Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
10 巻, 3 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
原著
  • 岸野 恵, 木澤 義之, 佐藤 悠子, 宮下 光令, 森田 達也, 細川 豊史
    2015 年 10 巻 3 号 p. 155-160
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/21
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    本研究の目的は,がん患者の突出痛の頻度とその特徴を明らかにすることである.大学病院に入院中の成人がん患者全員を連続的に対象とし聞き取り調査を行った.1)持続痛がある,2)持続痛がコントロールされている,3)短時間の悪化がある,の全てに該当する痛みを突出痛と定義し,1日の出現回数,最も強くなるまでの時間,持続時間を調査した.全適格患者 169名中調査が可能であった 118名を解析対象とした.突出痛がみられた患者は,対象者のうち 11%(95%信頼区間:7〜18%),がんに関連した痛みのある患者の23%(14〜35%),がん疼痛のある患者の29%(17〜45%)であった.突出痛の 1日の出現回数が 3回以下,痛みが最も強くなるまでの時間が 5分以内,持続時間は 15分以内と回答した患者は54%(29〜77%),54%(29〜77%),54%(29〜77%)であった.
  • 永井 純子, 植沢 芳広, 加賀谷 肇
    2015 年 10 巻 3 号 p. 161-168
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/12
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     オキシコドンの薬効および体内動態は性差等の患者背景に依存することから,副作用と患者背景因子の関係の把握は臨床上重要な知見を与える可能性がある.そこで,独立行政法人医薬品医療機器総合機構・医薬品副作用データベース (JADER)を用いた解析を試みた.オキシコドン投与患者において,主要な副作用症例の年齢・性別による発現傾向の変化を観察した.オキシコドンに関連する重要な有害事象は,モルヒネおよびフェンタニルと共通して臨床的に認知されている譫妄,悪心・嘔吐等の症状であった.女性において悪心,下痢などの消化器症状が,男性においては間質性肺疾患が報告の多い有害事象であった.一方,非高齢者と比較して高齢者における有害事象は傾眠,譫妄等の報告が多かった.以上の結果は,オキシコドン投与時の副作用マネジメントの個別化において有用な知見となるものと期待される.
  • 終末期患者に対する態度の講義直後と3カ月後の比較
    清水 佐智子
    2015 年 10 巻 3 号 p. 169-176
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/12
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    看護学生が講義で修得した終末期患者に対する態度が講義後も維持するかどうかはわかっていない.今回,緩和ケア科目を受講した看護学生 64名を対象に,FATCOD(Frommelt Attitude Toward Care of Dying Scale)-FormB-Jによる調査を講義前・後,講義終了 3カ月後に実施し,結果を比較した.46名の回答を下位尺度ごとに分析した結果,講義前後では「I.死にゆく患者へのケアの前向きさ」「II.患者・家族を中心とするケアの認識」で有意に講義後が高く,態度が育成されていると示唆された.3カ月後には「I」「II」とも元に戻り,態度は長期には維持されていなかった.死別や看取り体験の有無による態度の変化に差はなかった.態度を長期に維持するためには,自ら考えて行動する体験を増やすことや,学生の感情や意見をシェアする機会の確保などが必要と示唆された.
  • 佐藤 悠子, 宮下 光令, 藤森 研司, 中谷 純, 藤本 容子, 栗原 誠, 佐藤 一樹, 石岡 千加史
    2015 年 10 巻 3 号 p. 177-185
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/12
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    【目的】「DPC導入の影響評価に係る調査(以下,DPCデータ)」を用いた終末期医療の調査方法を検討する.【対象と方法】2010年 8月~2012年 12月に東北大学病院入院中に死亡した 5大がん患者を対象に,終末期の診療行為の頻度を DPCデータから集計した.【結果】対象 311例のうち,緩和ケア病棟死亡例は 147例であった.各頻度は,死亡前 30日以内の化学療法(緩和0%,一般27%),14日以内の ICU入室(0%,2%),延命処置(0%,3%),リハビリ(26%,10%)緊急入院(2%,27%),抗生剤投与(32%,28%)であった.緩和ケア病棟群では有意に化学療法,緊急入院が少なく,,リハビリが多かった.【考察】DPCデータから簡便に集計できたが,緩和ケア病棟群の結果は DPCデータ作成が任意のため一部項目で過小評価された.【結語】DPCデータで終末期がん医療を調査できた.診療報酬算定規則や DPCデータ作成要件によるバイアスが存在する.
  • 塩﨑 麻里子, 酒見 惇子, 佐藤 貴之, 江口 英利, 種村 匡弘, 北川 透, 伊藤 壽記, 平井 啓
    2015 年 10 巻 3 号 p. 186-193
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/12
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    【目的】本研究の目的は,問題解決プロセスを応用し,膵臓がん患者の抱える心理社会的問題を体系的に整理し,問題に対する具体的な対処法リストを作成することであった.【方法】17名の膵臓がん患者を対象に, 1時間程度の半構造化面接を 2回行い,問題をとらえ直し,解決可能な目標設定と対処法を分類したリストを,患者と共に作成した.【結果】問題は,不確実な将来と向き合う(「今の生活・状態を維持する(7名)」,「周囲におよぶ変化に備える(5名)」,「人生に対するコントロール感を保つ(5名)」,「不安な気持ちとつきあう(3名)」)と,病気による喪失と向き合う(「病後の生活に適応する(2名)」)の 2つに大別され,それぞれに対する具体的な対処法リストが作成された.【結論】問題を明確化することで,対処可能な目標設定が可能となることを,リストを用いて情報発信し,患者が機能的な対処を行えるよう支援していくことが望まれる.
  • 木村 祥子, 松田 良信, 吉田 こずえ, 日吉 理恵, 遠野 かおり, 岡山 幸子, 野間 秀樹, 板倉 崇泰
    2015 年 10 巻 3 号 p. 194-200
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/21
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    メサドンはがん疼痛治療薬として本邦でも使用可能となったオピオイドであるが,個人差の大きい薬物動態や重篤な副作用のため使用にあたり細やかな配慮が必要であり,広く使用されるには至っていない.今回,他のオピオイドからメサドンに変更導入を行ったがん疼痛のある44症例を通してその鎮痛効果と副作用の検討を行い,がん疼痛治療におけるオピオイド鎮痛剤の中のメサドンの臨床的意義を考察した.44症例のうち導入に成功したのは37症例(84.1%)であり,成功症例においてメサドン投与前後の疼痛強度(Numerical Rating Scale;NRS)は平均7.5から2.8に低下していた.副作用として強い眠気が6例,嘔気が3例にみられたが,QT延長や呼吸抑制の重篤なものは認めなかった.高用量のオピオイドを必要とする難治性のがん疼痛患者では,メサドンも疼痛治療の選択肢となり得ると考えられた.
  • 横田 宜子, 上村 智彦, 藤丸 千尋, 小田 正枝
    2015 年 10 巻 3 号 p. 201-208
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/10
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    【目的】同種造血幹細胞移植を受けた男性患者の退院後の生活に配偶者が対処するプロセスを検討した.【方法】6名の配偶者に夫の退院後の困難と対処について半構造化面接法を用いてデータ収集を行い,インタビューデータを修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにて質的記述的に分析した.“取り組むべき責務”“夫の日常生活管理”“経験して得る自信”“家庭の中での習慣化”のサブカテゴリーより‘感染対策の習慣化’のカテゴリーを,“実感する夫とのズレ”“価値観の変化”“それぞれの妥協点”“移植がもたらした恩恵”“消えない不安”のサブカテゴリーより‘気がかりの変容’のカテゴリーを導いた.【結論】配偶者は自己効力感を育み感染対策を習慣化,変えられない生活様式と移植後の夫との生活に折り合いをつけていた.配偶者の気がかりは時間とともに変容していたが,再発や移植片対宿主病などの病状や経済的な困窮への不安は続いていた.
  • 山脇 道晴, 森田 達也, 清原 恵美, 清水 恵, 恒藤 暁, 志真 泰夫, 宮下 光令
    2015 年 10 巻 3 号 p. 209-216
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/15
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    【目的】ホスピス・緩和ケア病棟から退院した患者の遺族から,ご遺体へのケアにおける家族の体験と評価を明らかにする.【方法】103施設の遺族958人に質問紙調査を行い,回答した597人の中の自由記述の内容分析を行った.【結果】193人の自由記述から,162人を分析対象とした.162人から301のデータを抽出し,ご遺体へのケアでの満足や不満,行うことへの気がかりや不安などの体験を得た.最終的に3つのカテゴリに分類し,【良い体験としての評価】【つらい体験としての評価】【疑問や戸惑いの体験としての評価】とした.【結論】家族への配慮として,ご遺体は声をかけ丁寧にやさしく扱い,化粧は穏やかで安らかな表情にする.衣服や身に着ける物は早めに準備するように伝える必要がある.家族がケアを行うことは,思い出や死別を受け入れる体験になるが,内容を説明してできることを選択してもらうことや,行えそうかを見極めて勧める必要がある.
短報
  • 工藤 千枝子, 二井谷 友共, 和田 仁, 佐藤 悠子, 市川 園子, 井上 正広, 杉山 克郎
    2015 年 10 巻 3 号 p. 305-309
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/21
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     【目的】悪性腫瘍による脊髄圧迫の症状出現から治療までの遅延と転帰を検討する.【方法】地域中核病院にて診断された25症例を診療録を元に後方視的に解析した.【結果】脊髄圧迫によりがんの診断となった患者(初診患者)は12例,がんの診断で通院中の患者は13例であった(再来患者).92%の患者は疼痛が初発症状であり,疼痛から神経障害出現までの期間は約2カ月(中央値56日)であった.症状発現から治療までの期間は,初診患者が中央値79日,再来患者が同41.5日であった.症状発現から病院受診までは各53日,9日.受診から診断までは各5日,8日,診断から治療までは各11日,14日であった.麻痺出現前に治療を行った9例中8例は麻痺が出現しなかったが,麻痺出現後に治療を行い麻痺の改善を認めたものは10例中4例であった.【結論】治療に至る種々の過程で遅延が生じ転帰を悪化させていると考えられた.
  • 田中 祐子, 木澤 義之, 坂下 明大
    2015 年 10 巻 3 号 p. 310-314
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/12
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    【目的】アドバンス・ケア・プランニング(以下ACPと略)と臨床倫理に関する研修会の医療従事者における学習効果を検証すること.【方法】PEACE緩和ケア研修会の修了者に対して,ACPと臨床倫理に関する550分の研修会を開催した.プログラムは国立長寿医療センターで開発されたEducation For Implementing End-of-Life Discussion(以下E-FIELD)を用いた.研修前後で,ACPと臨床倫理に関する知識テストと人生の最終段階における医療・ケアに関する相談を行うにあたっての困難感(以下EOL相談に関する困難感)を評価した.【結果】34名を解析対象とした.知識テストの総得点は研修後有意に増加し(前18.1点,後23.9点,p<0.001),EOL相談に関する困難感は,13項目中7項目で有意に減少した.【結論】E-FIELDを用いたACPと臨床倫理に関する研修会は,医療従事者のACPに関する知識を増加しEOL相談に関する困難感を改善する可能性がある.
症例報告
  • 八代 英子, 國府田 正雄, 村上 敏史, 田口 奈津子
    2015 年 10 巻 3 号 p. 535-538
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/12
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    【緒言】頸椎転移による強い痛みに対し,ハローベスト装着により良好な痛みの緩和が得られ,自宅退院が可能となった症例を経験したので報告する.【症例】76歳,男性.食道癌術後,リンパ節再発に対し化学療法施行中,頸椎転移を認めた.徐々に悪化する右頸部から背部への痛みに対し,薬物療法,放射線療法施行したが改善なく,さらにオピオイドによる強い副作用のため,著明にADLが低下した.症状緩和目的にハローベストを装着した.痛みは軽減し,オピオイドは不要となり,転院後に自宅退院,約2カ月間自宅療養をされた.【考察】ハローベスト装着は,標準治療にても疼痛緩和に難渋する症例に,今後も検討したい治療法である.本邦では,自宅療養中の装具装着は一般的ではなく,患者・家族の精神的負担が大きいことが予想される.重篤な合併症の報告もあり,整形外科医との連携が必須であり,患者,家族とともに慎重に適応を検討する必要がある.
  • 村瀨 樹太郎, 宮森 正, 西 智弘, 小栁 純子, 佐藤 将之, 山岸 正
    2015 年 10 巻 3 号 p. 539-542
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/12
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    【緒言】前立腺癌による乳酸アシドーシスの報告は1例のみで本邦での報告はない.われわれは前立腺癌末期に著明な乳酸脱水素酵素(Lactate Dehydrogenase;LDH)の上昇と乳酸アシドーシスを生じた症例を経験した.【症例】66歳男性.前立腺癌,骨・肝転移.化学療法・ホルモン療法後.緩和ケア中心に在宅療養していた.嘔気・食欲不振のため入院し,LDH 11,894 IU/L(LDH4 23%, LDH5 32%)と著明な上昇を認めた.入院後に頻呼吸が出現し,血液ガスでpH 7.402, pCO2 13.2 mmHg, HCO3− 8.0 mmol/L, Lac 10.0 mmol/Lと乳酸アシドーシスと診断した.【考察】LDH(とくにLDH5)の著明な上昇は腫瘍細胞からの嫌気的解糖系の亢進を示し,乳酸蓄積と乳酸アシドーシスに至ったのではないかと推測した.その結果,乳酸アシドーシスの症状として嘔気・頻呼吸が生じたと考えられた.
  • 上元 洵子, 森 雅紀, 宮城 明実, 塩野 州平, 山田 博英
    2015 年 10 巻 3 号 p. 543-547
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/12
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    【背景】悪性腫瘍に伴う直腸テネスムスは,進行がん患者のQOLに大きく影響するが確立した治療はない.【症例】71歳,男性.直腸がん原発切除不能のため人工肛門造設術施行.手術11カ月後よりテネスムス症状が出現,その3カ月後には5-15分間隔の便意を催すようになった.原発巣に対する照射を行うも改善認めず.アモキサピン25mg内服が奏効.内服不能後は,クロミプラミン点滴静注を行うも無効.リドカイン持続静注200mg/日により軽減.その後増悪するも290mg/日とし改善,亡くなるまで良好なコントロールを得た.【考察/結論】本症例は悪性腫瘍に伴う直腸テネスムスに対してアモキサピンが奏効した初めての報告であり,リドカインにより終末期まで安全に症状コントロールを得ることができた.ただしこれらの薬剤にエビデンスは乏しく,積極的な使用の適応については今後の研究により検討していく必要がある.
  • 三田 礼子, 山名 順子, 近藤 盛彦
    2015 年 10 巻 3 号 p. 548-551
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/30
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    パクリタキセル(以下,PTX)による末梢神経障害にラフチジンとトコフェロールニコチン酸エステル(以下,TN)の併用が著効した例を報告する.【症例】72歳男性,左上葉肺腺癌,肝転移と診断されたがPTX投与後に四肢のビリビリした痺れによる歩行困難を来たしたため化学療法は中止となり,転院となった.痺れはTN300mg/日では無効であったが,ラフチジン20mg/日の併用により急速に改善した.痺れはTNの減量で増悪したが,再度300mg/日への増量で改善し屋外歩行も可能となった.【考察】PTXによる末梢神経障害に対しTNとラフチジンの併用が有効であった.末梢神経の再生速度が緩徐であるのに対して薬剤量の変更で痺れが速やかに変化する点から痺れの改善はTNの微小循環改善作用とラフチジンのカプサイシン感受性知覚神経を介した血流増加および脱感作による効果と考えられた.
活動報告
  • 村上 真基, 山本 直樹, 小林 友美, 竹内 裕, 森廣 雅人, 佐藤 裕信
    2015 年 10 巻 3 号 p. 911-914
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/12
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    【目的】緩和ケア病棟の在宅がん患者緊急入院受け入れについて検討した.【方法】2013年1月〜2014年12月の緩和ケア病棟退院患者393名を対象として,予定入院(予定群),緊急入院(緊急群)に分け,転帰と入院期間を比較し,緊急群の入院経緯等を調査した.【結果】患者数は予定群224名,緊急群169名であった.死亡退院率は予定群81%,緊急群78%であった(有意差なし).死亡退院例の入院期間は緊急群平均24.3日が予定群より9日短かった(p<0.05).緊急群の入院経緯は入院面談済み128名,入院面談未施行11名,初診30名で,入院日時は平日日勤帯が129名(76%),入院理由は多彩で疼痛と経口摂取困難は高頻度であった.【結語】緊急群は多様な経緯,多彩な病状を認め,早期死亡が多いものの在宅復帰も認め,緊急入院の役割を果たしていた.
  • 髙世 秀仁, 北川 美歩, 堀江 亜紀子, 西連寺 隆之, 立花 エミ子, 谷 忠伸, 上村 貴代美, 桑名 斉
    2015 年 10 巻 3 号 p. 915-919
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/12
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    【緒言】がん経験者,家族,遺族に対する心理社会的サポートの提供は重要だが,未だ不十分である.サポートグループ「がんカフェ」は,がん経験者,家族,遺族,誰でも参加でき,心理社会的サポートを提供し,緩和ケア病棟スタッフが支援している.【症例】53歳男性,2001年に肺がんで手術を行い,2006年治療中に再発した.治療中の2012年に家族で「がんカフェ」に参加した.本人は患者として,妻と子供は家族として,当事者,緩和ケア病棟スタッフと交流ができた.6カ月後本人が緩和ケア病棟に入院した時,顔見知りのスタッフがいて本人と家族は安心していた.退院後,妻は遺族として「がんカフェ」に参加され,同じスタッフがグリーフケアを行った.【考察】「がんカフェ」に緩和ケア病棟スタッフが参加することで,入院前の早期から退院後のグリーフケアまで,心理社会的サポートを中心とした緩和ケアを継続的に提供することができた.
  • 西 智弘, 宮森 正, 勝俣 範之
    2015 年 10 巻 3 号 p. 920-923
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/21
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    現在,世界的に「早期からの緩和ケア」を実践していくことが進められている.しかし,その実践には様々な課題がある.このような状況の中 Palliative oncologistという, Oncologyと緩和ケアの両方のトレーニングを受けた医師の養成が提案されている.川崎市立井田病院では,抗がん剤から病棟,緩和ケアチーム,在宅までひとつの部門で提供しており,このシステムを利用した研修プログラムが行われている.患者が抗がん剤治療中でも緩和ケアに専念してからも,訪問診療に移行しても,研修医が主治医になるといった特徴があり,早期から統合された診療を経験できる.早期からの緩和ケアを進めていくための人材として, Palliative oncologistの養成は日本でも有用な可能性があり,当院での研修プログラムはひとつのモデルとなる可能性がある.
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