Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
Print ISSN : 1884-7137
16 巻, 7 号
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Editorial
原著
  • 姜 顯炅
    2025 年16 巻7 号 p. 940-950
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:胸腰椎移行部の前方手術では,胸腔や横隔膜を経由する必要があり,十分な術野の確保が求められる.従来法では皮膚切開から椎体までの距離が長く,肋骨の干渉により術野の確保が困難となる.視野確保には広範な剥離や胸膜切開が必要で,手術侵襲が高まり合併症も増加する.これらの課題を克服するため,Reverse Oblique Approach(ROA)を考案した.本研究ではROAの有効性と安全性を評価し,従来法と比較した.

    方法:胸腰椎移行部に対する椎体置換術および側方椎体間固定術38例を対象に,従来法とROAの後ろ向き研究を行い,手術時間と呼吸器合併症を評価した.

    結果:椎体置換術群では,ROA群で手術時間の短縮を示した(183分 vs. 211分).壁側胸膜損傷率は従来法群50%,ROA群16.7%であった.側方椎体間固定術群では,ROA群では手術時間が有意に短縮された(140分 vs. 174分).術後の胸水貯留は従来法群で46.2%,ROA群で30.8%に認められた.

    結語:ROAは胸腰椎移行部前方手術において,従来法と比べ術中操作性に優れ,手術時間の短縮や壁側胸膜損傷・術後合併症の低減に寄与する可能性が示唆された.複雑な症例を含むROA群でも良好な成績が得られており,操作性と安全性を両立し得る低侵襲アプローチとして有用と考えられる.

  • 谷 陽一, 中 信裕, 川島 康輝, 朴 正旭, 石原 昌幸, 足立 崇, 谷口 愼一郎, 安藤 宗治, 齋藤 貴徳
    2025 年16 巻7 号 p. 951-959
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:脊椎ロボットCirqを用いた小皮切,後外側進入によるC1-C2固定について述べる.

    対象と方法:対象はCirqを用いてC1-C2固定を施行したR群16例と,Cirq導入前に行った従来法(正中切開,X線透視下)のO群18例で,刺入精度,逸脱方向,刺入角度を術後CTで評価した.

    結果:R群(64本),O群(70本)それぞれに2 mm以上の逸脱が3本ずつ認められた.R群の2本は頭側,1本は内側,O群の3本は全て内側への逸脱であった.刺入精度はR群とO群で有意差はなかった(95.3% vs 95.7%).スクリューの平均刺入角度(横断面においてスクリューと矢状面とのなす角度)はC1,C2いずれもR群の方が有意に大きかった.

    結語:R群の後外側進入法は傍脊柱筋を正中から剥離しないため,ドリルやスクリュー刺入時の当該頚椎圧迫による回旋が小さく,また,剥離された筋に干渉されることがなく,内側方向への十分な刺入角度を確保することができるためVA損傷リスクが低い.本法による横突起基部尾側を刺入点とするC1外側塊スクリュー刺入は,Tan法,notch法,Goel法など過去の報告とは異なる新たな刺入経路である.

  • 渋谷 洋平, 大橋 正幸, 田仕 英希, 久保田 美緒, 佐藤 雅之, 坂口 彰
    2025 年16 巻7 号 p. 960-965
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:脊髄硬膜動静脈瘻(dural AVF)および脊髄硬膜外動静脈瘻(epidural AVF)では,動静脈短絡により静脈圧が亢進し,脊髄症が惹起される.外科的な流出静脈の凝固切離の有効性が報告されているが,発生部位による手術成績の違いは不明である.本研究の目的は,胸椎発生例と腰椎発生例の特徴と手術成績の違いを比較することである.

    対象と方法:2011年5月~2023年6月に当院でdural AVFまたはepidural AVFに対して手術を施行した28例(男性20例,女性8例,平均年齢68歳)を対象とし,胸椎群(13例)と腰椎群(15例)に分類して比較した.

    結果:胸椎群は全例dural AVFで,流出静脈の硬膜貫通部位は背側であったが,腰椎群の93%はepidural AVFで,流出静脈の貫通部位は87%で腹側に存在した(p<0.001).手術時間は胸椎群147分,腰椎群230分と腰椎群で長かった(p<0.05)が,出血量は胸椎群100 ml,腰椎群160 mlと差を認めなかった(p=0.18).腰椎群の2例で初回手術時に流出静脈を処理できずに再手術を要した.

    結語:腰椎群ではepidural AVFの頻度が高く,流出静脈の硬膜貫通部位が多様で,同定に難渋する症例も少なくなかった.腰椎発生例ではより注意深い術前準備が必要である.

  • 門田 領, 相庭 温臣, 望月 眞人
    2025 年16 巻7 号 p. 966-973
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/07/20
    ジャーナル フリー

    目的:頚椎後縦靱帯骨化症(以下OPLL)の前方除圧に対して3次元的な術前シミュレーションを行い従来の冠状断CT再構成と比較することである.

    方法:術前CTデータをもとに作成した3次元再構成を用いて,現実の手術のように椎体表面から脊柱管まで除圧部の冠状断CT再構成を確認できるシミュレーション動画を作成し,術中に参照した(以下本法とする).椎体亜全摘を伴う頚椎OPLL前方手術に際してCT再構成冠状断を用いる従来群18例と本法による3D群17例を比較した.また骨化巣の中心が外側に偏在する外側型サブグループについても調査を行った.手術侵襲,除圧不足,合併症について検討した.

    結果:手術侵襲,合併症は両群で差を認めなかった.除圧不足は従来群7例に対して3D群では0例であった(p<0.01).外側型サブグループの検討では合併症のうち脳脊髄液流出が従来群6例に対して3D群3例であり統計学的有意差を認めた(p<0.05).

    考察:本法は侵襲を増すことなく高精度な除圧が効率よく施行可能でとくに除圧の難しい外側型症例で有効であった.

  • 門田 領, 相庭 温臣, 望月 眞人
    2025 年16 巻7 号 p. 974-981
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/07/20
    ジャーナル フリー

    目的:ケージスタンドアロンでの単椎間頚椎前方固定術(本法)におけるケージ沈下の危険因子を明らかにすることである.

    方法:対象は術後6ヶ月以上経過観察された52症例である(安定群28例,沈下群24例).両群の矯正損失,骨癒合率および沈下の危険因子として骨粗鬆症,ケージサイズ,過剰な終板切除,ケージ背側設置について検討した.また背側設置例の特徴を調査した.

    結果:矯正損失量は沈下群で大きく(p<0.01),骨癒合率には差を認めなかった.単変量解析,ロジスティック回帰ともに骨粗鬆症とケージ背側設置の2つが統計学的有意差を認める危険因子であった.ケージ後方設置には①上下椎体とも正常(発生率11.5%,うち50%が沈下),②上位椎体の前壁と終板のなす角度が70度未満(11.5%,100%),③下側椎体の前縁が鈍化(11.5%,66.7%)の3パターンあった.

    考察:術前にわかるケージ沈下の危険因子として骨粗鬆症とケージ後方設置の原因となる特徴的な椎体形状が判明した.これを利用して本法の適応を検討できると考えられた.

  • 石原 昌幸, 谷口 愼一郎, 朴 正旭, 谷 陽一, 足立 崇, 川島 康輝, 小野 直登, 中 信裕, 安藤 宗治, 齋藤 貴徳
    2025 年16 巻7 号 p. 982-988
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:成人脊柱変形(ASD)術後PJK予防におけるUIVでのsagittal flexible screw(SFS)の有用性を検証した.

    対象及び方法:2023年以降当院においてASDに対してLLIFおよびPPSを用いたcMISを施行し1年以上経過観察可能であった患者を対象とした.UIVにSFSを用いたS群(11名)と用いていないNS群(10名)2群において脊柱骨盤パラメーター,rod contour angle(RCA),pedicle screw angle(PSA),rod screw angle(RSA),PJK/PJF発生率,UIV/UIV-1 angle(UIVA),坐位仰臥位でのUIVAの差(UIVM)を評価した.UIVAはUIV頭側終板とUIV-1の尾側終板とのなす角度,RCAはUIVからL1までのrodの後弯角,PSAはUIVにおける頭側終板とスクリューとのなす角度,RSAはUIVにおけるrodとscrewのなす角度とした.

    結果:二群間で患者背景,ODI,HU,脊柱骨盤パラメーターにおいて有意差はなかった.またRCA,PSA,RSAにおいても有意差はなかった.術後UIVAにおいて有意差はないもののUIVMはS群2.2°,NS群0.5°であり有意差を認めた.PJFr発生率はS群10%,NS群20%であり有意差はなかった.Screw looseningはS群18%,NS群40%であった.

    結語:本結果よりSFSは術後UIVの動きを許容でき,固定部から非固定部にかけてのgradual transitionが実現している可能性が示された.本結果からPJK発生率において有意差は無いもののこの固定椎から非固定椎にかけてのgradual transition効果が長期の隣接椎間の変性予防に有用である可能性が示唆された.

  • 石原 昌幸, 谷口 愼一郎, 朴 正旭, 谷 陽一, 足立 崇, 川島 康輝, 小野 直登, 中 信裕, 安藤 宗治, 齋藤 貴徳
    2025 年16 巻7 号 p. 989-997
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:骨粗鬆症性椎体圧潰(OVC)に対するlateral access corpectomy(LAC)におけるcement augmentation pedicle screw(CAPS)の有用性に関して検証した.

    対象と方法:当院においてOVCに対してLAC,経皮的椎弓根スクリュー(PPS)を用いて低侵襲前後方再建術を施行した患者28名を対象とした.平均年齢は73.5歳,平均経過観察期間は38.4ヶ月であった.CAPSを用いた群(Group C)とCAPSを用いていない群(Group NC)二群において比較検討した.

    結果:患者背景において有意差は無く,NC群で有意に固定椎体数が多かった.脊柱骨盤パラメーターにおいて有意差はないものの,NC群で有意に局所矯正損失が多かった.セメント注入量は胸腰椎移行部で平均3.8 mL,中下位腰椎で5.4 mLであった.骨癒合率においても有意差は無かった.合併症においてNC群でscrew looseningやcage subsidenceが多い傾向にあった.

    結語:LACにCAPSを併用することで合併症が増加すること無く固定範囲の短縮が確認された.

症例報告
  • 清水 曉, 三井 公彦, 菅 信一, 隈部 俊宏
    2025 年16 巻7 号 p. 998-1004
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:術前MRIから上衣腫と診断したものの,術中に血管芽腫と判明したため手順の変更を余儀なくされた脊髄髄内腫瘍の1例を経験した.

    症例:23歳男性.右握力低下で発症.MRIでは,C5~6に脊髄実質に全周を被覆され均一に造影される腫瘍とその上下の前空洞状態がみられた.上衣腫の術前診断で摘出術を施行.後正中溝を開放すると赤色の腫瘍が現れた.血流に富み易出血性で,上衣腫としては非典型的であった.腫瘍表面の焼灼,凝縮,脊髄実質からの剝離を反復し浮上させた.最後に腫瘍の腹側底部で前正中中隔への付着と栄養動脈を切離し一塊に摘出した.病理診断は血管芽腫であった.術後3年現在,右手巧緻障害を後遺するが,腫瘍再発はない.

    結語:軟膜下から髄内に進展する血管芽腫は主に脊髄背側に偏在するが,本症例では脊髄中心に位置していた.術中所見から本腫瘍は軟膜組織である前正中中隔に発生し,ここから上衣腫のように中心性に進展したと考えられた.手術では,易出血性のため一塊摘出とする,栄養動脈の処理を一塊の腫瘍に隠された腹側底部で最終段階に行うなど,術前診断の上衣腫とは異なる手順を要した.

  • 福島 和之, 元吉 貴之, 黒佐 義郎
    2025 年16 巻7 号 p. 1005-1010
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/07/20
    ジャーナル フリー

    症例は62歳女性.肉眼的血尿から泌尿器科を受診.偶発的にT11/12~L3レベルの脊柱管を占拠し,右L2/3椎間孔から後腹膜腔および脊柱起立筋内に突出する巨大な腫瘍を指摘された.L1~3椎弓根およびL2椎体は骨吸収の結果菲薄化していた.Sridhar1)らが提唱するGISSの定義によるGiant invasive spinal schwannoma(GISS)と診断した.3期的手術を行い,第一回は,T10~L4椎弓切除+右L2/3椎間孔開放.第二回は右後腹膜腔から腫瘍摘出.第三回は左側方経路前方椎体間固定を用いて椎間にケージ挿入+前方スクリュー固定を行った.腫瘍は肉眼的に全摘され,術後1年で腫瘍再発はなかった.病理学的検査では神経鞘腫だった.L2~3椎間は術後1年で骨癒合していた.文献的考察を含めて症例を報告するものである.

  • 井関 友美, 谷 陽一, 中 信裕, 川島 康輝, 朴 正旭, 石原 昌幸, 足立 崇, 谷口 愼一郎, 安藤 宗治, 齋藤 貴徳
    2025 年16 巻7 号 p. 1011-1016
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:4年後に新たに別部位で生じた脊髄ヘルニア(以下ISCH)の一例を経験したため報告する.

    症例:56歳男性.尿失禁と左下肢筋力低下を主訴に来院.胸椎MRIにてT2椎体レベルでの脊髄の腹側偏位,脊髄の硬膜外への脱出を疑う所見を認めたためT2椎体レベルでのISCHと診断し手術の方針とした.術中所見では脊髄の腹側硬膜外への直接脱出を認めた.脊髄ヘルニア整復後,ヘルニア孔の直接縫合を行った.その後症状改善し経過良好であったが,術後4年2ヶ月で歩行障害,左下肢の筋力低下を主訴に再受診された.MRIにてT2椎体レベルでの脊髄の腹側偏位を認め,脊髄ヘルニアの再発と考え再手術の方針とした.背側硬膜を切開すると頭尾側に広がるくも膜囊腫を認めた.前回縫合部にヘルニア孔は認めず,さらに尾側で新たな脊髄の嵌頓を認めた.脊髄を整復すると内層硬膜の欠損部から外層硬膜を認めた.内層硬膜のヘルニア孔を直接縫合し被覆材で補強し終了した.

    結語:本症例は初回手術後に発生したくも膜囊腫が脊髄を背側から持続的に圧排することで先天的に脆弱性のある新たな部位の腹側硬膜に欠損が生じ脊髄ヘルニアが発生したと考える.

  • 中村 歩希, 佐瀬 泰玄, 中山 博文, 若月 聖孝, 日高 岳, 村田 英俊
    2025 年16 巻7 号 p. 1017-1021
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:脊椎硬膜下血腫は比較的まれとされ,血液疾患,抗血栓療法,血管奇形,腰椎穿刺などの医原性が発生原因といわれている.今回我々は,慢性硬膜下血腫や開頭術後に合併した脊椎硬膜下血腫を3例経験したので報告する.

    症例1:56歳男性 10日前より頭痛が出現し,徐々に増悪し入院となった.立位時に頭痛が強くなり両側慢性硬膜下血腫を認め,安静・補液などの加療を開始した.入院後より徐々に下肢痛が出現しL4-5に脊椎硬膜下血腫を認めた.保存的加療で改善した.

    症例2:87歳男性 歩行不安定の精査で右慢性硬膜下血腫を指摘され手術加療となった.既往により抗凝固療法中であった.術後3日にT12-Sに脊椎硬膜下血腫を認めた.保存的加療で改善した.

    症例3:74歳女性 未破裂脳動脈瘤に対して開頭クリッピング術を施行.術後3日目に左下肢痛を訴え,精査に仙骨レベルに脊椎硬膜下血腫を認めた.保存的加療で改善した.

    考察・結語:頭蓋内に関連してまれではあるが脊椎硬膜下血腫をきたすことを考えて診療にあたることが大切である.

  • 高見澤 悠平, 竹内 拓海, 橘 安津子, 木瀬 英喜, 中道 清広, 渡邉 泰伸, 片岡 嗣和, 河野 仁
    2025 年16 巻7 号 p. 1022-1029
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:脊椎固定術の固定予定範囲内に感染が疑われる症例では術式選択に難渋する.今回dual Intrasacral Buttress Screws(ISBS)を併用し,感染巣にPedicle Subtraction Osteotomy(PSO)を行うことにより効果的に加療を行えたため報告する.

    症例:症例は64歳男性,他院でヘルニア摘出術後に感染を発症し,抗菌薬で保存的に加療された.術後2年が経過したが,その間に腰痛と左下肢痛が出現し,就労困難なため当院を受診した.画像上はL4/5椎間孔狭窄及び椎体変形による後弯を生じており,血液検査所見などから術後感染の鎮静化は得られていない可能性があった.手術はL5PSOを行い,尾側アンカーの強化にdual ISBSを使用した.術後下肢痛は改善し,アライメントの矯正も得られた.

    結語:術後感染による椎間孔狭窄及び下位腰椎の局所後弯に対し,dual ISBSを併用したL5PSOを行い,感染の再燃はなく良好な経過が得られた.

  • 青田 洋一, 戸口 淳, 鈴木 貴大, 伊藤 満雄, 今野 直輝, 今野 双葉, 瀬名波 辰巳, 矢野 史子, 有馬 信男, 河田 晋一, ...
    2025 年16 巻7 号 p. 1030-1039
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:陰部神経絞扼に対する長軸平行法によるエコーガイド下神経ハイドロダイセクションの有用性を検討した.

    対象と方法:ハイドロダイセクションを7例にのべ22回施行した.陰部神経はE2では坐骨棘先端の僅かに内・尾側を10度腹側方向に1.5 cm縦走するので,平行になるようプローブを調整し長軸像で描出した.神経周囲に薬液を最大4 mlまで注入した.12時間以上効果持続があるものを有効と判定した.

    結果:すべての試行で陰部神経は同定された.4例では,のべ16回有効でありE2での絞扼と診断した.長軸像は内部が低エコー性,神経外膜・周膜は高エコー性の平行な帯状構造物であるが,絞扼例では神経周囲が粗く高信号となるため外膜・周膜との境界が不明瞭であった.仙棘靭帯から神経を浮遊化できたが無効であった3例は絞扼を否定できた.絞扼の1例では神経が浮遊化し陰部痛と頻尿が完治した.重症の絞扼2例では神経周囲での薬液の拡がりが不良で効果も持続せず手術適応とした.

    結語:長軸法は神経剥離の難易度・達成度を可視化できるのでブロック効果の解釈が容易となる.

テクニカルノート
  • 芝本 和則, 土井 一真, 岡﨑 敏之, 谷 諭, 水野 順一
    2025 年16 巻7 号 p. 1040-1046
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:潅流により無血野の如く鮮明な術野を得られるのがfull endoscopic spinal surgery(FESS)の特徴である.これは真の無血ではなく,潅流圧で一時的に止血されている状態である.潅流水の中での止血方法は特異的な注意点がある.

    技術報告:自験FESS177例を検討対象とした.無血野に見えている状態の大部分は潅流圧が出血圧に勝り止血されている状態であった.手術進行に伴い内視鏡の位置が変わることで出血源に対する潅流圧が変化し出血が始まり,手術進行の妨げになることがあった.出血は可能な限り予防が重要と考える.潅流下では血管が虚脱して線維様の結合組織に見えることがあり,見極めが肝要である.止血はバイポーラーでの凝固止血が原則であるが,神経周囲の止血には細心の注意が必要である.硬膜上の血管に対しては潅流を利用して血管を硬膜から浮上させたり,バイポーラーの横腹にて少し持ち上げる等して硬膜との距離を確保してから凝固すると安全である.

    結論:潅流という特性がもたらす出血への影響を十分理解したうえで,適切な止血を行うことが重要である.

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