診断病理
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総説
  • ─原因抗原とIgG4関連自己免疫疾患としての考察─
    本田 一穂, 康 徳東, 川西 邦夫
    原稿種別: 総 説
    2025 年 42 巻 2 号 p. 93-102
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル オープンアクセス

    要旨:膜性腎症は糸球体係蹄壁の上皮下に沈着する免疫複合物が,補体活性化などを介して濾過バリアを傷害し,高度蛋白尿をきたす免疫疾患である。最近,病理組織切片にレーザーマイクロダイセクション・液体クロマトグラフィー・質量分析法(LMD-LCMS/MS法)の技術が応用され,この疾患の原因抗原が次々と解明されている。その結果,膜性腎症のおよそ70%の原因抗原であるphospholipase A2 receptor(PLA2R)をはじめ,多くの原因抗原が糸球体足細胞(ポドサイト)に発現している蛋白であることが明らかとなった。また,血中に対応する自己抗体が検出されることから,膜性腎症はポドサイトに対する自己免疫疾患と理解されている。一方,自己抗体のサブクラスが主としてIgG4であることから,本疾患を IgG4関連自己免疫疾患の一つととらえることもできる。従来,特発性と続発性に分類されていた膜性腎症は,原因抗原を特定することが診断の要となり,原因抗原とIgG4免疫応答に基づいた病態の解明と治療の選択が始まっている。

  • ─ 地域病院での取り組みから見えるもの
    深山 正久
    原稿種別: 総 説
    2025 年 42 巻 2 号 p. 103-115
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル オープンアクセス

    要旨:デジタル遠隔病理診断は病理診断分野の実践的課題である。旭中央病院遠隔病理診断の取り組み-地域がん診療病院との連携,都市部からの支援,ClassII機器を用いた連携-を紹介し,デジタル遠隔病理診断が「病理医不足」,「すべての病理診断を保健医療機関で」という二つの課題を解決する現実的手段であることを示した。診療報酬上の問題点を以下,連携病理,診断補助装置,連携迅速診断,病理診療所,検査所80%,遠隔常勤の各ルールとして整理した。多くのデジタル遠隔病理診断の試みが進展し,交流が進むことを期待する。

  • ─孔道癌を中心に─
    嶋 香織, 笹平 智則
    原稿種別: 総 説
    2025 年 42 巻 2 号 p. 116-124
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル オープンアクセス

    要旨:口腔に発生する悪性腫瘍のうち90%以上を占める扁平上皮癌は,増殖様式や分化度にバリエーションはみられるものの,多くは高分化型を示し,角化を伴う大小の胞巣を形成しながら内向的に浸潤増殖する。扁平上皮癌の亜型では,このような典型像と異なる特徴的な組織像が認められる。これまで稀な亜型とされていた孔道癌Carcinoma cuniculatumは,近年になり報告が増加している。組織学的には,特徴的な形態の内向性増殖を示すが,予後は比較的良好と考えられている。本稿では,孔道癌の臨床病理学的な特徴や診断時の留意点について述べるとともに,口腔扁平上皮癌のその他の各亜型についても簡潔に解説する。

症例報告
  • 加藤 健, 宮川(林野) 文, 森永 友紀子, 内中 将貴, 金子 明央, 小西 英一
    原稿種別: 症例報告
    2025 年 42 巻 2 号 p. 125-131
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル オープンアクセス

    要旨:4年来の原因不明の結腸多発性潰瘍のために結腸全摘出に至った70代女性の切除大腸に,上皮成長因子含有フィブリン様細胞外マトリックス蛋白1由来のアミロイド蛋白(AEFEMP1)の沈着を同定したので文献的考察を加え報告する。手術検体では主に結腸粘膜下層から漿膜下層の静脈壁にAEFEMP1の沈着を認めた。高齢女性の難治性多発大腸潰瘍において,AEFEMP1沈着がその病態に関わっている可能性がある。

  • 奥野 のり子, 折田 梨紗子, 濱島 丈, 若林 健人, 松野 吉宏, 笹原 正清
    原稿種別: 症例報告
    2025 年 42 巻 2 号 p. 132-138
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル オープンアクセス

    要旨:化生性胸腺腫は稀な胸腺腫瘍である。今回,92歳女性の前縦隔腫瘍切除検体が提出され,組織学的に多角形の上皮様細胞と紡錘形細胞の二相性が認められた。上皮細胞には核腫大,核形不整,クロマチン増量などの細胞異型が目立ち,特に上皮細胞と紡錘形細胞の移行部は一見浸潤様にもみえた。また通常異型に乏しい紡錘形細胞にも,部分的であるが異型を認めた。免疫組織学的検討を加え,総合的に化生性胸腺腫と診断した。化生性胸腺腫において細胞異型が出現することは報告されているが,日常業務の中では遭遇することが稀で,その組織像の振れ幅について知ることは重要であると考えられた。

  • 内藤 裕, 柳田 恵理子, 能登 佑紀, 安藤 拓朗, 河野 奨, 加留部 謙之輔
    原稿種別: 症例報告
    2025 年 42 巻 2 号 p. 139-145
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル オープンアクセス

    要旨:Myoepithelioma-like tumor of the vulvar region(MELTVR)は,組織像が軟部筋上皮腫に類似するが,免疫組織化学的態度は合致しない,女性外陰部に発生する軟部腫瘍である。60歳代女性に生じたMELTVRの1例を報告する。組織像は軟部筋上皮腫に類似したが,免疫組織化学的所見は合致せず,EWSR1遺伝子再構成は陰性であった。Estrogen receptor陽性,SMARCB1発現消失とあわせMELTVRと診断した。本症例は既報症例よりも真皮への局所浸潤が目立った。SMARCB1発現異常を示す腫瘍として文献的考察を加え,報告する。

  • 田崎 貴嗣, 馬場 直子, 野口 紘嗣, 村上 未樹, 北薗 育美, 東 美智代, 谷本 昭英
    原稿種別: 症例報告
    2025 年 42 巻 2 号 p. 146-149
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル オープンアクセス

    要旨:症例は30代男性。同性のmultiple sex partnerと性的接触をもった1ケ月後に,38度以上の発熱と両側乳頭や前胸部,前腕,手掌,陰茎に紅斑あるいは紅色丘疹および前胸部の偽膿疱を認めた。偽膿疱部からの皮膚生検では,表皮全層性の壊死とballoon degeneration,好酸性すりガラス状核,Guarnieri小体がみられた。PCR検査によりMonkeypox virusのゲノムが検出され,確定診断された。Mpoxの皮疹に特異的な組織学的所見はないが,皮疹の分布や肉眼所見と併せてMpoxを鑑別に含めることが重要である。

  • 都築 諒, 梅北 佳子, 福島 剛, 木脇 拓道, 千代反田 顕, 山田 和之介, ...
    原稿種別: 症例報告
    2025 年 42 巻 2 号 p. 150-155
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル オープンアクセス

    要旨:Squamoid morule を伴う Mixed neuroendocrine-non-neuroendocrine neoplasm(MiNEN)の1例を経験した。症例は40歳代男性で,排便時の鮮血出血を契機に近医を受診。生検にて腺癌と診断され,右結腸半切除術が行われた。組織学的には腺癌成分の他に,神経内分泌腫瘍(Neuroendocrine;NET)成分がみられ,腫瘍成分はほぼ同じ面積であった。またそれぞれの成分にSquamoid morule を認めた。免疫組織化学では腺癌成分でCDX2陽性,Synaptophysin陰性,Ki-67陽性率は45%,NET成分でSynaptophysin陽性,Ki-67陽性率は61%であり,NET G3相当であった。Squamoid morule を示す箇所ではCK5/6陽性,b -cateninが核に陽性,Ki-67陽性率は1%未満であった。腺癌成分とNET成分がともに病巣の30%以上を占めており,Squamoid morule を伴うMiNENと診断した。

  • 本山 高啓, 黒濵 大和, 松岡 優毅, 永石 彰子, 戸田 啓介, 中島 正洋
    原稿種別: 症例報告
    2025 年 42 巻 2 号 p. 156-163
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル オープンアクセス

    要旨:80歳代男性。四肢筋の痙攣があり,頭部MRIで左帯状回の腫瘍性病変を認めた。剖検時の病理組織学的検討から,グリア系分化と間葉系分化の二相性を持つ腫瘍であることが確認され,膠肉腫と診断した。また,免疫組織化学により,TP53変異,ATRX変異,CDKN2A欠失,PTEN欠失の遺伝子異常が示唆された。これらの遺伝子異常は腫瘍の両成分に共通し,2種の成分がmonoclonalである可能性が示唆された。近年,膠肉腫に特有の分子異常が解明されつつあり,分子遺伝学的検索は腫瘍分類や予後評価に不可欠である。

  • 藤原 万衣孔, 大石 直輝, 望月 恵音, 山本 健夫, 横田 ゆか, 田原 一平, 中楯 礼人, 髙橋 宣弘, 桐戸 敬太, 近藤 哲夫
    原稿種別: 症例報告
    2025 年 42 巻 2 号 p. 164-169
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル オープンアクセス

    要旨:ヘルニア修復術後の陰嚢に発生したフィブリン関連大細胞型B細胞リンパ腫を経験した。症例は80歳代男性。右鼠経ヘルニア術後から右陰嚢が徐々に腫大し,術後約25年で右陰嚢内腫瘤が摘出された。腫瘤の大部分はフィブリンで,辺縁に核形不整を示す大型異常Bリンパ球が少数かつ疎らに存在した。腫瘍細胞はCD20,CD79a,PAX5を発現し,Epstein-Barrウイルス陽性であることから診断に至った。本病型は希少なリンパ腫であるが,治療や予後の観点から他の大細胞型B細胞リンパ腫と区別して診断する必要がある。

  • 花松 有紀, 小林 一博, 松本 宗和, 夏子 酒々井, 松尾 真帆, 岩田 浩明, 竹内 保, 宮崎 龍彦
    原稿種別: 症例報告
    2025 年 42 巻 2 号 p. 170-176
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル オープンアクセス

    要旨:症例は60歳代女性の下腹部皮下腫瘍。病変は線維肉腫様DFSPが主体で,部分的に定型的なDFSPの像も認めた。病変内ではCD34陰性,αSMA陽性,desmin陰性を示す紡錘形細胞が小結節状に増殖しており,筋様分化を示す線維肉腫様DFSPと診断した。FISH解析にてDFSP及び筋様の結節で融合遺伝子COL1A1::PDGFBを確認した。筋様分化を示す線維肉腫様DFSPは稀な組織型であり,また形態や免疫染色態度が通常のDFSPと異なり診断が困難な場合がある。全体像の観察や融合遺伝子検索が重要である。

  • 喜多村 恭平, 渋谷 信介, 羽賀 博典
    原稿種別: 症例報告
    2025 年 42 巻 2 号 p. 177-182
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル オープンアクセス

    要旨:症例は70代男性で,他院で胃癌内視鏡的切除術(pT1b,断端陰性)後に当院で追加の幽門側胃切除術を受けた。その約1年後に肝腫瘍を認め,切除され腺癌であった。肝内胆管癌か胃癌転移再発かの鑑別に既往の内視鏡的切除検体を取り寄せて検討すると,両者とも淡明な胞体を有する癌細胞でSALL4 陽性であり,胃原発胎児消化管類似癌の肝転移再発と診断した。胎児消化管類似癌は予後の悪い腫瘍であり,その特徴的な組織像を認めた場合には,SALL4などの免疫組織化学を行い検討し臨床側に伝えるべきである。

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