Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
10 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 工藤 由紀, 伊藤 郁乃, 新藤 直子, 永井 英明, 辻 哲也
    2015 年 10 巻 4 号 p. 217-222
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/07
    ジャーナル フリー HTML
    【目的】最期までトイレで排泄を希望する患者は多くみられるが,トイレ歩行が行えた最終時期や影響因子についての報告は少ない.【方法】緩和ケア病棟で2010年1月~2011年12月に死亡退院した154名(中央値75.0±11.6歳)のがん患者について,死亡1カ月前・2週前・1週前のトイレ歩行の可否を後方視的に調査した.加えて6項目(①疼痛②呼吸苦③傾眠④せん妄⑤オピオイド投与⑥酸素吸入)の有無を調査し,トイレ歩行/非トイレ歩行の2群間で比較した.【結果】トイレ歩行症例は死亡1カ月前79名(51.3%),2週前54名(35.1%),1週前33名(21.4%)であった.傾眠・せん妄は非歩行群に,呼吸苦は歩行群に有意に高い頻度で認められた.【考察】がん終末期において①トイレ歩行の実態を示した②リハ介入の余地があると思われたが,意識障害の発現と労作時呼吸苦への対策が必要である.
  • 清水 恵, 佐藤 一樹, 加藤 雅志, 藤澤 大介, 森田 達也, 宮下 光令
    2015 年 10 巻 4 号 p. 223-237
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/05
    ジャーナル フリー HTML
    政府統計である受療行動調査における Quality-of-life(QOL)および Quality-of-Care(QOC)に関する項目を用いて,がん患者の療養生活の質の全国的,経時的な評価を行う検討がされている.本研究では,これらの項目が,がん患者の療養生活の質の評価において妥当性があることを検討するため,がん患者 630名への Web上モニター調査を実施した.調査の結果,すべての項目について,90%以上の回答者が,療養生活において重要であると回答した.満足度をたずねる QOCに関する項目の“ふつう”という回答選択肢は,ほぼ“満足”であること,“その他”との回答選択肢は,その項目の内容が,回答者に“該当しない”場合であることが明らかとなった.これらの知見から受療行動調査の QOLに関する項目,QOCに関する項目は妥当であり,公表する場合の結果の提示方法の示唆が得られた.
  • 新城 拓也, 佐藤 友亮, 石川 朗宏, 五島 正裕, 関本 雅子, 森本 有里
    2015 年 10 巻 4 号 p. 238-244
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/05
    ジャーナル フリー HTML
    在宅療養をしていた終末期がん患者の食事と調理の現状について,介護者を対象に調査を行った。神戸の5つの診療所で治療され,自宅で死亡した200名を対象として,患者遺族(主介護者)に質問紙を2014年2月に発送した。回収率は66%,遺族の平均年齢は62歳だった。全体の57%の遺族が,患者の食事について負担感を感じていた.負担感の決定因子は,1)医療者から食べ方の指導をうけた経験(P=0.012),2)家族として療養中の食事を調理することに難しさと(P=0.001),3)食欲が低下した患者に食事を食べさせることに難しさを感じていたことだった(P=0.004).終末期がん患者の食事,調理についての知見はまだ不十分でさらに今後の研究が必要である.
  • 板倉 崇泰, 松田 良信, 岡山 幸子, 遠野 かおり, 日吉 理恵, 吉田 こずえ, 木村 祥子, 野間 秀樹
    2015 年 10 巻 4 号 p. 245-250
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/26
    ジャーナル フリー HTML
    【緒言】本邦で使用可能なメサドンは内服薬のみで,内服困難となった際の対応はよく知られていない.【目的】メサドン内服困難となった際の鎮痛対応,他のオピオイド鎮痛薬への変換比率を明らかにする.【方法】緩和ケア病棟においてメサドン内服不可能となったのち亡くなった28例の鎮痛対応について後方視的に検討した.【結果】21例(1日以上生存,痛みあり)は他のオピオイド鎮痛薬に切り替え,うち10例はメサドンが血中からほぼ消失したと考えられる7日以上生存した.疼痛評価困難であった3例を除く7例(全例,モルヒネの持続注入)において,メサドン最終内服量から切り替え7日後の経口モルヒネ換算投与量への変換比率は平均6.1であった.【結論】メサドン内服困難となっても,長い血中消失半減期を考慮し,痛みがなければすぐに他の注射オピオイド鎮痛薬に切り替えず経過をみて,必要に応じ,変換比率6.1を目安に切り替えていくとよい.
  • 大道 雅英, 成田 昌広, 青沼 架佐賜, 宗像 康博, 山本 直樹, 佐藤 裕信, 村上 真基, 髙橋 陽, 森田 達也, 杉本 典夫
    2015 年 10 巻 4 号 p. 251-258
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/26
    ジャーナル フリー HTML
    【目的】進行がん患者の血液検査値のみを用いる生物学的予後スコアを開発し,妥当性を確かめた.【方法】緩和ケア病棟の患者(開発群)を対象に血液検査値,年齢,性別,がん種を独立変数,死亡を従属変数とするパラメトリック生存時間解析を行い生物学的予後スコアBiological Prognostic Score(BPS)を開発した.次に,異施設の積極的がん治療を終了または差し控えた患者(検証群)で前向きにBPS とPalliative Prognostic Index(PPI)の精度を検証した.【結果】開発群122 例よりコリンエステラーゼ,血中尿素窒素,総鉄結合能から成るBPS を得た.検証群195例で1-9 週生存予測のROC 曲線下面積はBPS=0.76-0.86,PPI=0.69-0.73 であった.【考察】BPS の妥当性が示唆された.今後,多施設での検証とTIBC に代わる一般的な項目の探索が必要である.
短報
  • 長谷川 貴昭, 田口 実央, 葛谷 命, 杉山 保幸
    2015 年 10 巻 4 号 p. 315-320
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/26
    ジャーナル フリー HTML
    Liverpool Care Pathway 日本語版(LCP-J)が一般病棟の看取りのケアを改善するか検討した.2014年7月~2015年6月にLCP-J の導入と看護師に緩和ケア教育を行った.主要評価項目は緩和ケアの実践と困難感の変化,副次的評価項目は死亡48時間以内の診療内容とした.介入前後ともに回答を得た19人の看護師の回答を解析した.看取りの実践は有意に改善し(3.00点から3.52点; p=0.042),症状緩和の困難感も有意に改善した(3.56から3.10点; p=0.015).LCP-J は9人の死亡がん患者(40%)に使用し,使用しなかった患者との間で治療や検査の実施に差はなかった.一般病棟でのLCP-J の導入は看取りのケアの実践の改善につながる可能性が示唆された.医療者への負担も考慮し,より有用な看取りのチェックリストと教育プログラムの開発が必要である.
症例報告
  • 萩原 信悟, 久永 貴之, 東端 孝博, 矢吹 律子, 下川 美穂, 志真 泰夫
    2015 年 10 巻 4 号 p. 552-556
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/15
    ジャーナル フリー HTML
    【はじめに】ゾレドロン酸抵抗性の高カルシウム血症による難治性悪心が,デノスマブ投与により緩和され生活の質が改善した1例を経験した.【事例】54歳女性,腎盂癌,多発転移.血清カルシウム値上昇と悪心を認めた.複数の制吐薬の使用では症状改善困難でゾレドロン酸を投与したところカルシウム値低下と共に悪心もSTAS-J 3から1に改善した.3回目のゾレドロン酸投与後は補正カルシウム値11.8 mg/dlと抵抗性を示し,悪心の改善は認めずデノスマブを投与した.投与15日後にカルシウム値9.4 mg/dlに低下,悪心もSTAS-J 4から0に改善した.短期間ではあったが家族と穏やかに過ごす事が可能となり死亡までの間症状の再燃やデノスマブの有害事象はなかった.【考察】デノスマブはゾレドロン酸抵抗性の高カルシウム血症における難治性の悪心の改善に有用である可能性が示唆された.
  • 江川 健一郎, 蔵本 浩一, 瀬良 信勝, 千葉 恵子, 関根 龍一
    2015 年 10 巻 4 号 p. 557-561
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/26
    ジャーナル フリー HTML
    【緒言】悪性上大静脈症候群に伴う顔面浮腫による眼裂狭小に対し五苓散倍量投与が有効であった症例を経験した.【症例】60 歳,男性.舌癌に対し術前化学療法,小線源療法,根治的腫瘍切除術後に頸部リンパ節転移を認め複数の化学療法を行うも無効,サイバーナイフ治療後に頸部リンパ節が膿瘍化し腫大,上大静脈症候群を来し顔面浮腫を認めた.顔面浮腫の悪化に伴い眼裂狭小し視野障害を認めたため入院の上経静脈的にフロセミド投与したが無効,緩和ケアチーム依頼後に五苓散倍量投与を開始した.五苓散開始後速やかに利尿が得られ,顔面浮腫および眼裂狭小・視野障害は軽快した.【結論】化学療法や放射線療法が無効であった上大静脈症候群に対し,五苓散の倍量投与は有用な選択肢の一つとなりうる.
feedback
Top