Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
12 巻, 3 号
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原著
  • 髙橋 秀和, 菅野 喜久子, 佐藤 ミカ, 比毛 亜美, 本間 詩緒, 安田 勝洋, 中澤 泰子, 大堀 久詔
    2017 年 12 巻 3 号 p. 251-256
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/31
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    電子付録

    【目的】積極的治療終了後の腫瘍内科患者における,Palliative Prognostic Index(PPI)による予後予測精度を明らかにする.【方法】2015年5月から2016年6月に当科に入院したがん患者を対象としてPPI評価を行った.【結果】解析対象患者は45名であった.PPIによって3群に分類すると,リスクに従って生存曲線が分かれる傾向を認めた.高リスク群 (PPI6.5以上) と低リスク群 (PPI4.0以下) 間では有意な生存期間の差を認めた(生存期間中央値11 vs. 39日,p=0.0048, HR 2.75, 95%CI1.32-5.84).PPIが6.5以上の予後予測精度は他の報告と遜色ない結果であった.薬物療法からPPI評価までの期間によって予後予測精度に差はなく,薬物療法がPPI評価に与える影響は少ないことが示唆された.【考察】腫瘍内科患者の予後予測にPPIを用いることが妥当であることが明らかとなった.

  • 杉山 育子, 庄司 春菜, 五十嵐 尚子, 佐藤 一樹, 高橋 都, 宮下 光令
    2017 年 12 巻 3 号 p. 259-269
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/25
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    【目的】がん患者の家族介護者のquality of life(QOL)に影響を与える因子を明らかにする.【方法】2012年3月にインターネット調査で,がん患者の家族400名に日本語版CQOLCの21項目を調査した.【結果】CQOLCの4つのドメインのうち,心理的負担感を高める因子は介護者が女性,要介護のほかの家族がいる,介護の必要性が高いことであった.介護による生活の支障を増加させる因子は介護者が女性,要介護のほかの家族がいる,患者との関係が良好だと思わない,介護の必要性が高いことであった.経済的負担感を高める因子は介護者の年齢が60歳以下,患者が発病してから収入が減少した,患者の性別が男性であることだった.介護肯定感を高める因子は患者との関係が良好だと思う,介護の必要性が高いことであった.【結論】がん患者の家族介護者の負担感を軽減し,介護肯定感を失わずに介護を続けるために様々な側面からQOLを向上する取り組みの重要性が示唆された.

  • 西﨑 久純, 石川 奈津江, 平山 英幸, 宮下 光令, 中島 信久
    2017 年 12 巻 3 号 p. 271-276
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/08
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    【目的】在宅診療を受けているがん末期患者における褥瘡の予測危険因子を明らかにすることを目的とした.【方法】在宅診療を専門としている施設において,在宅のまま死亡にて診療終了となるまで施設入居者を含む在宅診療を受けていたがん末期患者95例について,後ろ向き研究を行った.【結果】褥瘡ができた患者は31名で,できなかった患者は64名であった.二変量解析の結果,統計学的に有意であった変数は,大浦・堀田スケール(以下,OHスケール)(P=0.02),過活動型せん妄(P=0.005),拘縮(P=0.008),ヘモグロビン値(P=0.02)で,多変量ロジスティック解析で有意であった変数は,拘縮(OR=16.55 P=0.0002) と,過活動型せん妄(OR=4.22 P=0.008)が独立した褥瘡のリスク因子として同定された.【考察】在宅診療を受けているがん末期患者においては,褥瘡の予測危険因子として過活動型せん妄についても考慮すべきである.

  • 中野 治郎, 石井 瞬, 福島 卓矢, 夏迫 歩美, 田中 浩二, 橋爪 可織, 上野 和美, 松浦 江美, 楠葉 洋子
    2017 年 12 巻 3 号 p. 277-284
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/08
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    【目的】本研究の目的は,化学療法実施中に低強度の運動療法を適用した造血器悪性腫瘍患者における運動機能,倦怠感,精神症状の状況を把握することである.【方法】対象は化学療法実施中に低強度の運動療法を適用した入院中の造血器悪性腫瘍患者 62名とし,運動療法の介入時と退院時の握力,膝伸展筋力,歩行速度,日常生活動作能力,全身状態,倦怠感,痛み,不安,抑うつを評価した.そして,各項目の介入時から退院時への推移を検討した.【結果】介入時と退院時を比較すると,膝伸展筋力は一部の患者では低下していたが,歩行速度,ADL能力,全身状態は9割以上の患者で維持・改善されていた.また,女性では倦怠感,不安,抑うつの改善傾向が認められたが,男性では認められなかった.【結論】化学療法実施中に低強度の運動療法を適用した造血器悪性腫瘍患者の運動機能は維持・改善しており,倦怠感,不安,抑うつの変化には性差が認められた.

  • 村上 真基, 大石 恵子, 綿貫 成明, 飯野 京子
    2017 年 12 巻 3 号 p. 285-295
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/28
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    【目的】緩和ケア病棟(palliative care units: PCU)と療養病棟スタッフの意識調査を通して,療養病棟における緩和ケアについて検討した.【方法】両病棟の介護職を含むスタッフを対象に無記名自記式質問紙調査を行った.WHO緩和ケア定義の認知度を選択肢で尋ね,療養病棟における緩和ケア全般,PCUとの連携,利点・欠点,非がん緩和ケアへの考えを自由記述で問い,内容分析を行った.【結果】248名から回答を得た.定義を「知っている」割合は医療職69.1%/介護職26.0%,PCU経験者79.6%/非経験者39.3%であった.回答のカテゴリーは,よいことである,利点がある,必要である,課題がある,難しい要件がある,困難である等であり,ケアの難しさと知識・技術の課題,人員不足関連の問題の指摘を認めた.医療職・PCU経験者は緩和ケアの必要性とケア向上への課題の指摘が多かった.【結論】利点や必要性を認める意見と,多くの課題が明らかとなった.

  • 小松 恵, 島谷 智彦
    2017 年 12 巻 3 号 p. 701-707
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/29
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    【背景と目的】がん患者の意思決定支援にはアドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning: ACP)が必要であり,そのためにはがん病名告知,患者の想い・意思・プライバシーの尊重が重要である.一般病棟看護師のがん患者に対するACPの認識を調査し,ACPの推進のためにどのような活動が必要なのかを検討する.【方法】広島県がん診療連携拠点病院の一般病棟看護師800名を対象に,郵送自書式質問紙調査を施行した.【結果】有効回答は364名(46%)であった.患者意思擁護・尊重は75%,患者プライバシー尊重は89%ができているという認識であった.患者の状態が悪い時の認識にはばらつきがみられた.ACPの意味を認識できているは20%に過ぎず,99%が施行できていなかった. 【結論】一般病棟看護師のACPの認識は不十分であり,一般病棟看護師のACPの認識を高めるためには,啓発・教育・環境整備が喫緊の課題と考えられた.

  • 飯野 京子, 嶋津 多恵子, 佐川 美枝子, 綿貫 成明, 市川 智里, 栗原 美穂, 上杉 英生, 栗原 陽子, 坂本 はと恵, 稲村 直 ...
    2017 年 12 巻 3 号 p. 709-715
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/29
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    【目的】がん治療を受ける患者への外見変化に対するケアについて明らかにすることである.【方法】がん専門病院2施設の看護師にフォーカス・グループインタビューを実施し,質的に分析した.本研究は,研究代表者および共同研究者所属の研究倫理委員会の承認を得て実施した.【結果・考察】6グループ21名に実施した.平均年齢39.2±6.0歳,看護師経験16.3±5.8年であり,16名は専門・認定看護師,面接は平均42分であった.がん治療を受ける患者の外見変化に対するケアは[外見変化のリスクを見越して備えるための情報提供][外見変化に対応した生活を送るためのセルフケア支援],[患者の意思に寄り添いその人らしい生活を支える外見ケア],[多職種連携による専門性を活かした外見ケア]の4つの大カテゴリーで構成された.今後は,外見ケアを治療方法別や部位別,時期別等に系統立てて分類した研究が求められる.

症例報告
  • 伊藤 浩明, 渡邊 紘章, 小田切 拓也
    2017 年 12 巻 3 号 p. 535-539
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/20
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    【緒言】末期脳腫瘍患者のステロイド使用中に腹腔内遊離ガスを伴う腸管気腫症を続発した症例を経験した.【症例】67歳,男性.脳腫瘍に対し手術・化学療法するも,病状進行により意識状態が悪化し誤嚥性肺炎にて入院.肺炎改善後も意識状態は悪く,予後1カ月程度と判断され,緩和ケア病棟へ転棟した.転棟後に意識状態の改善を目的としてベタメタゾン注1日8 mgを開始したところ一時的に改善が得られ,以後増減を繰り返しながら使用継続した.意識状態が再度悪化して誤嚥を繰り返すようになった投与6週間後に肺炎評価目的の胸部レントゲン写真で腹腔内遊離ガス像を認め,CTで腸管気腫症を確認した.腹部症状は乏しく保存的に経過観察したが,呼吸不全にて永眠された.【結論】腸管気腫症は殆どが続発性で,ステロイドも原因の一つとされているが,保存的に経過観察が可能なことが多く,ステロイド中止の判断はその効果や予後を考慮して行う必要がある.

  • 熊野 晶文, 関本 剛, 福田 光輝, 松永 佳子, 安保 博文
    2017 年 12 巻 3 号 p. 541-545
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/31
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    腹膜播種による悪性腸閉塞に対しアミドトリド酸ナトリウムメグルミン液(以下,ガストログラフィン)が有効であった終末期卵巣癌患者3例を経験した.3症例とも悪心・嘔吐,腹痛や便秘等の消化器症状を有し,画像検査でニボー像や小腸の拡張像を認め腸閉塞と診断した.症状改善のためにオクトレオチド等の薬剤投与を行うも十分な効果が得られず,ガストログラフィンの服用を試みた.ガストログラフィン投与により,嘔気の軽減や排便効果を認め消化器症状は改善し経口摂取継続が可能となった.また,投与後24時間のX線検査によって大腸の描出が確認でき,不完全腸閉塞と診断した.全症例ともガストログラフィン服用による目立った副作用は認めず繰り返し使用可能であり,終末期卵巣癌患者の悪性腸閉塞に対し,腸閉塞の状態評価および症状改善のためにガストログラフィン服用が有用である可能性が示唆された.

  • 滝本 佳予, 小野 まゆ
    2017 年 12 巻 3 号 p. 547-551
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/18
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    悪性腸腰筋症候群(malignant psoas syndrome: MPS)は,悪性腫瘍が腸腰筋に浸潤して生じる,侵害受容性痛と腰神経叢領域の神経障害性痛を特徴とする病態である.痛みは強く,症状緩和に難渋することも多い.53歳の女性,子宮癌肉腫で広汎子宮全摘術施行後,骨盤内リンパ節病変が増大し左MPSを生じた.この病変に対し放射線治療(radiation therapy: RT)が予定されたが,強い痛みで股関節伸展保持不能であり,RTを開始できなかった.硬膜外ブロックをRT30分前に毎回実施することで股関節伸展可能となり,RTを予定回数終了し得た.MPSの治療は多角的アプローチが推奨されており,今回は内服治療と併せて早期に硬膜外ブロックを実施することで目標鎮痛を達成し,放射線治療を実施した.MPSの痛みにより股関節伸展が困難であるがために,RTを開始できなかった患者に対する鎮痛手段として,RT前に毎回,単回の硬膜外ブロックを実施することで予定通りRTを完遂できた.

  • 下川 美穂, 久永 貴之, 矢吹 律子, 萩原 信悟, 志真 泰夫
    2017 年 12 巻 3 号 p. 553-557
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/23
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    当院緩和ケア病棟では,2015年1月から2017年1月の間に5例の植え込み型除細動器(implantable cardioverter-defibrillator: ICD)を有するがん終末期の患者を経験した.ICD停止について,5例中4例でせん妄や認知症により患者本人の意思決定能力がなく,1例は意思決定能力はあったが,家族が患者本人の意思確認に同意せず,5例とも家族による代理意思決定であった.ICD停止の手順は,家族と死亡の2〜21日前に話し合いを開始し,1〜5回の面談を経て同意を得たうえで,死亡の3時間〜11日前に停止した.今回の経験を通じて,ICD停止に関して①意思決定に関する医療者の経験不足,②ICDが患者に与える苦痛に関する医療者の認識不足,③話し合いにかかる心理的負担や時間的制約,④患者と家族のICDに関する知識不足,という問題点が明らかになった.がん患者のadvance care planningの一環としてこの問題に対応していく必要がある.

  • 北村 浩, 林 茂一郎
    2017 年 12 巻 3 号 p. 559-564
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/25
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    電子付録

    【はじめに】非常にまれな傍腫瘍性舞踏病に対し,テトラベナジンが著効した症例を経験したので報告する.【症例】92歳女性.肺癌の診断で経過観察中に不随意運動が出現・増悪し,傍腫瘍性舞踏病と診断.本症例に一般的に用いられるバルプロ酸/チアプリド/リスペリドンの三剤併用療法で症状はやや改善したが,頸部,上肢の不随意運動,構語障害は残存した.神経内科主治医よりハンチントン病薬テトラベナジンが効く可能性を示唆され,当科へ転院後に家族が使用を希望した.自らの意志に反し勝手に体が動く状態に身体的,精神的苦痛を感じていることを考慮し,家族への説明と同意を得て12.5 mg/日から内服開始した.開始後に不随意運動は著明に減少,発語が明瞭化し家族と会話ができた.【考察】テトラベナジンはハンチントン病のみ保険適応の薬剤であるが本症例において著効し,舞踏病様不随意運動とそれに伴う苦痛に対して症状緩和がなされた.

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