Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
11 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 林 優美, 小早川 誠, 槙埜 良江, 白川 峰子, 重山 千恵, 山中 和子, 泉谷 悟, 大下 恭子, 中布 龍一, 岡村 仁, 山脇 ...
    2016 年 11 巻 3 号 p. 209-216
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/02
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    「緩和ケア」という用語を患者に使い難いという医療者の声を聞くことがある.用語を使うのが遅れると患者や家族が緩和ケアを知る機会が遅れる可能性がある.われわれは「緩和ケア」という用語を用いた医療者から患者・家族への説明について調査した.2010年2月,広島大学病院の医師387名・病棟看護師518名に,質問紙調査を行った.回答率は医師70.3%,看護師54.8%で,そのうち77.2%の医師,56.0%の看護師が「緩和ケア」という用語を使用すると回答した.過半数の医師が診断時か症状出現時にはじめて用語を使用していた.看護師では医師が緩和ケアについて説明してから用語を使うとした者が約3割で,臨床経験年数が少ないほどその割合は多かった.医師は早い時期にはじめて用語を使う者が多く,看護師は早い時期に使う者も多いが医師より先に用語を用いにくい者も少なからずいることがわかった.

  • 辻 麻由美, 田渕 康子
    2016 年 11 巻 3 号 p. 217-224
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/23
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    【目的】特別養護老人ホームとグループホームの介護職員を対象に,ターミナルケア態度と個人属性,死生観との関連を検討した.【方法】特別養護老人ホームとグループホームの職員772名に,無記名の自記式質問紙調査を行った.【結果】記入漏れのある者などを除外した338名(有効回答率43.8%)を分析対象とした.ターミナルケア態度総得点は,スタッフに比べて管理職(β=0.182, p=0.001),看取りの人数が10人以上(β=0.155, p=0.003),死生観尺度の《死からの回避》の得点が低く(β=−0.183, p=0.001),《死後の世界観》の得点が高いほど(β=0.168, p=0.001)高かった.【結論】ターミナルケア態度には,職位や看取りの人数,死生観が影響していた.高齢者施設での質の高い看取りケアの提供に向けて,ターミナルケア態度に影響する要因をさらに検討する必要がある.

  • 廣岡 佳代, 坂口 幸弘, 岩本 喜久子
    2016 年 11 巻 3 号 p. 225-233
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/29
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    【目的】Bereavement Risk Assessment Tool (BRAT)日本語版を作成し,実施可能性を検討する.【方法】緩和ケア病棟,在宅支援診療所で緩和ケアを受けるがん患者の家族を対象にBRAT日本語版を使用し,リスクアセスメントを行った.また,がん患者の家族は質問紙に回答した.【結果】がん患者の家族25名が調査に参加した.リスクレベル評価では,リスクレベル2(最小リスク)が7名(28%),リスクレベル3(低リスク)が8名(32%),リスクレベル4(中リスク)が9名(36%),リスクレベル5(高リスク)が1名(4%)であった.【結論】BRAT日本語版の予備的調査を実施した.今後,遺族を含めた調査を行い,リスクレベルに応じた支援を検討する必要がある.

症例報告
  • 長井(外堀) 直子, 野村 孝, 森本 卓, 佐々木 洋
    2016 年 11 巻 3 号 p. 534-537
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/26
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    【目的】今回,再発転移乳癌に加え長期にわたるうつ病を併発していた終末期がん患者を個別に取り上げ,臨床心理士介入について検討し,緩和ケアにおける臨床心理士が果たす役割について考察を加えた.【症例報告】症例は49歳女性,右乳がん術後,多発肺転移,脳転移を発症し,左大腿骨を病的骨折し,手術を施行した.術後,患者は,動けないことのいらだちと既往のうつ病が相まって不安感が強くなり,臨床心理士が介入した.介入後,患者の1. 乳癌の病状進行に加えて併存するうつ病による否定的思考,2. 患者が「忘れっぽい」ことを意識することによる不安の高さが問題点として明らかとなった.これらの課題に対して,臨床心理士の個別介入だけでなく,乳癌治療に携わっていた医療職,患者家族と連携した介入を行った.上記の関わりを継続したことが,患者の精神的安定につながり,不安が軽減した.

  • 村松 雅人, 西村 大作, 増田 富, 都築 智之, 植松 夏子, 田中 沙耶, 近藤 有
    2016 年 11 巻 3 号 p. 538-542
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/02
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    電子付録

    【緒言】オキシコドン徐放錠(SRO)増量後に嘔吐・嚥下困難が増悪し食道アカラシア(EA)の関与が疑われた肺がん症例を報告する.【症例】66歳女性,50歳時EAに対しバルーン拡張術(EPD)を受けた.65歳時に右肺腺がんと診断され化学療法を受けたが1年後に緩和医療へ移行した.複合要因による腰背部痛に対しSROを開始しプロクロルペラジンを併用したが嘔吐が持続し入院となった.制吐薬を追加したが嘔吐は軽減せず,CT(食道拡張)・内視鏡(esophageal rosette陽性)・食道造影(食道胃接合部狭窄)により,直線型EA拡張度II度と診断した.EPDは症状の改善に有効であった.【考察】高解像度食道内圧測定によるオピオイドやドパミンD2受容体拮抗薬誘発食道運動異常の報告より,本例の消化器症状はEAの潜在的な進行に加え,SRO自体による嘔吐や,SROや制吐薬がEAに影響を与えた可能性も類推された.

  • 冨安 志郎, 正木 晶子, 松尾 由加里, 西田 博, 佐藤 英俊
    2016 年 11 巻 3 号 p. 543-547
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/07
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    【緒言】頭痛の原因診断目的に行われたMRI画像で異常を指摘できなかったことから原因の診断・疼痛コントロールに難渋した肺がん頭蓋底転移の1例を経験した.【症例】70歳,男性.右下葉肺がん縦隔リンパ節転移の診断を受けたが,治療を希望されず経過観察中であった.誘因なく頭痛が出現し,頭部MRI評価を受けたが異常が指摘されず,緊張型頭痛と診断された.鎮痛薬や鎮痛補助薬の投与を受けたが,効果がなかった.病状進行もあり緩和ケア病棟に紹介入院となり,再度画像評価を行ったところ,頭蓋底に腫瘤形成を認めた.肺がんの頭蓋底転移に伴うがん疼痛と診断し,突出痛への対処を含めて強オピオイド鎮痛薬注射剤による除痛を行った.【結論】担がん者の頭痛においては一旦画像で転移が否定されても,治療に反応せず,とくに脳神経障害を示唆する随伴症状を認める場合は,画像の再評価を検討することが重要である.

  • 谷口 彩乃, 権 哲, 山代 亜紀子, 細川 豊史
    2016 年 11 巻 3 号 p. 548-552
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/23
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    がんの早期診断や治療法の発達により,がんと診断された後の長期生存者は増加しており,彼らの慢性疼痛が問題となっている.とくに慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬の長期使用は,乱用・依存などが問題となるため注意を要する.今回,痛みの原因となった腫瘍消失後も遷延する痛みをもつ患者に,鎮痛以外の目的でオピオイド鎮痛薬を使用する薬物関連異常行動を認めた悪性リンパ腫の1例を経験した.鎮痛目的ではなく,精神的な苦痛に対してオピオイド鎮痛薬を使用することはケミカルコーピングと定義され,乱用や依存の前段階と考えられている.オピオイド鎮痛薬の内服が長期にわたると見込まれる患者には,オピオイド治療を安全に管理するために,慢性疼痛治療に準じた薬物療法の知識と適切な患者評価が重要である.

活動報告
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