Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
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Editorial
原著
  • 関 敬大, 大谷 晃司, 関口 美穂, 松本 嘉寛
    2026 年17 巻5 号 p. 761-767
    発行日: 2026/05/20
    公開日: 2026/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:頚椎症性脊髄症に対する選択的椎弓骨切り術(SPL)後の頚椎X線の長期変化は明らかではない.

    対象と方法:研究方法は後ろ向きのコホート研究である.頚椎側面X線像で,頚椎前弯度,前弯角,可動域の3項目を術前と術後1年,3年,5年,8年,10年で測定した.この3項目の術前と術後での変化と,椎弓間の癒合や棘突起骨折の影響の有無を検討した.

    結果:1991~2016年でSPLが施行されたのは111名(男性65名,女性46名,手術時平均年齢63.8歳)であった.術前と術後10年間の全観察期間で3項目に有意差はなかった.椎弓間の癒合は111例中14例(12.6%),310椎間中17椎間(5.5%)に生じ,癒合群と非癒合群で3項目に全期間で有意差はなかった.棘突起骨折は111例中21例(18.9%),428突起中42突起(9.8%)に生じ,骨折群と非骨折群で3項目に全期間で有意差はなかった.

    結語:SPL後の頚椎前弯度,前弯角,可動域は長期間維持された.椎弓間の癒合や棘突起骨折は,これらに何らの影響を及ぼさなかった.

  • 橋本 淳, 川端 茂徳, 橋本 泉智, 小沼 博明, 山田 賢太郎, 江川 聡, 松倉 遊, 平井 高志, 吉井 俊貴
    2026 年17 巻5 号 p. 768-775
    発行日: 2026/05/20
    公開日: 2026/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:脊椎脊髄手術では術後神経障害を防ぐため,術中神経機能モニタリング(IONM)が推奨される.自発筋電図(sEMG)は,神経侵襲をリアルタイムに捉えられるが,臨床的意義は十分に検討されていない.本研究は頚椎・胸椎手術におけるsEMGの特徴を明らかにすることを目的とした.

    対象と方法:2023年度に当科で経頭蓋刺激運動誘発電位(Tc-MEP)およびsEMG併用IONMを実施した頚椎手術119例,胸椎手術47例を対象とし,患者背景やIONMアウトカム,sEMGの特徴を調査した.

    結果:sEMGは頚椎手術53.8%,胸椎手術46.8%で発生した.sEMG発生は頚椎ではOPLL,前方手術で多く,胸椎ではOPLLおよび脊髄腫瘍で多かった.sEMGは除圧,腫瘍切除で多く発生した.術後麻痺例ではsEMG振幅が大きく,かつ同時に発生する筋数が多かった.

    結語:sEMGは神経障害リスクの高い疾患で発生し,多くは可逆性と考えるが,高振幅・多筋同時発生のsEMGは術後麻痺と関連し,特に注意を要する.sEMGの特徴を理解し,うまく活用することで,安全な手術につながると期待する.

  • 大山 素彦, 本田 剛久
    2026 年17 巻5 号 p. 776-781
    発行日: 2026/05/20
    公開日: 2026/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:成人脊柱変形に対するS2 alar iliac screw(S2AIS)を用いた矯正固定術において,S2AISのゆるみが長期的に仙腸関節へ及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.

    対象と方法:2013年から2019年に当院でS2AISを用いて胸椎から仙椎まで後方矯正固定術を施行した成人脊柱変形38例(平均年齢73.5歳,平均観察期間103ヶ月)を対象とした.術後1年時CTにおけるS2AIS周囲2 mm以上のクリアゾーンの有無によって,ゆるみあり(L群),ゆるみなし(N群)とし,矢状面アライメント,仙腸関節変性,経時的なゆるみの変化,仙腸関節痛について比較した.

    結果:S2AISのゆるみは18例(47%)に生じた.術前PIはL群で有意に大きかったが,その他の矢状面パラメータには差がなかった.仙腸関節変性の進行はL群22%,N群10%に認めたが,経時的にゆるみが拡大した症例はなく,仙腸関節痛の発生率にも差はなかった.

    結論:S2AISのゆるみは仙腸関節の動きを温存し,仙腸関節機能を損なうことなく安定した固定が得られる可能性が示唆された.

  • 中前 稔生, 濱崎 貴彦, 植木 慎一, 沖本 信和, 塚本 学, 藤原 佐枝子, 安達 伸生
    2026 年17 巻5 号 p. 782-787
    発行日: 2026/05/20
    公開日: 2026/05/20
    ジャーナル フリー
    電子付録

    はじめに:超高齢社会の到来に伴い骨粗鬆症に対する薬物治療の重要性が高まっているが,骨粗鬆症性椎体骨折に対する全国規模の研究は限定的である.本研究の目的は,後期高齢者の大規模レセプトデータを用い椎体骨折前後の骨粗鬆症薬物治療状況について調査することである.

    対象と方法:対象はDeSCヘルスケア社が提供する後期高齢者データベースから抽出した,75歳以上の骨粗鬆症性椎体骨折患者とした.骨折前後の骨粗鬆症治療薬の処方状況等の記述疫学研究を行った.

    結果:椎体骨折患者265,301名(平均年齢:84.2歳,女性:72.9%)が抽出された.骨粗鬆症治療薬の処方割合は骨折前:44.6%,骨折後:50.3%であった.骨粗鬆症治療薬内訳は,骨折前は投与なしが最多で(55.4%),続いて活性型ビタミンD3(27.8%),ビスホスホネート(21.7%)であった.骨折後は投与なしが最多で(49.7%),続いて活性型ビタミンD3(31.5%),ビスホスホネート(21.8%)であった.

    結語:後期高齢者の椎体骨折患者において,骨折後に骨粗鬆症薬物治療率の上昇が認められるものの依然不十分であった.

  • 草葉 光樹, 鈴木 哲平, 伊藤 雅明, 中島 慶太, 宇野 耕吉
    2026 年17 巻5 号 p. 788-793
    発行日: 2026/05/20
    公開日: 2026/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:思春期特発性側弯症(AIS)は一般に無症候性とされるが,術前に疼痛を訴える症例も少なくない.心理的要因の関与も指摘されているが,Lenke分類ごとの検討は限られている.

    対象と方法:Lenke type 1のAIS患者212例を対象に,術前疼痛の頻度と関連因子を検討した.さらに,術前・術後2年・最終観察時のSRS-30およびODIスコアに欠損がない57例について,メンタルヘルスが疼痛および機能に与える影響を後方視的に解析した.

    結果:術前疼痛は103例(48.6%)に認め,年齢,性別,Cobb角などの背景に有意差はなかった.メンタルヘルススコアは,疼痛スコアとすべての時点で有意な正の相関を,ODIスコアとは術前および最終時に有意な負の相関を示した.また,術前メンタルヘルススコアは最終時の疼痛およびODIスコアの予測因子であった.

    結語:AIS患者の約半数が術前疼痛を有し,心理的要因が術後の疼痛や機能に影響する可能性が示唆された.術前からの心理的評価と介入が重要と考えられる.

  • 有馬 佑, 岡本 義之, 黒田 一成, 髙橋 祐樹, 淺 亮輔, 武本 尚大, 勝木 保夫
    2026 年17 巻5 号 p. 794-800
    発行日: 2026/05/20
    公開日: 2026/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:脊椎椎体骨折の診断において,MRIは骨髄浮腫を鋭敏に描出できるため有用であるが,禁忌や患者の安静困難により撮影が制限される場合がある.Dual-energy CT(以下DECT)は水を強調しカルシウムを抑制する水密度画像を作成できる.これは骨折による骨髄内の出血を水の高密度領域として描出可能であるため,新鮮骨折の診断に応用できると報告されている.本研究ではDECTによる脊椎椎体骨折診断の精度をMRIと比較検討した.

    対象と方法:2023年9月から2024年9月の間に腰痛を主訴に当院を受診し,脊椎椎体骨折が疑われ,DECTおよびMRIが撮影された50例(平均年齢80.2歳)を対象に,DECTの水密度画像を解析してMRI診断との一致率を基に診断精度を検討した.

    結果:DECTの感度は75.0%,特異度は71.4%,陽性的中率は87.0%を示した.水密度画像で骨髄浮腫を認めれば,骨折である可能性が高い.

    結語:救急の場で早急な対応が必要な時やMRIが撮影不能な場合には,脊椎椎体骨折の診断における有力な代替手段となり得る.

  • 三田村 昇吾, 高橋 伸弥, 冨永 亨, 吉田 正弘
    2026 年17 巻5 号 p. 801-807
    発行日: 2026/05/20
    公開日: 2026/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:頚椎椎弓形成術後に後弯変形を呈する症例があり,その予測は困難である.本研究では,術前アライメントに着目し,後弯化のリスク因子を検討した.

    対象と方法:2016年から2024年に頚椎椎弓形成術を施行した頚椎症性脊髄症43例を対象とし,術後1年時点でC2~7 angle<0°を後弯群と定義,術前アライメント要素などとの関連を検討した.ROC解析によりextension Cobb angleのcutoff値を算出し,後弯率を比較,多変量解析も実施した.

    結果:後弯群は術前extension Cobb angle,C2~7 angle,C7 slopeが有意に低値で,JOA改善率も低かった.多変量解析ではextension Cobb angleのみが独立因子であった.cutoff値は17.0°であり,後弯率に有意差を認めた.

    結語:術前extension Cobb angleは術後後弯の有用な予測指標となりうる.

  • 佐藤 光三, 甲川 昌和, 山田 祐一郎, 山城 正浩, 笠間 史夫, 松田 倫政
    2026 年17 巻5 号 p. 808-815
    発行日: 2026/05/20
    公開日: 2026/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:骨折椎体の座位と仰臥位単純X線側面像で骨癒合を判定するための椎体前縁高差の値を求めた.

    対象と方法:骨粗鬆症性椎体骨折患者27例のT11からL2までの142骨折椎体の座位と臥位側面像から椎体の異常可動性(座位と臥位での椎体前縁高差)に応じて45骨折椎体の側面像を選択した.2名の検者は目視で異常可動性の有無を1週間空けて2回判定し,不一致の椎体は再度評価した.検者間で不一致の椎体は他の検者が最終評価した.目視で判定した異常可動性の有無と椎体前縁高差との関係から,異常可動性の有無を判定するカットオフ値として椎体前縁高差をROC曲線で求めた.

    結果:45骨折椎体の各検者の2回の評価は高度に一致し(κ係数:0.906,0.800),検者間の一致度は0.657と高かった.椎体の異常可動性の有無判定用のカットオフ値は,椎体前縁高差として2検者で1.9 mmと1.6 mm,最終結果で1.9 mmであり,感度と特異度は90%と87%であった.

    結語:骨折椎体の座位と仰臥位単純X線側面像で骨癒合を判定するための椎体前縁高差は1.9 mmであった.

  • 笹川 武史, 相川 敬男, 山本 大樹, 上野 琢郎, 中村 勇太, 笹野 寛哲, 丸箸 兆延
    2026 年17 巻5 号 p. 816-821
    発行日: 2026/05/20
    公開日: 2026/05/20
    ジャーナル フリー

    目的:近年普及している脊椎インストゥルメンテーションを用いた骨盤輪骨折手術の治療成績を報告し,その有用性を検討すること.

    方法:対象は23例27手術で,術式は低侵襲ガルベストン法:7例,Crab shaped fixation:11例,Trans-iliac rod fixation(TIRF):3例,INFIX(Dual INFIX含む):6例であった.検討項目は手術時間,術中出血量,骨癒合とした.

    結果:手術時間は平均2時間11分,術中出血量は平均332 mlであった.特殊症例5例を除くと平均2時間1分,平均221 mlであった.術式別平均/最長手術時間は低侵襲ガルベストン法2時間43分/3時間8分,Crab shaped fixation 2時間6分/2時間28分,TIRF 1時間31分/1時間37分,INFIX 1時間20分/1時間40分であり,全症例で各術式の平均手術時間より25分を超えるような症例はなかった.経過観察可能であった21例全例で骨癒合が得られていた.

    結論:本手術は低侵襲で十分な固定力が得られる.また,多発外傷であることが多い本外傷において,手術時間の安定した「ピットフォールにはまらない手術」という点は本手術の大きなメリットである.

  • 村上 大史, 舘田 聡, 安倍 美加, 小出 将志, 川又 裕輝, 福地 英輝, 小林 良平, 田畑 真実子
    2026 年17 巻5 号 p. 822-829
    発行日: 2026/05/20
    公開日: 2026/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:頚部脊髄症の症状は一般的に四肢のしびれ,運動障害が中心である.しかし病変が頚髄に限局し,下肢症状は明らかにみられるものの上肢症状がないために診断に難渋する症例が稀にみられる.当院ではそのような症例に対し頚椎の手術を行い症状の改善がみられることを経験している.本研究の目的は,それらの症例を検討し,臨床像を明らかにすることである.

    対象と方法:当院で頚椎手術を行った344例のうち,上肢症状がみられなかった27例(7.8%)を対象とした.9例(2.6%)は頚椎手術のみを行い,18例(5.2%)は頚椎及び胸腰椎の同時手術を行った.

    結果:平均年齢は74±8.8歳(54~90歳)で,男性20例,女性7例だった.全例で術前に上肢症状の訴えはなかったが,10例は術後に上肢の動きの改善がみられた.全例術前に下肢症状を訴え,1例を除き術後下肢症状の改善がみられた.頚髄の圧迫高位はC6/7単独が1例(3.7%),C6/7を含む多椎間圧迫が17例(63%),C5/6以上に多椎間圧迫がある例が9例(33.3%)だった.

    結語:上肢症状の訴えがなく下肢症状のみを訴える頚部脊髄症症例がいることが示唆された.

症例報告
  • 糸井 陽, 野尻 英俊, 志村 有永, 菅原 佑太, 古城 智也, 東浦 佑哉, 最上 敦彦
    2026 年17 巻5 号 p. 830-835
    発行日: 2026/05/20
    公開日: 2026/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:脊椎術後の硬膜外血腫は,発症頻度は稀だが重度の神経障害を生じる可能性がある重大な合併症である.神経症状の改善には血腫除去までの時間が影響するため,発生後の迅速な対応が求められる.しかし確定診断のためのMRIや治療のための手術室の利用や全身麻酔はそれ自体が遅延要因となる.これらを無くすためMRIを省略し血腫除去を行う方法の報告はない.本研究では我々が行った,MRIを行わず,臨床診断の後に病棟内で局所麻酔下に創開放・血腫除去を行い,その後に全身麻酔下で洗浄・止血・創閉鎖を行う2 step salvage operation(2段階救済手術:本法)を提示し,その妥当性と適応を報告する.

    症例:78歳男性,62歳男性,84歳女性の3例.いずれも靱帯骨化症の後方除圧で,術後経過中に完全運動麻痺を発症した.MRIと手術室の準備に時間を要したため本法を行った.全例,病棟での局所麻酔下の血腫除去で即時的に麻痺が改善した.1例で同日再度麻痺を認めたが,再び病棟で血腫除去し数日後に全身麻酔下に創閉鎖を行った.閉創後に感染や神経症状の再悪化は認めなかった.

    結語:本法の結果は良好だった.本法は慎重な臨床診断が必須だが,術後硬膜外血腫に対する治療法の一つの選択肢となり得る.

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