めた.術前JOABPEQ,術前脊柱骨盤パラメーターには有意差はなかった.

    結論:LSSに対する除圧術において,術前腰痛VASが高度であれば腰痛が改善する可能性がある.

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