Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
13 巻, 3 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
原著
  • 清水 佐智子, 宮下 光令, 藤澤 大介, 藤森 麻衣子, 高橋 都
    2018 年 13 巻 3 号 p. 209-218
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/09
    ジャーナル フリー HTML

    がんサバイバーの就業状況の変化に関する経験の実態とQOL・心の健康との関連を明らかにした.60歳未満男性91名,女性269名のデータを2012年12月にネット調査で得た.罹患後の就業変化は,就業時間が減った男性22%,女性8%で,仕事を辞めた男性11%,女性21%と,男女間で有意差があった(P=0.000, P=0.031).就業変化の関連要因は,男性は未婚(P=0.002),PSが1以上(P=0.008),疼痛治療中(P=0.039),女性はPSが1以上(P=0.001),診断からの経過年数が長い(P=0.045)だった.就業変化とQOLの関連は,変化があった男性で身体・社会的QOL,同女性ですべてのQOLが低かった.心の健康との関連では,変化があった男女は,抑うつ不安ではないが有意に得点が高かった.変化があった男性は,抑うつ不安状態の人が多かった.今後,就業に焦点を絞った調査が必要である.

  • 村上 真基, 大石 恵子, 綿貫 成明, 飯野 京子
    2018 年 13 巻 3 号 p. 219-227
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/19
    ジャーナル フリー HTML
    電子付録

    【目的】療養病棟スタッフへの意識調査を通して,療養病棟緩和ケアの課題について調査した.【方法】介護職等を含むスタッフを対象に無記名自記式質問紙調査を行い,WHO緩和ケア定義の認知度,療養病棟緩和ケアの必要性と実現性,課題等について数字評価スケール(0:まったくそう思わない〜10:非常にそう思う)で尋ねた.【結果】30施設541名(医療職387名,その他154名)から回答を得た.緩和ケア定義を「知っている」は医療職56%,他職種45%,がん緩和ケアの必要性がある8.5±2.1(平均値),実現性がある6.8±2.5,非がん緩和ケアの必要性がある8.4±2.0,実現性がある7.0±2.2であった.がん・非がんともに,苦痛緩和・家族ケアは重要である,人員不足である,時間のゆとりがない等が8点以上であった.【結論】緩和ケアの必要性や重要性を高く認めつつも,多くの課題と困難感の存在が明らかとなった.

  • 米永 裕紀, 青山 真帆, 森谷 優香, 五十嵐 尚子, 升川 研人, 森田 達也, 木澤 義之, 恒藤 暁, 志真 泰夫, 宮下 光令
    2018 年 13 巻 3 号 p. 235-243
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
    ジャーナル フリー HTML
    電子付録

    緩和ケアの質や遺族の悲嘆や抑うつの程度に地域差があるかを目的とし,2014年と2016年に実施された全国遺族調査のデータの二次解析を行った.ケアの構造・プロセスはCare Evaluation Scale(CES),ケアのアウトカムはGood Death Inventory(GDI),悲嘆はBrief Grief Questionnaire(BGQ),うつはPatient Health Questionnaire 9(PHQ-9)で評価した.関東をリファレンスとし対象者背景で調整し,比較した.CESとGDIは調整後も九州・沖縄で有意に高かった(p<0.05).BGQは調整後も中部,近畿,中国,九州・沖縄地方で有意に低かった(p<0.05).PHQ-9は調整後,有意差はなかった.いずれのアウトカムも効果量は小さく地域差がほぼないと考えられ,ケアの提供体制は地域で大きく変わらないことが示された.

  • 中里 和弘, 塩崎 麻里子, 平井 啓, 森田 達也, 多田羅 竜平, 市原 香織, 佐藤 眞一, 清水 恵, 恒藤 暁, 志真 泰夫, 宮 ...
    2018 年 13 巻 3 号 p. 263-271
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/21
    ジャーナル フリー HTML
    電子付録

    【目的】1)緩和ケア病棟における患者と家族間の思いの言語化を支える家族支援(家族へのバーバルコミュニケーション支援)の有無と評価,2)家族へのバーバルコミュニケーション支援と「患者と家族との良好な関係性」および「ケアの全般的満足度」との関連を検討した.【方法】全国の緩和ケア病棟103施設における死亡患者の遺族968名に質問紙調査を実施した.【結果】536名を分析対象とした.支援を受けた遺族の割合は内容によって差がみられたが,評価は概ね高かった.重回帰分析の結果,患者と家族との良好な関係性では,全8つの支援で有意な正の関連が認められた.ケアの全般的満足度では,4つの支援(家族から患者への言語化の具体的提案,家族の思いを患者に伝える,患者の聴覚機能保持の保証,患者の思いを推察した家族への言葉かけ)で有意な正の関連が認められた(p<0.05).【結論】家族へのバーバルコミュニケーション支援の意義が示唆された.

  • 内田 恵, 奥山 徹, 明智 龍男, 森田 達也, 木澤 義之, 木下 寛也, 松本 禎久
    2018 年 13 巻 3 号 p. 273-279
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/04
    ジャーナル フリー HTML

    本研究の目的はがん患者の苦痛のスクリーニングを患者・家族のために効果的に運用するためのワークショップの有用性について検討することである.直前・直後アンケートでは参加者51名全員から回答を得た.スクリーニングに関する知識は参加直後で有意に改善していた.3カ月後のWebアンケートにも7割以上が回答し,3カ月以内に学んだ内容を実践に移した参加者は3割以上であった.スクリーニング実施時の阻害因子は3カ月後では有意に減少していた.スクリーニングツールの使用方法に関する知識は,年間新入院・外来がん患者数,病床総数,院内がん登録数と負に相関し,スクリーニング実践に関する阻害因子と緩和ケアチーム(palliative care team: PCT)経験歴は正に相関した.本研究でがん患者の苦痛に関するスクリーニング・トリアージを普及するためのワークショップの有用性が示唆された.対象者はPCT経験歴が長くがん患者数が多いがん拠点病院の医療者が適している可能性が示された.

  • 西村 一宣, 栗山 陽子, 行徳 五月, 寺戸 沙織
    2018 年 13 巻 3 号 p. 281-286
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/04
    ジャーナル フリー HTML

    【目的】医療で一般に用いられる言葉,「年・月・週単位」と「季節や時期を示す言葉」について医療者と患者家族の認識を調査した.【方法】医療者と患者家族に対し質問紙調査を行った.【結果】年単位を5年以内とした医療者は100%,患者家族は67.1%だった.月単位を3〜6カ月とした医療者は39.3%,6カ月以内は100%,患者家族は3〜6カ月10.1%,6カ月以内は68.3%だった.週単位を4週以内とした医療者は89.3%,8週以内は100%,患者家族は69.6%と77.2%だった.年・月・週単位を「わからない」とした患者家族が約1/5いた.桜の頃を3月下旬〜4月上旬とした医療者は71.4%,患者家族は58.9%だった.紅葉の季節,暖かくなる頃,寒くなる頃はばらつきがあり,梅雨の時期は6月が多かった.【結論】一般的に使用される平素な言葉でも,医療者と患者やその家族で認識が異なる場合がある.

  • 工藤 朋子, 古瀬 みどり
    2018 年 13 巻 3 号 p. 287-294
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/10
    ジャーナル フリー HTML
    電子付録

    【目的】死別後支援が必要な家族介護者を訪問看護師が予測する要因を抽出する.【方法】訪問看護師が,終末期利用者の家族介護者105人に,自作の質問紙を基に死別後支援を予測する要因の調査(死別前),死別後支援の必要性を判断する調査(死別後)を行った.そのうち同意を得た死別後の家族介護者30人に,研究者が聞き取り調査(うつ病自己評価尺度CES-D,健康関連QOL尺度SF-8TM)を行い.数量化2類により分析した.【結果】治療中の疾患あり,医療への不満あり,経済的負担あり,後期高齢夫婦世帯,同居家族は介護を任せがち,頼れる別居家族・親戚がいない,周囲の助けを遠慮する傾向,が抽出された(判別的中率76.7%,相関比0.42,P=0.001).訪問看護師による判断は,基準関連妥当性が検証された.【結論】これら7項目は,死別後支援が必要な家族介護者を見極めるための重要な要因である可能性が示された.

  • 野里 洵子, 宮本 信吾, 森 雅紀, 松本 禎久, 西 智弘, 木澤 義之, 森田 達也
    2018 年 13 巻 3 号 p. 297-303
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/26
    ジャーナル フリー HTML

    【目的】緩和ケアの研修・自己研鑽に関するニーズに影響する要因を探索すること.【方法】緩和ケア医を志す卒後15年以内の医師を対象に質問紙調査を行い,満たされないニーズ(以下ニーズ)を5件法で評価した.ニーズは因子分析を行い,各因子の平均点を従属変数,背景要因を独立変数として単変量解析を行った.【結果】対象者284名に対して回答者は253名(89%),初期研修医・緩和ケア専門医などを除く229名を解析対象とした.ニーズは,研究・時間・キャリア・ネットワーク・質・幅広さの6つの因子が同定された.ニーズの因子得点に効果量≥0.4の有意差があった背景要因は,1)認定研修施設に勤務していない,2)勤務先・研修先が大病院ではない,3)施設内緩和ケア医数が2名以下であった.【考察】認定研修施設ではない病院,または小規模,または緩和ケア医の少ない環境で働く若手医師が受ける研修体制の改善は優先度が高い課題と考えられる.

短報
  • 平塚 裕介, 佐藤 麻美子, 小野寺 克洋, 佐藤 勝智, 木幡 桂, 田上 恵太, 宮城 妙子, 佐竹 宣明, 井上 彰
    2018 年 13 巻 3 号 p. 229-233
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/19
    ジャーナル フリー HTML

    悪性消化管閉塞(malignant bowel obstruction: MBO)に伴う症状に対して,デキサメタゾン(Dexamethasone: DEX)が投与される.本研究の目的は,DEXが投与されたMBO患者における経口摂取量の変化を調査することである.2016年10月〜2017年9月までに緩和ケア病棟に入院した患者(N=262)のうち,MBOの臨床的徴候を認める(病歴・身体所見・画像所見),Treitz靭帯以下の閉塞,治癒の見込めない腹腔内の原発癌を有する,または,腹腔内に病変を有する非腹腔内の原発癌を有し,DEX投与をした症例(N=10)を後ろ向きにカルテ調査した.対象症例のうち6例に平均3.8日間に経口摂取量の増加を認めた.全例DEX投与開始用量は8 mg/日であった.MBOに対するDEX投与により,経口摂取量の増加が得られる可能性がある.

  • 大石 恵子, 村上 真基, 綿貫 成明, 飯野 京子
    2018 年 13 巻 3 号 p. 245-250
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/16
    ジャーナル フリー HTML
    電子付録

    【目的】緩和ケア病棟併設のない病院の療養病棟での緩和ケアの実態を明らかにし,療養病棟における緩和ケア推進のための課題を検討する.【方法】東京都の211の療養病棟管理者へ無記名自記式質問紙調査を行った.医療用麻薬の管理と使用実態,緩和ケアに習熟した医師・看護師の存在,がん患者の受け入れ体制,非がん緩和ケアへの認識,療養病棟での緩和ケアにおける困難について質問した.【結果】55施設から回答を得た.89.1%ががん患者を受け入れ医療用麻薬も使用可能だが,緩和ケアに習熟した医師がいる施設は32.7%であった.7割以上が非がん緩和ケアを重要視し取り組んでいた.緩和ケアに習熟した医師のいない施設では,専門知識・技術,麻薬投与,苦痛緩和についての困難感が有意に高かった.【結論】多くの療養病棟でがん・非がん緩和ケアに取り組みつつ,困難感も抱えている.緩和ケアに習熟した医師の存在は困難感を低減させる可能性が示唆された.

症例報告
  • 寺田 忠徳, 北村 典章
    2018 年 13 巻 3 号 p. 251-255
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/16
    ジャーナル フリー HTML

    【緒言】オピオイドの投与経路は経口投与が基本であるが,嚥下障害,悪心・嘔吐などの理由から皮下投与などに変更する場合がある.皮下投与の稀な合併症として,腹部蜂窩織炎の症例を報告する.【症例】44歳の男性.2017年2月に胃がんの多発転移の診断で痛みの緩和ならびに化学療法目的で入院した.オキシコドン持続皮下注射で痛みの緩和を図り,化学療法を継続していたが,皮下注射部位に腹部蜂窩織炎を併発した.穿刺を変更し,血液培養検査提出後,セファゾリン2 g/日を1週間投与し,臨床症状,血液検査共に軽快し,化学療法が継続できた.【考察】オキシコドン持続皮下注射により蜂窩織炎を併発した報告は認められなかった.終末期がん患者や化学療法中の患者は免疫力が低下しており,オキシコドン持続皮下注射などのオピオイド持続皮下注射を行う場合,穿刺部位を注意深く観察し,感染徴候に留意する必要性があると考えられた.

  • 石川(岡) ゆりか, 大坂 巌, 安井 和明, 原田 英幸, 大野 茂樹, 柳原 恵梨, 佐藤 哲観
    2018 年 13 巻 3 号 p. 257-261
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/16
    ジャーナル フリー HTML

    【背景】繰り返す失神発作に対して,放射線治療が有効であった副咽頭間隙失神症候群を経験したので報告する.【症例】68歳,男性,中咽頭癌.腫瘍切除術後に化学療法を実施した.その後,頸部リンパ節転移,頸椎転移に対して放射線治療を行ったが,以降の化学療法は行わず経過観察されていた.経口摂取困難のため入院となったが,激しい頭痛を伴う失神発作を繰り返すようになった.CTでリンパ節転移による副咽頭間隙失神症候群が疑われ,放射線治療を実施した.その結果,失神発作は著明に改善し,死亡前の3カ月間はほぼ生じることなく経過した.【結論】頭頸部癌で失神発作を繰り返す患者においては,副咽頭間隙失神症候群が鑑別診断に挙げられ,その際には放射線治療が症状緩和の選択肢となりうる.

訂正
feedback
Top